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日本のダム行政に転換を迫ったのは、一九九八年七月の河川審議会総合土砂管理小委員会(委員長・高橋保京大教授)の報告だ。
川を水源から海までの連続した「流砂系」と位置づけ、土砂対策の重点を、止める一から「移動」に移すよう求めたのである。
土砂は水のように規則的には流れない。堆積と移動を不連続に繰り返し、流砂の予測方法は確立していない。
だが、膨大な量の堆砂をダムから出さなければ、水量調節や発電、用水確保などの機能が果たせなくなる。
そして上流でも下流でも洪水の危険が増す。この十五年間、海岸の浸食は年平均160ヘクタール(甲子園球場の四十倍)と、
それ以前の七十年間に比べて二倍以上の早さで進む。ダムが河口への土砂の移動を妨げることで、結果的に国土を削り続けている。
「報告一が提示した排砂の方法は、ダム潮のしゆんせつ、泥水を流すバイバズトンネルや排砂ゲートの設置、
砂防ダムの増設などである。今回歩いた現場で見たものは、その最先端の一例だ。
しかし、こうした土本技術、人工構造物に頼る対策だけでいいのだろうか。大規模ダムの功罪をめぐる議論が今、世界的に沸き起こっている。
日本では去年十一月、公共事業を国民の手に取り戻す委員合(座長・五十嵐敬喜・法政大教授)が「緑のダム構想」を発表した。
森林の持つ保水力や砂防力をもっと重視しようという考え方で、ダム計画の凍結、堆砂のひどいダムの撒去、民有林への補助、
都市上流での遊水池設置などを提言した。国土交通省の現行の治水や利水、掲水対策は時代の要請に合わなくなつた、としでいる。
世界銀行が環境保護団体などと設立した世界ダム委員会は去年、「ダムが世界各地で広範な環境破壊と人的被害をもたらした」として
代替手段の検討を求める最終報告を発表。日本がダム技術を学んだ欧米諸国もダムの撤去やゲートの開放に手をつけ、
非政府組織の世界自然保護基金はライン川などのはんらん原の復活に取り組んでいる。