モララーのビデオ棚in801板60at 801
モララーのビデオ棚in801板60 - 暇つぶし2ch100:Living Dead Lovers 5/7
10/09/15 00:03:30 T2eentl90
小さな痛みの後に甘い疼きが腰の奥で爆発し、夏野は勢いよく達した。
「大丈夫?」
達した余韻で情欲に弛緩したまま、夏野は忙しない呼気を鎮めようとする。
「…大、丈夫だから、ジェル…取って来て」
「待ってて」
ちゅっと軽いリップノイズを立ててフレンチキスを落とすと、夏野は照れてぷいっと顔を背けてしまった。
賢いけど気難しい猫のようで、徹は忍び笑いを堪えながらジェルを取りに立った。
後孔が乾いたままだと動き辛く、何より夏野を傷つけてしまう。
人狼なので血が流れてもすぐに治り、血は潤滑油の役割を果たしてくれない。
徹は夏野とのセックスを苦痛だけで染め上げたくなかった。
「お待たせ」
「別に」
衣服をすべて脱ぎ去ると徹は夏野に覆いかぶさった。太腿に口付けながらそっと軽く押すと、
夏野がそろりと脚を開いていく。
その様が「徹ちゃんが押すから脚を広げられるだけで、けして俺から脚を広げるなんてまねはしてないぞ」
と言っているようで、
徹は思わずくすりと笑みを滲ませてしまう。
「何だよ笑ったりして」
「いーや別に。夏野は可愛いなぁと思って」
「ふざけたこと言ってんなよ」
つり上がった目尻をキスで宥めつつ、手の平に取ったジェルを指に絡めてそっと夏野に沈めていく。
暖かい夏野の中が異物感と徹の冷たい体温にきゅうっと収縮する。
屍鬼には寒暖など関係ないが、人間でありながら屍鬼である人狼は体温があり、
人間よりは耐性があるとはいえ多少は寒暖を感じる。
こりこりと前立腺を刺激すれば夏野の肌は上気し、暖かい涙が流れていく。
それなのにこの死んだ体はいつまでも冷たいままだ。
「ごめんな。俺、いくら夏野が暖めてくれても冷たいままで」
申し訳なさにそっと涙を拭うと、夏野は柔らかく笑い徹を抱き寄せて幼子にするように額に口付ける。
「いいよ。俺が何度でも徹ちゃんを抱きしめるから。徹ちゃんはただ俺の体温を感じてくれるだけでいい」
鼻の奥がつんとして、夏野に抱き着いて遮二無二泣き叫んで謝りたくなる。
「殺してごめん。飢えに負けてごめん」と。

101:Living Dead Lovers 6/7
10/09/15 00:05:33 T2eentl90
でもそんなことはできない。夏野は根底では今でも屍鬼も、己を殺した徹も許していないからだ。
だから徹は腕の中の存在をただ大切に、大切に、抱きしめた。
「はぁッ……ん、そろそろ、いい、よ」
「うん」
ぐっと体重を乗せて腰を突き出すと、ぬぷっと呑みこまれていく。
「ん、う、あ、んあっ」
「夏野」
夏野の呼吸を促すように、髪や頬を愛撫する。
「う、あ、とおる、ちゃんっ」
「うん、俺だよ」
「ああっ…あん…ぅあっ」
夏野の息が整ってきたところで、ゆっくりと引き抜いては大きく腰を突きこむ。
冷たい杭がペースを徐々に上げて夏野を追い込んでいく。
熱を持たない徹のものが突き上げるたび、腰が熱く重く痺れていく。
「夏野っ…夏野っ」
縋るように名前を呼ばれると、胸の奥に飲み込んだ硬く凍った怒りが絆されていく。
まるで自分達がただの人間の恋人同士みたいだと勘違いできそうで、夏野は徹を掻き抱いた。


「徹ちゃんに抱かれてイったときの感覚って、死んでいく感覚に似ている」
荒くなった呼吸と火照った体が落ち着いた頃には、夏野はうとうととまどろんでいた。
徹は先を促すように乱れた髪を梳いてやる。
「血を吸われる快感が終わると、手足が無くなったみたいに体が重くなって世界が真っ暗になっていくんだ。
そしてどこまでも落ちていく。俺は徹ちゃんに抱かれる度に、人だった頃の最後の夜を繰り返すんだ…」
「…夏野?」
覗き込むと、寝付いてしまっていた。こうして見る寝顔は人間だった頃とちっとも変わっていない。
自分はかつて飢えに負け、夏野以外にも人を殺め、罪を犯した。
夏野が血を与えてくれるから、今は飢えることもなく人を殺さずに済んでいるだけだ。
いつか夏野がその胸に抱える屍鬼への怒りと憎しみが溢れたら、そのときはどこまでも夏野に着いて行こう。
そしてこの手で殺した夏野に、今度こそ死なせてもらうのだ。
(でも、それまではずっとそばにいるよ)
徹は眠る夏野の掌にそっと冷たいキスを捧げた。

102:Living Dead Lovers 7/7
10/09/15 00:07:04 17vflZ9l0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
スレ立てではご迷惑をお掛けし、申し訳ありませんでした
書いてるうちに「むしろ徹ちゃんは包容受けじゃん!」と起き上がった
dgdgですが小説書いたのも棚投下も初めてなので、ご容赦いただけるとありがたいです

103:風と木の名無しさん
10/09/15 01:17:43 KLvpc6UG0
GJGJ!
お互い離れられない二人が切なくてイイ!

104:風と木の名無しさん
10/09/15 21:32:04 EnTEFyVj0
前スレ>>193-195に※トンでした。
規制くらわないうちに続編。
先輩×後輩←更に後輩
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


真夜中に鳴り響く、携帯の着信音。
曲は俺の大好きなアニソンの……って、今はそんなことはどうでもいい。
このメロディが流れる時は、俺に『命令』が下る時だから。


「後は任せたわ」

相手は、それだけ言って電話を切った。
用件どころか、自分の名前さえも伝えてこない。
勿論、俺の都合などお構いなしだ。
もっとも俺の方は、自分の都合なんかより、この『命令』の方がよっぽど大事なのだが。


105:風と木の名無しさん
10/09/15 21:32:49 EnTEFyVj0
自室を出て、指定の場所に向かう。
そこには、必ず彼がいた。
いつもとは違う彼が。



「ハヤテくん、大丈夫?」

毎回、最初にかけるのは同じ言葉。
返事が返ってくることはまずないけど、何か言わなければならない衝動に駆られる。


俺に下された『命令』
それは、あの人の後始末をすること。
つまり、あの人に散々弄ばれた彼の面倒を見ることが俺への『命令』だった。



最初に呼ばれた時は、ぐったり横たわっているハヤテくんをみて、頭の中が真っ白になってしまった。
そして、悪魔のようなあの人の囁き。


106:風と木の名無しさん
10/09/15 21:33:22 EnTEFyVj0

『ごめんなぁ、先にいただいたわ』

ここで相手をぶん殴って、「俺のハヤテくんに手を出すな!」とか言えたらかっこいいんだけど、現実は二次元のようにはいかない。
パニックになりながらも彼を抱きかかえて部屋に戻り、一晩中手を握っていたのは、もう大分前のことになる。

「ごめんね…俺が弱いばっかりに…」

本業ですらまともにできていない俺に、どうやってあの人から彼を救えというのだろう。
歯がゆい思いだけが募る。

『飽きたらタイキにやるわ』

そう言って不敵な笑みを見せたあの人。
他の誰でもなく俺を選んだ理由が、余りにも残酷だ。




「俺が、必ず助けるから」


思いとは裏腹に、今日も俺は『命令』に従う。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
書いておいてなんだけど、そんな日はこないんじゃなかろうか。

107:風と木の名無しさん
10/09/16 03:21:53 p09mJabAO
>>104
久しぶりに来たら続編キテター!!GJGJです!
後輩←更に後輩ktkr
後輩君本業がんばってくれ!と応援せざるをえない…たとえ可能性が低くとも。

108:1/2
10/09/16 21:05:36 E8w3F0Dv0
ドラマ浄化ーで一応、盾→←鑑識です。
浄化ースレのすれ違い両思いに感化されてやってしまいました。
初投稿なので不備があったらすいません。
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!



自分で決めたんだ。
マスターの代わりになるって。

マスターと盾さんの間には誰も踏み込むことなんか出来ない。
サエコさんと別れたのもそういうのを彼女がどこかで感じたからかもしれない。
どんなに頑張っても絶対に入り込めない、共有できない距離に耐えられなくなったのかも。
でも俺はそれでもいいって思った。
マスターに盾さんを頼むって言われて、傍にいられるなら代わりでもいいって。
本当に、思ってたんだ。


***

あ、盾さんだ。
盾さんが俺を見つけてこっちに来た。
何か話し掛けてくるけどよく聞こえない。
だけど笑ってるからきっと楽しい話なんだろうな。
わからないまま盾さんと話をしてたら急に抱きしめられた。
ドキドキしてる俺の耳に唇を寄せて
『マスター…』
幸せそうに呟く声が聞こえた。

***



109:2/2
10/09/16 21:06:50 E8w3F0Dv0

「…くん、工藤くん」
ぼやける視界がだんだんとはっきりしてくる。
目の前には少し心配そうな顔をした盾さんがいる。
「盾、さん…」
またあの夢か。最近よく見る夢。
「あのさ、変なこといってなかった?」
「いや…なにもなかったよ」
よかった。盾さんには知られたくない。これ以上余計なものまで背負ってほしくない。
背負ってやるって言った自分が盾さんの負担になるようなことはしたくない。
「コーヒー淹れよっか」
気持ちを切り替えるように立ち上がる。
盾さんの横をすり抜けようとしたら腕をつかまれて抱きしめられた。
「積極的だね」
「君がどこかに行きそうに見えた」
「どこかってどこだよ」
どこにも行くわけない。行くところなんかない。
あっても行けない。だって俺はマスターの代わりなんだから。
さっきの夢と重なる。今、盾さんが見ているのは俺じゃない、マスターだ。
マスターを想ってるんだって思ったら、抱きしめられてうれしいよりも悲しくなる、泣きたくなる。

盾さんごめんね。
マスターの代わりなのにあんたを抱きしめ返すことも出来ない。
傍にいられればいいなんて嘘だ。俺のことを見てほしい、好きになってほしい。
伝えたい気持ちと泣きたい気持ちを閉じ込めようと、握った拳に力をこめた。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
思いのほか暗くなりすぎました。
そして盾→←鑑な感じが全くしない…。


110:お前は俺なんだ
10/09/16 23:53:45 yqIz68vQO
ジョーカー半生、たまたま連投スマソです。
マス盾にたぎってしまい、なんだかわいてきたので投下してみます。

だって最終回直後だから仕方ないじゃないと開き直り居直りスマソ。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


111:お前は俺なんだ 1/5
10/09/16 23:55:03 yqIz68vQO
盾にとって保護者といえば見上だった。
事件の後、俺はずっと施設で育ったが誕生日や学校を卒業した時など節目節目に必ず見上さんから祝いのメッセージを貰ったものだ。
自分は普通ではない。
そのことに気がついたのは思春期になってからだった。
他人に冷静で自分に客観的すぎる自分。
異性に興味がわかない。
感情がない自分に対して不安を覚えて僕は「壊れてる」と見上さんに訴えた。
僕はこれで大丈夫なんですか?と。
見上さんは、そういう自分を抱きしめて言った。
俺たちは大事なモノを失ったんだから、そう感じて当然なんだと。

112:お前は俺なんだ 2/5
10/09/16 23:57:09 yqIz68vQO
そう言って見上さんは僕の唇を奪った。
不思議と嫌悪感のない自分に驚く。
見上さんの包容力に安心しきっている自分に気がつく。
「ああ…俺はきっと自分を誰かに委ねて安心したかったんだ…。」

見上さんは執拗に俺の身体をまさぐりながら、舌をからめていく。
舌の感触で感じてきている自分に驚きながらも、1人で自慰するときとは違う興奮を覚えて、自ずと積極的に舌をからめる。
やらしいなあ…。
自分のあそこに血が集まっていくのがわかる。
そっか俺は男にも興奮できるんだ。
見上さんに尻やら太ももやら触られて感じる。


113:お前は俺なんだ 3/5
10/09/16 23:58:31 yqIz68vQO
不思議な気持ちで。
でも快楽を感じてしまい。
安心しきっている自分は、さらに見上さんに自分の身体を委ねる。
見上さんの手が俺自身に伸びると気持ちよくって「あん…」と声がもれた。
調子づいた見上さんはさらにいやらしい手つきで俺自身に愛撫を施す。
思わず声がもれる。
「ん、んん…だめ…きもちよすぎです…」
見上さんは、そんな俺の姿に満足気に「もっと良くしてやる…」とさらに愛撫を強くする。
「あ、だめ…もういっちゃう…」
「いいよ…イケよ」
許しを得た途端、俺のははじけてしまい見上さんの手を白く汚した。


114:お前は俺なんだ 4/5
10/09/16 23:59:48 yqIz68vQO
「はあ…」
イッた余韻で思わず声がもれる。
イッた盾の顔を眺めながら見上は自分の手のひらに飛び散った盾の白濁を盾の後ろにおもむろに塗りつけはじめて。
「俺にも気持ちよくさせてくれよ」
言い訳じみながら、後ろの穴に愛撫を施し始める。
「ん、あ、ああ…」
後ろの穴への刺激に又声がもれる。
優しくほぐしていく見上の指はそれでも執拗で、あまりの気持ちよさに盾は早く指ではない熱い塊が欲しくなって。
「見上さん、もう大丈夫…。ねえ入れて…お願い…」
その声を合図に見上も堪えきれなくなって盾の後ろの穴に自分自身をあてがった

115:お前は俺なんだ 5/5
10/09/17 00:01:33 yqIz68vQO
不思議な気分だった。
「あれ、俺、見上さんとセックスしてるのかよ」って。
何でこんなに気持ちいいの?って。
繋がりながら擦りあいながら見上さんと俺は今度は同時に昇りつめることができた。
「どーしよ、俺、ホントにフツーじゃないかも。」
でも俺の中に欲望を放って落ち着いたのか見上さんは「思春期すぎたらお前もマトモな恋愛できるようになるよ」と言ってくれた。
まだ実感は全然ないけど、いつか将来、そうなるといいなと、「ならないだろうけど」と思いながらも、微力ながら祈った。
でも、見上さんとのセックス気持ちよすぎる。


116:お前は俺なんだ 6/5
10/09/17 00:03:14 yqIz68vQO
思春期が終わるまでは楽しんでいいよね、と自分に甘い俺は自分に言い訳してしまうんだった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナンバリング間違えたスマソ!
マス盾に最終回萌えすぎた。
後悔はしていないw

117:風と木の名無しさん
10/09/17 00:19:25 Pe8MMaeN0
浄化ーが浄化しきれず、
眠れなくて覗いてよかつたー


>108-109
ワンコ、可愛いよワンコ!!
マスタの絶対的な愛から抜け出れない盾さんへの愛がシュテキ
「両思いなのに擦れ違い」マニアには玉りません
第2弾お待ちしておりまする

>110-116
思春期盾さんエッロー
感じながらも「…です」口調エッロー!!
ぜひ今度はサエコと別れた後の2人も読んでみたいッス!!
オッサンスキーには玉りません!!



118:BA/SA/RA3の戦国最強×権現
10/09/17 00:27:54 BIBrw24Z0
BSR3
某スレのレスを見たら書きたくてしょうがなくなった
体がうずいちゃう権現

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | |> PLAY.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

119:BA/SA/RA3の戦国最強×権現 1
10/09/17 00:28:49 BIBrw24Z0
月明りが、濡れた瞳を反射した。
そして主と臣下は対峙する。

「……忠勝、ワシは、おかしいのか?」








混乱した。
それはもう、どうしようも無いことなのではないかと思い立った瞬間、苦いものが込み上げてきた。
気づかぬうちに、振り返らないうちに、自分は決してもどることのできない橋をわたってしまったのだと。



それに気づいたのは、豊臣の臣下になって数日もたたないうちのことであった。

「……っ、く……」

深夜の寝室。寒々しい空気の中に、生暖かいものが混じる。
ぼんやりとしか見えない視界の中で、必死に右手を上下に動かす。
くちくちという音の中で、時たま先端をえぐるようにこねる。
詰まった息が、荒く吐き出される。
壁にもたれ掛かった家康の背中が、ぴん、と伸びた。
と、同時に栗の花に似た香りが鼻をつく。

120:BA/SA/RA3の戦国最強×権現 2
10/09/17 00:29:21 BIBrw24Z0

「はーっ……はーっ……」

萎えた陰茎から、離した手にはべったりと放ったものが付着していた。
わずかに動かしただけで、くちくちと鳴る音に耳を塞ぎたくなる。

これで、終わりだ。

そう思い、手拭いを取ろうと腰をあげた瞬間。
意識してしまった。
陰茎の更に奥。物足りないとでもいう様に疼き出した、その箇所を。

「……っ」

唇を噛む。
疼きから痛みへと意識を向ける為に。
治りかけた傷痕に、ピタリと歯を突き立てた。
だがその痛みさえも、強くなる疼きの前に霧散して行く。
ならば、と無意識に右手を噛んだそのとき。
口の中に懐かしい苦味が広がった。
どろりと、舌にのるその液体は家康の奥底から身体に残る記憶を引きずり出す。

捕らわれの
夜ごとの
苦しみの
拷問の日々。


121:BA/SA/RA3の戦国最強×権現 3
10/09/17 00:29:52 BIBrw24Z0

わかる。みなくてもわかる。
力を失っていたはずの陰茎が、先よりもなお、張りつめるのを。

待ち焦がれている。
いつかのように無理矢理に。いつかのように複数に。いつかのように乱暴に。
奥まった場所に、浅ましく突き立てられるのを、

鳥肌が立った。
認めざるを得なかった。
自分を苦しめていた行為を、何時の間にか身体が求めていることを。


(ああ。)
(疼きが、止まらないのだ。)


月明りの下、それを隠すことはしなかった。
荒い息も、剛直も、欲情も。
なにもかも、考えて、ありのままで臣下の前に立つ。

「……」
「ただ……かつ……?」

低く唸る、からくりの駆動音。
そっと、冷たい感触が頬に触れた。
する、する、する、と三度。宥める様にあやす様に。

いつも、こうなのだ。
忠勝は、この臣下は、いつだって家康の味方なのだ。

122:BA/SA/RA3の戦国最強×権現 4
10/09/17 00:30:26 BIBrw24Z0
だから、家康が追いすがった時、その身体をまさぐるのも、特段おかしなことではない。

それが、家康の救いになるのであれば。
【どんなことでも】実行する。




「は―、あっ、あ、あ、あああ」

感じたのは、充足感。
羞恥も、後悔もあったが、それを押しのけてなお、肛門を満たす、その無機質にそれを感じた。
先程まで、赤子の頬をなでるように優しさを伴っていた忠勝の指が、荒々しさをもって奥へ奥へと突き進む。

「ふっ、う、う」

ごり、ごり、と内壁をこするたび、もっとその感覚を追おうと明確な意思を持ってそこが収縮する。しゃぶるように、こすりつけるように。

「お、く……もっと、おく……だ!」

そうすると更に気持よくなれることを家康は知っていた。



確実に近くなる絶頂を前に、空を仰いだ。
柔らかくあたりを照らしていた月は雲に隠れ、暗闇が広がるばかり。
まるでひとつになったかのように、景色も家康も忠勝も、黒く黒く塗りつぶすようだった。

123:風と木の名無しさん
10/09/17 00:31:43 BIBrw24Z0
ビッチ権現もピュア権現もどっちも美味しく頂きたい

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 権現マジ権現
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

124:風と木の名無しさん
10/09/17 01:52:12 lG2HeMZJ0
>>123 萌えました・・・!!!!
誰か権現様をどうにかしてくれないかな
足軽でも敵武将でも誰でもいいしかしやっぱり忠勝だろうかとか
そんな私は非常に満たされました!ありがとう・゚・(つД`)・゚・

125:創作 赤ずきん×オオカミ 1/7
10/09/19 06:05:12 BEAQsDk6O
創作で、赤ずきん×オオカミです。
微妙に三角関係的な描写あり。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


むかしむかし、あるところに赤ずきんと呼ばれる少年がいました。外に出るときはいつも赤いずきんを被っていること、またそれが少年ながらに似合うかわいらしい容姿であることから、赤ずきんと呼ばれていました。
ある日、赤ずきんは森の中に住むおばあさんの家へとお見舞いに行くことになりました。
お母さんに渡されたバスケットを携えながら、赤ずきんが花畑沿いの道を歩いているときでした。

「赤ずきんちゃん、赤ずきんちゃん」

どこからか声がして、赤ずきんは辺りを見まわしました。すると、花畑の方から、1匹のオオカミが近付いてきました。
オオカミはふさふさの耳と尻尾を揺らし、人なつっこい笑みを浮かべて話しかけてきます。

「これからどこに行くの?」

「おばあちゃんちにお見舞いに行くの」

「そうなんだ。じゃあ、ここにある花をつんでいったら、きっともっと喜ぶよ」

そう言って、オオカミは辺りに広がる花畑を指しました。
オオカミの言うことに頷いた赤ずきんは、さっそく花をつむことにしました。
ひとつ、またひとつと、赤ずきんの手の中に花が増えていきます。

126:創作 赤ずきん×オオカミ 2/7
10/09/19 06:07:42 BEAQsDk6O
けれど、赤ずきんはふと思い出しました。
『オオカミは悪知恵が働くから、口車に乗ってはだめよ。自分の行き先も、決して教えてはだめ。』
お母さんが以前、森に出る赤ずきんに言っていた言葉です。さっき、赤ずきんはオオカミに今日の用事を話してしまいました。
もしかしたら、自分が花をつんでいる間に、オオカミはおばあさんの家に行くかもしれない―。
そう考えた赤ずきんは、花をつむ手を止め、はっと顔を上げました。


「ん?どうしたの?」

しかしそこに映ったのは、赤ずきんと同じように花をつんでいるオオカミでした。オオカミの特別鋭くも丸くもない目には、悪い企みなどないように見えます。
お母さんに言われたことと、目の前のオオカミの姿がつり合わず、赤ずきんは思わず訊ねました。

「…どうして、オオカミさんもお花をつんでるの?」

「んー、ふたりでつんだ方が早いかなって」

迷惑だったかな、と、オオカミが苦笑します。
赤ずきんは少しの間、このオオカミについて考えていましたが、やがてふるふると首を横に振るだけの返事をしました。

127:創作 赤ずきん×オオカミ 3/7
10/09/19 06:10:33 BEAQsDk6O
いっしょに花をつみながら、赤ずきんはちらちらとオオカミを見ます。花をつむオオカミの顔は、子供である赤ずきんの目にも、なんだか無邪気に映りました。
―変なオオカミさん。そう思いながら、赤ずきんもまた手を動かしました。

気付いたころには、ふたりの手の中にはたくさんの花があふれていました。

「はい、どうぞ」

「…ありがとう」

オオカミから花を受けとった赤ずきんは、不思議そうな目で彼を見つめます。
ふと、オオカミの片手に、まだ幾らかの花の束が残っていることに気付きました。

「それは、どうするの?」

「これは、俺の分。…渡したい相手がいるんだ」

喜んでくれるかは分かんないけどね、と、オオカミは苦笑します。
そのどこか照れたような表情と、手の内の花を見比べながら、―やっぱり、変なオオカミさん。と、赤ずきんは思いました。

128:創作 赤ずきん×オオカミ 4/7
10/09/19 06:13:23 BEAQsDk6O
オオカミと別れた後、赤ずきんはおばあさんの家に辿り着き、頼まれた品物や、つんできた花を渡しました。たくさんの花を受けとったおばあさんは、きれいなお花ね、ありがとう、と喜んでくれました。

帰り道、赤ずきんは同じ道を辿って歩きました。あの花畑に行けば、またあのオオカミに会える気がしたのです。けれど当然ながら、オオカミの姿はもう花畑にありませんでした。
―そういえば、花を渡したい相手がいるって言ってたっけ。
赤ずきんはオオカミの言葉と共に、あのときの表情を思い出しました。
オオカミは、その相手のところに行ったんだろうか。そう思ったとき、赤ずきんはつきりと自分のどこかが痛むのを感じました。
だけど、それがどこなのか、またなぜ痛むのかが分からず、首を傾げながらとぼとぼと帰路を辿りました。

129:創作 赤ずきん×オオカミ 5/7
10/09/19 06:16:20 BEAQsDk6O
それから年月が経ち、赤ずきんと呼ばれていた少年は、顔に幼さを残しながらも青年へと成長していました。
また、青年は猟師の職に就きました。
童顔である彼に銃は似合わない、などという人もいましたが、彼はそんな声に反発するように、むしろ積極的に森へと狩りに出かけていきました。

ある日、いつものように青年が森の中を歩いていると、ガサ、という音が耳に届きました。
勘のいい青年は、それが獣の出した物音だと判断し、近くにあった木の影に身を潜めました。
ガサ、ガサと、ゆっくりと物音が近くなっていきます。青年は銃を構え、獣の姿が見える瞬間を待ちました。
そして、向かいの木立の隙間に、獣の耳と尻尾の影が見えたとき―。

130:創作 赤ずきん×オオカミ 6/7
10/09/19 06:19:34 BEAQsDk6O
パァン、と、銃弾の音が森に響きました。
続いて、打たれた獣が地に倒れる音。

青年は少し待ち、獣の影が起き上がらないことを確認してから、ゆっくりとその方向に向かいました。
足を進め、薄暗い森の中でも獲物が確認出来たとき―。


「…、あ…、」


青年は、思わず声を漏らしました。無意識にこぼれたその声は震え、青年の驚きを表していました。
木の幹に背を預け、荒い呼吸を繰り返す獣に、彼は見覚えがありました。
青年が撃った片足からは血が流れ、その赤さが、獣の手からこぼ落ちた花を染めていました。その花の種類にさえ、青年には覚えがありました。


「…俺を、殺しますか…?」

はあ、と喉を喘がせながら、獣が青年を見上げます。立ちつくす青年はただ、表情を浮かべることすら出来ず、故に無表情で獣を見下ろしていました。
その瞳が、僅かに震えていることなど気付かずに、獣が言葉を繋ぎます。

「…少し…、待って、いただけませんか…?この、花を…、届けたい、場所があるんです…」

そう言って、きゅ、と花の束を握り、獣は弱々しく笑いました。
その表情が、青年の記憶にある、いつかの照れくさそうな笑みと重なりました。

131:創作 赤ずきん×オオカミ 7/7
10/09/19 06:24:22 BEAQsDk6O
―ああ。
青年は、気付いてしまいました。
この獣が―彼が、あの日花を渡そうとしていた相手は、もう、「場所」という思い出としてしか残っていないのだ、と。

応えを返さず黙りこくる青年を、獣が不思議そうに見つめます。
その、黒い瞳が、まるで空虚な穴のように見え、青年は崩れ落ちるように獣を抱きしめました。
獣の、彼の温かな体温。
そして、自分の頬を滑る涙の冷たさ。
その温度に、青年は震える声をこぼしました。



「…オオカミ、さん…」


―やっと、見つけた。
そう呟いた青年は、ぼう然とした目を向けるオオカミの唇に、やさしくかじりつきました。





□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・;)イジョウ、ジサクジエンデシタ!

元々は自カプのパラレルで考えていたものですが、いっそ創作にしてしまいました。尻切れトンボかつ微妙なオチですみません…。
スレ占拠失礼いたしました。

132:コーヒーを一緒に・・・1/10 ◆CPu0lwnplk
10/09/19 19:27:36 KrvtpxWR0
 闇金ウシジマくんで戌亥×社長前提の柄崎×社長です。小悪魔(魔王様)誘い受け、
媚薬物、エロありです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
 時刻は夜の九時、いつもならとっくに終業を迎えている時間だが、顔見知りと長話
をしてしまい、今しがた本日の業務が終わった。
 「柄崎さん、ちょっと待ってよー!」
 負債者を紹介と言うか、沈めた風俗店から数人分の取り立てを終え、帰路を急ぐ
柄崎を誰かが後ろから呼び止めた。
 何事か、と振り返ると、恰幅の良い男性がふくふくとした頬とお腹を揺すりながら
走ってくる。 
 男性はつい先程柄崎が仕事を終えた風俗店の店長で、まだ40代後半の
筈なのに、ふくふくしい体型とてっぺんが薄くなり始めた頭頂部のお陰で年齢以上の
貫禄をもった人だ。
 「はぁ、はぁ・・・」
 柄崎の元に走ってきた店長は前かがみになり、走ったせいで痛くなったのであろう
脇腹を擦り、荒い息を整えようとしている。
 世間一般から言って、柄崎は身長はそんなに高くない。本当なら店長の方が大きい
のだが、店長が前かがみになっている為に薄くなり始めた後頭部が目の前に見えて
しまう。
 おまけに店長は毛は早々と栄養が足りなくなって少なくなっているくせに、元々肌質
が良いのか、心許ない髪の毛の間から見える頭皮は雪国の10代の小娘のような薄桜色の
玉の肌だ。それが余計毛の少なさを侘しい物に見せている。
 柄崎は噴き出しそうなのを堪え、視界をわざとぼかして店長の頭頂部を直視しない
ようにした。
 そんな柄崎の心の内など露知らず、店長は手に持っていた小さな瓶を柄崎の手に
握らせてきた。 

133:コーヒーを一緒に・・・2/10 ◆CPu0lwnplk
10/09/19 19:29:04 KrvtpxWR0
 「柄崎さん、これ、これあげるから、持ってって」
 「これ、何ですか?ジュースか何か?」
 手の中にすっぽり収まる瓶のサイズと、黒いガラス。それに、どこの国の文字かも
柄崎には分からないパッケージは、やたら元気がよい様な感じのデザインなので、
てっきり栄養ドリンクなどの類と思った。
貰った瓶を手の中で転がしてみると、中に入っている液体が瓶の底でユラユラと
揺れた。
 液体の動きは栄養ドリンクのような水のように滑らかではなく、瓶の内側にへばり
つくように動く感じだ。
とろみのありそうな謎の液体が入った瓶を眺め、柄崎は店長を見た。
店長は愉快そうに柄崎の前に人差し指を立てた手を突き出すと、「チッチッチ」と
舌うちしながら手を左右に振る。余裕ぶった態度に柄崎はイラッとしてしまった。
 これが高田のようなイケメンならば様になるのだろうが、お腹の出た禿げかけのオジ
サンがやると突き倒してやりたくなる。
 「ジュースなんかじゃないよ。うちが色々備品を注文してるメーカーのね、媚薬
らしいんだけど・・・。かなり強力でそのまま飲まずに何かに混ぜても、ンもーっ!
って位効くんだって。どんな子でも効くらしいよ」
 媚薬、という言葉を頭の中で思い浮かべてみるが、どうにも信用できない。
 言葉としては異なるが、よく似た効果を謳うのは男性用の精力剤、勃起促進剤など。
有名な物にはバイアグラがある。バイアグラは医師の処方がいる医療品で、血管を
拡げて血流を促進し、陰茎海綿体の血流を良くすることで勃起率をあげるものだ。
 だが、それならばわざわざ媚薬なんて言い方をせず、素直に精力剤やメジャーで万人
に伝わりやすいバイアグラとでも言っておけば良い。それをわざわざ媚薬と名乗る
とは、自らハードルを上げているようなものだ。
 何しろ、媚薬、と言われて、世間一般でイメージするものは精力剤や勃起促進剤では
なく、性欲を高める物を指す。

134:コーヒーを一緒に・・・3/10 ◆CPu0lwnplk
10/09/19 19:30:22 KrvtpxWR0
もっと下世話な言い方をすれば、その気の無い相手をその気にしてくれる催淫剤として
イメージされる。
 そして、究極のイメージは惚れ薬と言われる物だが、薬ごときで人の感情がどうこう
出来る筈もない。
 柄崎はさも馬鹿馬鹿しい、というように鼻で笑う。
 「そんな馬鹿な。媚薬なんて・・・」
 ありえない、と言葉を口に出そうたした瞬間、ポケットに入れた携帯電話が鳴りだした。
 ディスプレイを見てみると、着信相手の部分には「丑嶋馨社長」と出ている。
 別に「丑嶋社長」でも、「社長」だけでも登録すれば良いのだが、あえてのフルネーム
登録だ。あの逞しい体躯と強健な性格に似つかわしくない馨(カオル)という愛らしい
名前を、本当は一度でいいから本人相手に呼びかけてみたい。勿論、女性的な名前への
嘲りとしてではなく、あくまで純粋に呼んでみたいからだ。
 もし呼んだらどうなるだろうか。親の付けた名前なので名前事態に怒りはしないだろうが、
古い幼馴染なのにも関わらず、部下で明らかに下に見ている感がある柄崎に気安く呼ばれる
のは良しとしてくれないだろう。
 恐らく、丑嶋を下の名前で呼ぶと言う柄崎の願いは敵わないだろう。だからせめて、と
携帯の名前だけはフルネームで入れているのだ。
 考えようによっては並々ならぬ忠義というか、敬愛の表れととれるが、人から見ればある
種の盲執と言え、はっきり言えば気持ちの良いものではない。柄崎自身が重々分かっている
から、誰かにこれ見よがしに披露したことはないのが救いだ。
 それにしても、終業時間はとっくに過ぎていると言うのに何故電話が掛ってくるのだろうか。
 柄崎が会社を出る際に見た社員が出かける際には、丑嶋は今日一日新規の客の面談と利息
の回収に当たると言っていたのだ。普段の業務と別段変ったことはしていない筈だから、
こんな時間に電話が来るのがおかしい。
 もしや、債務者が飛んだか、もしくは厄介な債務者に当たってしまい面倒が起ったのだろうか。
 柄崎は慌てて携帯の通話ボタンを押し、電話に出た。

135:コーヒーを一緒に・・・4/10 ◆CPu0lwnplk
10/09/19 19:32:00 KrvtpxWR0
 「はい!社長、何でしょうかっ!」
 電話では向こうに伝わる筈もないが眉間に皺を寄せ、緊張で背筋を引き締めた。
 「よぉ、柄崎!」
 「・・・誰?」
 着信は確かに丑嶋からなのに、電話の向こうから聞こえてきたのは丑嶋の声ではなかった。
どこかで聞いた事がある声だと思ったが、すぐに相手が答えを出してくれる。
 「戌亥だ。いま丑嶋くんと俺の家で飲んでたんだけど、丑嶋くん車だし・・・、柄崎迎え
に来てあげられないか?」
 「え・・・?あ、ああ・・・、うん」
 電話の相手は戌亥だった。柄崎、加納、丑嶋と幼馴染で大人になった後も付き合いの深い
戌亥とは丑嶋もよく食事やお酒を共にする。
 大して疑問を持つこともなく、柄崎は二つ返事で了承した。折角なので貰った瓶はシャツ
の胸ポケットにしまい込む。
 そして、会社に帰って車を出すことになった。



 戌亥のマンションのインターホンを押すと、しばらくしてから戌亥がドアを開けて顔を覗か
せた。
 「お、御苦労さん」
 「社長は・・・?」
 戌亥が後ろを振り返る間もなく、丑嶋が仏頂面で戌亥の後ろから顔を覗かせた。
 「・・・おう」
 迎えに来て貰った礼の一言を柄崎に言うでもなく、丑嶋は戌亥を退かせて部屋の外に出た。
 そして、そのまま戌亥にも柄崎にも一度も視線を合わせず、いつも通りの態度のまま歩き
だし、帰路に着くためエレベーターがある方向へ一人で向かってしまった。
 「あ・・・、じゃあ、戌亥、俺ももう行くわ」
 「おう」
 大した会話もせず、柄崎は踵を返して丑嶋の後に着いて行く。

136:コーヒーを一緒に・・・5/10 ◆CPu0lwnplk
10/09/19 19:35:09 KrvtpxWR0
 戌亥は遠ざかって行く柄崎の姿には目もくれず、柄崎の前方を行く丑嶋の背中だけを見つ
めた。
何ともそっけない態度だ、と少し寂しく思う。だが、いつでもぶれない姿勢の丑嶋が眩しく
もあり、戌亥は眼を細めて笑みを浮かべ、ドアを閉じた。



 柄崎は先を行ってしまう丑嶋に追いつこうと小走りでついて行く。二人の身長差は20センチ
ほどあるので当然歩幅も違う。しかも丑嶋は脚が速いので追いつくのは容易ではない。
 時間はもう夜の10時近いので、案外音が響きやすいマンションのコンクリートの床の上で
走るのはマンションの住民に迷惑だ。
 丑嶋に追いつくのを諦め、速度を緩めて歩いて行くと、前方にはエレベーターホールには
ドアがエレベーターが見えた。中には丑嶋が一人立っていて、コントロールパネルがあるで
あろう壁に手を付いていた。
 「お待たせしました」
 柄崎が乗り込むと、丑嶋が一階のボタンを押そうと手を動かした。無愛想な態度で前を歩い
ていた丑嶋だが、言葉に出さないだけで柄崎が追い付いて来るのを待っていたらしく、1階の
ボタンを押す前の人差し指の位置はドアを開けるボタンを押していた。
 エレベーターが動きだすと、柄崎は狭い密室に丑嶋と2人きりだということを変に意識して
しまい、妙に緊張してしまった。
 丑嶋も無言で、エレベーターが動く音だけが聞こえる。
 それにしても、何故丑嶋は店でなく、戌亥のマンションで飲んでいたのだろうか。戌亥と
丑嶋が二人きりで会う事は疑問の余地は無い。丑嶋が戌亥に何か頼みごとがあった時など、
よく二人で会っている筈だ。
 しかし、そういう場合は人気の少ない場所で昼間に話したりするようだ。もし夜としても、
食事をしながらでも個室の用意出来る店を使う。わざわざプライベートな空間である戌亥の
マンションを選んだ事など、柄崎は一度も聞いたことが無い。

137:コーヒーを一緒に・・・6/10 ◆CPu0lwnplk
10/09/19 19:35:55 KrvtpxWR0
 ましてや仕事に関する事ならば、いつも柄崎は丑嶋が戌亥と会うのを聞いているのだ。
 だから、今夜の用事は幼馴染の友達として会っていたのだろう。それならば丑嶋も戌亥も
水臭い。終業後とはいえ、加納も柄崎も同窓会じみた飲み会ならば喜んでお付き合いした
ものを。
 柄崎は何だか自分と加納が楽しい遊びからのけ者にされたようで寂しくなり、丑嶋に聞こ
えないような小さなため息をついて重苦しいような空気を吐き出し、新鮮な空気を含むべく
大きく空気を鼻から吸い込んだ。
 鼻から空気を吸い込むと、丑嶋の立っている方から桃のような香りがした。酒らしき匂い
は少しするが、桃の香りにかき消されてアルコール臭さは掻き消えてしまう。
 何の香りか、と丑嶋の方をチラリと見ると、長袖のポロシャツから少しだけ見える手首の
皮膚の薄い部分には、うっすらと赤い内出血らしき物があった。
 すぐに柄崎の頭の中で、散らばっていた事項が集まり、答えとして固まった。
 漂う甘い桃の香りは恐らくシャンプーなりの戌亥のマンションの風呂場に備え付けてある
物だろう。こんな夜中に戌亥の元に丑嶋が一人で来なければならなかったのは、二人っきり
でなければならない時間だったから。そして、加納と柄崎はのけ者にされた訳ではなく、
最初から居てはならなかったのだ。
 正直、薄々とだが戌亥と丑嶋の只ならない関係には気が付いていた。 
 いや、正確には完全に知っていた。柄崎も、あえてその事を話題にしたことはないが、恐ら
く加納もだろう。
 けれど、気がついていることを柄崎は認めたくはなかった。それは、自分の中にある丑嶋の
強く気高い男性としてのイメージが崩れることへの危険を感じたからではなく、丑嶋が夜を
一時でも過ごす相手に対して、みっともない嫉妬を自分の中に燻らすのが嫌だったからだ。
 自分でも探りたくない腹の内を探って、自己嫌悪や常識を巻きつけた本音を無理やり引き
ずりだせば、戌亥の位置に立ちたいという切望が見えてくる。
 丑嶋という人間に並々ならぬ敬愛の念を寄せるきっかけとなったのは、もう10年も前の
出来事だが、これまでは「あくまで人間として丑嶋が好きなのだ」と言い聞かせきた。なのに、
そんなメッキなんて簡単に剥がれてしまいそうだった。
 「あの・・・、社長・・・」

138:コーヒーを一緒に・・・7/10 ◆CPu0lwnplk
10/09/19 19:36:57 KrvtpxWR0
 柄崎は何と言うかも決めていないまま、声を出した。声は自分でも驚くほど小さくかすれて
いて、エレベーターが1階についた際の「チン」というベル音にさえ負けるほど頼りなかった。
 丑嶋は柄崎の声が聞こえなかったようで、開いたエレベーターのドアから出た。
 開いたドアから流れ込んだ外の空気によって桃の香りは消えてしまい、結局柄崎は何も言え
なかった。



 運転中、柄崎は極力仕事の話をするだけに努めた。決して戌亥との事を触れないように。
一度だけ丑嶋の口から戌亥の名前が出た時には急ブレーキを踏みそうに慌てたが、内容は
過日の仕事に関する件だった。
 落着きを無くして事故を起こさないように、自分に「落ちつけ落ち着け」と良い聞かし
ながら運転し、程なく丑嶋のマンションの前に着いた。
 丑嶋は車のドアを開け、降りた。だが、酒が入っているからか、柄崎にはバレていない
事になっているが戌亥に抱かれて体に応えているのか、僅かだが膝が折れる様に前のめりに
なった。
 けれど、丑嶋がそんな弱い素振りを儚げに見せてくれる筈もなく、何食わぬ顔でいつもの
凛々しく堂々とした立ち姿に戻り、運転席の柄崎に声を掛ける。
 「助かったぜ。じゃあ、な」
 「しゃ・・・、社長!」
 柄崎は先程から溜めていた感情を噴き出す様に大きな声を出し、咄嗟に自分もドアを開けて
外に出た。
 「ん?何だ、柄崎」
 丑嶋が眉根を寄せて尋ねてくる。だが、柄崎とて何か考えがあって行動したわけではない。
気が付いたら、勝手に口が丑嶋を呼び止めていて、体が車外に飛び出ていただけだ。

139:コーヒーを一緒に・・・8/10 ◆CPu0lwnplk
10/09/19 19:38:07 KrvtpxWR0
 「・・・えー・・・、と、ですね・・・」
 何か言わないと、何か言わないと、と柄崎は慌てる。呼び止められたものの、何を言われ
るのでも無い丑嶋は機嫌が悪そうになっていく。
 「部屋まで、送ります」
 丑嶋の機嫌が悪くなっていくのに急かされ、柄崎は思いついた言葉を口にした。
 「送ってくれなくていい」
 当然だが、丑嶋は断る。どうせ慣れた道だ。ましてや、後は自分の部屋のある場所まで行く
だけだ。
 「いえ、その・・・、ちょっと酔ってるかな、と思いまして・・・」
 「あっそ。じゃあ、好きにしろ。ついでにコーヒーでも淹れてくれ」 
 しどろもどろとなりながらも食い下がる柄崎を面倒に感じたのか、丑嶋は好きにさせる事に
したようだ。柄崎に背を向けてマンションの入口に向かったが、柄崎がオートロック式の入口を
一緒に通過できるようにゆっくりした足取りだった。



 部屋に着くと、丑嶋はソファに座った。柄崎は手持ち無沙汰そうにしている。
 「柄崎、コーヒー」
 「はい」
 そう言えば、先程そんな事を言っていたな、と思いだした。だが、コーヒーを淹れたくても
台所の場所がよく分からない。柄崎は周囲を見回す。
 「台所はドアを出て右側。コーヒーメーカーにコーヒーは入ってる。カップは棚にあるのを
使え。お前と俺の二人分な」
 それだけ言うと、丑嶋は眼鏡を外して眉間を押さえ、ソファに深く座ったまま動かなくなって
しまった。
 柄崎は頷くと、台所に向かった。

140:コーヒーを一緒に・・・9/10 ◆CPu0lwnplk
10/09/19 19:39:29 KrvtpxWR0
 台所の位置が分からないのは仕方がない。何しろ、柄崎が丑嶋の部屋に来た事は初めてなの
だから。
 しかし、これがもし戌亥ならば、勝手知ったると手早く台所の場所も何もかも把握していたの
だろうか。丑嶋が戌亥の家に行っている位だ。恐らく戌亥だって、柄崎の知らないこの場所に
来る事を許されていて、柄崎とは比べ物にならない程上手くスマートに振る舞うに違いない。
 戌亥の事を考えると喉に小石のような物が詰まったようになり、柄崎は口に手を当てて咳き
こんだ。
 胸の苦しさを抱えつつ、柄崎は台所に入り、コーヒーを用意始めた。
 台所は男の一人暮らしとは思えないように整理されていて、かなり機能的で使い易そうだ。
柄崎は自分の部屋を思い浮かべる。特別汚れているのではないだろうが、丑嶋の台所と比べたら、
使っていないのに雑然としているだろう。全体を見ても掃除が行き届いていて、素直に感心する。
 同時に、台所の棚にある食器を見て安心もした。家事に疎い柄崎だが、白い無駄なデザイン
のない食器は二人分のお揃いの数にしては足らないように感じる。
 つまり、戌亥が柄崎たちに内緒で丑嶋と暮らしているわけではないようだ。勿論、仮に一緒
に暮らしていたならば、柄崎達に報告することこそカミングアウトになってしまうのだから、
柄崎が知らないのも無理はないのだが。
 考えてみれば、丑嶋はタクシーで自宅に帰れた筈なのに、戌亥は何故迎えに来てやれと言った
のだろうか。

141:コーヒーを一緒に・・・10/10 ◆CPu0lwnplk
10/09/19 19:40:22 KrvtpxWR0
 もしかして、柄崎のことを不審に思い、丑嶋にとっての柄崎と自分の立ち位置が違うのを決定
づけさせ、けん制する為だったのだろうか。どうせ丑嶋を送り届けさせても、柄崎が送り狼に
なるなんて無いと高をくくっているのだろうか。
 柄崎は少し胸の苦しさが軽くなったように感じ、コーヒーをマグカップに注いだ。
 コーヒーメーカーにサーバーを戻し、いざカップを持っていこうと前屈みになると、胸の
肉に何か硬い物が当たっているのに気が付いた。
 そういえば、とポケットに手を入れて中を出す。中には、先ほど風俗店の店長に貰った
真偽の危うい媚薬の瓶があった。
 「媚薬、か・・・。本物かなァ?んな訳ないよな」
 どうせ偽物だろうが、少しは効果があるかもしれない。だが、現在付き合っている女がいな
ければ男もいない柄崎には無用の長物に過ぎない。
 一人で飲んだって意味がない。意味がある使用方法は誰かに飲ませて、致すことだ。
 柄崎は瓶を握りしめ、視線をゆっくりコーヒーを注いだマグカップに移した。
 コーヒーに入れて、丑嶋に飲ませたら媚薬としての効果があるのか確かめられるし、意味が
ある使用方法には違いない。
 「どうせ偽物だろうし」
 男として情けない使い方をする言い訳を漏らし、瓶を開けてみる。どこかで嗅いだ事がある
ような香りがした気がするが、どこか気持が高揚している柄崎は中身をしっかり確かめず、
片一方のカップに瓶の中の液体の半分を入れた。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
柄崎ご乱心。続きは後日。貴重なスペースお借りしました。お目汚し失礼致しました。


142:「エガヲノインリョク」1/4
10/09/20 02:34:47 EWOtCULj0
ナマモノ注意!!

GCCX
もうすでに新シリーズが始まっているのに、
今更、前シリーズの最終回をネタに、8代目AD×課長

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


この現場での、最後の仕事が終わった。

その場に居たスタッフ全員に、声をかけ、挨拶をし、
そして、本当に、最後に、最後の挨拶がしたくて、あの人の狭い楽屋を訪ねた。

蟻野さんは、連日の挑戦で疲れているのに、ましてや、次の仕事が押しているのに
心底嬉しそうに、招き入れてくれて「寂しなるわー」と、言ってくれた。

それだけで、泣きそうになってしまって、言葉がつまる。

暫しの沈黙を破ったのは、蟻野さんの方で。
「・・・あの歌ってなー」
「え?」
「あのー、うちのカーヴィーが歌ってた歌な」
「あ、はい」

脳裏に、最後の収録の時、一緒に見たDVDの映像が甦る。

アナタガイタカラ キセキガオキタ
アナタガ タスケテ クレタ


143:「エガヲノインリョク」2/4
10/09/20 02:36:27 EWOtCULj0
「あの歌詞って、柄藻戸の事やんなぁ」
「え・・・?」
「レミングスのときも、シレンの時も、柄藻戸が助けてくれたからエンディングが見れたんや
 ほんまにに、奇跡を起こしたんは、エモヤンやで」
「そんな事は・・・」
(ありません)と続けようとした言葉が、込み上げる想いにかき消される。

「ほんまに、今まで、ありがとうなー」
そう言って、蟻野さんが右手を差し出した。
「あ、はい」
マヌケな返事しかできずに、慌ててその手を取った。

ぎゅっと握った蟻野さんの大きな手の温もりに、背中を押されて、
ずっと言いたかった言葉を切り出した。

「あの・・・餞別に、キスしたいって言ったら、どうしますか?」

蟻野さんは一瞬驚いて、真顔になって、でもすぐに悪戯っぽい笑顔になって
「・・・したら、いいんちゃう?」と、軽く言い放った。

そんなにアッサリと承諾されるとは思わなかったので、今度はこっちが面食らって
一寸戸惑っていると、蟻野さんは目を閉じて「ん」と少し顎を突き出した。

その口元は少し緩んでいて、本当にいいのだと告げているようで。


144:「エガヲノインリョク」3/4
10/09/20 02:38:18 EWOtCULj0
ゆっくりと蟻野さんの前に跪き、震える手を彼の肩に置いた。

喉が渇く。
息が止まる。
早鐘のような鼓動が、耳の奥で聞こえる。

まるで、繊細な硝子細工に触れるように、そっと、そっと、唇を重ねた。


柔らかく、触れるだけの、キス。
でも、今までの、すべての想いが伝わるように。
・・・唇が、震えてしまっているのも、伝わっているだろうか。


触れたときのように、また、そっと、唇を離した。
目が合わせられなくて、俯いていると、蟻野さんが呟いた。

「エモヤン、オマエ、優しいキスするなぁ」
その声色こそが、とても優しいのに。
「俺まで、切なくなるわー。もー」
そう言って、困ったような顔で笑う。


145:「エガヲノインリョク」4/4
10/09/20 02:40:51 EWOtCULj0
「んで、キスだけで、ええのん?」
「え・・・?」
思わぬ一言に、なんと返していいか分からなくて、瞬きも出来ないほど固まってしまった。

ニヤリと口元で笑った蟻野さんに、肩を軽く叩かれる。
「キスの続きは、オマエが出戻ってきてからな」
本気とも、冗談とも取れそうな物言い。
それでも、鼓動はさっきよりも早くなって、頬が熱くなっていく。

目の前には、少し照れたような笑顔。

ふいに。
一度はこの番組を卒業していった先輩たちが
何故か、出戻ってきてしまう理由が分かったような気がした。

この笑顔に引き寄せられてしまうのだ。
この人の傍に居たいと、そう願わずにはいられない。
そんな、不思議な引力を持つ、笑顔に。

「・・・いつでも、出戻り大歓迎やからな」
くしゃりと髪の毛を撫でられる。
止めようも無い涙が、頬を伝い、冷たい床に落ちる。

「泣くなやー、もー」
そう言う有野さんの瞳も潤んでいて、それがまた新しい涙を誘う。

馬鹿みたいに泣く事しか出来なくて震える体を、有野さんの優しい腕が
そっと包み込んでくれた。



146:「エガヲノインリョク」終
10/09/20 02:42:41 EWOtCULj0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

「Good-by Game(和訳)」の歌詞が切なすぎて泣ける…
お目汚し、失礼しました。

147:風と木の名無しさん
10/09/20 06:06:06 ipB0mp0/O
>>141
続きが気になりますGJ!
姐さんはネ申です(感涙)いつもありがとうございますm(_ _)m

148:風と木の名無しさん
10/09/20 12:34:48 /rwwTRsi0
【BL】ボーイズラブ・やおい創作総合【801】
スレリンク(mitemite板)l50

創作発表板に全年齢向けのスレができたようなので、一応、お知らせしてみる。

エロ成分低めの作品はここに投下しても良いかも。

149:浄化 1/3
10/09/20 16:36:59 fACRvBBsO
ドラマ浄化 マス鑑だけど盾もいます。3人で7話目 
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

1.

彼に出会って、自分の人生に違う風が吹いてきた。
駆動は最初、そう考えていただけなのに。
起きている時間のほとんどを彼のことを考えて過ごし、眠っている間に彼の夢を見ることを願って体を横たえる。
 
仕事に行けば当たり前のように彼は手の届くところにいて、触れてみたいと思う気持ちが強くなるのを止められない。
偶然に手が触れてしまった時、すぐに手をひっこめないでいてくれたという、そのほんの数秒の出来事に、駆動は震えた。
小さな希望が心の中で爆弾になるのに時間はかからなかった。
その抱え込んだ爆弾を胸の奥からつかみ出して見せずにはいられない。
薄暗い倉庫でささやくように話をする彼を見つめながら、駆動はついに言葉にしてしまった。

「初めてのときは盾さんがいい」

散々心の中で逡巡して出た言葉だったけれど、そこに至る紆余曲折はわかるはずもなく。
駆動の突然の告白に、彼はまぶしそうな目をしたまま黙っていた。

「あ、次に誰かに行くからその前にって言う意味じゃなくて、もちろん盾さんが最初で…最後っていう…」
「ダメだよ」
「え?」

ちょっと息を吸ってからうつむいた彼が、それでも駆動に十分聞こえるように言った。

「それは出来ない」

彼からのはっきりした拒絶に「盾さんのことあきらめないから…」と返したつもりが、それは掠れて声にならなかった。


150:浄化 2/3
10/09/20 16:46:43 fACRvBBsO
2.
見上はその長身を折りたたみ、カウンター越しに彼の顔を覗き込んだ。
久しぶりのキスをせがむかのようなそのしぐさに、彼は心得てストローを唇から離し、唇に残ったミルクをチロリと舐めとる。
一瞬見せた舌先が、了解のサインに思えた。
いいですよ、僕もそんな気分です、と。
「じゃあ時間を作ってやらなきゃな。悶々としてミスでもされちゃかなわん」
見上が思いやったとき、その当の本人は柄にもなく遠慮して、店の扉の向こうに佇むばかりだった。
==========
「盾さんとずっとこうしたかった」
思いがけず抱きしめられた心地よさと幸福感に酔ったようになって、駆動は身体を擦り付ける。
「ダメだなんて言わないでよ」店の外の薄暗く狭い路地で、駆動にしたいようにさせて、彼は微笑んでいるだけだ。
じれったいと思っているうちに、唇が頭におりてきたのがわかった。
彼は駆動のつむじにキスしてささやいた。
「ね、マスターにしてもらおっか?」
はっとして駆動は顔を上げ、彼を見あげた。
突然、駆動は気付く。
熱を持っているのは自分だけだということを。
すぐにまた抱きしめられたので、確かめようと覗き込んだ彼の瞳が見えなくなった。
「ダメ…なんだ」
肩口に額を擦り付ける駆動の頭を抱え込んで、彼はつぶやいた。
次の瞬間、おいでと繋がれた手を振りほどく理由を駆動は持たなかった。
==========
背中の傷を見られることに躊躇はなかった。
なのにマスターは、脱ぎ捨てたシャツを拾って駆動の背中からそっと掛ける。
なんだか彼に売り飛ばされたような思いがしていたのに、引き渡された相手に優しくされると、泣きそうな気分になる。
だから駆動は言った。
「盾さんも、一緒にいてよ」

151:浄化 2B/3
10/09/20 16:53:58 fACRvBBsO
2B.
最初の衝撃は通り越し、身体の奥で受ける見上の熱の快感に耐え切れなくなる。
立っていられなくなって、くうん、と鼻の奥で声を出すと、彼の手の平が頭の後ろをそっと包み込んで自分の胸に引き寄せた。
心の中でふくらんだ思いが行き場を失くし、駆動の身体を駆け巡る全身の血が逆流を始める。駆動の髪に指を絡めながら、彼は見上を見つめ続けた。
背中から駆動を蹂躙するのに忙しい見上も、彼から視線をはずさない。
その強い視線にまっすぐ応えながら、彼は引き締めた自分の唇をゆっくりと舐めた。
それを合図にしたように、見上が盾の唇を求める。
猫がミルクを舐めるような音をわざと立てながら、彼は見上と舌を絡ませた。
みるみるうちに上気して、赤味を帯びていく彼の胸元に駆動は頬を擦り付ける。
「盾さん、盾さん…盾さん…盾さん、盾さん…」
見上は長い腕を伸ばし、駆動の身体を間に挟んだまま、ぐいと彼の腰を抱き寄せた。
自分の高まりが上を向いたままで彼の腹に押し付けられた瞬間、駆動はうめき声を上げて自らを解放する。
2、3度震えてからのけぞるように駆動が見上の胸にもたれかかったのを機に、彼はそっと身体を離して見上に引き渡す。
喉元まで飛び散った駆動の精がゆっくりと流れていくのを、彼は気にもしなかった。
唇は濡れて光り、首筋には見上の唇が残した跡がくっきりとその色を主張している。
見上にまだ身体を揺すぶられながら、駆動は驚くほど艶やかになった彼の顔を、いつまでもうっとりと見ていた。

152:浄化 3/3
10/09/20 17:00:31 fACRvBBsO
3

本当のところ、マスターは俺の身体を使って盾さんとやってる気分だったんだろうなと駆動は思った。
けれど、不思議と惨めな気持ちにはならなかった。

『最後までちゅーしてくれなかったけど、ずっと抱きしめてくれてたのは盾さんなんだから』
#それに感情はさて置き、見上との行為がたまらなくよかったことにも、駆動は気がついていた。

さっきまでの出来事を夢のように思い出しながら、駆動は照れてちょっと笑った。
それからすぐに、やばい、また泣きそうとうつむく。
ラーメン屋のカウンターなのに、一人でアップダウンしている駆動を気にかける様子もなく、彼は食べ続けている。

「俺は、盾さんに救われた」

思い切って駆動が声にすると、彼はいつものほほえみ顔で「のびちゃうよ」とだけ言った。
そのおだやかな横顔にほっとして、駆動は鼻を「すん」と鳴らした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
盾さんは天使だからね。E・Dにしてごめんよ


153:風と木の名無しさん
10/09/20 22:16:03 LFq9QmQb0
>146
GJです!えもお疲れでした!その曲切ない・・・!

154:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 1/9
10/09/20 22:18:04 xmiOPaQC0
キャシアス+シーフォンという試み。
相手が賢者の弟子なら、同じフィールドなので真っ向から楯突くけど
全く別のジャンルなら違った方向からのアプローチもありえるかなと。
シーフォンの病気全開で17世+魔将フラグな表現があるのでご注意下さい。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

遺跡の最下層に位置する大廃墟の中心、更にその地下。
四つの秘石によって進入を許されたその墓所には、
単に瘴気と呼ぶことすら憚られるような濃く暗いもので満ち満ちていた。
息をするだけでも肺に圧力が掛けられているような感覚に何とか抗いながら、
キャシアスたちは注意深く歩を進めていった。
手元に掲げた玻.璃.瓶の光が、青白く、凄味を持って
通路の宝飾や壁画を照らし出している。
明るい陽の元で見れば美しいかもしれないそれは、
今はただおぞましい空気の一部分でしかない。

「キャシアスさま、ご注意なさって下さい。
 この空気……まるで、感覚が狂わされてるみたいです。
 あちこちに色んな気配があって……」
「空間そのものが、魔力を保持して循環させる力場になってるみてぇだな。
 おそらく、この墓所全体が何かの呪術的な装置なんだ。……胸糞悪ぃ」

そう言う二人の顔も、光加減のためか別の理由のためか、どことなく青白く見えた。
襲ってくる魔物も見た事がないものが多い。
地上のそれよりもずっと手ごわい闇の塊のようなものを切り捨てながら、彼らは更に進んだ。
玄室と移動用の通路を交互に行き来しながら、三つ目の短い階段を下りる。

そのフロアの壁や天井は、上層よりも更に多くの壁画と碑文で埋め尽くされていた。
長い廊下には神話の風景が所狭しと描かれている。
しかし細かい装飾やレリーフたちは、いかにも何かの仕掛けが含まれていそうではある。

155:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 2/9
10/09/20 22:19:41 xmiOPaQC0
用心しながら廊下を進むうち、ふとキャシアスは後ろから聞こえる足音が
遅れがちになってきていることに気がついた。
振り向くと、すぐそばのフランの背後から更に数メートルの距離をおいて
シーフォンが壁に手を付いている。
パーティに付いてきてはいるようだが、その歩みは普段より遅い。
どうしたのかと尋ねるとシーフォンはすぐに壁から手を離し
「なんでもねぇよ」と言った。
しかし壁から離した手は頭痛のときのように彼のこめかみへと向かい、
顔色も心なしかさっきより悪いようだ。

「あまり離れない方がいいですよ。はぐれたりしたら大変ですから」
「うるさい。わかってる」

(鈍感な奴が幸せだってことは、死者まみれの宮殿で嫌というほど思い知ったからな)

ガンガン痛む頭と、呼吸をするたびに吐き気を増してくる胸を押さえながら
シーフォンはすり足で二人の後を追った。

少し行くと、高い天井を持った大広間へと出た。半円状の暗い天井に星図らしきものが書き込まれている。
星座を作る点と線たちは、キャシアスたちは夜空に見た事がないものばかりだった。
どこか別の土地の夜空なのだろうか。あるいはこの墓所に眠る者たちが生きていた時代の。

「……ちょっと待て」

注意してそこを通り抜けようとしたとき、最後尾のシーフォンが前の二人を呼び止めた。

「何か書かれてる。単なる神話じゃないな……」

中ほどの壁にはめられた石版と、そこに刻まれた碑文にシーフォンが見入っていた。
彼は振り向きもせず、無言のまま右手を後方に伸ばす。
キャシアスがその手のひらに玻.璃.瓶を乗せてやると、
シーフォンはそれを碑文へと近づけてますます真剣な眼差しを注いだ。

156:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 3/9
10/09/20 22:21:31 xmiOPaQC0
「『四つの秘石、および輝きのイーテリオについて』……。
 伝承?いや、予言の類か……『大河流域世界の統治者にして…」

手にした玻.璃.瓶で碑文を照らしながら、シーフォンはゆっくりとそれを読み上げていった。
淀んだ魔力が充満したこの場所で、まるで詠唱のような不思議な響きを持ったその言葉は
連ねられるたびに何かの術式が発動してしまいそうな不安を後の二人に与える。
その二人が背後から見守る視線を気にも留めずシーフォンは一文字一文字を解読していった。

「『……時により形を変える。そして帝国の永続を願う呪文が刻まれている。
 これらには大いなる…』…ん、……
 ダメだな。削れてて読めない部分がある。
 『大いなる……が宿り、所持する者を…永久の……
 ああクソ、こっからが肝心だってのに!」

碑文は、その中ほどの部分がまだらに削れ、文字の形を失っていて
知識の問題ではなく物理的に読み取る事が不可能になっていた。
シーフォンは悪態をつきながらその壁を軽く殴る。

「ん、最後の方はまだ読めるか。
 『……時来れば、四つの秘石を再び得る者が現れ、
 四重の守護を破りタイタスの前に至る。
 その者が』、……『タイタスに等しき者であるがゆえに』
 ……これで終わりだ」
「……どういう、意味でしょうか…」
「…………」

碑文の意味を図りかね、不安そうにしているフランには応えず
シーフォンは黙ったままその壁を睨みつけるようにして考え込んでいた。

「…………ふん。さあな。だが、この傷……」

シーフォンの指が碑文の中ほどに刻まれた傷をなぞる。

157:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 4/9
10/09/20 22:23:13 xmiOPaQC0
「ただの風化じゃない。墓所の年代や碑文の古さから見ると、この傷は新しすぎる。
 しかも跡が鋭利だ。意図的に削られたとしか思えない」
「え?だって……」

フランの言わんとする所は、キャシアスにもすぐに理解できた。
この墓所は、今まさにキャシアスたちがその『四重の守護』を破って入って来た所だ。
それより以前にこの碑文を削り取ったものがいる?この封印された墓所の中で?
考えたくはないが、嫌な想像はどうしてもある一箇所に辿りつくしかない。

「ハッ、こんな半分魔界になりかけてるような場所だ。
 何がいたっておかしくはねえだろうよ。魔物以外にもな」

シーフォンは恐ろしい事をいとも簡単に言い放つと、
それまでかぶりつくように見入っていた碑文からぱっと体を離した。

「お前らが考えてたってどうしようもねえだろ。さっさと先に行こうぜ」

つうと、こめかみから頬へ伝った脂汗をシーフォンはローブの袖でぬぐった。
あの碑文を読んでいる途中から、頭痛に加えて
頭の中で鐘を鳴らされているような耳鳴りが繰り返された。
しかしここで引き返せるわけはない。
その耳鳴りに混じって、シーフォンには聞こえたのだった。

158:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 5/9
10/09/20 22:24:34 xmiOPaQC0
この場の濃い瘴気が、さながら水が雷を通すようにして
地下深くの意識を伝えた。
高い魔力を持つシーフォンだけがその断片に気づいた。
その意識は、自分たちにだけ向けられたものではなく、
ずっと昔からこの空間に満ちていたものだったのだ。
何千年もの間ただ一人の意識がここを埋め尽くしていた。
そしてそれは、呼んでいるのだった。
キャシアス。
確かにそう聞こえた。
おぞましいほどに低く、文字通り地の底から響く音でありながら
その声は歓喜にうち震えているようだった。
シーフォンの中で、いくつもの疑問が一気に瓦解する。
始祖帝は、彼にもっとも似た者をこうして呼んでいるのだ。

目の前に立つ騎士を睨むようにして見つめる。
あの貴族の坊ちゃんほどではないが、常に矢面に立ち、
他人を守ろうとするキャシアスの行動にシーフォンはほとほと嫌気が差していた。
普段はそうやって善人ヅラしてても、いざ自分の命が危ないとなったらケツ捲って逃げ出すんだろうが。
貴族や騎士なぞどれも同じだ。
だが、なぜか。以外に結構ちょっとだけ、つるんでいる間は楽しかったりしたのだ。
しかしそれももう終わりだとシーフォンは心中で決意を新たにする。

「ち、ちょっと待って下さい。シーフォンさん、顔色が真っ青ですよ!?」
「……なんでもないって言ってるだろ。このランプのせいだ」
「そんなんじゃ……!」

フランの反論が終わらないうちに、シーフォンの身体がぐらりと前にかしいだ。
慌ててキャシアスがそれを抱きとめる。
細い身体は驚くほど体温が低く、軽かった。

159:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 6/9
10/09/20 22:26:28 xmiOPaQC0
「……ああ畜生、そうだよ、最悪の気分だ!つうかよくこの瘴気の中で平然としてられるなお前ら!?」
「いえ、その……。危ない感じはしますけども、気分が悪くなったりは……」
「これだから脳筋は……うぷっ…やべえ、マジ吐きそう…」

シーフォンは最後の力を搾り出すように呻くと、
開き直ったのかぐったりとキャシアスの肩にもたれかかった。
ともあれ、一人がこんな状態では奥へ進めそうもない。
キャシアスの支えがないと今にも地面に倒れこんでしまいそうなシーフォンは、
歩く事も難しそうだ。

キャシアスは、背負っていた道具の入ったバックパックをフランに預けると
ろくに抵抗もせずされるがままのシーフォンを無言でおぶった。

「う」

背に乗せられたことに気が付いて、流石にシーフォンはわずかに身じろいだが
それ以外に選択肢もないとすぐに気づくと大人しくなった。
キャシアスとしては、肩に担ぐ形が片手も開くため抱えやすくはあったのだが、
体調が悪い状態で頭を下にするのはよくないだろうと
これでも気を使った結果なのである。

「キャシアスさま、警戒は私に任せてください」

よいしょと荷物を背負って来た道を引き返し始めたフランに、
キャシアスも背中の低い体温を気にしながら頷いてその後を歩いていった。

「……ぅう………」

160:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 7/9
10/09/20 22:28:28 xmiOPaQC0
キャシアスの背に揺られながら、ぐるぐると混濁する意識に抗ってシーフォンは思っていた。
いずれ、いや、もうすぐ。
この『タイタスに等しい者』が始祖帝の元に辿りつくだろう。
四つの秘石を持ち、孤児として拾われ、数々の化け物を打ち倒したこの男が。
それこそが少し前まで疑問と思っていた仕掛けだ。
タイタスの霊魂と相対した時、こいつは始祖帝そのものになる。
そして、歴代のどの皇帝にもなかった圧倒的な力でもって帝国を再建するだろう。
知らず、シーフォンは強くキャシアスの肩を握っていた。

(―連れて行け)

縋る腕も、蚊の鳴くような声も、瘴気にうなされての事だと思ってキャシアスは気にも留めない。
フランと共に周囲に気を配りながら墓所の出口を目指している。
シーフォンは暗い視界の中でその横顔を盗み見た。

もはや始祖の力は、望んでも詮無いことだ。
その正当な後継者が目の前にいるからだ。
しかし、ひとつの目的が潰えても、すぐさま他の最適な行動に移ることにシーフォンは慣れていた。
この場合は、つまり。


何とか強敵に出会うこともなく墓所から脱し、遺跡そのものから出てくる頃には
シーフォンの体調もあらかた回復していた。

「……もういい。一人で歩ける。さっさと下ろせ馬鹿」

161:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 8/9
10/09/20 22:29:41 xmiOPaQC0
いつもの言い草で、しかし声は弱々しくシーフォンが言った。
本当ならば宿まで運んでも構わないのだけれど、
そうすると後ろから焦がされる危険性が多いにあるため
キャシアスは大人しく町外れで彼を背中から下ろした。
しかし、すとんと音がしたことを確認し、振り向こうとしたキャシアスの上腕を
いまだシーフォンが掴んだままでいた。
無理に振り向けないこともないが、シーフォンがそれを望んでいないのが
なぜかその指から伝わってくる。

「……連れて行けよ」

唐突に呟かれた言葉の意味が分からず、キャシアスは思わず聞き返した。

「僕をだ。そのときが来れば分かる。せいぜい、役に立ってやるから」

腕を掴んだまま離さずにいるシーフォンは、その言葉こそ普段の乱暴なものだったが
声の色にはどこか必死さが滲み、強張っていた。
どんな表情をしているかは分からないが、細い指にも不必要な力が入っている。
その様子に、単なる探索のメンバー組みのことではないのだろうと察する事は
キャシアスにも可能だった。しかし何を意味しているのかまでは読み取れない。
疑問を問いかけようとしたところで、シーフォンは今まで掴んでいた腕を離し
とん、と軽くキャシアスの背中を押しやった。
その反動を利用して背を向け、宿に向かって歩き始める。
キャシアスは慌てて振り向いたが、
ぶかぶかのローブに包まれた背中に、なぜか声をかけることもはばかられて
キャシアスとフランはそのまま彼が角を曲がって見えなくなるまで見送った。

162:R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 キ.ャ.シ.ア.ス+シ.ー.フ.ォ.ン 9/9
10/09/20 22:31:01 xmiOPaQC0
そうだ。
皇帝そのものになれないなら、その腹心になればいい。
幸いあいつはお人よしで、その上魔力の面はからきしだ。
必ず僕が必要になる。
いや、必要とさせてみせる。

陽が落ちて冷たい風の吹いてきた町外れで、
シーフォンはばさりと音を立てて闇色の外套を羽織る。
それは彼がいつの間にか荷物の中から抜き取っていた、魔将の外衣だった。

もう後には引けない。
元より赤みの強かった瞳を、ますます血のように赤く光らせ、シーフォンはぎゅっと拳を握った。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
せっかくの腕力スキル、お姫様抱っこに使いたかったけど
ダンジョンの中では無理がありすぎて諦めました。無念。

163:風と木の名無しさん
10/09/21 09:07:35 Z1Jv0NhvO
>>149
切な萌えな投下ありがとう!

164:風と木の名無しさん
10/09/21 09:47:23 VyNS1+HRO
>>131ラストは悲しいけど、けして嫌な悲しさではなく切なくてしみました
素敵なお話ありがとうございました

>>141ハム式カップリングキターー
柄崎は社長をどうするのかとハラハラ
誘い受俺様社長にも期待してます!
そしていつか、滑丑の成人バージョンもお願いします!

165:風と木の名無しさん
10/09/21 09:52:27 VyNS1+HRO
さげ忘れました
申し訳ない

166:風と木の名無しさん
10/09/21 10:54:10 4r8QUf7aO
>>125
おもしろかった!
もっと読みたいと思ってしまった

167:風と木の名無しさん
10/09/21 11:23:15 htAdhlLB0
>>125
切なくて可愛くてきれい
なんといったらいいか分からないけど
温かい気持ちになりました

168:風と木の名無しさん
10/09/21 11:57:41 OSGb12vu0
>>154
GJです!
読み応えあってすごく面白かったー!!
言動がすごく僕様っぽくて萌えたよ、萌えた!

17世ルートは夢がいっぱいだね

169:風と木の名無しさん
10/09/21 22:28:26 NHHZEwtpO
>>141
神め…!姐さんの作品に萌えたぎりました!
柄丑のエロが読みたくて仕方なかったので嬉しすぎてTryMeを斉唱する勢いです…!
続き楽しみにしてます!ハチミツとワインかぶって全裸で待機!

170:ストレス時代9/1
10/09/22 04:31:54 oYgN+hkO0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  某フィルムタイプ薬品のCMに感動したんだって
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  第二段は州取 英二だね
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |ト メ  タ" イ  ン    | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | | \         /   | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |     (・∀・)      | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

ストレス時代に救世主がやってきたよ!そんなヘタレなアイツが主人公のオハナシだよ!
とりあえずはEROなしの導入編だよ!若干トイレ描写が粘着質だよ!
(だってそれが彼のいいところだもんね!)
※全体的に予想以上の長さになってしまったので、中断を入れさせていただきます。

171:ストレス時代2/9
10/09/22 04:33:01 oYgN+hkO0
山のように積まれた書類を持って、止田は廊下を歩いていた。赤い絨毯を一歩踏みしめる毎にそれは不安定に揺れる。
「止田さん、持ちましょうか?」
「あっ、わっ、わわッ」
突然声を掛けられ動揺し止田が思わず足を止めると、書類はぐらりと円を描いて揺れた。
それをとどめようと踊るように足を動かした結果、案の定の転倒をし、書類は止田の頭の上へ崩落する。
バサバサ、と豪快な音を立てて乱舞するそれを、止田は呆然と見上げていた。
止田の視界の端には、ベージュの膝丈スカートと、ベストの裾が見える。
「ご、ごめんなさい!私が突然声かけたから、ビックリさせちゃいましたよね。ごめんなさい!」
言いながら膝を折り、大下美由紀は慌てて書類を拾い始める。
大下の姿を見て、止田は我に返り、書類へと手を伸ばした。
「あっ、いや、別に大下さんのせいではないです。すみません」
顔も上げずに言い、黙々と拾い始める。
「おお!止田、ご苦労なこったな!」
通りすがりに笑いながら声を掛けるだけの無情な先輩からの激励を受けながら、しばらく二人で廊下を占拠して拾い続けた。


172:ストレス時代3/9
10/09/22 04:33:45 oYgN+hkO0
おもむろに大下が口を開いた。
「止田さん、今回の発表、機密事項が多いみたいですね。社運がかかってるって聞いたけど……」
「あ……はい……なんか、いきなり重役任されて」
はは、と空笑いをしながら、書類に目をやる。そこには企業機密がびっしりと書き込まれ、様々なプランが書き起こされている。大下が言った“社運”がまさにそこにあった。
社運が廊下に散らばっているのに、それを拾おうともせず去っていく仲間が多いことに止田は胸が痛んだ。
そもそも、その散らばっているものが“社運”だと彼らが知る筈もないのだが。
「こんなの、うまくいきっこないんですけどね」
また自嘲するように小さく笑った止田を、大下は励ましも応援もしなかった。ただ、無言で書類を拾い続けていた。

国内大手の製薬会社“大蝶製薬株式会社”に入社し、止田和史は3年になる。
大蝶製薬株式会社は、社長の岩谷進をトップに、斬新なアイディアで改進を続けるトップ企業だ。
止田はその巨大企業の中、営業職で現場を経験し、6ヶ月前に企画部へ異動になった。
友人達からは「ペコペコしなくていいなんて、良かったな」と羨ましがられ、一般的には昇進と言われている道だったが、
止田にとっては常に上司の監視下にある事のほうがよっぽどのストレスだ。
大下美由紀は入社4年目の先輩で、何かと止田を見てくれているが、これも監視のひとつだと止田は感じていた。

173:ストレス時代4/9
10/09/22 04:34:36 oYgN+hkO0
(おなかいたい)
大下に手伝ってもらい広い集めた書類は、欠損がないことを確認して、またナンバー順にまとめ直さないといけない。
今度は落とさないようにとダンボール2個に詰めたそれを台車に乗せて、企画部へ戻るため廊下を歩く。
(おなかいたい……)
下腹部がギュリ、と音を立て、冷や汗が出た。あぁ、またいつものストレス性の下痢だ、と止田はため息を吐いた。
台車を廊下の端に寄せ、トイレへ入る。個室へ入ると鍵をかけた。
いつものようにトランクスを脱いで便器へ座ると、すぐさま極度の緩い状態の便が出た。
下腹部はまるでつま先で踏まれているかのように痛んだ。内臓が動いているのが自分でも解り、吐き気をもよおす。
「うぇ」
思わず声を出して上体を倒す。冷や汗が頬を伝い、膝に落ちた。
(俺はなんでこんな体質なのに、こんなデカい事やらされてんだろ)
しばらく個室でもんもんと考えながら、同時に用を足す。ひととおり出し切って尻を拭き、流した後、またトランクスとスラックスを上げた。
不快な匂いとサウナ状態になった個室から出ると、トイレ内の空気はやたらと爽やかに感じた。


174:ストレス時代5/9
10/09/22 04:35:46 oYgN+hkO0
トイレから出て、また台車を押して歩く。正面から大下が歩いてくるのが見えて、止田は会釈をした。
大下が駆け足で近寄ってくる。先ほどとは打って変わった笑顔だった。
「あ、ダンボールに入れたんですね。ナイスアイディア!」
「ホントだぁ!こんな量を持ってたなんて、無謀ですよ、止田さん!」
大下の後ろからひょっこりと顔を出しているのは、止田と同期の沢村香奈だ。入社4年目の大下にいつもくっついていて、子分のような状態である。
おそらく大下からこの件に関して一通りの話しは聞いているのだろう、まるで書類の散らばり具合を知っているかのような顔をしている。
「そうですね、無謀でした。じゃぁ、ちょっと企画部戻るんで」
書類の散乱で精神的にも疲れ、下痢で体力も使いきり、クタクタだった止田は早々にそこを後にした。
残された二人は顔を見合わせ、小さく笑っていた。


175:ストレス時代6/9
10/09/22 05:03:55 oYgN+hkO0
午後6時。退社の時間になり、終礼が行われる。皆一様に伸びをしたり、身なりを整えたりと自由に動いているが、止田は違った。
一切の事など関係ないようにパソコンに向かっている。
窓際で沈む夕陽を背にしながら、部長の福島が止田に向かってまるめた紙を投げた。コツン。
「ぃてッ」
「おい、お前業務違反だから」
福島はため息を吐きながらジャケットに袖を通している。中年太りが始まったその体を、上等なジャケットはスマートなラインで包み込んだ。
止田が申し訳なさそうに会釈をしながら、情けない顔で笑う。
「あ、すみません。でも、まだ発表の書類が出来上がってな」
「ふざけんなおい。残業代なんか出ねーぞ」
止田の言葉を遮って、福島は現実をぶつけたが、止田はそれでも変わらない表情で会釈をしている。
「あの、本当、これだけはやらないと、心配で仕方が」
「お前自分の仕事が遅いだけだろうが。1時間でカタつけて出ろ。1時間したら電源落とすからな。管理にそう言っとくから」
「え……」
困ったように固まる止田の横を、福島が通り過ぎる。誰よりも先に部署を後にするその姿と、固まる止田の姿を、部署の人間達は交互に見比べていた。

176:ストレス時代7/9
10/09/22 05:04:44 oYgN+hkO0
午後6時42分。もう部署には止田以外誰もいなくなっていた。
大下と沢村はやたらと残ろうとしていたが、する事もないのか早々に帰っていった。
かち、かち、と時計の針の音がする。止田はじっとパソコンの画面を見ている。
その時、ピピピピピピ……と地味な携帯のメール受信音が響いた。
止田が携帯を手に取り、受信メールを確認する。

FROM:サチ
件名:今日どんな?
内容:
おしゴト、お疲れ様!
今日こそは会えるかなぁ?
ってか会ぃたぃょー(><)!
あたしマヂでッッッッ
おいしいご飯作るょ?

ため息を吐いて、止田は携帯を閉じた。冗談はやめてくれ、と頭に浮かんだ。
仕事に追われて帰れない。食事もそこまで食べたくない。緊張して眠れない。
しかし、彼女は帰宅を猛烈に催促し、自宅への立ち寄りを強制し、食事へのコメントを求め、最終的には体を求めてくる。
疲れているなどという言葉は、どんなに言っても理解してくれない。
それをこなす器用さを、止田は持ち合わせていなかった。
(どうしてこうなっちゃうんだろう。6年も付き合ったのに)
止田は窓に目をやった。そこにはガラスに反射して自分を見つめ返す姿があった。
弱々しく、情けない、眉の下がったその表情を見て尚更悲しくなる。

177:ストレス時代8/9
10/09/22 05:07:46 oYgN+hkO0
その時だった。バチン!と音がして、全ての電源が落ちた。
「あ…………あぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」
止田の絶叫が暗い部署にこだまする。
避難誘導のライトがぼんやりと部屋を照らし、窓の外は他の高層ビルのオフィスから漏れる光できらきらとしている。……が、そんな事は止田にとってどうでも良かった。
「データ!データが!あぁぁ!データ!!!」
(やばい、おなかいたい!)
「データを!そうだ、管理だ!」
(おなかが――ッ!!)
頭と体が別々の動きをしている。
慌てて立ち上がり、オフィスのデスクの隙間を縫って歩く。時折他の人のデスク横に詰まれた書類に蹴躓きながらも、視線は前方しか見えていない。
企画部を出た瞬間、何かにぶつかった。
「ゎぶッ!」
顔を抑えながら数歩後ずさると、止田はゆっくりと目を開けた。避難誘導のライトで、足元と廊下の所々に緑色のライトが光っている。
そのライトに照らし出され、目の前にはぼんやりと人影が見えた。自分よりも背が高い、その雰囲気からして男のようだった。
「すっ、すみません!」
慌てて言う止田に対して反応するように、人影は何度か首をかしげている。おそらく、止田をしげしげと眺めているのだろう。
「もう終業から1時間経っていますが……何をしているんですか」
低い声が、波のように廊下に浸透した。凛と張り詰めていながら、相手に有無を言わせぬ響きがあった。聞いたことのない声に、止田は少々たじろぐ。
「あっ、あの……まだ、企画が出来上がってなかったので、少し残っていました」
「叫び声が聞こえたから来てみたんですが」
その言葉に、止田の胸には若干の安堵が生まれた。何かしらの事件を察知して来たということは、警備員だろう。
「あっ、す、すみません!僕です!突然電源落とされて、データが消えちゃったもんで」
先ほどより少しフランクに話しをしてみるが、相手は黙ったままだった。
ぎゅるるるる……止田の腹が、まるで地底の唸り声のように鳴って体を震わせた。
(やばい!おなかが限界だ!)
「あのっ、すみません、ちょっと急ぐんで!!」
止田は腹に手をやり、男に会釈をしながら歩き始めた。視線はトイレ、ただ一点を見つめている。
立ち尽くす男を迂回して、先ほどの威勢はどこへいったのかという勢いで弱々しくトイレへ入っていった。

178:ストレス時代9/9
10/09/22 05:21:42 oYgN+hkO0
毎度の事ながら、腹を下しやすい己を呪うしかない。止田は手をハンカチで拭きながらトイレを出ると、廊下が明るい事に気付いた。
慌てて企画部へ戻ると、そこもきちんと電気が点いていた。そして、自分のパソコンは落ちる寸前の状態のまま、無事に立ち上がっていた。
ホッと胸を撫で下ろし、すぐさま保存をする。
(きっとさっきの警備員さんが、管理に連絡してくれたんだ……!)
「警備員さん、ありがとう!」
「誰が警備員さんですか?」
止田がハッとして振り返ったそこには、30代後半と思われる男が立っていた。
髪は黒く整っているが、緩くパーマがかかっていた。濃紺のスーツを着こなし、腕を組み、鋭い目付きで止田を見詰めている。
止田は一瞬で相手を観察した。
見たことのない男だったが、その声は先ほどぶつかった相手だと容易に想像が出来た。あわてて止田が言い訳をする。
「あの、すみません、さっき姿がよく見えなくて警備員さんだと思ってしまっていました」
「警備員ではないですが、警備員みたいなもんですね」
男がゆっくりと近づいてくる。止田は無意識にディスプレイの画面を隠した。男は苦笑しながらも、歩みを止めない。
「今さら隠したって無駄ですよ。何故パソコンが立ち上がってたのか、疑問ではないですか?」
言われて止田の顔色が変わった。
たしかに男の言う通りだった。電源が落とされた強制終了の状態でパソコンを再度立ち上げても、普通はIDやパスワードを求めてくる。
止田のIDとパスワードを入れなければ、ログインすらできないはずだった。
そしてそのIDとパスワードは個人で管理されており、止田以外は知らない情報だ。
近寄る男に、止田は慌てて定規を手に取り、男に向けて構えた。
「あなた、何なんですか!」
「警備員ですよ」
「勝手に俺のパソコンを立ち上げたりするなんて、警備員のはずがない!」
「おや、貴方が言ったんじゃないですか。私を警備員だと」
止田は後ろ手でパソコンの電源ボタンを長押しし、強制的に電源を切った。男が驚いた表情をすると、止田は鞄を鷲掴みにして駆け出した。
「警備員さんーッ!不審者ですー!」
廊下に響き渡る声で叫びながら、止田が姿を消す。
男は、射抜くような視線で止田の席を見下ろしていた。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

179:風と木の名無しさん
10/09/22 22:30:30 9ncqY4PZO
とめださん頑張ってつとめだIN

180:風と木の名無しさん
10/09/22 23:15:30 CoZgNTm40
続きwktk

181:風と木の名無しさん
10/09/23 02:33:04 WbuqPJBB0
>>170
ちょwwwまさかのトメダサンktkr
続きお待ちしております!

182:植/物/系/人的エロス 1/6
10/09/23 03:24:46 IMUwiZ+t0
宇忠イヌ作戦 マノレコ×モヅャット的な何か
花粉発言にほとばしる萌えを止められなかった…

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

なんとなく夜中に腹が減って、
冷蔵庫の中になんかなかったかな、とキッチンへ来た俺は、
リビングに怪しい発光体を発見した!
何かがぼんやり光っている! 何だ!?
あ、普通にテレビだった!
いや待て、テレビの前に誰かいるぞ! 誰だ!?
あ、普通にモヅャットだった!

っていうか、

「……おい、こんな夜中に電気もつけないで何見てんだ?」
「うわあああ!!」

相当集中して画面を覗き込んでいたのだろう、
俺の存在に全く気付いていなかったらしいモヅャットが
奇声を発しながら勢いよく顔を上げた。
「な、何ですか!?」
「いや、それはこっちのセリフだ。コソコソ何してんだよ?」
言いながらテレビ画面に目をやった俺はさらに首をひねることになる。
そこに映し出されていたのは、
どうやら遥か昔の地球のテレビ番組の一場面のようだが…
「何だこれ?」

183:植/物/系/人的エロス 2/6
10/09/23 03:25:32 IMUwiZ+t0
なんかこう…森というか山というかそんなのが…もやーっとけぶって……
「おいモヅャット、この映像なんなんだ?」
「これはその、別に大したあれじゃないんです!
このあたりを整頓してたら出てきて、そう、本当に偶然発見して、
けっして私の個人的な趣味とかそんなんじゃ……」
涙目になりながらモヅャットが俺に訴えかけてくる。
どうしてそんなに必死なんだ! なんかこわい!
そのとき天才的な俺の頭脳にひらめきが走った。
「これはもしかすると…」
モヅャットが不安げな目で俺を見つめている。
「『花粉症』とかいうやつの関連映像じゃないのか?」
ごくり、とモヅャットがつばを飲み込む音が聞えた。図星のようだ。
「太古の地球人はたしか大量に飛散した花粉によるアレルギー症状に
悩まされていたと聞いたことがあるような気がするぞ。
おそらくこれはその花粉が大量に飛散している様を捉えた映像……
そして植/物/系/人であるお前が
そんな映像を人目を忍んで見ている理由はただひとつ……」
青ざめた顔のモヅャットが目を見開き、俺の言葉を遮ろうとするかのように
首を小さく横に振った。
俺は元大海賊の名に恥じぬとってもとっても悪い笑みを浮かべて、
暗闇に響き渡る通りの良い声でこう言った。

「―エロスだな!!」
「あああああああああー!!!」

184:植/物/系/人的エロス 3/6
10/09/23 03:26:19 IMUwiZ+t0
ヅャットは耳をふさいでソファに倒れこみ、じたばたと足を動かした。
手の間からちらちら見える耳がありえないほど真っ赤だ! 照れていやがる!
「そうかーそうだよなあおまえら植/物/系/人にとっては
花粉飛びまくり映像なんてもうえらいエロ動画だもんなー!
あははははは!!」
あまりの滑稽さに俺もソファに崩れ落ち腹をかかえて笑った。
モヅャットはというと、ひとしきりじたばたし終えて力尽きたのか、
ソファの背もたれに顔をうずめて脱力し、
ぐすんぐすんと肩を震わせ始めた。どうやら泣いているらしい。
なんせこのくそ真面目な公務員モヅャットが
夜中にこっそりAV見てるところを現行犯逮捕されたわけだから、
その恥辱屈辱たるや想像するに面白い。
いつも俺のスケベハッスルぶりを冷徹な目で見やがって、ざまあみろである。
とはいえちょっと可哀想でもあるかな、と
俺はあやすようにモヅャットの肩をぽんぽんと叩いた。
「ま、男は誰しもスケベなもんだ。ドンマイ☆
ほらほら気をとりなおして続きをみようじゃないかモヅャットくん!」
と、画面に目をやると、相変わらず花粉大量飛散映像が流れている。
どうやら数秒の映像をエンドレスリピートしているようだ。
何が偶然見つけただよお前! 熱烈スケベ編集済みじゃねえか!
そう思いっきり突っ込んでやりたい気持ちを抑える優しい俺。
が、モヅャットはソファから顔をこっちにむけたはいいものの、
完全にボロ泣きである。
スケベのくせになに泣いてんだ! なんかムカついた。
こうなったらお前を再度マヌケ極まるムラムラあはーん状態に叩き込んで
指差して笑ってやるぜ!

185:植/物/系/人的エロス 4/6
10/09/23 03:26:59 IMUwiZ+t0
俺は両手でモヅャットの顔を引き寄せると、
涙で張り付いている髪と葉っぱをわっさりかき上げ両サイドにはらい、
良好な視界を確保させた上で無理矢理テレビ画面に向けさせた。
モヅャットの首がぐきりと音を立て、なんとも言いようのない悲鳴が聞えたが
まあ気にしない。そんなことよりも。
「ほーらご覧なさいモヅャットさん、花粉がばっふばっふ飛んでるよー。
まさにザ・淫ら! どうだ感想を言ってみろ!」
「いたたた! ちょ、やめてくださいよ…!」
「なあ、どうなんだよ? 植/物/系/人的にはこれ、どんな風にエロいの?」
「どんな風って……」
「こんなに花粉が飛びまくってさ、もう受粉しまくりだろ?」
びくん、とモヅャットの体が一瞬大きく震えたのが分かった。「受粉」という言葉に
反応したらしい。
ていうか何だそりゃ!? 植/物/系/人のエロつぼってよく分かんねー!
と思いつつも、俺はモヅャットの耳元で囁き続ける。
「あんなにメチャクチャに受粉しまくったら、
もう何がなんだか分かんなくなっちまいそうだな?」
「……マ、マノレコ、やめてください…。映像を止めて…」
「何言ってんだよ、ほんとは見たいんだろ?」
モヅャットの視線はさっきからずっとテレビ画面に注がれたまま動かない。
最初は強い抵抗を無理矢理抑え込んでいた俺の手も、
今はモヅャットの顔の顎あたりにそっと添えられているだけだ。
「見ろよ、すげー花粉まみれ…」
「……や…」
液晶画面の光に照らし出されたモヅャットの顔は見たこともないほど紅潮していて、
呼吸はどんどん浅く、短くなっていく。
しっかり欲情してるな。俺は思わずニヤリと悪党笑いを浮かべてしまう。
いいぞいいぞ、俺の前でもっとみっともない姿をさらせ!

186:植/物/系/人的エロス 5/6
10/09/23 03:28:10 IMUwiZ+t0
「やっぱあんだけ花粉出したら気持ちいいのか?」
もっと耳に唇を寄せて囁いた。
んん、とモヅャットが目を伏せて、喉の奥でうめき声を押し殺す。
「ちゃんと見ろって、な?」
俺はくいっとモヅャットの顎を持ち上げて、俯いた顔を再び画面に向けさせた。
モヅャットの目は潤みきっていて、
もう映像を見ていなくても欲情を止められない段階に達しているようだった。
こいつのこんな表情初めて見た! 愉快すぎてゾクゾクする。
顎に添えていた指先を、そのままモヅャットの喉へゆっくり滑らせる。
厚い唇から、堪えきれないといったように吐息が漏れた。
「ほら、受粉してる。メチャクチャになってるぜ……」
「……ん、マノレコ…、もう、ほんとに……ぁ、あっ!」
ぐっと目を閉じてモヅャットの体が痙攣した。
「ん? もう何だよ…? って、ぎゃああああ!!」
と思った瞬間、もふっという音と共に俺の視界が盛大に霞んだ!
何だこりゃ!? しかもけむっ! すごいけむい!!
「げほっ! ごほっ……」
手で顔の周りを仰ぎながら、聡明な俺は迅速に事態を把握した。
花粉だ! 花粉出ちゃったこいつ!
つまりイッちゃったわけだ!
つーかイッちゃって花粉出るってお前…! 再び笑いがこみ上げる。
ああ指差して笑ってやりたい!!
が、花粉のもやが晴れるにしたがって俺の笑いは次第に引っ込んでいった。
モヅャットが乱れた息のままぐったりとソファにもたれかかっている。
蕩けた目の縁は赤く染まり、
まだ少し震えている肩が呼吸に合わせて上下している。
何だ? 男がイッた直後の姿って、こんなにエロかったっけ?

187:植/物/系/人的エロス 6/6
10/09/23 03:35:50 IMUwiZ+t0
「……ぁ、マノレコ…、あ、わああ!!」
やがて正気を取り戻したらしいモヅャットがすごい勢いでキョドり始めた。
俺のことを見るなり目を見開いて、頭から爪先までゆっくりと見回したあと、
また俺の目を見て「すみません! すみません!!」と
土下座せんばかりの勢いで謝りだしたのだ。
「え? な、何だよ? イッたとこ見られたくらいでそんな気にすんなよ」
「いや、だからその…ほんとすみません!!
ああどうしよう…! マノレコの全身に私の花粉をぶっかけてしまった…!!」
ぶっかけって…。あ、植/物/系/人にとってはそういうことなのか。
多分すっげー失礼なことをしたと思ってんだろうけど、
こちらとしては全然ピンとこねーぞ。たかだか花粉だし。
それよりもなんだ。
俺としては、さっきからこいつがやたらエロい感じに見えてることのほうが
問題なんだ。
たしかに俺はどスケベだけど、変態じゃなかったはずなのに。
そうか、宇宙船生活が長いからたまってるんだな。きっとそうだ。
「とりあえず、気にしなくていいって」
「気にしますよ! ああ…すみません、もう何ていって謝ったら……」
「うんモヅャット君、俺いますごく良いことを思いついた」
「え?」
「太古の地球にはこんな言葉がある。『目には目を』……
つまりやられたらやりかえせという意味なんだけどね」
「……ええ」
俺はモヅャットを抱き寄せると、
ボリューム満点の後ろ髪に手を差し込んで俺に向き合わせ、こう言った。

「今度は俺の花粉をお前にぶっかけるってことだよ!!」

多分、俺は今すっごい悪い顔で笑っている。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ありがとうございました!

188:風と木の名無しさん
10/09/23 03:50:02 Ldn3fUUv0
>>182
元ネタ知らないけど萌えましたw
空中散布イイヨー

189:風と木の名無しさん
10/09/23 08:55:07 pf1j0nA60
まさかの宇宙イヌー!!萌えたぜ

190:風と木の名無しさん
10/09/23 11:05:58 jb5HhcxbO
>>182
エロ親父マノレコに萌えワロタw
宇宙大`読めるとは!GJ!

191:風と木の名無しさん
10/09/23 11:56:33 p9j492mDO
>>182
この二人の話が読めるとは!
GJGJ!同じく盛大に萌えワロタw

192:怪物と私 1/3
10/09/24 00:34:28 8uVOZZ/1O
conteの王様コンテストで不覚にも萌えたので、Pスの怪牛勿とイ白爵様でどうぞ

台詞等が違う可能性が高いですが見逃して戴ければ幸いです
あと初投稿なので文の拙さもついでに見逃して戴きたいです


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


私は今、原宿に来ている。
こんな薄汚い人間が集まる下界くんだりまでどうしてこの私が来なければいけないのか。

「すみません、イケメソイ白爵様…」

こいつだ。
こいつのせいだ。
私の屋敷で働く怪牛勿で、いつも同じ服しか着ないくせにお洒落をしたがって私と出掛けたがるのだ。


しかし原宿に来て1時間、あれだけ来たがっていたのに来たのにクレープを片手にしょんぼりしている。

「なんだ、食べきれないのか?」
「はい…」
「だから食べきれるのかと聞いたんだろう!」

クレープ屋だ、クレープ屋だと嬉しそうな顔をするものだからつい買ってしまったが、結局は残ったこのクレープだって私が食べる羽目になるのだ。

「もう食べられないのなら私によこせ!」

193:怪物と私 2/3
10/09/24 00:36:45 8uVOZZ/1O

少し語気を荒げてしまったためか、怪牛勿は下を向く。

「すみませんイケメソイ白爵様」
「謝るな」
「せっかく私のような怪牛勿を、好奇の目を忍んで連れ出して下さったのに」
「気にするな、興が冷めるわ」
「イ白爵様…」


そうこうしているうちに裸フォーレについた。

「ほら、着いたぞ」
「あの」
「何だ?」
「お金が…」
「3万やったろう!」
「賽銭箱に入れてしまいました」

3万も賽銭に使う願いなどあるはずないだろう。
私はこのままお前と暮らしていきたいと、たった5円の賽銭で神に願ったのに。

194:怪物と私 3/3
10/09/24 00:37:21 8uVOZZ/1O
「…屋敷に帰ったら狼の世話をちゃんとするか?」
「します」
「いつも以上に働くか?」
「はい」
「今回だけはジーンズを買ってやるからな。今回だけだぞ」

怪牛勿は私を伴い、嬉しそうに裸フォーレへと入ってジーンズを買った。

「で、お前。そのジーンズはいつ履くんだ?いつもこうやって買い物に連れて来てやってもまた今日のこの服を着るのだろう」
「だってこの服はイ白爵様が私に初めて下さった服なので…」
「それでは私がお前の為に金を注ぎ込んでもドブに捨てているようなものではないか」

私は大きく息を吸った。

「いいか、そのジーンズは絶対に似合うから私の前で必ず履け!前買ってやった服も着ろ!!絶対だぞ」
「え?」
「だから買ってやった服は絶対に着ろって言ってるんだ何度も言わせるな恥ずかしい!ついでにこれからずっと、毎日の私の服も選べ!わかったな!!!」

私の言葉が聞き取れた瞬間怪牛勿の目は潤み、微笑んで出会ってから初めて大きな声ではいと言った。


まったく、世話のかかるやつだ。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
キャラとストーリーが破綻してしまい、大変申し訳ございません

195:風と木の名無しさん
10/09/24 00:55:27 qXZ9J+i8O
>>192
神よ、ありがとう…!
平和(要英訳)のネタが邪な目でしか見れなくて悶々としていたのです!
まさか棚に投下されるとは!
ツンデレな伯爵に胸が高鳴るっ

196:風と木の名無しさん
10/09/24 00:58:18 YBAuQN5r0
>>192
まさかこの2人の話が読めるとは
ちょうど同じ番組見て萌えてたところです

197:風と木の名無しさん
10/09/24 01:05:43 +r1nvFWu0
>>192
GJ!
かわいい二人をありがとう

198:コーヒーを一緒に・・・2 1/9 ◆CPu0lwnplk
10/09/24 01:24:05 X58NEJuU0
 闇金ウシジマくんで戌亥×社長前提の柄崎×社長です。小悪魔(魔王様)誘い受け、
媚薬物です。ツンデレ気味。>>141の続きになります。レスして頂いたた方、ありが
とうございました 成人滑丑の釣り針に釣られそうですw

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
 「お待たせしました」
 丑嶋が座っているソファの前にあるテーブルにコーヒーが入ったカップが置かれた。
 眼鏡を外したままだった丑嶋はコーヒーを持ってきてくれた柄崎を一瞥する。
 丑嶋は数度瞬きをし、眼鏡をかけると白いマグカップの取っ手に手を掛けた。長い
指が白い取っ手に絡まる。そんな何気ない光景さえも、もし万が一にでもあの薬が効
いたらと想像をすると淫靡な行動に見えてくるから不思議だ。
 本当に眠くて判断力が鈍っているのか、柄崎が何か良からぬことを企んでいるとは
思ってもいないのか、それともただ単にコーヒー自体が自宅の物だから疑う余地もない
のか、丑嶋は何も躊躇することなくカップを唇に近づけた。
 あと15センチ、あと10センチ、もう少しだけ、と柄崎が固唾を呑んで見守る中、つい
に丑嶋の唇に白磁がピタリと付いた。
 「や・・・、やっぱり駄目だ!社長、そのコーヒー飲まないで下さい!」
 柄崎はこれまでの人生で一番とも言える素早さで丑嶋の持っているマグカップを掴んだ。
 「わっ!」
 丑嶋がまだ持っているカップを勢いよく掴んで引っ張ったものだから、急に予期せぬ
力が加わったことにより丑嶋の手がグラつき、中のコーヒーが少し柄崎の膝の上に零れて
しまった。 
 「あちっ!」
 先ほどまでコーヒーメーカーで保温されていた中身は予想外に熱かった。

199:コーヒーを一緒に・・・2 2/9 ◆CPu0lwnplk
10/09/24 01:25:52 X58NEJuU0
 「おい、急に何だ?!」
 幸い丑嶋はコーヒーを被らなかったが、下手をすれば丑嶋だって火傷をしたかも知れ
ないのだ。あまりに不可解な行動をする柄崎に声を荒げる。
 「すっ、済みません、本当に済みません」
 柄崎は完全に混乱している。
 半分涙目になっている柄崎を「危ないだろ」と叱り飛ばすことも出来ず、丑嶋は手近
にあったティッシュボックスから無造作に大量のティッシュを出し、柄崎の膝を優しく
叩くようにコーヒーを拭いてくれた。
 一人で慌て、一人で場を乱し、まさに空回りを演じきった柄崎は、擦って余分な染み
を広げないように拭いてくれている丑嶋に今すぐ土下座で謝りたくなる。
 丑嶋はティッシュで柄崎のズボンに滲みたコーヒーを拭き取ると、続いては床に零れた
分を手早く拭き始めた。
 屈んで床を拭く丑嶋を柄崎はオロオロと眺める。柄崎は立っていて、丑嶋は床に屈ん
でいるので、ポロシャツの襟首からはうなじが見える。あの風俗店の店長にも負けない
玉の肌だが、そんなことで鼻の下を伸ばせる余裕はない。
 「社長、俺がやります」
 「いいよ。もう終わる」 
 せめて、と思った柄崎だったが、丑嶋の声は冷たい。
 冷静になれば、丑嶋の声色はつねに冷たいのだと思えるのだが、今の柄崎にとっては
拒絶されているようだ。
 もうこれ以上ここにはいられない、と帰ろうと思うと、床を拭き終わった丑嶋は柄崎の
心中を察したのか、ティッシュを捨てて柄崎のほうに向き直った。
 「柄崎」
 「はい・・・」
 丑嶋は柄崎の目を見ながらテーブルの上に置いたカップの片方を指で弾いた。
 「お前がこっちを飲め」

200:コーヒーを一緒に・・・2 3/9 ◆CPu0lwnplk
10/09/24 01:26:41 X58NEJuU0
 顔を上げ、丑嶋が指で弾いているカップをみた柄崎は一気に青ざめた。丑嶋が「飲め」
と言っているカップは、もう片一方のカップに比べると明らかに中身が少なく、白い
カップの表面にはコーヒーが垂れた筋がついている。つまり、先程、柄崎が丑嶋に飲ませる
為に用意した媚薬入りのカップの方だ。
 媚薬の真偽は危うい。でも考えてみれば、このコーヒーに混入した媚薬をくれた店長は
以前から妙に誠実な所がある。だとすれば、本物の媚薬かもしれない。
 もし本物だとしたら、丑嶋に飲ませる分にはこの上ない幸運だ。だが、自分が飲んだら
危険だ。
 柄崎は最早にっちもさっちもいかなくなり、顔色は真っ青だというのに額からは大粒の
汗を流すという真逆の状態を器用にこなす。
 丑嶋は今にも気絶してしまいそうな柄崎をただジッと見つめる。よく視線が突き刺さると
いう比喩があるが、まさに柄崎の心の中の罪悪感には丑嶋の強い視線が突き刺さった状態だ。
 もういっそのこと、本当に土下座して誤ってしまおうか。だが、土下座したところで「飲
め」と言う命令は覆らないだろう。柄崎は深呼吸すると、床に座った。そして、恐る恐る
わざわざご丁寧に自分の前に移動された媚薬入りコーヒーのカップを手に取った。
 けれど、手が強張って動かない。
 ギクシャクと出来の悪いからくり人形のように動く柄崎を見かね、丑嶋が珍しく穏やか
で優しい声を出す。
 「なあ、柄崎。飲めないのか?何でだ?」
 「それは、ですね・・・。そのォ・・・」
 「もしかして、何か入れたか?」
 「う・・・・・・。はい」
 優しい猫なで声がかえって怖く、柄崎は洗いざらい白状してしまい、このコーヒーがどの
ように危険なものかを説明して許してもらおうと腹を決めた。

201:コーヒーを一緒に・・・2 4/9 ◆CPu0lwnplk
10/09/24 01:27:34 X58NEJuU0
 一旦手の中のカップをテーブルに置き、胸ポケットに入れておいた媚薬の小瓶を丑嶋に
差し出す。
 「これを入れたのか。ふーん、中身は?」
 丑嶋は差し出された小瓶を受け取り、マジマジと見てみる。
 「中身は今日回収に行った風俗店で貰った、所謂、なんと言いますか、媚薬らしいです」
 媚薬、と言われて、丑嶋は天を仰ぐように上を見た。店長に小瓶を貰った時の柄崎と同然、
日常では聞きなれない媚薬という言葉を考え込んでいるようだ。
 続いて瓶のふたを開け、匂いを嗅ぎ始めた。すると、すぐ合点が言ったというような顔に
なり、一瞬眉を顰めた。
 「媚薬?これが?」
 丑嶋は再びカップを持つと、柄崎の手の中に握らせ、残酷極まりないこと結論を口にした。
 「媚薬、か。あっそ。良いから飲めよ」
 完全に身体窮まった柄崎は、ついにカップに口をつけ、心を無心にして一気にコーヒーを
飲み干した。
 コーヒーは砂糖もミルクも入っていないブラックの筈なのに、何故か甘ったるく感じた。
匂いはコーヒーだが、どことなく他の食品の匂いもしたような気がしたが、果たして何の
匂いかは分からなかった。
 カップの底には何も残らない程丁寧に飲みつくし、丑嶋に見せるようにカップをテーブル
に置いた。
 「飲みました・・・」
 すっかり空になったカップを覗き込むと、従順な柄崎に気を良くし、珍しく丑嶋が笑顔を
見せてくれる。
 「よし」
 にっこり、とか花の咲くような、とか表現することを憚られるニヒルな強面の笑顔だが、
それだけでも柄崎には十分だった。もし柄崎が犬だったら、千切れんばかりに尻尾を振って
いることだろう。

202:コーヒーを一緒に・・・2 5/9 ◆CPu0lwnplk
10/09/24 01:28:17 X58NEJuU0
 しかし、褒められたところで、薬を無断で使用しようとした罪悪感はまだあり、丑嶋の笑
顔を直視できない。柄崎は首を曲げ、顔を背ける。
 ぎこちない態度の柄崎に対し、丑嶋は笑顔を崩さずに立ち上がる。丑嶋が動いたことで、
柄崎の鼻腔にコーヒーとは別の香りが届いた。キツイ匂いでもないのに、何故か胸焼けする
ような甘い桃の香り。戌亥との秘められた情事の証拠。憎くて、羨ましくて堪らないのに、
丑嶋が衣服にではなく素肌に纏わせた香りだと思うと、それだけで興奮を煽る。すっかり
忘れていた筈なのに、今のタイミングで突然強く感じるようになったのか。
 柄崎が再び丑嶋のいる方を向くと、丑嶋は柄崎のほぼ横に床に座り、柄崎の顔を覗き込
んでいた。
 「・・・!」
 叫び、飛び退き、誤魔化すように笑って済ます。醜い嫉妬と、猛る欲望を悟られないた
めにすべき行動が脳裏に浮かぶ。だが、ただ浮かんだだけだった。
 あどけない可愛さなど微塵もない丑嶋の笑顔に魅入られ、柄崎はぬめる様な色欲が足の
爪先からヘソにかけて昇って来るのを感じた。下半身全体がジンとし、体が重たく感じる。
 柄崎の理性と倫理と丑嶋に対する純粋な忠誠心が熱を増す下腹部に懸命に叱責を繰り返す。
 けれど、心なしかいつもよりも勃起の速度が速いような気がする。やはり、あの媚薬は
本物だったのだろうか。
 だとすれば、これ以上丑嶋の傍にいたら不味いではないか。もう柄崎自身の中では、丑嶋に
対する自分の気持ちが単なる尊敬の念ではなく、年々と蓄積してきた恋心だということは
自明だ。それに、戌亥に対するモヤモヤとした感情が嫉妬だと言う事も自明だ。
 ならば、このまま丑嶋の傍にいては、いつ感情が爆発してもおかしくないのだ。ましてや、
媚薬が効果を表し始めている今ならば尚更だ。
 いざとなれば、丑嶋に力で劣る柄崎が丑嶋を力づくでどうこう出来ることはないのだから
良いのだが、そんなことになって、丑嶋に軽蔑されるのが一番怖かった。なのに、下半身に
集まった血流は一気に性器に流れ込み、硬度を強めていく。そんな最低な自分に嫌気がさし、
落ち込んでしまう。

203:コーヒーを一緒に・・・2 6/9 ◆CPu0lwnplk
10/09/24 01:28:55 X58NEJuU0
 丑嶋の方から近づいて来たならば、柄崎が離れれば良いだけだ。柄崎は媚薬を盛ろうと
したことを謝り、何とか丑嶋の許しを得て自宅に帰ろうと思った。
 しかし、柄崎が口を開く前に、丑嶋の長くて無骨な指が柄崎の手に重ねられ、離すまいと
指を絡めてきたものだから驚いた。
 「う、丑嶋!あっ、間違えた、社長っ!何して・・・」
 みっともないほど声が裏返り、握られた手には大量の汗が滲んできた。それに比べ、丑嶋の
手は冷たく、スベスベとしている。やはり、予想通りのキメ細かい肌だった。
 「柄崎、お前さ、俺に媚薬を飲ませてセックスするつもりだったんだろ?やりたきゃ、やって
みるか?」
 丑嶋は柄崎の手を撫でながら穏やかな声で物騒な事を言い出した。突然何を言い出のだろう
か。柄崎は媚薬のせいで幻聴が聞こえたのかと思った。
 「社長、本当に今日はこんなことして、どれだけ謝っても許されないかもしれませんけど、
すみませんでした。俺、もうここらでお暇します」
 「このまま帰るなんて、お前は馬鹿か?」
 甘美な幻聴に勃起した性器がビクリと跳ねる。だが、これは単なる幻聴なのだから。誘惑
されて、のってはならない。だが、幻聴は未だ止まない。 
 「やりたいなら、やってみろよ。つーか、やれよ」
 柄崎は丑嶋の口の動きを見る。口の動きと、丑嶋の言葉は共通している。どうやら、幻聴
ではないようだ。だからと言って、相手は丑嶋だ。そこらでナンパした奴や、キャバ嬢や、
風俗従業者ではないのだ。お言葉に甘えて、はい、いただきます、といける訳無いではないか。
 けれど、さらりとぶつけられた甘美な誘いの言葉を避けきれず、真正面から喰らってしまっ
た柄崎はもうフラフラだ。それに、媚薬のせいかもしれないが、先程から心臓が早鐘を打ち、
呼吸は苦しくなるほど浅くなってきている。 
「しかしですね、この件に関しましては全て俺が悪かったんですし、いくら何でも、その気
のない社長をどうにかするのは・・・」


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