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★発信箱:英霊と天皇の東京裁判=冠木雅夫(編集編成局)
赤坂真理さんの「東京プリズン」(河出書房新社)が話題を呼んでいる。アメリカと日本、敗戦と憲法、天皇の戦争責任という大きな問題を、
母親との葛藤などの自分史に重ね合わせて描いた長編小説だ。
米国の高校に留学した16歳の「マリ・アカサカ」は「天皇の戦争責任」を論題としたディベートに参加することになる。
「責任がある」と主張する役割を与えられて猛勉強を進める。本番は昭和天皇を被告とした「もう一つの東京裁判」の様相を呈していく。
母親と天皇と主人公自身が混然となった最終弁論は迫力があった。
「あらゆる資料の中で、これがいちばん心に刺さった」として記されるのが、三島由紀夫の短編「英霊の聲(こえ)」の有名な一節だった。
「などてすめろぎは人間(ひと)となりたまいし」。すめろぎ(天皇)に殉じた英霊たちが、「人間宣言」を行った天皇を「などて」(なぜ)と恨み嘆く言葉である。
赤坂さん自身は英霊の発言をこう書く。「われわれは、物語を必要としている。われわれには、新しい物語が必要なのだ」。
魂の救済を求める英霊は戦死した兵士だけではない。「死んだ市民や、もちろん原爆で焼かれた人も、一瞬にして蒸発して果てたような人たちもいるし、
戦争中の自分を恥じている者たちもいた」。英霊とは「聲を奪われた」すべての日本人とも。
文芸評論家、加藤典洋氏が戦後50年を前に発表した「敗戦後論」を思い出した。戦争で死んだ日本の300万人の哀悼を先に置き、
それを通じて2000万人のアジアの死者への謝罪に至ることが必要だと論じた評論だ。原点に戻って戦後日本の「ゆがみ」を解消し、
日本人を主体として確立しようという思いに通じるものがある。
慰霊の夏に戦後の日本について考えさせてくれる一冊といえる。
毎日新聞 2012年08月10日 00時19分
URLリンク(mainichi.jp)
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