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『山口組三代目 田岡一雄自伝』より転載
「俺たちは戦勝国民だ。敗戦国の日本人が何をいうか」
警官は小突き回され、サーベルはヘシ曲げられ、街は暴漢の跳梁に無警察状態だ。
集団で土地をロープで囲み、バラックを建てていた家族を殺害し占拠する。
白昼、商店を襲い、商品を根こそぎ奪いそれを闇市で売りさばく。
バスや列車に無銭で駅員を殴り倒し、どかどか乗り込み、網棚の荷物を外に放り投げ、
そこで高いびき。警官狩りをして堂々と殺す等等。祖父曰く「町は彼らの遊び場になった。
日本人は逃げ惑うだけになった。
こういった不良分子は『旧陸海軍の飛行服』を好んで身につけていた。袖に腕章をつけ、半長靴をはき、
純白の絹のマフラーを首に巻きつけ、肩で風を切って町をのし歩いた。腰には拳銃をさげ、白い包帯を
巻きつけた鉄パイプの凶器を引っさげた彼らの『略奪』『暴行』には目にあまるものがあった。
途中で四、五歳の女の子が泣きながら夢中で駆け寄ってきた。「どないしたんや」
「おかあちゃんが、おかあちゃんが」少女は私に泣きじゃくりながらしがみつく。
この世のものとは思えぬ女の狂気じみた悲鳴がきこえつづけていた。「ここにいるんやで。ええな」
私は少女をその場において一目散に走った。少女の母親は、木立の中で数人の男に犯されていた。
飛行服の男たち(朝鮮人達)だった。
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