【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 3冊目at EROPARO
【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 3冊目 - 暇つぶし2ch803:名無しさん@ピンキー
09/02/27 22:56:57 Ur559k1M
>>802
結局、押し倒すのか…まぁいいけどさ。こういう感じだろうか?
―――
「ちーちゃんにも、本当に好きな人が出来たらわかることですよ?」
「…本当に好きな人?」
「そうですよね?真九郎さん」
「あー…うん。そうだね。そういう事は、好きな人が教えてくれるよ」
「…お兄ちゃんは、散鶴のこと、きらい?」
大きな瞳を潤ませ、散鶴が真九郎を覗きこむ。
「ちーちゃん?愛とは、難しいものなのです。与えたくとも、受け皿が小さければそれは溢れてしまうのです」
夕乃さんは目元を和らげ、散鶴に教える。
こういう時の夕乃さんはいつにも増して綺麗だと思う。
「そのためにも、ちーちゃんは早く大きくならないといけないですよ。お夕飯の準備、出来ていますから」
「大きくなったら、お兄ちゃんが教えてくれる?」
「もちろん、そうですよね?真九郎さん」
「え?あー…うん。約束するよ」
「散鶴、頑張る」
てとてとと食卓に向かった散鶴。これでひとまずは…
「真九郎さん。実は、私も子どもの作り方知らないんです」
「へ?いや、夕乃さんは…」
「もちろん、教えて下さいますよね?」
―――
続きは省略。

804:名無しさん@ピンキー
09/02/28 00:23:27 1KnFAqgl
>>803
仕事はえー。GJ

805:名無しさん@ピンキー
09/03/01 11:22:40 EjBJpzDv
寝取り・寝取られスレに紅の紫ものがあがってたな。実にエロかった。

806:名無しさん@ピンキー
09/03/03 23:46:51 7pIRwkJ7
>>805
向こうは20レス以上の大作なのに、こっちは閑古鳥が鳴いてやがる。
別にあんな後味悪いの何個も読みたいわけじゃないけどさ。なんか不公平だ。

807:名無しさん@ピンキー
09/03/04 01:38:57 aQ0e0/pm
>>806
じゃあお前が真九郎が夕乃さんに優しく激しくラブラブたっぷりに責められるSSを書くんだ

808:名無しさん@ピンキー
09/03/04 12:38:01 YcyNEQbO
誰か親切な人、保管庫の更新してくれ
他力本願w

809:名無しさん@ピンキー
09/03/04 17:58:30 6CZCXFnx
>>808
同意!
自分はwikiの使い方が分からないのでw

810:名無しさん@ピンキー
09/03/05 05:20:23 YJlFSyDR
あ…、あん……!あ……っ
違うわ……、これは…………その、お姉ちゃんのためよ…………
こんな不良が…、お姉ちゃんとなんて…………妹として、絶対に許せない……!
だから……、私が代わりに……こうして………………相手を…………
こうしていれば…………こんな性欲魔人、きっと女なんかに興味が無くなるはず……
あん!あっ……!あ……、ん……っ!
べ…、別に気持ち良くなんて無いんだからねっ!
こんな声が出るのは……そう、演技なのよ!こいつが変な気を起こさないように、
満足させてあげないと……、あ……、あん……っ、だめ……そこ、だめぇ……!
あぁん気持ち良くなんか、無いんだからぁ……!
だめぇ…………
あっ、あんっ!あんっ、あんっ!
そんな、ばか、だめ、こらっ…、あぁん!!あ、だめ、だめ、だめだったら…だめぇ……!
どうして……、こんな奴に…………私…………
身体なんて…………
好きなんかじゃ……無いんだから…………絶対…………
絶対よ…………
ああ……
でも、気持ちいい…………
こんな気持ち良くて、お姉ちゃんのためになるなら…………あたし…………
あぁすごい…………気持ちいい………………気持ちいいよ…………
ああ……、ああ……!!
すごいすごいすごいすごい―………………っ!!
あぁあん好き……!
好き……!
本当は好き…!
あんたの事すごく好き…………!
あぁあんばかばか死ね柔沢ジュウ!
お姉ちゃんをたぶらかした変態!その妹に手を出してるあんたって最低!
こんなにアレを大きくして、あたしの身体の中入ってる……!
ずぼずぼって出入りしてる……!すごい、すごい……っ!
勃起してるの…………こんなに…………あたしの事を……そんなに…………
あぁ……だめ……こんなバカに……お姉ちゃん……ごめんなさい……あたし……
あぁああん大好き大好き、あぁん凄い、凄いよぉ出てる、入ってる、グリグリって……、
めちゃくちゃ気持ちいいよぉおまんこすごい、イっちゃ、イっちゃう、あぁ、イク、イク、イクぅ……!!
あぁん柔沢ジュウの目の前であたしイっちゃうよお……!イっちゃう……!あぁ!
あああああんっ!!!お姉ちゃん!お姉ちゃん!お姉ちゃんごめんなさあい……!
あたし……、あたしこのバカ好きみたい……!お姉ちゃんを守るなんて嘘……!
お姉ちゃんに嫉妬してたの……!最低……!あぁん最低……!気持ちいい……!
気持ちいい……!してる……!してるよぉ……!柔沢ジュウとあたしセックスしてるぅ……!!
おっぱいもお尻もぜんぶ見せて……!あたしジュウとセックスして感じてるぅ……!!
ダメ……!いくぅ……!イク!イクっ!イクぅ……!!あぁんイク……う……っ…………
お姉ちゃ……ん………
ああ…………
あ……っ

811:名無しさん@ピンキー
09/03/05 14:22:58 eavmmeyv
光乙

812: ◆JI6GRfrLos
09/03/05 21:41:41 EeSzXHyW
「真九郎さん…わたしのパンツ知りませんか?」
ある夜、五月雨荘を訪ねてきた夕乃さんが放った第一声はそれだった。
「……えーっと。何で俺に聞きにきたんです?」
「前、話したじゃないですか…」
それは以前、環さんのパンツ紛失で問い詰められた事。
「で、そのあとわたしのパンツがなくなってしまったんですよ」
にこにこと、実に機嫌良さそうに夕乃さんは聞いてくる。
「盗んだの。真九郎さんですよね?」
「……違います」
全く心当たりはなかった。
「…正直に言ってくれたら、キスしていいですよ?言わなかったら、キスしちゃいます」
「だからそれ、何が違うの?」
「もう…真九郎さんは全然、わたしに心を開いてくれないんですね…ガッチリぴっちり鍵かけて、
夕乃さんの事なんかどうでもいいって無関心。わたしは悲しいです…」
「本当に心当たりないんだけど…」
というか、夕乃さんは本当に俺にパンツを盗んで欲しいんだろうか…恐ろしくて本人には聞けないが。
「真九郎さん。別にそういう事に興味を抱いてしまうのは仕方ないことなんです。真九郎さんもお年頃な訳ですから…」
「はぁ…」
「ですから、今日はわたしが真九郎さんをしごいて差し上げます」
夕乃さんはやや頬を染め咳払いをした。
「…今、ここでですか?」
はっきり言って五月雨荘はボロい。そして夕乃さんの拳は分厚いコンクリートも粉砕する。
真九郎にとって、言いがかりにもほどがある理由で突然すぎるが夕乃は真九郎にとって師匠格。
だが場所が場所だ。断り難いが、移動を提案しようと口を開こうとしたが先をこされた。
「邪念が消えるまで、徹底的に、しごいて差し上げますよ?嬉しいですよね?」
「……光栄です」
「では、さっそく始めましょうか…」
そうして、夕乃はおもむろにパンツを脱いだ。
真九郎が夕乃の足からパンツが脱げるのを見て、視覚で感じ、あぁ夕乃さんの脚、綺麗だな…
と思ってからやっと正常に頭が働きだし、混乱という袋小路に入った。
混乱の極みに達し、立ち往生状態の真九郎を差し置き、夕乃は言葉を続ける。
「ですから…真九郎さんが満足するまで、しごいて差し上げますから…」
夕乃さんの白魚のような、意外と小さな手が俺の社会の窓をノックする。
「え?…え?!」
まだ暖かさの残る夕乃の生パンツがふわりと真九郎のイチモツを包み込み…
――――

ムフフであっはーんは省略。

813:名無しさん@ピンキー
09/03/06 01:41:43 9pSBRa5b
なん…だと…!?ここまできてムフフであっはーんは省略…だと!?…バカな!?

814:名無しさん@ピンキー
09/03/06 03:07:49 rW7WCfDG
わっふるわっふるわっふry

815:名無しさん@ピンキー
09/03/06 20:27:34 41ihHmu5
なん…だと…!?ここまできてムフフであっはーんは省略…だと!?…バカな!?

         .。::+。゚:゜゚。・::。.        .。::・。゚:゜゚。*::。.
      .。:*:゚:。:+゚*:゚。:+。・::。゚+:。   。:*゚。::・。*:。゚:+゚*:。:゚:+:。.
ウワ━.:・゚:。:*゚:+゚・。*:゚━━゚(ノД`)゚━━゚:*。・゚+:゚*:。:゚・:.━ン!!
  。+゜:*゜:・゜。:+゜                   ゜+:。゜・:゜+:゜*。
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816: ◆JI6GRfrLos
09/03/07 00:22:06 RMGKxk4a
暇つぶしに小ネタを投下。2スレ消費。
本筋無関係の美夜救済SS…のボツネタを弄ったやつ。
※注意。夢オチ。

817: ◆JI6GRfrLos
09/03/07 00:22:32 RMGKxk4a
「ジュウくーん!ごはん、出来たから起きてっ」
ベッドまでよって、まだ眠るジュウ君をゆさゆさ揺する。
紆余曲折を経た後、結局頼どころのないわたしをジュウ君が『飼う』ことになった。
堕花さんの取り計らいというのが色々と腑に落ちないけど、ジュウ君と同棲させて貰った経緯を思えば何も言えない。
「…起きてるぞ…まだ早いな。あと20分くらい…」
そういってジュウ君は布団の中でもぞもぞしてる。
普段見れない、ちょっと子どもっぽい仕草が母性本能をくすぐってくれる。
それでも、せっかく作ったごはんは暖かいうちに食べて欲しい。
「もう…いっつもギリギリまで寝てちゃダメだよ?」
「美夜が起こしてくれるし、飯も作ってくれるからな。ゆっくり眠れて、助かってるぞ」
眠気眼でジュウ君が頭をなでなで…ふふっ羨ましい?堕花さん?
…あまり調子にのると、本気で殺されそうだからここら辺で離れておこう。
ちょっと名残惜しいけど、ジュウ君の手を引いて起きてもらう。
「今日は和食だよ。ちゃんと食べないと元気出ないんだから」
ダイニングテーブルには1人分の食事が用意されてる。
「…またか。おまえもテーブルで一緒に食べればいいだろう?」
「ダメだよ…ジュウ君は『御主人様』なんだし…」
そういって、わたしはわたし用の『食器』を出した。
MIYAと書かれた、犬用の食器。
あの後、拘置所で抜け殻になったわたしは酷く曖昧なものになってしまった。
憑き物と言えば、ちょっと違う。正確には、魂というべきだと思う。
抜け殻は抜け殻。外郭だけで中身は何も入ってない。そして形すら、もう壊れ、崩れてしまっていた。
頼るものも信じるものも救いも、それらは全部ジュウ君になった。ジュウ君がなきゃいきられない。
だからこそ、ジュウ君に『与えられている』ことを実感しなきゃいけない。
ジュウ君は苦しそうな、悲しそうな顔をする。
「……ごめんな」
出来ることは紗月美夜という人間に支配を与えるだけ。
わたしは人差し指で更に何か言おうとするジュウ君の唇を押さえる。
「わたしが謝んなきゃ、ダメなの。あと、まだ時間があるから…」
抱いて欲しい。そうは直接は言わない。言わなくても、ジュウ君はわかっている。何回も繰り返す毎日。
罪を、業を。背負い背負わせる主従。
救う手段はコレしかなく、救える人間は自分だけ。


818: ◆JI6GRfrLos
09/03/07 00:23:05 RMGKxk4a
何も出来なかった自分が、美夜を自分で埋め尽くすことで救ってくれている。
それでも、ジュウ君は悩み、苦しんでる。何度も後悔し、決断を悔いている。
わたしにはジュウ君しかいない。
手を使わず、犬食いでごはんを食べる。ジュウ君は目を逸らす。
本当に『飼われてる』実感を得る為に『待て』とかの命令をお願いをしたけど、流石に断られた。
短い朝食は終わり、わたしの口のまわりはごはんだらけだ。
「じっとしてろ」
ジュウ君がわたしの口の周りについたごはんを啄む。優しく、キスの雨がわたしに降り注ぐ。
「お願いっ…」
最後まではしない愛撫。焦らすように、それでいてポイントを知り尽くしたジュウ君の手が快楽の波を作る。
ブラウスのボタンを自分で外す。
ジュウ君はわたしを優しく抱きしめ、口から、首、鎖骨を通り、ざらりとした舌の感触が胸を撫でる。
スタイルには自信があったけど、ジュウ君の男を反応させた事は未だにない。
「帰ってきたら、またな…」
そういっても、ジュウ君が『続き』をしたことはない。
ただ一方的に快楽を与え、グチャグチャにして、何事もなかったかのように学校にいく。
学校までいくらも時間はあるが、残酷なまでの優しさがジュウに本当に抱く事を許していない。
ジュウがいなくなり、1人体をふるわせる。
みっともなく潤わせた女の部分を1人いじりながら、それでも快感を貪る。
「ジュウ君…ジュウ君…」
寂しさの中にある多幸感が、一時的な快楽に酔わせる。
少なくとも、わたしは幸せになった…

――――

「と、いう夢を見たんだけど…」
わたしは堕花さんと女の子同士の会話を楽しんでいた。
話すことは、昨日見た夢の話。
「……あなたもなかなかのものですね」
「堕花さんほどじゃないよ?」
ふふふ。あはは。二人して形式的な笑い声をあげる。
夢診断とか、メンタルチェックとかの名目だった筈が美夜の変態性が露見しただけだった。
雨の目は伺えない。美夜の目は、明るく澄み渡っている。
朗らかに笑顔を交わす2人。目の奥は2人とも笑わない。
「でも、いずれ実現させるよ?」
「ご冗談を」
ふふふ。あはは。

819: ◆JI6GRfrLos
09/03/07 00:26:14 RMGKxk4a
投下完了。
ごめん。すんどめ大好きなんだ。

820:名無しさん@ピンキー
09/03/07 08:09:28 oPC9kIsR
>>819
けっこうなお手前で……。

821: ◆JI6GRfrLos
09/03/08 05:07:45 XcbGJVvy
「…っいいぞ。続けろ」
股には、雨の頭部。
雄々しくそそり立つ、ジュウのものを雨は懸命に奉仕する。
「はぁはぁ…ジュウ様のエクスカリバー…」
よだれとカウパーで口のまわりを汚すのも構わず、雨は奉仕を続ける。
熱く、弾む呼吸と舌がジュウに堪能の波を与える。
「ジュ、ジュウ様…も、もう、お慈悲を…」
「あぁ…」
ジュウはすでに腰砕け状態の雨の腰を支え、壁に手をつけさせ、無造作にそれを突き入れる。
「はっ…はっ…ジュ、ジュウ様、の、エクスカリバーがっ、わたしのっ、鞘にっ…!」
喜悦に歪み、獣のようにむつみ合う…だが、その時、事故が起きた。
「…あっ」
雨は濡れるフローリングに滑り、繋がった状態のまま頭を床に落としそうになる。
ジュウはそれに気づくも、突き入れたものを軸に回る雨を抱え、とっさに庇い一緒に倒れてしまう。
雨の下敷きになるよう体を反転させたが、人間1人を股関で支える事になってしまう。
「ぐっ…」
「ジュウ様!」
大丈夫ですか。そう、語りかけようとしたが、雨は言葉を失う。
繋がったジュウのあれが、折れ曲がっていたのだ。
「ジュ、ジュウ様のエクスカリバーが…!」
「…ぐぅっ…」
雨はジュウの応急処置をしながらも、あたりを見回し原因を探る。
床を見、足をとった正体を見る。
床を濡らす液体を指に取り、舐める。
「…これは、カリパー……」
2人の体液が、床を濡らす正体だった。
雨は、はっと気付く。
「もしや、エクスカリバーではなくエクスカリパー…?」
見つめ合う2人。
「「………」」
奇妙な静寂を、共に破る。
「「最強の剣じゃなかったのかーー!!」」
2人の慟哭は、闇へと溶けた…
終われ。

822:名無しさん@ピンキー
09/03/08 07:33:25 ik2xIHt1
俺がff5をやってる最中に…

823:名無しさん@ピンキー
09/03/08 19:50:48 XcbGJVvy
>>822
わかる人にもわからない人にも微妙なネタだったと反省した…自重するよ。

824:名無しさん@ピンキー
09/03/09 18:19:15 W0+plqYB
エクスかリバー!!!



ワロタw

825:名無しさん@ピンキー
09/03/09 18:44:59 DqY7F3iJ
カリパーじゃなくカウパーだった事に今更気付いたんだ…
ごめん。脳内変換で…

826:名無しさん@ピンキー
09/03/09 21:44:50 TuubHI8T
貴様!ここまで焦らすとは確信犯だな!

827: ◆JI6GRfrLos
09/03/09 22:57:54 DqY7F3iJ
>>826
かくしんはん
確信犯
自己の使命を確信して行なう犯罪.*思想犯や政治犯をいう.

つまり、すんどめ専門か。俺は。
―――
カリカリカリ。カッターナイフの刃を剥き、雪姫が殺気を解放する。
「刃物でわたしに挑む?馬鹿か」
薄く、冷たい。まさしく抜き身の刃の如く。
だが、対面する雨はどこまでも冷静だ。
「甘いのはあなたですよ。雪姫」
眉をひそめ、雪姫は雨を見やる。
「勝機があると?」
それに雨は行動で答えを示した。
ジュウの隣に移動し、雨は膝をつく。

そのまま、ジュウのズボンを下ろした。

「ジュウ様のエクスカリバーの前ではあなたも無力!雪姫。覚悟しなさい!」
「ら、らめぇぇぇっ!」
ジュウは腕時計を外し、手の甲先に巻く。思い出すのは、紅香から教わった自らより強い者より挑む時の心得。
「…おまえが、覚悟しろよ?」
―――
自重しきれなかった…

828:名無しさん@ピンキー
09/03/12 07:59:25 FDxPnXo1
ん、保守しとくか

829:名無しさん@ピンキー
09/03/12 22:44:35 QxGtfRI5
妄想日記は光より夕乃の方がしっくりくるんだけどな…
夕乃さん。原作でも『幸せ日記』なるものを書いてるんだし。
でも肝心の日記の内容が思い浮かばない。
短編なら
崩月家を訪ねた真九郎が偶然目にする

夕乃さんの溢れんばかりの愛が渦巻く日記展開。間は空白でラストの方に結婚後の性生活計画が事細かに。

呼びにきた夕乃さん。真九郎とっさに日記を隠す。

現実にして差し上げますからね。とぼそり。

みたいなのを書いてみたいけどネタに詰まる。

とりあえず紫たんとちゅっちゅっしたいお。

830:名無しさん@ピンキー
09/03/12 22:57:53 feJedszF
>>829
すげえ、違和感ねえw構成力あるよ

831:名無しさん@ピンキー
09/03/13 01:09:26 3tajeYAb
夕乃さん怖ぇw

832:名無しさん@ピンキー
09/03/13 11:51:44 Juwfdqwz
>>829
>妄想日記は光より夕乃の方がしっくりくるんだけどな…
それは確かにあるわぁ~

ぜひ書いてほしい

833:名無しさん@ピンキー
09/03/13 12:46:03 XRVEzpDO
紫たんとちゅっちゅっしたいお。には何ら反応がないこの食い付きが悔しい。

明日、ホワイトデーだし。そっちが書きあがったら頑張ってみる。宣言しといて全く書けてないから。
バレンタインネタは
型くずれした不器用な手作りチョコを真九郎に渡す紫。

かなり苦くとも、美味しいという真九郎。

紫はバレンタインには真九郎の為だけにチョコをあげると約束。

チョコは苦くとも、2人の関係は甘いんだぜ。
みたいな方がよかったかな…無理に逆チョコとかネタにするんじゃなかった。
…雨とジュウ様がいちゃいちゃするの書きたかっただけだから。

それにしても『幸せ日記』上で繰り広げる夕乃さんと真九郎の新婚生活か…夕乃さん。虚しい人だな…

834: ◆JI6GRfrLos
09/03/16 06:39:29 fTOgItj1
わたし「ジュウ様。ホワイトデーのお返しを作製致しました。一品一品、わたしの深い念を込めた力作です」
ジュウ様「あぁ有り難くいただくよ…うまい!うますぎるぜ…!
ビタースイートな深い味わいの中に隠されたこの絶妙な甘み!そしてコク!一体何を入れたんだい?」
わたし「ジュウ様への、愛を…」
ジュウ様「雨…そんなおまえにふぉーりんらぶだぜ…」
わたし「わたしも…いつでもジュウ様にラブ全開です」
ジュウ様「おっと、こんな所にも甘そうなすぃーつが…」
わたし「い、いけませんよ…ジュウ様…こんなところでっん…!」
重なり合う二つの影。優しい日溜まりが、2人を祝福していた…
堕花雨先生の次回作に御期待下さい!

――――

「と、なる筈だったのですが…」
妄想から帰還を果たした雨は現実の厳しさを体感していた。
凄惨たる現状の台所を見て、これは困りましたね。と他人事のように呟いてみる。
実際、その光景は凄まじかった。
鍋からは紫と黒と白が得体の知れないしま模様を浮かべ、火もついていないのにぶくぶくと泡を吹いている。
何故かまな板は真っ二つになっており、ひとつには折れた包丁の刃先がつきたっている。
洗い場は失敗した食材を直接流そうとした為におどろおどろしい液体が水の底にヘドロのごとく渦巻いている。
料理が苦手である事は自覚していたが、作らねばならない理由があった。
ジュウからバレンタインの贈り物をもらって早1ヶ月。
そしてこれは、ホワイトデーにお返しを作ろうと雨なりに努力した結果だ。
「………」
既に今日はホワイトデー当日。
前日から取り組み、母の薫子や妹の光の手伝いも断り懸命に試み…撃沈した。
これは、どうしましょうか…以前ジュウ様にお弁当を作った際も似たような事があった気がしますが。
たとたとと、誰かが近付いてくる。
「お姉ちゃん?もしかしてずっとおき、て………」
「おはよう。光ちゃん」
「う、うん…おはよう。あの…これは…」
「ジュウ様にお菓子を作ろうとしたのだけれど…」
手を口にあて、困ったように首を傾げる。
「……か、完成は、したの?」
今日は朝食の用意を光は頼まれている。
台所が使えなくとも用意は出来るが、せめて昼までには片付けないと困るだろう。


835: ◆JI6GRfrLos
09/03/16 06:40:46 fTOgItj1
「一応、一品だけは出来たけど…」
す、と指差した先には、溶けたチョコレートらしきもの。多分、チョコレート。
だが、根本的に何かが違う。甘い香りの白みがかった茶色の液体
まるで魔女の秘薬のような、多分きっとチョコレートをさして、雨は言った。
「アレしか出来なかったの…チョコレートフォンデュ」
あれが?!と思わず喉を通りそうになったが、光はこらえた。
大好きな姉が作ったものだ。食べろと言われたら全力で拒否させてもらうけど。
内心を顔に出さぬよう注意を払い、光は何とか言葉を発することが出来た。
「…あいつ、気にいるといいね」
「えぇ…」
頑張れ。柔沢ジュウ。でもお姉ちゃん泣かしたら、承知しないぞ。
そんなエールを光は心の中でジュウに送り、台所の片付けに入った。

――――

男には、やらねばならない時がある。
「ジュウ様…その、無理をなさらずに…」
「いや、有り難くいただくよ…」
雨がホワイトデーのお返しに、とお菓子を作ってきたのだが随分と言いよどむので促した結果が、目の前にある。
ジュウは数分前の自分を殴り飛ばしたくなったが、一度言った手前どうしようもない。
立ち上る香りに脂汗が浮き、顔が引きつる。震える手を抑えつけ、ビスケットをチョコレートらしき茶色の液体に近付ける。
その液体は何もしていないのに渦を描き、時折甘い臭いの気泡を吐き出している。思わず、手が止まる。
その異様な様は、既に人が踏み入れてはならない領域だろうと思った。
これを食べるのか…料理が苦手だったと聞いていたが、ここまでとはな…
だが、雨の申し訳なさそうな顔を見ると既に後には引けない。
ホームメイド兵器にビスケットをつけ、上げる。糸を引くチョコレートフォンデュ…らしきもの。
男らしさってなんだ?
それは惚れた女に聞くことだ。
意を決し、ビスケットを口に含む。
ジュウが覚えていたのは、其処までだった。

―――
まで書いて、オチが思い付かなかった…

836:名無しさん@ピンキー
09/03/16 21:34:18 J+me/Y8B
つづきはファンブックですね

837:名無しさん@ピンキー
09/03/17 06:56:35 +5D/w3o0
ここまででも面白いものは面白い。良かったぜ!

838:名無しさん@ピンキー
09/03/22 01:21:05 A8P2yL1j
酔った勢いでヤっちまう真九郎×環さん(処女)てのが燃える

839:名無しさん@ピンキー
09/03/22 20:19:39 i1s7TdVD
新刊まだかな……

840:名無しさん@ピンキー
09/03/22 22:30:23 JaARv23K
酔った勢いでヤっちまう真九郎×絶奈(処女)てのが萌える

841:名無しさん@ピンキー
09/03/22 23:03:19 iAQFTAL6
なんかの勢いでヤっちまう真九郎×切彦(処女確定)てのが極萌

842:名無しさん@ピンキー
09/03/23 08:34:05 1iJw0kgt
勢いでなくともヤッちまった光ちゃん

843:名無しさん@ピンキー
09/03/24 22:48:03 KnNKXWCb
>>842
ははあ、殺ッちまったわけですね。

844:名無しさん@ピンキー
09/03/26 17:26:13 x0i0qJtG
保守。

845:名無しさん@ピンキー
09/03/26 22:31:43 abypJZ5k
酒乱なんてどうだろうか

846:名無しさん@ピンキー
09/03/26 22:46:28 sEfhYnBk
いつかみたいに真九朗の部屋でナベやってて、環さんが酔った勢いで真九朗に酒を飲ませて
二人とも酔っちゃって、みんなの前でなにやらイチャイチャし始めるのか。
…夕乃さんがその場にいなければいいね。

でも夕乃さんなら、そこから真九朗は酒に弱いということを学び、また何か仕掛けてきそう。

847:名無しさん@ピンキー
09/03/26 23:03:14 v4j5V58L
アルコールを大量に投与された真九郎が絶奈とパラダイス

848:名無しさん@ピンキー
09/03/27 01:33:06 5B5mWmgU
>>847
むしろ飲み過ぎて起きなくなった息子を絶奈さんが散々罵倒した後、酒が抜けてきて力を取り戻した真紅朗に先ほどの罵倒のお返しを・・・と言われてハイパー真紅朗タイム

849:名無しさん@ピンキー
09/03/27 02:03:22 sFdw1jhP
「どうしたんですか?今日はお酒全然飲まないですね」
真九郎が訊ねると絶奈は甘い顔で真九郎を見つめる。
「あれ以来、お酒より君のが欲しくてたまらなくなっちゃったの…」
酒を飲んでもいないのに頬を赤く染め絶奈はそう答える。
「……俺のナニが欲しいんですか?はっきり言ってくれないとわかりませんね」
「もう…君って見かけによらず意地悪…キャッ!?」
唐突に真九郎は絶奈を押し倒す。
「やっぱり、もどかしいのはなしにしますよ。今日は俺も溜まってますから…」
「君って本当に自分勝手ね…好きにしていいから優しくしてよ?」
真九郎は小さく頷くと絶奈の体を本能のままに貪り始めた…。

――――――――――――

時間も無けりゃ、文才も無い!これが俺の限界!

850: ◆JI6GRfrLos
09/03/27 02:51:38 ggFXN3GQ
>>849
やるじゃねぇか…
―――
絶奈の両の手首を片手で握り、頭の上で押さえつける。
お酒以外の理由で赤く、甘く惚けた顔をじっくり眺める。
空いた片手で絶奈のネクタイをまくりあげ、ブラウスのボタンに手をかける。
「…ネクタイは…」
外さないのか。そう問いかける言葉を唇でふさぎ、唇から耳まで舌でじっとりなで上げ真九郎は囁いた。
「ネクタイはつけたままにしておきますよ…似合ってますよ。バカっぽくて」
嘲笑、嘲り、侮蔑。
それらを多分に含んだ言葉に絶奈は興奮に震える。
「本当に…気持ちの悪いマゾですね」
人差し指でブラウスのボタンに指をかける。
いつかのような、防刃・防弾性能に優れた服ではない。
2~3回洗えば生地はダメになるような安っぽいもの。
下まで軽く振り下ろすだけで全てのボタンがはじき飛んだ。
「んっ…」
羞恥と媚びをはらんだ目に、真九郎のモノも首をあげる。
「さて…まどろっこし真似はしませんからね」
そのままスーツのパンツの又布部分を手で握り引き千切る。
何も生えていない幼い恥部が外気にさらされ、千切れた又布からは銀の糸が引く。
触られもしていない絶奈の女は濡れひょっこりと豆が覗いてる。
ネクタイはしめたまま、ブラウスの前だけ開き、ズボンは又布だけ破られ隠すべき所は全てを晒している。
M字開脚のように足は開かれ、無様に息を上げる。
見下ろす真九郎は何も言わない。
「真九郎くん…はやく…きて」
切なさが混じる懇願に真九郎は唇を釣り上げる。
腕を振り上げ、さらけ出された恥部に拳をうちすえる。
がっがっ…と割とシャレにならない打撃音を響かせてもその程度の刺激は絶奈を興奮させるだけだ。
それは2人にのみ許される前戯。
赤く色付く恥部はしとどに濡れ、うちすえる真九郎の拳をも濡らす。
絶奈はされるままになり、息を上げる事しかしない。
数十発撃ち込んだあたりで真九郎は膝立ちから立ち上がり絶奈の脇腹につま先をいれ、転がす。
声も上げずに、うつ伏せになった絶奈は真九郎を見上げる。
「マグロなマゾをいたぶるだけじゃ、飽きますからね…」
しめられたままのネクタイを掴み、きつめにしめ顎を上げさせる。
リードのようなネクタイ。全開になっている服。
絶奈の目に映る。屈辱、羞恥、期待、困惑。それらは混ざりあい、大きな光彩には欲情し濁る。
真九郎は意識して高圧的な声音を作る。
「しゃぶれよ?」
――
本番って難しいよな…

851:名無しさん@ピンキー
09/03/27 03:01:00 ggFXN3GQ
>>849
ごめん。続き勝手に書いちゃって…しかもトリつけちゃったし…
これ、続けていいですか?

852:名無しさん@ピンキー
09/03/27 03:02:39 9+vP52Ny
こんな時間だからこそ覗いてみるもんだな…
>>849>>850
GJ!

853:849
09/03/27 03:15:50 /+pKI5ld
>>851
ああ、全然構いませんよ。むしろお願いします!!

854:名無しさん@ピンキー
09/03/27 07:35:55 P9GrKcv/
神はまだスレを見捨ててはいなかったようだ。
続き楽しみにしてる。

855:名無しさん@ピンキー
09/03/27 08:42:54 jFfKZm2/
待ってるぜ…!

856:名無しさん@ピンキー
09/03/27 17:34:36 ggFXN3GQ
保管庫をちょっと編集してみた。
ごめん。ルール全然読んでなかった…ぶっちぎってすんません…
来週。改めてちゃんと編集するので。

>>852-855
続きは夜までに頑張ってみる…つい勢いで書いちゃったから…

857:名無しさん@ピンキー
09/03/27 19:52:47 aIxEBxSr
めっさ頑張れ

858:名無しさん@ピンキー
09/03/28 01:06:03 Oi061Uq7
えーと、酒乱(?)的なヤツを電波で書いてみた
文才なくてすまない
盛大にスルーしてくれ

―――――――――

 ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴って、ジュウはテレビから視線を剥がした。
「……もうきたのかよ」
 今日、柔沢家には来客の予定があるのだが、こんなにも早くくるとは思ってもいなかった。
 返事をしつつも鍵を開けると、勝手にドアノブが動く。それと同時にものすごい勢いで扉が開いた。受け止める手が痛い。
「こんちわー」
「お邪魔します」
 入ってきたのはジュウの数少ない友人のうちの二人―斬島雪姫と墜花雨だった。
「……おう」
 前者は明るく、後者は静かに。そんな正反対の二人をジュウは招き入れた。
「いやー、もうすっかり秋ですなー」
 雪姫は苦笑いしつつも、靴を脱ぎ始める。雪姫はもう秋だというのにTシャツの上に薄いパーカー、下はミニスカートにハイソックスという格好。寒くないのだろうか。
そんな雪姫を見ていると、ジュウはあるものに気がついた。雪姫が後ろ手になにかもっているの。それは彼女の肘から手首までぐらいのながさの長方形のものだった。
 ジュウはたずねてみる。
「雪姫。それなんだ?」
 雪姫は靴をそろえている手を止め、少し苦い顔で振り返る。そしていつもどおりのテンションでジュウに返した。
「ありゃー、ばれちったかー」
 隠す気があったのかよ。雪姫は、んーあとにとっときたかったんだけどな、などとつぶやいたあとジュウの目の前にそれを差し出した。
「ジュウ君、おたんじょうびおめでとー!」
「…………」
 ジュウは固まってしまった。よく自分の誕生日を忘れるといった話を聞くが、ジュウは違う。忘れたことなどない。その原因というのはまた後で話すとして、ジュウが驚いたのは別のことだった。
 綺麗にラッピングされたプレゼントを受け取り礼を言いながら考える。
 なぜ雪姫がそのことを知っているのか。教えた覚えはない。この訪問を仕組んだのは雨であり、雨なら知っていてもおかしくはないと思うのだが、それを雪姫に教えるだろうか。
 仮にも彼女はジュウの下僕を自称しており、そんな雨が主の情報を他人にながす、なんてことはしないだろう。
「柔沢くん、あけてもいいよ」
 雪姫の声で思考が途切れた。
「ん、ああ」
 ガサガサ、とラッピングをはがし、出てきたものにジュウは唖然とした。
 芋焼酎さくら。
 つまりは酒が入っていたのだ。こいつ……。
「……お前今何歳だ」
「十七」
「よく買えたな」
 雪姫は得意顔。
「まぁねー」
 どうせコイツのことだがらネットででも買ったのだろうか。なんて考えていると雪姫は
「大佐っ、これよりジュウ君家に潜入します!」
 とかなんとかいってまるで自分家であるかの様に中へ入っていってしまった。玄関には雨とジュウが残る。
「……俺らも行くか」
「はい……あの、その前にすこしよろしいでしょうか」
「ん?」
 雨はさっきから腕につるしていた紙袋からひらべったい箱を取り出し、ジュウにを差し出した。
「お誕生日おめでとう御座います、ジュウ様」
 雨は言い終わると少し蒸気したように顔を下に向けた。
「おう、サンキュな」
 ジュウは箱を受け取ると、雨の頭の上に手を載せ少しなでる。さらさらとした感触が心地よかった。やつもどおりである。
「これあけてみていいか?」
 雨にたずねる。
「ジュウ様のお好きなように」
 そういって雨は靴を脱ぎ始めた。彼女なりのテレかくしなのかもしれない。箱の中身は壁時計だった。そういえば、と部屋の時計が壊れていたことを思い出す。でも、待て。さっきの雪姫と同じ疑問が浮かぶ。
 なぜ知っているんだ。
「さ、私たちも行きましょう、ジュウ様」
「……ああ」
 雨はそそくさとリビングへ向かってしまった。

859:名無しさん@ピンキー
09/03/28 01:11:40 Oi061Uq7
 ジュウが雨からもらった時計を部屋にかけてからリビングに行くと、それと同時にキュポッという音が鳴った。
 みると雪姫がテーブルの上でビンの蓋を開けていた。ジュウはあわてて声を上げる。
「なにやってんだよお前」
 雪姫は戸棚から取り出したであろうお猪口にそれを注ぐ。
「だってここにあったんだもん」
「自分家か! お前は!」
「まぁまぁ、終わったことは気にしないの。ささ、一杯どうぞ」
 雪姫は並々注いだお猪口をジュウの口元に押し付けた。それを傾けられて、ジュウは否応なしに口に含んでしまった。
 それ、というのはお酒だった。
 ジュウは誕生日を忘れないというのには理由がある。毎年紅香がジュウの誕生日にアルコール類をどこかのホテルの住所から送ってくるのだった。去年はワイン、今年は―。
「ぷはー、やっぱ日本酒はいいねー」
「ですね。甘くて好きです」
 雨お前までなに始めちゃってるんだ。
 今年の紅香からの贈り物は日本酒だった。
「まて、お前ら。勝手に飲むなよ!」
「えージュウ君だってのんだじゃーん」
 雪姫は口を尖らせる。
「……あれは不可抗力だ」
 雪姫と言い合っていると、雨が口を開く。
 ジュウ様、今日ぐらいはいいのではないでしょうか? 明日は日曜日ですし……」
「だけど……」
 雨はジュウの声をさえぎった。彼女にしては珍しい行為だった。いささか、早くもよっているのかもしれない。
「それに私、お酒に自身はありますし。ジュウ様もおありでしょう?」
 もう酔ってんだよお前は。
 でも、なぜか雨が言う言葉には説得力がある。それにさっきの酒は結構美味だったことを思い出す。
 ジュウは中で生理的な欲求、つまり美味を求めるという人間としての欲求と、未成年のくせに酒はだめだ、という正義感が戦った。
 なんとか均衡を保っていたのだが、それは雪姫によって崩された。彼女はまたジュウの口元にお猪口をつけたのだ。そして傾ける。口に流し込まれる甘い液体にあと押しされ、ジュウの正義心は敗北を決した。雨もいるし大丈夫だろう。そんなこんなでジュウは折れてしまった。
「さぁどんどんのみましょー」
 それを後悔することになるなどこの時は知る由もなかった。

 *

 目を覚ますと、しっとりとした黒髪があった。それが雨のものであると気付くのに数秒かかったことからまだジュウはよっているのだろう。寝ちまったか。
 と、そこでふっと思う。なぜこんな間近に雨が?
 横を見ると、雨がジュウの肩によりかかって、寝息を立てていた。その寝顔に少し見とれつつも、あわてて座っていたソファから飛びのく。雨は重力にしたがってソファの上にぽてりとおちる。しかし起きる気配もなく、規則的な呼吸を雨は継続していた。
あたりを見回すと、かなりアレな状態だ。
テーブルの上は酒瓶が五本転がっていて、いずれも中は空。調子に乗って紅香から送られてきた日本酒四本プラス雪姫の一本を空けて……。そこで、ん? と気がつく。
 雪姫は?
 玄関までいってみると、雪姫のはいていたスニーカーがなくなっていた。家中を見て回っても人の気配がないことからとりあえずは帰ったみたいだ。
 まあ寝た俺も悪いのだが、勝手に帰りやがって。
 ジュウはリビングに戻った。その瞬間むせ返るようなアルコール臭に思わず懸念するも、とりあえず酒瓶をまとめ、廊下に出し窓を開ける。これだけでかなり快適になった。
 俺もよくこんな中で寝られたと思う。そしてふと雨のほうへ目をやった。こいつもだけど。
 雨を眺めつつ、テーブルの上を片付けた。食器を水洗いし、台拭きでテーブルを擦る。
 酔いつぶれた客と従業員って感じだな。片付けが終わると、ジュウのすることは残り一つとなった。

 雨を起こす

 だ。
 ジュウが動き回っている間にも普通に寝ていた彼女を起こすのはかなり難しいと思う。
 とりあえず、肩に手をかけて揺すってみた。―反応ナシ。
 もう少し強めに揺する。―反応ナシ。
 今度はかなり強めに揺すって、声も掛けてみる。
「おい! 雨!」―少し唸ってみせるも、その後反応ナシ。
 はぁ、とジュウはため息をつく。依然として前髪の隙間から見えるまぶたは閉じられていて、正座を崩した―いわゆる女座りのまま横に倒れている。
端からみたら結構危ないシーンなんじゃないか。そんなことを考えてしまい、ジュウは頭を振る。まだ酒は抜けてない。抜けるわけないが―。
 ジュウは最終手段に出ることにした。


860:名無しさん@ピンキー
09/03/28 01:13:27 Oi061Uq7
「……ひっ……ぁ…」
 雨の口から言葉にならない声が漏れる。
 最終手段はうまくいった。
 あの後ジュウがまず行ったのは冷蔵庫へ行くことだ。正確には冷凍庫に。そこから氷を二つ取り出し、一つは口に放り込むと、もう一つは―。
 雨の首筋に当てた。うめき声を上げた数秒後。静かにまぶたが動き、その澄んだ瞳が光りを映す。
「ジュウ……さま? ……ひぁっ……」
 そこで冷たさに気がついたらしく、また悲鳴が上がった。
ジュウはすっかり氷をつけていたことを忘れていた。指先や口内の冷たさも酔いもすべて吹っ飛ばしてくれるような光景。ただ起きるだけのその光景が大地の芽吹きのように感じられたのだ。
 ……酔ってるな。
 ジュウは氷を首筋から離す―と同じ瞬間に雨は上体を起こした。起こした……。
 つるっ、と擬音のごとく氷が滑り落ちる。それは運悪く体を起こした雨の背中に入る。
「あっ……ひっ……」
 雨は弓なりにのけぞる。さらに両手を背中に総動員させて氷を取り除こうとしていて―
 端的に言うと、雨は立ちひざで両手を後ろにまわして胸を突き出していた。顔は酔っているのか高潮していて、来ている制服も寝起きのため少し乱れている。
 ジュウはやっと氷を取り出した雨の肩に手を乗せると、ぐいと引き寄せた。
 雨の手から氷が転り落ちた。
「ジュウ……様……」
 雨が驚いたようにつぶやく。その声が、鼻に入る雨のにおいが、すべてが愛おしく思えた。ジュウは雨のふくらみに手を這わす。
「―!」
 そのまま回すようにして愛撫する。
「……っはぁ……くっ」
「雨―」
 ジュウはそのまま深く唇を奪った。
 口内をなぞり挙げるうちに雨の嬌声が激しくなる。
 ジュウは雨の制服に手をかけた。
 ブレザーを脱がすと、その下は黒いチューブトップ。その黒の中に、山が二つ自己主張するように立っていた。
 ジュウはそこを指先ではじく。
「……んぁ……っ!」
 雨はいっそう声を上ずらせた。
 その姿がまたかわいらしく、ジュウはまた唇を奪う。深く、丁寧に。それと同時に黒い布をめくり挙げた。
 初めて見る、異性の胸元。もちろん、親族以外の、だ。
 ジュウは乳首をつまむ。そのまま軽くひねった。
「ん……あぁ……くぅ」
 サイズはやや控えめだが形の整ったそれに愛撫を加えながら、手を下へ伸ばす。雨はそれに気がついたらしく、少し足を動かして恥じるようなことをしつつも、ジュウが太ももへ手を伸ばし少し揉んでやるとすぐにひらいた。
 恥じることも、欲することも恋しい。ジュウは唇を這わせる―今度は右胸に。雨は少し甲高い声を上げる。
 彼女の秘所はもう十分の湿気を帯びていた。口で右の乳首をむさぼりつつ、左手でもう片方、そして右手は秘所を。


861:名無しさん@ピンキー
09/03/28 01:14:24 Oi061Uq7
 ワレメに沿って、指を動かす。それだけで雨は熱を帯びた声をいっそう高くした。
 乳首から顔を離すと、両手で雨の足をつかむ。それだけで察したのか雨は体制を変えた。足をそのまま持ち上げ、上体のほうへ。いわゆるまんぐりがえしというやつだ。
 もはや意味をなくした下着を取ると、雨のあそこが見えた。指でぱっくりと割る。
「……ぁ……」
 小さく漏らす雨。ジュウはじっとそれを見ていた。ただ呆然と。膣周辺がぱくぱくと動いていて、愛液で光って……。
 じっと眺めるジュウに雨は羞恥を覚えたのか、声を上げる。
「ジュウ様……あまり……その、見ないでください……」
 しかしジュウは反応しない。顔が近いのか、ジュウの呼吸がモロに伝わってくる。雨は少し悶える。多分私のあそこは延々と液を流しているんだろうなと思うとそれが羞恥に変わった。自分でもわかるくらい顔が高潮している。雨は再び声を上げた。
「ジュウ……さま」
 ジュウはそこでやっと気がつく。
「あ……悪い」
 お詫びに雨の薄い唇に一つキスを落とすと、手をそこの突起へのばした。
「はっ……くっ……!」
 しばらくぐにぐにともてあそぶ。中指と人差し指でクリトリスをはさみ、ついでに親指で膣口を擦る。トドメとばかりに開いている手で尿道を押した。
「あ……あぁ、ぁあああ!」
 雨が弓なりにゆれる。
 達した雨は、はぁはぁと息をきらし、残る快楽に悶える。
 ジュウは雨をそっと後ろから抱き寄せた。
「……ぁ」
「……雨……その……いいか?」
 確認を取るあたり自分は不良とかけ離れているんだろうな。
 雨はコクリとうなずいた。ジュウはジッパーを下ろし、ブツを取り出すと、向かい合うように雨を回転させる。
 そして―



 総じて言おう。酔っていたのだ。

お互いに。


862:名無しさん@ピンキー
09/03/28 01:21:48 FU3SYfZ3
支援

863:名無しさん@ピンキー
09/03/28 01:24:01 Oi061Uq7
>>856
割り込んでごめん
続けてくれ

864:名無しさん@ピンキー
09/03/28 02:03:03 FU3SYfZ3
>>863
いや、日にち跨いでるんだから謝るなら俺の方なのに…ごめんなさい。

ところで、伏線バリバリはってるんだし、続きあるよね?

865:名無しさん@ピンキー
09/03/28 10:32:02 dslTepTf
>>861
投下乙です。でも投下終了宣言とsageはしてほしかったり。

866:名無しさん@ピンキー
09/03/28 13:05:42 Oi061Uq7
続きは妄想に任せるよw

>>865
サーセン
今後気をつけます

867:名無しさん@ピンキー
09/03/28 13:21:42 ZrMW67vo
>>858-861
熱烈にGJ!!!!!!!!!


868:名無しさん@ピンキー
09/04/01 23:46:45 sqX2x255
保守

869:名無しさん@ピンキー
09/04/02 03:02:32 IwFMybi8
電波はTVアニメなのか

SS書きが増えるといいな

870:名無しさん@ピンキー
09/04/04 15:49:25 jywUzt4r
紅みたいにならない事を祈る…
いや、決して紅が駄目だったと言ってるんじゃないんだ。
別物としてならうんぬんかんぬん

871:名無しさん@ピンキー
09/04/10 16:30:06 IaKHtrm8
新刊もなく今月はマンガも休載……

俺干からびるお……(’A`)

872:名無しさん@ピンキー
09/04/10 16:41:41 w4xlfbcw
餓えた分、来月頭の単行本+SQ本誌が嬉しいんじゃないか。
夕乃さんの書き下ろしと出番が沢山ありますように・・・

873:名無しさん@ピンキー
09/04/10 20:35:20 ocnJQA0N
環さんのセクシーンがほしいわ

874:名無しさん@ピンキー
09/04/11 00:23:36 z+BbYe7i
俺は闇絵が

875:名無しさん@ピンキー
09/04/11 01:57:24 EDoTuIyR
紅の紫の寝取られって何処にあるんだ?

876:名無しさん@ピンキー
09/04/13 01:39:56 O5sFyp3Y


877:名無しさん@ピンキー
09/04/13 02:42:01 rflXrhqz


878:名無しさん@ピンキー
09/04/13 17:42:46 jF8BjDOD


879:名無しさん@ピンキー
09/04/14 23:25:15 sQItRqj/


880:名無しさん@ピンキー
09/04/16 02:41:41 wSiRzw1e


881:名無しさん@ピンキー
09/04/16 03:33:52 67hpVXXf


882:名無しさん@ピンキー
09/04/16 03:49:54 6myw+QRv
「真九郎さん、児童ポルノ法ってご存知ですか?」
「へ?夕乃さん?なんですかいきなり」
「小さい女の子の写真なんか持ってると逮捕されてしまうんですよ」
「・・・え?」
「だから、真九郎さんがあらぬ誤解で逮捕されないように、とてもいいものを準備したんですよ?」
「夕乃さん?その写真の束はなんなんですか?」
「・・・すごく恥ずかしかったんですけど・・・真九郎さんのためですから」
「へ?」
「私の…裸を誰かに見せるなんて、子供のとき以来なんですから」
「ちょっ・・こ、この写真って!?」
「お巡りさんに捕まりそうになったらこの写真をみせて下さいね」
「・・・」
「あっ、でも、そうしたら私の裸が真九郎さん以外の男の人の目に触れてしまいますっ!どうしましょう!?」



いやその、どうしましょうといわれても

883:名無しさん@ピンキー
09/04/16 07:39:13 Ig+N7As4
>>882
GOOD YUNO!

884:名無しさん@ピンキー
09/04/16 13:02:14 uMUG6HM5
>>882
これは良い夕乃さんw

885:名無しさん@ピンキー
09/04/16 18:32:08 GjpSLPhY
夕乃でも児ポ法に引っかかる気がする

886:名無しさん@ピンキー
09/04/16 18:36:07 f1BZRyuQ
というか変質者ですがな

887:名無しさん@ピンキー
09/04/16 20:23:27 oCUCkTmk
>>885
夕乃さん「"夕乃さん"、だ。豚が…」

888:名無しさん@ピンキー
09/04/16 21:28:06 UuMooAZM
夕乃さん写真くださいよ

889:名無しさん@ピンキー
09/04/18 15:56:33 7WNV4bIt
小ネタ的な何か

―――――――――
「なあ銀子」
「なによ」
「銀子っていつからメガネかけ始めたんだ?」
 ここは新聞部部室。放課後の一時、なにもすることがない真九郎はなんとなく銀子に話しかけてみた。キーボードの音が止まる。
 ふと気になった、そんな感じだ。
「アンタに会う前から」
 銀子はそっけなく答え、再びキーボードを叩き始めた。
「そうか……」
 再び沈黙。カタカタとリズミカルに鍵盤の音がする。なんとなくいつも聞いてるそれも、最近になって、すごいことなんだなと思う。
 というのもこの前授業で―存在をはじめて知ったのだが―コンピュータールームでバソコンを使ったのだが、この数えるほどしかそれを触ったことの無い真九郎には何がなんだかわからない状態。
 銀子は課題のタイピングを3分くらいで終わらせていたが、真九郎は終わる気配すらなかったのだった。
どれくらい経っただろうか。
タンッ、とキーをはじくような音がして、銀子のイスが回転した。
「たしか2歳のころだった……」
「は?」
「これよ」
 銀子は自分のメガネを指す。
「ああ、それか……」
「自分からふった話題なのに素っ気ないわね」
「悪かったな」
 銀子は少し笑った。つられて真九郎の頬も緩む。
「で、どうしたのいきなり。これがそんなに気になる?」
 真九郎がたじろぐ。
「え? いや、なんとなくね」
 銀子はメガネを指で挙げる。
「なに、アンタメガネ属性でもあんの?」
「めがね……ぞくせい?」
 初めて訊いたワードのように繰り返す真九郎に銀子は声色を落としてつぶやく。
「……なんでもない」


890:名無しさん@ピンキー
09/04/18 15:58:23 7WNV4bIt
「なんだよ」
「なんでもない」
「な……」
「なんでもない」
 押し切られた。そんなにまずいのだろうか。それから少し沈黙があって、銀子が口を開く。
「……メガネ好きなのかってこと」
 そういう彼女の頬は少し赤かった。
「メガネか……好きとかそういうのはないかな……」
「……そ」
 はあ、と銀子はため息をついてしまいそうになる。でもそれをしまいこんで、もう作業の終わったパソコンに向かった。
 しばらく適当にカタカタやっていると後ろから声がする。
「でも……」
「―?」
 振り返ると真九郎が苦笑いで言う。
「たまにメガネかけてる芸能人とか見ると、銀子のほうが似合ってるって思うな……」
 ははは、と無邪気に真九郎が笑った。



「……バカ」


―――――――――
終了
正直もう分けわかんなくなってきた

891:名無しさん@ピンキー
09/04/18 19:16:37 hjpH4nzT
いや~、真九朗ならありそうでこまるwww
GJ

892:名無しさん@ピンキー
09/04/18 19:30:44 zSctOoNh
Good Ginko

893:名無しさん@ピンキー
09/04/18 21:36:49 nJ8Qv01r
>>892
GG!

しかし、銀子には性欲湧かんな…やっぱ眼鏡は(ry

894:名無しさん@ピンキー
09/04/19 02:09:24 BB/IHs69
最近知った俺にとっちゃ銀子は貴重なツンタイプ

895:名無しさん@ピンキー
09/04/19 02:40:19 skhC8a/Q
真九郎はナチュラル女殺しだなしかし

896:名無しさん@ピンキー
09/04/19 05:58:44 WuRB6+th
……いやらしい

897:名無しさん@ピンキー
09/04/20 22:44:01 ZxMY59Aq
デレ分の多いツンだな

898:名無しさん@ピンキー
09/04/21 01:33:04 qZ7qHlOi
URLリンク(sukima.vip2ch.com)

899:すれ違い
09/04/21 19:08:41 8wfdJ1Lu

更新されないのが寂しいので書いてみました。
電波も紅も久しぶりすぎてキャラがイマイチ掴めていません。
特に雪姫の言動が全然わからない。
その辺はご容赦ください。
あ、エロはありません。

―――――――――――――

「うめ~、これやっべぇ、惚れ直した!おまえの料理毎日食わせてくれ!
 雪姫、結婚してくれ~!!ってちゃんと言うんだよー。
 きゃっ、そんなに顔を赤らめちゃってー、照れちゃった?」

『愛する彼氏にあなたの料理』という本を読みながら雪姫は元気良く言い放った。
一応、照れているフリをしているようで、クニクニと身じろぎしながら
両手を頬に当てて、ブリブリしている。
さっき買ったばかりの本を熟読しながら歩いていた。

「何言ってんだか。」

軽口に付き合うことなく、隣を歩いている男が呆れている。
金色の髪も色素の濃くない顔も夕陽で赤く染まっていた。
買い物帰りのようで、右手にはスーパーのビニール袋を持っている。
中には夕食の食材が入っているようだ。

「一度カップルになった仲じゃない。もうすぐ結婚だね!
 団地妻だ!子供は三人!目標達成までもうすぐだね!ジュウ君!
 優しいケンカ、いっぱいしようねー!」

満面の笑顔を作りながら、恥ずかしげもなく弾んだ声で言い切る。
意味は不明だったが、ジュウには嬉しそうにしている雪姫の顔が赤く染まったように見えた。
気のせいか。

「なんだそれ。」

ジュウは小さく呟きながら、思い出していた。
あの時は確か雨も一緒に三人で甘いものを食いにいっただけのはずなんだか。
雪姫の相手をするのがめんどうになったのかジュウは「はいはい」と適当に相槌を打っている。



900:すれ違い2
09/04/21 19:10:59 8wfdJ1Lu

しばらくすると見覚えのある制服を着た美少女と地味な格好をした青年が前から歩いてきた。

美少女の方はジュウたちと同年代のようたが、大人びた凛とした雰囲気を持ち、
透明感のある肌に整った顔立ちをしていた。
風になびいた長い黒髪を左手で押さえている仕草が異様に絵になっている。

ズボンのポケットに左手を入れながら歩いている青年はいかにも優しそうな顔立ちをしていた。
背はジュウよりも少し低いくらい。
童顔で年齢はイマイチわからない。
少なくともジュウたちよりは上だろう。
半そでから出ている右腕の肘の辺りに大きな傷跡が残っているのが印象的だ。

二人とも笑顔で愉しそうにしていた。
周りのことはあまり気にしていないようでジュウたちにも気が付いていない。
そのまま通り過ぎようとした時、ジュウは目線を向けられた気がした。

「あっ、待って待って。
 あの、突然で悪いんだけど、
 もし良かったらその腕時計少し見せてくれない?」

いきなり横から声をかけられる。
前から歩いてきた青年がすれ違いざまに訊いてきたようだ。
頼りないような申し訳なさそうな顔をしている青年だ。
単に時計に興味があるのだろうか。
ただ、どう見ても悪い奴には見えなかった。

振り返りながらジュウは訝しげな表情を浮かべ、少しの間青年を眺めてから腕時計を外す。
青年は、ジュウの目つきの悪い目線にたじろぎもせずに屈託のない笑顔で佇んでいた。
右手に持っているのは紙袋で中には野菜や肉がたくさん入っているようだ。
誰かにもらったのだろうか。
その少し間抜けな格好に共感を覚える。

「ほらよ。」

なんの感慨もない様子で外した腕時計を軽く投げて渡されたことに
青年は驚きながらも落とさないように左手で受け取った。
オーダーメイドの特別製。
シンプルなデザインをしていて、誰が見ても高価なのものだとわかる腕時計だった。
文字盤の裏に『J.J』と彫られている。
雑に扱われているのだろうか小さな傷がいくつもあった。

青年は興味深く腕時計を見ている。
そうとう好きなのだろうか。
渡してすぐになぜか真剣で、どこか懐かしいような目をしたようにも思えた。
が、のほほんとした雰囲気は変わらない。

「へぇ~、やっぱ良い腕時計だね。
 でも、出来ればもっと大切に扱ってあげてほしいな。」

腕時計を武器として使っているジュウの耳にはイタイ言葉だ。
青年は気の抜けた声で話しかけてくるが、どこかショックを受けているようだった。
ジュウは腕時計を返してもらうとすぐに左手首につける。

今まで黙って隣にいた雪姫が急に意地の悪い笑顔になった。
何かを思いついたようだ。

901:すれ違い2
09/04/21 19:13:10 8wfdJ1Lu

「あの、こんにちは。わたしは斬島、あ、いや、柔沢雪姫。
 こっちは柔沢ジュウ君ね。
 おにーさんは?」

雪姫は微笑みながらそんなことを言う。
自己紹介をするというより、自分の名字を『柔沢』と言いたいだけらしく、
隣にいるジュウのことをからかっているようにしか見えない。

「あ、俺は…。えっ、斬島?じゃあ、切彦ちゃんの知り合い?」

明け透けであっけらかんとした声で青年が訊いた。
だが雪姫の身体全体には緊張が走り、瞬時に距離を取る。
ジュウは「ぐっ」っと呻いた。
雪姫に手で突き飛ばされた衝撃でよろけながら青年から離れていく。
焦ったせいで力が抜けなかったようだ。

「あなた、誰!?」

殺気を纏いながらも切羽詰った声を出す雪姫に呆気に取られるジュウと青年。
ジュウの前に立ち、護るようにしながら
青年のことを怪しげな人物を値踏みするように睨んでいる。
目つきが怖い。
張り詰めた空気が辺りを覆う。

青年はその行動をただ唖然として見ていた。
遠くで起こった出来事見るように客観的に眺め、左手で頭を掻きながら苦笑する。

「あのぉ、俺、何か変なこと言ったかな?」

雪姫の警戒を全く無視しているような緊張感のない声が辺りに響いた。
刃物を持っていないことを後悔している雪姫だったが…。

優しげな空気を身に纏っている青年はとてもじゃないが演技しているようには見えなかった。
ふざけているようでもない。
ただただ困っているだけのような雰囲気が伝わってくる。

「よくわからないんだけど、何か気に触ったんならごめんね。」

雪姫は苦笑いしながら戸惑いを隠せない青年の態度に疑問を持つ。
それを見ていると、雪姫は自分だけ警戒しているのがバカらしくも思えた。
ふぅ、と深いため息をつきながら目の前の青年に疑問を投げかけようとしたが、
その前にさっきの言葉を反芻してみる。


902:すれ違い2
09/04/21 19:16:47 8wfdJ1Lu

『切彦ちゃんの知り合い?』
切彦、ちゃん?
あの『切彦』をちゃん付けで呼んだ?
冷静になって考えてみる明らかにおかしい。
外見は普通でナイフを持っていないときはおっとりした女性。
だが、『斬島切彦』の本性は情けも容赦もない殺人鬼。
殺気と狂気を身に纏い、対峙した相手を笑いながら殺す。
依頼されたらどんな相手でも確実に首を落とし、『ギロチン』という二つ名を持っている。
同族でも畏怖し、敵に回せば命はない。
同じ裏十三家の人間が相手でも難しいことだろう。

切彦に仲の良い人間がいるなんて信じられないし、いるわけがないと言い切る自信はある。
その切彦のことを『ちゃん付け』で呼ぶ人間がいるなんて今まで聞いたこともない。
でも、目の前にいる優しげな顔をした青年はごく普通の女の子を呼ぶように呼んだ。
それも何気ない会話をするように、自然と口から言葉が出たようだった。

ありえない。

雪姫は「プッ」と吹き出してしまった。
あの切彦をちゃん付け。
極度の緊張状態から開放されるように、スッと力を抜く。
あ~ははははははっと笑いが止まらない。
腹を抱え、大きな口を開けあけっぴろげに大笑いをしている。

そんな雪姫を横目に見ているジュウは「なんだこいつ」と不審な顔をしている。
いきなり突き飛ばされたジュウとしては全く納得できないが、
楽しそうにしている雪姫の姿を見るのは悪くない。
意味もなく、ジュウを傷つけることするわけがないとわかっているからか
すぐに許してしまう。

いつも鈍感なジュウだがさっきまでの異様な空気を放っていた雪姫を見ていれば、
何か引っかかったくらいのことは察しがつく。

ジュウが何か言おうとした時に離れたところから声がかけられた。


903:すれ違い5
09/04/21 19:45:34 8wfdJ1Lu
「おい、何をやっている真九郎。早く行くぞ。」

先に歩いていった美少女がこっちを振り返りながら言葉をかける。
いかにもお嬢様というような外見とは不似合いな命令口調の言葉を使っていた。
だが堂に入っているように言い慣れている気がする。

「あぁ紫、今行く。
 じゃ、紅香さんによろしくね。」

と言い残し去っていく。
紫と呼ばれた美少女はまた不機嫌な声を発しながら急かしているようだ。
真九郎と呼ばれた青年は紫の方へ駆けて行った。

「? おまえ何で知って…。」

言葉を口にしかけたジュウだったが真九郎には届かない。
無駄なことだと考え、口をつぐむ。

しばらく眺めていると、真九郎は紫のところに着く前に立ち止まり、何かを喋っている。
なぜか電柱に向かって。

さすがに不審には思ったが悪いやつではなさそうなので
気にせずジュウは家の方へ歩き出した。すぐ雪姫も付いて来る。

「なんか変わった人だねー。意外な言葉が聞けたよ。
 どっかでまた、会えるかなー?」

笑い終えたのか雪姫がジュウに話しかけた。
雪姫の目には涙が溜まり、少し艶っぽい。
ジュウはそんな雪姫を直視できずに前を向いて歩いている。

「ジュウ君、今日はこれ作ってねー。」

料理本の表紙になっている、パーマのかかった男性がスープカレーを指差している。
料理本にはふさわしくなさそうな、水曜で売れた北海道を代表するタレントらしい。
いつかテレビで見たことはあるが
司会者や一緒に出演したタレントや芸人にとにかくいじられていたのを覚えている。
全く関係のない話だが。

意識を違う方向へ持っていくように努めたが無駄だった様だ。
雪姫の目線が痛い。
雪姫は期待を込めた艶のある目でジュウをジッと見つめてきた。
動揺を隠すように、ジュウは素朴な疑問を投げかける。

「おまえが作るために買ったんじゃないのか?」

「まぁいいじゃない、気にしない気にしない。
 細かいこと気にしてたらダメだよー。おいしいの期待してるね!」

表裏のない笑顔に一瞬見蕩れてしまう。
ちょうどその時、遠くから変な女性の声が聞こえた気がした。

「君は人間じゃないか!生きた人間じゃないかーー!!」

二人して「プッ」と吹き出してしまう。

904:名無しさん@ピンキー
09/04/21 21:04:16 Hd2026nG
「なあ、銀子に頼みたいことがあるんだ」
「前回の調査代もまだもらってないはずだけど、真九郎?」
「う、それは・・・」
「まあ、いいわ。休みに入ったらうちの店の手伝いに来なさい。で、要件は何なの?」
「ちんぽしゃぶってくれないか?」
「死ねば?」
「・・・待ってくれ。気持はわかるけど最後まで話を聞いてくれ」
「言ってみなさい。くだらない話だったら・・・」
「先っぽだけでいいんだ」
「死ねば?」

905:すれ違い6
09/04/21 21:11:24 8wfdJ1Lu
「君…、何してんの?」

真九郎は電柱に隠れた少女を見つけた。
誰が見てもわかる怪しさを醸し出している。
揉め事処理屋という職業柄怪しい人間はたくさん見てきたつもりだが
『電柱の影に隠れる』ということを本当にする不審者を真九郎は今まで見たことがなかった。
少女はあからさまに動揺しながら、言葉を発せないでいる。

「う~ん、どっかで見たことあるような気がするんだけどなぁ…。
 どこだったかなぁ。
 あっ、環さんとこの道場に通ってない?」

少女はビクッと反応し、猫背だった姿勢の背筋が少しだけ伸びた。
そして、ぎこちなく真九郎の方に顔を向ける。

「え~っと、確か光ちゃんだっけ?合ってる?
 変なお師匠さんもって大変だね。」

真九郎は相手の反応を気にせず言葉を紡いでいく。
光と呼ばれた少女は目をキョロキョロさせ、ピクピクと肩を震えてさせている。
ますます挙動不審になった。

「あ、あぁあのっ」

「ん?真九郎、さっきから何をしているんだ?
 さぁ早く行くぞ、遅れてしまうぞ。」

光がなにか言おうとした時、ちょうど紫の言葉と重なった。

「ちょっと時間がないんだ、ごめんね。
 あ~っと、はい、これ。何か困ったことがあったら連絡してね。
 環さんの知り合いだから割安で請け負うよ。」

真九郎は、名刺を差し出し光に渡す。
オドオドとした不審者のような動きは相変わらずだが、受け取ってくれたようだ。


       『 揉め事処理屋  紅 真九郎 

                090-XXXX-XXXX 』


と、肩書き、名前、電話番号だけが書かれたシンプルな名刺だった。

真九郎は紫の方へ走っていくと、紫の顔が一瞬緩んだ気がした。


906:名無しさん@ピンキー
09/04/21 22:09:13 nHi2qYg+
gj

生きた人間じゃないかーフイタw

907:名無しさん@ピンキー
09/04/21 23:27:43 BU2Y1c9X
>>904
割り込み微エロの貴方にGJの意を捧げます

908:名無しさん@ピンキー
09/04/22 04:06:13 2f8gKw3s
真九郎はやっぱ紫とくっつくのが似合ってるなあ

雪姫が可愛すぎるし
なんかいいねこういうの

909:すれ違い7
09/04/23 22:21:03 ILNFP3d3
>>906
ありがとうございます。あの台詞結構好きで使ってみました。

>>908
ありがとうございます、自分も紫が合ってると思って。
雪姫やっぱ違いましたか。難しいですね~。
------------------
真九郎が紫の隣に着くとわかりやすく拗ねているような表情を見せた。
すまし顔で歩くその姿は、男女関係なく誰が見ても振り返ってしまう程に美しく、
辺りが夕陽に染まっていることで、より幻想的に目に映る。

「おまえは女を見たらすぐに話しかけに行くな。
 もっと分別を持て。おまえの周りには女が多い気がするぞ。」

なぜか怒っているようだった。
とりあえず弁解をする真九郎。

「違うよ、紫。
 今の子、あからさまに怪しかったろ?
 俺、初めて見たんだ。電柱に身を隠す女の子な…」

真九郎が理由を付けて説明しようとしたところに女性の叫び声が聞えてくる。

「君は人間じゃないか!生きた人間じゃないかーー!!」

時が止まった。
次の一歩を踏み出そうとした足も会話をするために働いていた頭も同時に止まる。
何のことか理解ができず、呆けている真九郎と紫。
二人が顔を見合わせ笑い出した瞬間、同じ台詞が繰り返される。

「君は人間じゃないか!生きた人間じゃないかーー!!」

なかなか迫力がある声だ。
どこからだろうか、低い女性の声が聞えてくる。
ミュージカルのヒロインのように声を張り上げている。
なぜか聞いたことがある声だったが思い出せない。
今度は少し音が割れている気がした。
紫も真九郎も両手で腹を抱えて爆笑している。

「君は人間じゃないか!生きた人間じゃないかーー!!」

全く同じ口調、全く同じ声の高さで繰り返される声。
その後も幾度となく繰り返された。
少し落ち着いた真九郎が周囲を見渡す。

まだ電柱の影に隠れている不審者の光は、
肩を震わせながら声を出さず、手を電柱に叩いて笑っていた。
もう隠れている意味なさそうだな。
少し離れたところにいたジュウと雪姫も笑いながらこっちを見ている。


910:すれ違い8
09/04/23 22:26:54 ILNFP3d3

真九郎は顔の前で左手を振り、無実を主張する。
この声を自分のせいにされたくはなかった。
音源を探る。が、わからない。見つからない。

遠くから聞こえてきた気がしたが、真九郎のズボンのポケットが
チカチカ光っているのを見て紫が気付いた。

「し、真九郎、おまえの携帯が鳴っているんじゃないか?」

笑いを堪えながら口にしたが、耐えられず、すぐに笑い出す紫。
真九郎は驚きながら携帯の液晶を確かめる。
『夕乃さん』と表示されていた。
夕乃さんはたしか携帯を持たない主義だったはずだけど…。
疑問には思ったが考えていてもしょうがないので、とりあえず電話にでる。

「もしもし、夕乃さん。
 うん、そう、もらってきた。
 あ、今は紫と一緒に向かってる。
 いや、何もしてないよ。
 な、
 いや、そんなことは。
 うん、そうだよね。もうすぐ着くからちょっと待ってて。」

電話を切り、真九郎はため息を漏らす。
何もしていないのに、なぜ責められるのだろうか。
まぁ、夕乃さんに何か言われるのは嫌な気はしないか、と心の中で呟く真九郎。
女性に頭があがらないのはいくつになっても変わらない。

「環さんのいたずらかな?」

携帯を操作して確認する。
着信音の操作をしてみると、夕乃からの着信限定でさっきの着信音が出るように設定されていた。

「それにしても懐かしいな。あれは楽しかった。」

紅香の計らいで五月雨荘のメンバーにミュージカルの依頼をされたのを思い出す。
闇絵と夕乃のオンチが明らかになった事件だ。
あれにはかなりのショックを受けた。


911:すれ違い9
09/04/23 22:41:59 ILNFP3d3

紫は、両目から零れている涙を手で拭いていた。
大笑いしたことで機嫌が直ったようだ。
はた迷惑なことだけど、今回は助かった。
と、環に感謝する。

「あー、なんでもないから気にしないでねー。」

真九郎はジュウたちの方を向きながら手を振り、声をかけておく。
笑顔を作ったはずだが、きっと苦笑していたことだろう。

疲労に襲われ、なんとなく肩を落としてしまう。
前を向くと少し先を歩いている紫の肩は微かに震えているような気がした。

--------------------
こんな感じで続いていきます。
ここまでで半分くらいなんですけど、初めのところで雨を上手く出せなかったので雪姫だけになったんですが、
他の場面でも出番作れてません。雨の出番がなさそう…。

ここから先は紅が主軸ですが、できるだけ多くのキャラを出していこうと思います。

書いてみたらエロの方にはいつでも持っていけそうなんですけど、エロなしの方向で書いてみます。

912:誕生日1
09/04/26 02:04:01 Yp+pTYTt
>>911の続きです。
―――――――

五月雨荘に着き、食事の準備を始める。
真九郎の部屋には、すでに環と闇絵と夕乃がいた。

「ただいま」と声を掛け、荷物を置く。

紫は環と闇絵の方へ寄って行き、早速喋り始めている。
『女の魅力をさらに磨く方法』と『男と女の駆け引き』を学んでいるようだ。
夕乃と真九郎は並んで食事の用意を始めた。

「夕乃さん、いつ携帯買ったの?」

真九郎は先ほど感じた素朴な疑問を夕乃に投げかける。
夕乃は驚いた顔をした。

「? 買っていませんよ。さっきの電話は環さんのを借りてかけました。
 あっ、そうか。真九郎さん、私といつでも連絡が取り合えるようになりたいんですね!
 私ったら鈍感で…。気が付かなくてすみません。
 今度一緒に買いに行きましょうか?番号は真九郎さんだけに教えますね。」

さっきの一言で夕乃の勘違いを助長するような結果になったのはなぜだろうか?
崩月家に代々伝わっているのだろうか、男が抗えない笑顔をする夕乃。

「ええ、ありがとうございます…。」

夕乃は高校の時から外見が変わっているようには全然見えなかった。
大和撫子という言葉が良く似合う日本的な美女。
おっとりした容姿をし、腰まで届きそうな艶のある黒髪、
洗練された動きにはますます磨きがかかり、そのあでやかで魅力的な仕草にドキッとしてしまう。

「こんにちはー。」

声のした方を向くとドアの前には少女が立っていた。

「あ、ちーちゃん。いらっしゃい。」

千鶴は、大きな瞳をした優しそうな少女に成長していた。
髪型はショートに近いくらいのボブに軽くパーマをかけたもので、
白のチュニックを着て紺のショートパンツを履いている。
活発そうに見えるが、どこか気の抜けた声をし、喋り方はのんびりしていた。

千鶴は持ってきたケーキを冷蔵庫に入れ、紫の隣に座る。
すぐに話の輪の中に入り、うんうんと頷いていた。
らんらんと目を輝かせている千鶴は、
害になりそうな知識を一生懸命吸収しようとしているようだ。


913:誕生日2
09/04/26 02:06:04 Yp+pTYTt

料理の支度が終わり、テーブルに並べ始める。
小さなテーブル一杯に広がる質素ながらも豪華な料理の数々。

一口大の小さなピザ、牛肉の味噌漬け焼き、鶏のから揚げ、和風根野菜のポトフ、
マグロの手こね寿司、サラダ、フライドポテトなど統一感のない様々な料理が用意された。

「紫、「紫ちゃん、誕生日おめでとー!!」」

声を揃え一斉に「パンッパンッ」とクラッカーを鳴らす。
全員が笑顔で小さなテーブルを取り囲み、お祝いの言葉を口にする。

紫は嬉しそうに笑顔を浮かべ「ありがとう」と言っている。
いつにも増して嬉しそうだ。

九鳳院では誕生日を祝うなどということはしたりしない。
奥の院の中に居た頃も奥の院から出た後も、
祝ってもらったこともないし、そのような習慣もなかった。

授業参観やクリスマスのような行事を紫と共に祝っている真九郎。
紫が寂しい思いをしないよう誕生日も祝うことにしたのだ。
それはもう習慣となり、今回で9回目の誕生日。
真九郎だけではなく、みんなが心から祝っている。

そんな嬉しそうな紫の姿を見ていると、
自分のしてきたことが紫にとって大きな意味のあることに思え、嬉しくなる。
これまでの自分の行動が正しかったのだと安心する。

ゆったりと進んでいく楽しく微笑ましい時間。
用意された食事を食べ終わり、千鶴手作りのケーキを口にする。
最近お菓子作りに精を出している千鶴の作るものは最高に上手く、みんなの舌を唸らせた。


914:誕生日3
09/04/26 02:07:12 Yp+pTYTt

後片付けが終わり一息つく真九郎は隣に座っている酔った環を見て、今日のことを思い出した。

「あ、そうだ、環さん。俺の携帯イジりましたか?」

恥をかいたことを思い出して環に尋ねる。

「うん、面白かったでしょ~。」

環は悪びれもせずに飄々とした態度で言った。

「まぁ、面白かったですけど、恥もかきましたよ。
 『君は人間じゃないかー!!』っていきなり声がしたんですから」

光やジュウたちに見られたことを思い出し、恥ずかしくなる。

「あはははは、まぁ面白かったらいいじゃな~い。
 あれは紅香さんに頼んで弥生さんに協力してもらったんだ~。
 普段キッチリした声しか出さないからか、恥ずかしそうにしていた弥生さんが新鮮だった!
 でも、私からの着信に限定しといたからもう大丈夫だね!」

何が大丈夫なのだろうか。
でも、環は楽しそうだった。

いつの間にか真九郎の携帯をイジッて『環』と登録されていた名前を『夕乃』に変え、
着信音も変更したらしい。
音源は紅香にお願いしたとのこと。

自分のことを犬と言い切る弥生にとって紅香の命令は絶対だ。
環の提案を受け「面白いな」と紅香が答えた。
環としても引き受けてくれるとは思っていなかったので驚いたが、
それが弥生に回ってきたのだった。
この依頼を紅香から命令されたときはさすがに大きな葛藤があった。
だが主の命に逆らうことはせず、やり遂げることを決意し、命令に従ったのだ。

やると決めたからには手を抜かない。
主のために…、なるのかどうかはわからないが、
めいいっぱい声を張り上げ、惜しげもなくその美声を披露した。
それを使ったようだ。

「弥生さん、可哀相に…。」

なぜか哀しくなった。
滅多に姿を現さない弥生に同情する。
こんなことをさせられるとは思ってもみなかっただろう。


915:誕生日4
09/04/26 02:08:09 Yp+pTYTt

その後も緩やかに時が過ぎる。

この日は環と闇絵以外は真九郎の部屋に泊まっていった。
環は酔いつぶれ、真九郎に運ばれていく。
「真九郎く~ん、もっと強く抱き締めて~。」と寝言を呟いていた。

環が運ばれていくのを見送り、闇絵は静かに自分の足で部屋に戻る。

落ち着きを取り戻した小さな部屋で、ざこ寝。
この体勢で寝るのにもう慣れているのだろうか。
すぐに眠りに落ちていった。




――深夜。

真九郎の顔を見つめる影があった。
優しく切なく微笑み、愛おしい者を眺め、慈しんでいるような視線。

その影は真九郎の頬にそっと手を添えている。
誰の目にも映っていない光景。
自分以外の者は消え去り、真九郎と二人だけの空間のような気がした。

そのままの状態でしばらくの間留まる。
おだやかに、しかし目に焼き付けるように見ていた。

影は上体を屈める。
長い髪が真九郎の顔にかかり、くすぐったそうにする。
左手で髪を押さえ、右手で真九郎の頬を撫でる。

そのまま徐々に近づき、距離がなくなった。
唇が触れる。

数秒間、柔らかい唇が重なり合い、体温を交換する。
身体全体から熱が溢れるように真っ赤になった気がした。

真九郎も寝息を立てたまま、誰も起きた気配はない。
影は自分の記憶にしか残らない大切な思い出として心に留めていた。



916:約束1
09/04/26 02:10:25 Yp+pTYTt

――次の日。

みんなが帰った後、真九郎の部屋には紫が残っていた。
真九郎と紫の二人。

どうってことのない日常のはずなのだが、今日の紫はどこかおかしい。
そわそわして落ち着きがない状態だと一目でわかる。
目も合わせようとはしない。
長い付き合いになるが、そんな紫を真九郎は今まで見たことがなかった。

「どうしたんだ、紫。様子がおかしいぞ。」

尋ねる真九郎に目を合わせられない紫が口を開く。

「今日は真九郎にお願いがあるのだが、なんと言っていいか…。」

珍しい。
言いよどんでいる。
いつもの紫ならなんでもハッキリ言い切るはずだ。
普通の人間なら言い難いことも真っ直ぐと向き合って言ってくれる。
真九郎はその言葉に何度となく救われてきた。
紫が口に出来ないほど重要なことなのだろうか、
それとも相当思い悩んでいるのだろうか。
もしかしたら九鳳院で何かあったのかもしれない。
真九郎の頭に血が上りかける。

「なんでも言ってくれ、紫のためなら何でも力になるぞ。
 一人で悩んでいるより口にした方がスッキリするしな。」

背中を押すように優しく促した真九郎だったが、すぐに後悔することになった。
少しの間悩み「そうだな」と言い、唇を動かす紫。
まだ緊張が解けてはいないが覚悟を決めたようだ。
言葉を紡ぎだしてからは、いつも通りの聞き取りやすいハッキリした口調だった。

「あれから真九郎はちゃんと約束を守ってくれたな。
 授業参観にもちゃんと来てくれて応援してくれた。
 夕乃が一緒だった時は、微妙な感じがしたが…。もう昔のことだ。
 わたしのことを他の誰より大切に扱ってくれた。
 わからないこともいっぱい教えてくれた。
 何があっても絶対に護ってくれた。
 どんなときでもわたしの味方になってくれた。
 わたしは真九郎にとても感謝している。
 これからも一緒にいたいと思っている。
 
 だから今度はわたしが約束を守る番だ。

 真九郎、結婚しよう。」

917:約束2
09/04/26 02:11:49 Yp+pTYTt

透き通った艶やかな頬を赤く染めて紫は言った。
ついさっき『何でも聞く』と約束したばかりの真九郎は動揺する。
いつそんな約束をしたのだろうか?
真九郎は思いを巡らす。
紫が嘘をつくとは思えない。
もし嘘をついたとしても、この裏表のない少女には隠すことは不可能だろう。
すぐに顔に出ることはこれまでの付き合いからわかっていることだ。

美貌に恵まれ、頭も良く、育ちも良いお嬢様。
そんな容貌と肩書きとは不釣合いなくらい強く揺るがない意志を持ち、
俗世に染まることもなく、真っ直ぐに育ってきた紫が真九郎に迫る。

本来なら紫は、すぐに真九郎のことなど忘れていくと思っていたが、
この年になるまで変わらず仲良くやっていたのだ。

「な、何言ってんだ紫。
 お前まだ16歳だろ。早すぎるって。」

真九郎は、先日誕生日を迎え、みんなでお祝いしたのを思い出す。
あの時、紫はすごく嬉しそうだった。
みんなに祝って騒いでいたのが楽しかったんだと思っていたが本質は違ったようだ。
結婚できる年齢になったことが嬉しかったのかもしれない。

誤魔化そうとする真九郎に紫の視線がぶつかる。
その目に哀れみを感じてしまうのはなぜだろう。

「何を言っている?女は16歳になったら結婚できるんだぞ。
 そんなことも知らないのか?ちゃんと勉強した方がいいぞ。
 なんならわたしが教えてやろう。これからはずっと一緒だからな。
 それにおまえもいい歳だ、そろそろ結婚した方がいいと思うぞ。」

やはり哀れみの視線だったようだ。
まぁ、それはそれだ。今は置いておこう。
突然の紫の提案に呆気にとられていた真九郎はどうすればいいのかわからない。
当の紫は言いたいことをすべて言ってしまったのですでに満面の笑みを浮かべている。
目がくらむ程、輝いていて、直視できないくらい眩しい最高の笑顔だ。

真九郎からの答えは紫の中ではもう決まっているようだった。
断られるはずがないと信じている。
紫は部屋の端に置いていた鞄を開け、
クリアファイルに挟んでいた皺一つない用紙を丁寧に取り出した。

918:約束3
09/04/26 02:12:51 Yp+pTYTt

「ほら、真九郎。これを見ろ。
 ちょっと前に騎馬に取りに行かせたんだ。
 これから書き込むぞ。今日からわたしは『紅 紫』だ。
 なんなら『九鳳院 真九郎』でも構わないがどうする?」

全く迷いのない言葉が紡がれていく。
婚姻届を手に、胸を張り、堂々と自慢げに真九郎に見せつけている紫。

早々に真九郎の逃げ道を断っておく。
環と闇絵の教えを再現したのだろうか。
真九郎は紫の行動に呆気にとられながらも過去を振り返る。

いつか約束を破ったときは確か泣いて出て行ったよな…。
それから口もきいてくれなかった。
口をきいてくれないどころか、紫の人生の中には
紅真九郎という人間自体が存在していなかったことにされたような態度を取られた記憶がある。
完全に否定され、自暴自棄になった気がする。
あれは痛かったなぁ。

ここでおかしなことを言ったらあのときの二の舞になるんだろうか。

どうすれば良いんだ?
逃げ場はないのか?
というか俺はどうしたい?
これから先も紫とずっと一緒にいたいのだろうか?

ただ紫を幸せにしてあげたい。
寂しい思いをさせないようにしてあげたい。
いつも楽しく優しい笑顔でいてほしい。
それだけの想いを持って今日まで接してきた。

ふと紫を見てみると瞳に涙を溜め、今にも泣きそうな顔をして、
「ダメ…か?わたしとじゃ、ダメ、なのか…?
 もしかしてわたしのといるのが嫌になったのか?わたしのことが嫌いに…。
 それとも『ずっと一緒にいる』という約束をしたのを忘れてしまったのか…?」
と小声で呟いている。

昔、奥の院で暮らしていた頃は、自分の運命を無理に受け入れ、
初潮と同時に子どもを孕まされる覚悟をしていた紫だ。
16歳という歳など関係のないことなのだろう。

涙を溜めた紫を見ていると真九郎はいたたまれなくなってしまう。
あぁ、これが男気スイッチというやつなのだろうか。
真九郎が覚悟を決め、ペンを走らせようとした時、
「ドンッ」と大きな音を立て部屋のドアが開いた。

「いけません!真九郎さん!」


919:約束4
09/04/26 02:13:47 Yp+pTYTt

夕乃が勢い良く部屋の中へ入ってくる。
後ろには千鶴もいる。
忘れ物でも取りに来たのだろうか。

千鶴は状況を把握していないようだった。
緩んだ顔をして真九郎と紫を見る。

大きな音がしたのが気になったのか環や闇絵が真九郎の部屋ドアの前に立っていた。
二人は面白そうに微笑しながら成り行きを傍観している。

「そんな一時の思いで、軽はずみは行動をしてはいけません!
 昔、崩月に来たとき私が最初に教えた言葉を思い出してください!」

夕乃は必死だ。
真九郎がこのような状況に陥った時、
どのような行動を取るのかわかっているのだろう。

『年上の女房は金の草鞋を履いてでも探せ』だっけ。
真九郎は心の中で口にする。

「真九郎はわたしとの約束を守ってくれるよな?」

今まで聞いたことのない、か細い小さな声で紫が呟いた。
真九郎を真っ直ぐに射抜いている紫の瞳。
溜まった涙が今にも溢れそうだ。

真剣な面持ちの紫と夕乃を無視して、空気を読まない千鶴が口を開く。

「紫ちゃん、おにーちゃんと約束したの?
 そっか、約束は守るものだもんね!
 あっ、千鶴も小さい頃に約束したの思い出した!」

どことなく怪しい笑みを浮かべた千鶴が
みんなの注目を浴びながら真九郎に言葉を向ける。

「おにーちゃん、
 千鶴が大きくなったら『せっくす』を教えてくれるって約束したよねー。
 そろそろ教えてほしいなー。」

空気が凍りついた。
静寂に包まれる部屋。
真九郎はもちろん、夕乃や紫も唖然としていた。

環と闇絵は手で口を押さえ、肩をプルプル震えさせながら、ひたすら笑いを堪えている。
千鶴だけがいつも通り屈託のない笑みを浮かべ、のほほんとしていた。
真九郎が何かを言いかけた瞬間、一番付き合いが長く、幼い頃から聞きなれた声が響く。

「…やらしい」


920:約束5
09/04/26 02:14:38 Yp+pTYTt

真九郎はビクッと肩を震わせた。
銀子の声だが、もちろん本人はここにいない。
「やらしい」と三回繰り返した後、静寂が戻った。
真九郎は机の上に置いてある自分の携帯を確かめると、携帯はパチパチと光を発している。
銀子からメールが送られてきたようだ。
環と闇絵は部屋から出て、我慢することなく廊下で大笑いしている。

「環さん!」

真九郎は話題をすり替えることにした。
携帯のことで環を責めようとする。
そうすればなんとかこの部屋から出られるはずだった。

だが、もちろんそんなことが許されるはずもなく、
間髪いれずに夕乃と紫が問い詰める。

「どういうことだ、真九郎!!」
「どいうことですか、真九郎さん!!」

逃げようと片膝を突いて立とうとした時、
長い付き合いの中で一度も見たこともない形相をし、
真九郎のことを睨みつける二人の顔があった。

「正座!!」

夕乃が有無を言わさぬ声で、真九郎の足元を指差しながら言い放った。
身体の強さで夕乃に勝てるはずもなく、
意思の強さで紫の足元にも及ばない真九郎は「…はい」としぶしぶと従った。
真九郎が紫と夕乃に弁解しようとするが、二人は暴走し始める。

「も、もしかして真九郎さんは本当に年半もいかない女の子が好きなのですか!?」
「じゃあ、わたしの方がいいぞ!」
「わ、私だってまだまだです!」
「わたしの方が若い!」
「負けません!」
「わたしもだ!」

話がすぐに脱線し、色んな方向に展開していくのはいつものことだ。
真九郎はどういう風に話していけば誤解が解けるか冷静に考えていた。

なんだかんだ言ってもちゃんと筋道を立てて説明すれば
二人とも納得してくれるんだよなぁ。

真九郎が思索している間も紫と夕乃は言い争いをしている、というよりも何かを競い合っている。
いくつになっても変わらないなぁと他人事のように考える真九郎。


『千鶴はどんな着信音になっているんだろう?』
ふと疑問に思った千鶴は、真九郎にメールを打ってみる。
自分の興味の対象に真っ直ぐな子に育ったようだ。

また銀子の声が繰り返される。

「ロリコン」

921:約束6
09/04/26 02:15:47 Yp+pTYTt

二人の目線がより刺激的に変化した気がした。
きっと気のせいだろう。

あぁ、銀子は何をしているのだろう?
今、どこで何を考えているのだろう?
あの常識人の銀子が…。
どんどんこじれていく現実を忘れるために真九郎は空想の中に飛び込んだ。

環は廊下で床を叩きながら足をバタバタさせ、笑い転げている。
とうとう立っていられなくなったようだ。
闇絵も冷たく整った顔を破顔させ、両手で腹を抱えていた。
ここまで顔を崩している闇絵を真九郎は今まで見たことがない。
息も絶え絶えになり、もう声が出ていない。

言葉を失くした夕乃と紫に真九郎は話しかけた。

「こ、今度ちゃんと冷静になってから話し合いましょう。
 ねっ、夕乃さん、紫。
 どうせなら銀子も入れてさ」

焦りすぎていたのだろうか。
どこからか銀子の名前が出てきた。
今この場にいないし、こんな話に無理矢理混ぜるなんてあいつは喜ばないだろう。
何回も声を聞いていたからだろうかと一人で納得する。
真九郎は紫たちの反応を見ていられず、視線を天井に逸らした。

「…ぅるさぃ、バヵ」

照れていた。
なぜだろうか。
照れるくらいなら協力するな、と言いたい。
なんとなく可愛くも聞こえる銀子の声。
意識が遠いところに旅立ったのかもしれない。

ずっと恥ずかしそうに「…ぅるさぃ、バヵ」と繰り返している銀子。
正気を取り戻した真九郎は、おずおずと携帯の液晶を見てみる。
銀子から電話がかかってきたようだ。

環と闇絵は変わらず廊下で身を捩っている。
かすれた声で「死ぬ~、死んじゃう~」とか言っている声が聞えてくた。

さっきから無言の二人の視線が痛く、真九郎の顔にグサグサと無数に突き刺さっている気がする。
震える手で電話にでる真九郎。

922:約束7
09/04/26 02:16:48 Yp+pTYTt

―真九郎。どう?調子は?

いつものようにあまり抑揚のない口調で話しかける銀子。

「お、おまえ、何やってんだ?」

真九郎は折れそうになった心を気力で補強しながら銀子に尋ねる。

―何って?ま、見てないならメール読んどいてね。じゃ。

言いたいことだけ言って勝手に切ってしまう銀子。
メールを読むが、何も書いていない。
携帯が壊れたのだろうか。
無駄なことをするのが嫌いな銀子が
空のメールを送るはずがないと考えているとまた携帯が鳴った。


「テ~レ~レ~レ~レ~レ~レ~レ~レ~~~」

今度はゴッド・ファーザーのテーマ曲が流れる。
音源がなかったのだろうか、環が歌っていた。
液晶には『ママ』と表示されている。
その場にうずくまり、両手で頭を抱える真九郎。

あぁ、なんかどうでもよくなってきた…。

曲を聞いたときになんとなくだが、誰から電話がかかってきたかを理解した。
電話にでるとやはり予想は的中する。

―私だ、真九郎。
 仕事の依頼をしたいのだが、今どこにいる?

「家にいます。」

―すぐ出てきてくれ。急ぎの依頼だ。

「わかりました。今すぐに。」

口実を手に入れた真九郎は「仕事が入った」と言い残し、
何かを言おうとした紫と夕乃を置いて部屋から逃げ出した。


923:名無しさん@ピンキー
09/04/26 05:37:43 Zk1aeI8i
なんという修羅場

しかし真九郎ほど修羅場の似合う男はいないな

続きは?

924:名無しさん@ピンキー
09/04/26 15:52:00 Yp+pTYTt
>>923
続きはありますが、ちょっと失敗しててどうしようか考えてるところです。

あと円を出そうとしたら、結構壊れてしまったんで、
そっちもどうしようか悩んでて。


925:名無しさん@ピンキー
09/04/29 17:40:26 hPW6aIt8
保守

926:公園にて
09/05/02 14:42:03 4cgiwwbn
「………」
「どうしたんですか、ジュウ様?」
「いや、さっき買ったアイスなんだが……スプーンが短くて底につかないんだ……」
「でしたら、ジュウ様、どこかに中身を空けて食べればよろしいのでは?」
「空けるとこなんかないぞ……?」
「……では、わたしの手の上はどうでしょう?」
「なっ……おまっ……」
 両手で水を掬うときのように手の平向けた雨。
「さあ、どうぞ皿として扱いください」

青葉茂る草木の中、某Hさんはそこにいた。
「そ、それじゃ『あれ? おかしいな? アイス以外にピンク色のものがあるぞ?』『ジュウ様……そこはッッッ』みたいなプレイにぁぁぁああああああああ」

―――――――――
GW初日からなにやってんだろうか俺はorz

927:名無しさん@ピンキー
09/05/02 14:49:51 sT0xqHEU
光は相変わらずだなww

928:名無しさん@ピンキー
09/05/05 08:24:38 XcG/ojwf
やはり漫画で見た斬彦ちゃんは可愛いな!

路地裏で紫を交えた初体験3Pマダー?

929:名無しさん@ピンキー
09/05/05 09:37:25 u6VpDzt8
「ジュウ様が両腕骨折して入院したら、雨達が世話しに来た」そんな話はまだかね?

930:名無しさん@ピンキー
09/05/05 13:44:14 f3uUUPPf
両足もいっとこう

931:名無しさん@ピンキー
09/05/05 16:45:05 qg4kNRrC
てか絶奈の続きモンどうなった

932:名無しさん@ピンキー
09/05/05 17:21:11 /+ZzZ/Z7
絶奈「あきらめたらそこで試合終了ですか?安西先生」

933:名無しさん@ピンキー
09/05/05 19:33:24 vyn3yO6X
酒ではなく真九郎に溺れる絶奈…

934:名無しさん@ピンキー
09/05/05 23:58:07 QD/ZxnHW
>>931
文才の無い俺が作成してみよう。完成確率50%…

935:名無しさん@ピンキー
09/05/06 01:28:16 aKHMUupW
>>934
低っwまあ、待ってるよ

936:名無しさん@ピンキー
09/05/06 04:49:37 YtyzvNhl
>>934
断食して待ってるよ?

937:名無しさん@ピンキー
09/05/06 18:58:28 A0MG7h7Z
>>934
腹をすかせて待ってる…

938:名無しさん@ピンキー
09/05/06 19:17:24 iZ1WzvY4
>>934
不眠で待つぜ

939:名無しさん@ピンキー
09/05/07 04:04:46 MmAo9Lr6
>>934
時間かかるだろうが頑張れよ…











…投げ出すなよ?

940:名無しさん@ピンキー
09/05/07 14:14:30 nXOE+FP/
どうせ今回もダメなんだろ?安西先生…

941:名無しさん@ピンキー
09/05/07 21:25:38 iTWRcxB/
紅3巻DVD版買ったよ
電波アニメ化ー、てなってたけどこういう形で売り出すわけね
位置的にはOVAって感じなのかな?

まだ怖くて未視聴だけど

942:名無しさん@ピンキー
09/05/07 21:26:43 iTWRcxB/
追記
電波はOVAという形だった
第二弾今春発売予定だってさー

943:名無しさん@ピンキー
09/05/07 21:50:38 BnQjswyk
どっちかっていうと
本放送前のプレ映像見たいな感じだな
OVAとは違うだろうよ
まあ紅よりかは期待できそうだ。原作テイストが保たれてるし
本放送が楽しみだ

944:名無しさん@ピンキー
09/05/07 22:04:19 fQDozACi
>>936-940
プレッシャー掛け過ぎだろw

945:名無しさん@ピンキー
09/05/07 22:31:40 kd6GOYT/
>>934
男なら言い出したことは確率関係なくやり遂げんといかんよな?そうだな?

946: ◆JI6GRfrLos
09/05/08 00:51:04 dvvlhy5q
今更だけど、850の続き投下。
――――
「しゃぶれよ?」
暗く、澱んだ、心の奥底から自然と高圧的な声が出る。
荒い息をはく絶奈の髪を掴み、そのまま床に数度たたきつける。
この程度ならば髪が抜ける事も傷がつく事もない。
だが、大事なのは征服している事を示すことだ。そうそうと戦鬼になっていては体も保たない。
「聞こえないのか?」
間をおかずに床に叩きつけておいても、命令をやりとげさせる。
命令は理不尽ではあればあるほどいい。
絶奈と体を重ね、わかった事だ。
「は…はい…」
痛みではない酩酊。酔いではない痺れ。人を征服してきた絶奈だからこそ、求めた快楽。
ちろちろと舌を出し、真九郎のモノを吸い、しゃぶる。
懸命さと媚びを含んだ視線は虚空を見つめ、焦点すら合わない。
それでも体をすりよせ、懸命に奉仕する。
「…遅いな」
長い髪を指に絡ませ、押し付け、腰を振る。
一方的な快楽を求めたイマラチオ。流石の絶奈も気道を抑えられれば苦しい。
えぐえぐとえずきながらも、零れる唾液と先走りを舌に絡め吸う。
口の周りをベトベトに汚し、白目を剥くまで呼吸を止められていても絶奈はくらいつく。
「気持ち悪いな…さっさと飲めよ」
ぐっと押さえつけ、下腹に鼻を。口には真九郎のモノをつめ射精する。
ゴフゴフとえずいても、全てを飲む絶奈。
「ん…流石に慣れたもんだな」
手を髪から離し、そのまま床に崩れ落とす。
「まだ、あんたの女は使ってないんだぜ?へばってないで…」

―――飽きた。本番省略―――

「やっぱり、最高よ。真九郎くん…」
弾むような声音で絶奈は隣に眠る真九郎をの髪を撫でる。
「また…ね?」
真九郎の臭いを深く吸い、立ち上がる。
あの程度のダメージは絶奈にとってはものの数ではない。
真九郎にそっとタオルケットをかけ、部屋を出る。
絶奈が出た部屋にはガスが充満し、真九郎は深い眠りに落ちる。
夢の中で真九郎は日常を歩む。起きた時は絶奈しか見えない。
服従と被服従。支配者と奴隷。
逆転しても反転しない歪んだ愛情に満たされながら、絶奈は歩きだした。

――――
グズグズだなぁ…一応、終わり

947:名無しさん@ピンキー
09/05/08 01:06:19 HpWzw9EQ
>>946
GJ!省略されてもやり遂げてくれたことに感謝

948:名無しさん@ピンキー
09/05/08 03:00:31 pHUKlFUt
>>946
GJ、ちょっと激しすぎる気もするが…w

949:名無しさん@ピンキー
09/05/08 05:05:41 q+d7aedv
>>946
端折ったか…まあGJ。◆JI6GRfrLosの次は>>934の出番だな…

950:934
09/05/08 23:54:35 aMWPWUqm
>>946
お疲れ様です

とりあえず半分くらいは出来た。完成には持ってけれる。ただ、出来栄えには期待しないで…

951:934
09/05/09 01:02:32 v9s24qe3
>>950
おk。待ってるよ

952:950
09/05/09 01:24:42 n+Jr4j8A
>>951
本物?やってくれよw

953:934
09/05/09 01:39:54 v9s24qe3
ゴメンやっぱ無理…任せた…

954:名無しさん@ピンキー
09/05/09 02:09:49 yG3dDnJ5
>>952
投げ出すのもアレだが、そんなことするんならオマエやれよ

955:名無しさん@ピンキー
09/05/09 04:54:52 FwQfCh24
>>952
つか、こんなことすんなよ。バカか?

956:名無しさん@ピンキー
09/05/09 11:03:21 5Db0vHy4
あと一作品くらいで次スレかな?

957:名無しさん@ピンキー
09/05/09 11:24:04 EVom1qZj
紅でも電波でもいい


できれば切彦ちゃんとか雪姫とか

958:名無しさん@ピンキー
09/05/10 19:46:45 Czv8Gse6
切彦ちゃん

959:名無しさん@ピンキー
09/05/11 13:24:15 QF6SJAwK
電波きてくれー

960:名無しさん@ピンキー
09/05/11 23:28:29 gDL8mtZz
紅でいい

961:名無しさん@ピンキー
09/05/11 23:43:26 xOg1/aVv
漫画、切彦ちゃん可愛すぎる

962:名無しさん@ピンキー
09/05/13 00:42:08 Exz5XZzT
切彦ちゃんのエロはどこにも見当たらんな…

963:ai
09/05/13 20:41:33 NEVb1Pwq
皆さんご所望なようで、切彦ssをかいてみた
期待せずに、どうぞ

注:多少(?)屈辱かも

―――――――――
『拉致られて船底』

 深夜の底冷えするような冷気に真九郎は身震いした。
 現在時刻は午前零時を回りそのまま半周くらいしてるかもしれない。あまりの眠気に時計をつけてくるのを忘れてしまったのだ。
 ヒュー、と真冬の風が駆け抜ける。
「うー、寒っ」
 手袋をはめた手をポケットに突っ込んで、真九郎は街灯の光の下、ゆっくりと歩いていた。
 なぜこんな丑三つ時近くなって、真九郎が歩いているのかというと、単純明快というかなんというかで―ともかく、原因はあのエロ大学生にあった。
 それは真九郎が寒い部屋で温かい布団という名のオアシスに埋もれ、眠っているときだった。
「しんくろーくーん! 起きてー」
 そんな声がして、真九郎がゆっくりと瞼を開けると、そこにはうっすら赤みがかかった酒臭い環の顔があったのだった。
「……なんですか……こんな夜中に……」
 環は、「お。起きた」などととぼけたように行った後、いきなり本題に入る。
「あのさー、お醤油ない!?」
「……は?」
 場が固まったはず。ただでさえ寒くて凍りついてるような空気が、だ。なんだかもう突っ込みを入れるのも、怒るのも面倒くさくなってきた。うん、もう寝よう。寝てしまおう。真九郎は再び布団にもぐり、心地よい暗闇に落ち―。
 その瞬間、真九郎の体が外気に包まれる。
「寝るなー!」
 ……布団を剥がされた。
真九郎は身を震わせる。これには目を覚まさずにはいられない。しょうがない、と環が早く帰ってくれることを祈りつつ、布団から身を起こす。
「わかりましたよ……」
 で、と続けた。
「お醤油がなんですって?」
「…………」
 目を擦っていた手を離すと、環の顔が見える。
「環さん?」
「―! いやー、ごめん。寝起きの真九郎君かわいいなーって……」
「……寝ていいですか?」
「え? お姉さんと寝たいって? もうしょうがないなー真九郎く……」
「あと十秒以内に本題に入らないと寝ますよ?」
「あー! ごめんごめん! えー、で、本題……えっと、お醤油貸して!」
 またかよ。何時になったら環の部屋に醤油が入荷されるのだろうか。いいかげん自分で買っといてほしい。
「……えーと、そこの棚にありませんか?」
 真九郎は冷蔵庫の横にのっそりと立っている棚を指差した。
 環がゆっくりと立ち上がり、のそのそと真九郎の指差す台所へ向かうその足は―やはり飲んでいるらしく、おぼつかなかなかった。
「そこのガラス戸開けたとこです」
 環は少しガタガタやって、ほどなく赤い蓋のビンを高く掲げた。
「あったー……」
 しかし語尾に三点リーダ。
「……どうしたんですか?」
 環はいやにかなしそうな眼でこちらを振り返り、醤油のビンを向けた。
「カラなんだけど……」




964:ai
09/05/13 20:43:38 NEVb1Pwq
 その後、ひと悶着あり、まとめると―「買ってきてよー」「なんでこんな夜中に……」「じゃあ明日かってきてね?」「いいですよ……明日の朝いt……」『ボーン、ボーン』そこで柱時計が鳴った。針は長いハリと短いハリが上を向いて重なっている。
「じゃ、いってきてね♪」「ちょ……環さん!?」「問答無用っ!」―とこんな感じだ。
 不運……いや、環の計画的な作戦にしか見えないそんなこんながあって、真九郎はいま真冬の夜道をひたすら五月雨荘から徒歩三十分くらいのところにある二十四時間営業のスーパーへ向かっているのだ。
 そこまでして環が醤油を欲する理由を聞くと、なにやら飲み会のあまりもののブロックマグロ中トロとやらを無キズでもらってきたのだが、
それが半額品だったらしく今日賞味期限で、だから今日中に(といってもさっき12時になったのだが)食べたいと豪語してらっしゃるのだ、あの大学生は。
「お、そろそろだな……」
 そうこう考えるうちに、スーパーのネオンが見えてきた。暗い夜道になれた眼には少しまぶしい。光に集まる羽虫のように、真九郎はスーパーへと向かう―そのときだった。
 バタン、と真九郎の背後でなにかが倒れた音がした。
「………?」
 看板でも倒れたのか? 振り返って、近づいてみた。
 ―あ。
倒れたそれをみて、真九郎は思わず声を上げてしまった。
「き、切彦ちゃん!?」
 そこには―忘れもしない西里総合病院での一件で合った悪宇商会の一員、《ギロチン》の二つ名をもつ二重人格の少女―斬島切彦が仰向けで地面に寝そべるように倒れていたのだった。
 反応がなかったので、もう一度呼びかけてみると彼女は首だけ動かしてこちらを向く。
「……紅……さん?」
 記憶してもらっていたことに少し喜びつつも、切彦を起こそうと近寄った。しかし手を差し出すも、全くつかもうとせず、「うーうー」と唸るだけだった。
 事の進展がないため、真九郎はふにっとした肩をつかんで腕の上に転がした。そうするとさっきは良く見えなかった切彦が良く見える。
 眼を細めて、無気力に真九郎を覗き込む灰色の瞳。黒いリボンで束ねられた茶髪。流石に服装こそ違うものの、はじめてあったあのときから変わってはいなかった。
「だ、大丈夫!?」
「……大丈夫です」
「な、ならいいけど」
 さっきから語頭がダブりっぱなしの真九郎は、とりあえず立たせようと彼女の肩を担ぎ、立ち上がった。
しかし切彦の体はふらついて抑えていないとすぐに倒れてしまう。
 彼女ほどの猛者になにかあったというのか。そう考え、とりあえず一回下ろそう、と脱力しかけたところで、やっと異変に気がついた。
「切彦ちゃん! その足……!」


965:ai
09/05/13 20:44:58 NEVb1Pwq
 端的に言うと、赤。
彼女の右太ももの辺りにまっすぐ一文字に切られた跡があり、そこから下が鮮血で染まっていた。白い靴下であえも半分ほど赤い。かなりの出血だ。
「……不覚です」
 そういう切彦の顔は痛がってる風でもなく、ただ無表情を貫いていた。
 とりあえず応急処置を……。
真九郎は急いで彼女を寝かし、立ち上がらせる前の状態に戻すと、ポケットからポケットティッシュをとりだすと、血をふき、さらにハンカチを引っ張り出してそれを巻きつける。
とりあえず医者に……、とケータイを取り出して山浦医院の番号を押そうした、そこで背後の気配に気がつく。
 五人……いや六人か。
 多勢に無勢である。しかも重症患者を守りながら、の。
 切彦もそれに気がついたのか表情を変えた。もちろん、曇り。そして小さくつぶやく。
「……わたしはいいから……にげてください……」
 その声は自分がきいた数少ない切彦の言葉の中でも、一番弱々しく、そして雨季の雲のように濁っていた。
「逃げれるわけ……」
 真九郎がそういいかけたところで、背後の気配が強まり、言葉を止めた。やがて、革靴が地面を叩く音がした。そしてだんだん、複数の気配が接近し―
 首筋に電流が走った。



 真九郎が気がつくと、あたりは暗く、ただ一点、天井から吊るされた裸電球がまばゆく、はかなげに光っていた。
 ゴウンゴウン、と壁の向こうで機械の唸る音がしていて、なんとなく過去のあの事件、真九郎と紅香を出会わせた、あの事件。アレを思い出させるような環境のなかに、真九郎はいた。
 そこまでしてはっと気がついたのは、やはり睡眠不足のせいか。それともなにか睡眠薬でも飲まされたのか―あたりをキョロキョロと観察する。
 いない。彼女が、いない。
あのときと同じなのだったら、ここにいそうなものだが。逆にいえば、いたら、そういうことなのかもしれない。
 真九郎は縛られた手をなんとか挙げる。上手く動かない―おそらくそういうクスリだろうか―のに苦戦しつつも、裸電球を揺らして、サーチライトの如く光をちりばめた。
切り取られた地面が真九郎の眼にうつった。その片隅に、
 ―いた。
 茶色い髪が見えた。それを束ねているリボンも、だ。
 そこには、斬島切彦が横たわっていた。


966:ai
09/05/13 20:48:19 NEVb1Pwq
 やっぱり切彦ちゃんも……。
 しかし、真九郎がいそいで駆け寄ろうとした、そのとき―。
 暗闇の中、ガチャという擬音が聞こえた。さらにギィと聞こえ、そしてバタンと閉鎖音。なにやらボタンを押すような音がして、二、三回光ったあと蛍光灯に継続した明かりが点った。
「ほう、早かったな……そっちの小娘はまだか」
 しゃがれたような声が室内に響く。目が明かりになれてから、真九郎は声の主を睨みつけた。そこには白衣の上に、さらに白いマスク、そしてサングラスに白髪という、全身白い―声からして―男性がいたのだ。
 警戒心を強める真九郎に、白服は一言。
「大丈夫、君には何もせんよ……」
 蛍光灯に、サングラスがギラっと光る。
「君には、な」
「なっ……」
 サングラスがパチンと指を鳴らすと、再び扉が開かれ、同じく白い服を着た男が数人部屋になだれ込んできた。
 サングラスは、命令。
「……やれ」
 入ってきた白服達がいっせいに切彦に走りより、四肢を持ち上げた。
「やめろ! その娘は……」
 叫ぶ真九郎。しかし言葉が続かない。その娘は……真九郎にとってなんなのだろうか。友達、か。いや、こういう場合戦友とでもいうのだろうか。―違う。なにか引っかかる。違う。
 白服達はその声を者ともせずに、彼女を担いで部屋の扉を開ける。
「待て!」
 ムリヤリに足を動かす。しかし、真九郎が扉に到着したときにはすでに彼女と白服は扉の向こう。ドアノブをがちゃがちゃと回す―開かない。扉にタックルする―残るのは肩の痛みだけで、扉はビクともしない。
 悪戦苦闘する真九郎。こうなったら……。
 真九郎は右腕の肘に気を集中させた。そして力をこめる。
……?
しかしいつまで経っても、皮膚を裂く痛みも、高ぶる気の波も襲っては来なかった。
 背後から声がする。
「この世にはいろんなクスリがあるんだ……わかるかい? 崩月の子鬼君」
 ニヤリ、と笑ったようにマスクが持ち上がる。
「……知ってたんですか」
 やっと吐き出した言葉がこれだった。
 その答えは、ただマスクが持ち上がるだけ。
 しばらく真九郎が再び扉にタックルを続けていると、しゃがれ声が聞こえた。
「ムリだ……ダイナマイトでも吹っ飛ばないように出来てる、カギは瞳孔認証だ……」
 薄ら薄ら気がついていたようなことを付かれ、真九郎は一瞬ひるむも、再びガンガン、と一定のリズムで壁にぶち当たった。左肩の痛みなどより、なにも出来ない、なにもしない方が、ずっと痛かった。
 しばらく続け、肩の感覚がなくなってきた頃、後ろでもう一度しゃがれ声。
「そろそろか……紅真九郎!」
 真九郎は振り向く。見えたのは、コツコツと革靴をならしながら歩み寄る彼が。
「着いてこい……」
 そういって、瞳孔認証ロックをはずし、右手は扉に手をかけて、左手でなにか四角いもののスイッチのようなところをカチカチと鳴らした。
 青白い光が流れるそれは、スタンガンだった。


967:ai
09/05/13 20:49:49 NEVb1Pwq
 窮屈な通路を進むと、扉が見えてきた。
「入れ」とサングラスが光る。
 真九郎はおそるおそる中に入る。
 ―絶句した。
 壁一面には機械類が並んでおり、さらにその反対側には、今度は本がぎっしり。今入ってきた扉の上には窓があり、スモークガラスの様に真っ黒だった。だが、そんなものは全く気にならない。
 もう一つの、扉の正面の壁。そこに、切彦がいた。
 大の字に縛られ、壁に固定。そして衣服は―下着だけだった。
「切彦ちゃん!」
 あわてて真九郎は駆け寄ろうとする。しかし首筋にゴリっとした感触があり、踏みとどまる。スタンガンが当てられているのだった。
 気を失ってしまっては、元も子もない。そう思い、なんとか意思をコントロールする。
 サングラスはそれを鼻で笑い、さっきのように指を鳴らした。
 すると直立不動だった白服の一人が切彦に駆け寄り、その首筋に手を這わせ、グイと指圧。
 その瞬間、意識が覚醒した切彦が薄い目を開ける。そして数秒してから自分の置かれている状況を理解したらしく、真九郎と同じように絶句した。
「斬島切彦!」
 しゃがれた声を、サングラスが右手にもった黒い無線機のようなものに響かせる。
 それはどうやら切彦の耳につながっているらしく、彼女の体がビクっと跳ねた。
「お前この顔に見覚えはないか?」
 サングラスが白服に視線―とはいってもそちらを向いただけだが―を向けると、白い人垣の向こうから黒いアタッシュケースを持って現れた白服が切彦に見えるような位置で、そのケースを開く。
 ここからでは中身が全く見えない。が、話の内容から言うに、写真が入ってるのだろう。
「……あるよな……なにせ―」
 サングラスが妖しく光った。
「自分が殺したやつなんだから、な?」
 依然として貼り付けられたままの切彦の目が、かつて見たこともないほど開かれた。
 そうれもそうである。悪宇商会の仕事は、完全なる極秘任務。情報屋でさえもつかむのは難しい。特にそういう仕事は。
 そんな切彦を鼻で笑うと、
「まあそんなやつはどうでもいいんだ……大事なのはこいつの持っていた、鞄だ」
 サングラスはおどけたように言った後、急に言葉を強める。
「単刀直入に訊く。……それを何処へやった?」
「………」
 無言でうつむいたように下を向く切彦。
 そんな切彦を助けられない自分の情けなさに嫌気が指す真九郎。
 二人を一瞥し、サングラスはフンと鼻を鳴らし、そいて、片手を挙げた。
「……やれ」
「はっ!」
 そう返事をした白服達の一人が切彦に駆け寄って、彼女の股のすぐ下あたりの壁に、U字型の金属を打ち込んだ。カンカン、と金槌の音が響く。
その間に、もう一人がそれに麻縄らしき縄を頭上に向かって束ごと投擲。どうやらこの部屋は吹き抜けで、二回のギャラリーのようなところで白い服がそれを受け取った。
 そこまで呆然と真九郎は見つめていて、はっと我に返る。止めないと。
「や、やめ……」
「何か?」
 ごりっと、音が出るほど強くスタンガンが当てられた。
 ダメだ。抑えろ。ここで気を失ったら……。
そうしている間にも、作業は進む。なにやらカラカラと音がしてから、縄が下に落とされる。すばやくそれを拾った白服が、U字金属に通す。



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