09/08/24 17:51:22 pcwFVEP/
「ふんふ~ん。ルンルン」
俺の隣でレトが嬉しそうに鼻歌を歌っている。
隠しているからわからないけどしっぽが出ていたらパタパタと揺れているはず。
外に出かける時はしっぽと耳は必ず隠させている。メイド服も禁止だ。
しかしスーパーのお買い得商品が買えたくらいでこうなるとはね。レトの可愛い所だ。
「今日の晩御飯はご主人様の好きなドリアですよ」
おっ、やった!!
レトの作るドリアは美味しい。それこそ店よりも数段上の味だ。
「だから荷物持ち頑張ってくださいね」
うーんと両手を上にし、レトはを気持ちよさそうに伸びをした。
残念ながら俺は両手がレジ袋で塞がっているから伸びはできない。
……重い
主人に荷物持ちをさせるとは。実は自分の方が力持ちなくせに。
「とはいえ、女の人に荷物持ちさせるわけにはいかないからな」
「ありがとうございます、ご主人様!!」
うっ、可愛い……
見た目だけなら立派な大人のお姉さんのくせに、たまに無邪気に笑う。
この笑顔を前にすると俺には何も言えなかった。
家に帰ると我が家のもう一人の住人であるハスキが迎えてくれた。
当たり前だけど玄関先で待つ姿は犬っぽい。
「ハスキちゃん、ただいま」
「おかえり。二人とも」
「頼むハスキ、この荷物を台所まで……」
差し出されたレジ袋をいともたやすく持ち去るハスキ。
あんなに小柄な彼女とは信じられない力だ。人間ではないことを意識させらるな。
「待っててくださいね。腕によりをかけますから」
メイド服へと着替えを済ましたレトがさっそく台所に立つ。
ようやく解放されたしっぽはピロピロと跳ねていた。
我が家の家事は全てレトがしてくれる。
俺とハスキはせいぜい買い物に付き合うか頼まれたら手伝う程度。
テレビを見ているとハスキが膝の上に乗ってきた。やっぱ女の子は軽いんだな。
ちょこんと座るハスキは愛らしい。見た目は俺と同じような年でもどこか幼さが残る。
ちょうどテレビでは動物番組をやっていて犬の特集をしていた。
どんな気分で見てるんだろう?元はといえばハスキも犬だ。
テレビで飼い主にじゃれる犬を見ると昔を思い出す。
元気なレトと静かだが甘えたがりのハスキ。よくじゃれついてきたっけな。
「くすぐったい…」
腕の中でハスキがもぞもぞと動いた。知らないうちに頭をなでていたらしい。
サラサラの美しい黒髪は触り心地がいい。
「ひゃっ、耳、ダメ」
おっとつい耳を触ってしまった。