【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ14【友人・知人】at OCCULT
【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ14【友人・知人】 - 暇つぶし2ch600: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/09/16 20:37:58 /WnOwU/k0
「……」
「……」
しばらくお互いの作業に集中する。
「…そうだ、上げ底の話をしたかったんだった、さっきしかけたよな?」
師匠が手を休めてこっちに話しかけてくる。
「そうでしたっけ…?」
「あれ、ちがったっけ?まあいいや、とにかく俺らは"霊的な"上げ底を履かされている。
 俺は"アレ"によって、お前はその血筋によって」
「上がってるんすかね。むしろお互いかなり下がってませんか?一般性という意味において」
「…そんな気もするが、下げ底じゃなんの話かわからんから、上げ底ということにする」
零感ならこんなヤクザな職につかなくても良かったかもしれない。と思いながら
俺は寝転がったまま漫画の次の巻に手を伸ばす。
「しかし上げ底によって色んなもんが見えるし、感じられるわけだ。
 神秘的なものから、見えなくていいものまで」
とは言われても、俺は生まれた時からこれが当たり前の生活なわけで、今更何とも思わないが。
「それを生業にもしている、そのことでの繋がりも出来た。
 勿論、それによって様々なものも亡くしたりしている」
俺自身はそれほど亡くしたとは思っていないが、及び知らぬ所でそうであるのかもしれない。
「でな、この上げ底が無ければお互いとっくに何回か死んでいるわけだ」
「そうかもしれせんね」
「しかし、この上げ底が無ければ、そもそも死にそうになったりもしないわけだ…」
「…そうでしょうね」
「上げ底を脱いで見たいと思わないか、というか祓ってみたいと思わないか!」
「…何言ってるんすか、それが出来たら困りませんよ。
 それに俺のは、ただの強すぎる霊感なんで祓いようがありませんって」
「駄目元でチャレンジしようぜ!!人生にはチャレンジが大切だ!!」
キラキラした目でこちらを見ている師匠に分からないように、小さく溜息を吐いた。
またこの人の悪いスイッチが入ったようだ。
ぶっちゃけ俺はどうでもよくて、
自分の"アレ"をなんとかしたいだけなのだろう。いつものことだ。

601: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/09/16 20:43:49 /WnOwU/k0
「そんなこと言って、今度は、どこの神社を潰しかけるんですか。
 ほんとそのうち、天罰が下りますよ…」
数年前、同じような師匠の思いつきで
数駅向こうの神社の守護者(狛犬っぽい何かだった)とガチバトルになりかけたことがある。
"アレ"持ちの師匠は基本的に神域には近づけないのだ。
「ふっふっふ、そこは私も考えたのだよ。日本には三大神宮というものがあってだな。
 そこにはその辺のしょっぱい神社や、クソカッパなどとは比べ物にならない、
 力を持ったマジモンの神様が居らっしゃるわけだ」
「まさか…」
「じゃあ、さっそく行こうか。日が暮れる前に」
この人はスイッチが入ったが最後、他人にはまず止められない。おかんを例外として。
そしておかんはいつものごとく仕事で不在だった。

というわけで、師匠の車をかっ飛ばして、一番近い某神宮の近所までやってきた。
山をいくつか越えてきたのだが、
某神宮に近づくほどに、運転している師匠の様子がおかしくなる。
いきなり昭和歌謡を歌いだしたかと思えば、アブナイ独り言を呟いたりして
さらには、当たりそうも無い怪しい予言とかもしだす有様だった。
たぶん"アレ"持ちに、某神宮を守る結界が反応して、呪詛を浴びせているのだろう。
この程度で済んでいるのはもしかすると"アレ"が防御しているのかもしれない。
「明日は、蛙の腹と牛の首が75パーセントの確立でお空に昇るでしょうけけけけけけけけけけ」
とか言い出した師匠の横っ面を、何度も御札ではたいて正気に戻しながら
時には、俺がハンドルを横から奪いながら、
何とか、俺たちは某神宮側の"ある地点"に差し掛かった。
いい加減難所は越えたっぽいし、あとは楽にたどり着けるだろう。
俺は、左頬が真っ赤になった師匠を横目に見ながら、一息ついていた。

602: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/09/16 20:48:08 /WnOwU/k0
ところが、そう簡単にはいかなかった。
詳しくは場所を書けないが、
その"ある地点"の特定の場所に車が近づくと
師匠が強引にハンドルを切ってアクセルを踏み、ユーターンするのだ。
そして、そのまま元着た道を帰ろうとする。
俺は、横からハンドルを取ろうとしたが凄い力で無理だった。
師匠は「身体が勝手に動くんだよ…、これどういうことなの…」と涙目になっている。
運転を変わってもらって、俺がやっても同じだ。
自然に身体がハンドルを切って、同じ地点でユーターンしてしまう。
試しに師匠を少し離れたところに降ろして、
俺一人で車を走らすと、すんなり通り過ぎることが出来た。

どうやら再度"アレ"のせいでまた、何らかの結界に引っかかっているらしい。
師匠も「おーい」とか言いながら歩道を走り寄ってくるが
さっきのハンドルを切った地点付近に差し掛かると、
体がピンっと気をつけの姿勢になって
そのまま回れ右して、5メートルほど戻ってしまう。
何度チャレンジしても同じようだ。それでも必死にこちらに向かおうとして
同じ動作をする師匠があまりにも面白いので、爆笑しながら携帯で動画を撮っていたら
それに気付いた師匠が怒って走り寄って来ようとして、
また、同じように回れ右して戻っていった。

603: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/09/16 20:57:16 /WnOwU/k0
しばらく無駄な挑戦をしたあと、埒が明かないので帰ることにする。
夕陽が差し込んだ車内で、師匠が愚痴る。
「やっぱし駄目かあ…今日はAも居るし、最近善行積んでるからいけると思ったんだけどなぁ…」
俺はその口ぶりから、何度目かの懲りないチャレンジであることを理解する。
「Mさん、もしかして京都とかも行ったことありません?」
あそこは強固に結界が張られているので、"アレ"持ちならそもそも近寄れないはずだ。
「そういえば、子供の頃修学旅行とかで、何度か行こうとしたんだけど、
 当日に救急車呼ばれるほどの熱が出たり、
 京都から20くらい離れた駅で、荷物が無くなって
 さらにサイフやカードも含めた全財産すられてるのが分かって、
 しかも家族が急病で危篤状態になって、
 どうしても引きかえさないといけない。なんて事もあったなぁ…」
「それ、完全に嫌われてますよ…ってか、そんなに遠くから弾かれるとかどんだけすか」
「ちなみに俺が帰りの電車に乗っていたころには、
 サイフも荷物も全部でてきて、家族は完治していたらしい…」

家の前まで連れて帰ってもらい、手を振って車を見送る。
しかし、師匠の動画は面白かった。
あとで顔にモザイクかけてニコ動にでもアップするか。
200再生くらいは稼げるかもしれない。
ちょうど、台所でお茶を飲んで一息ついていたおかんが居たので
調子に乗って、携帯で動画を見せると
最初は「なんだい」とか言いながら笑っていたのだが、だんだん鬼の形相になってきて
凄い剣幕で師匠に電話をかけさせられ、気付いたら、
おかんの目の前に二人で正座させられていた。

604: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/09/16 21:04:47 /WnOwU/k0
「これはなんだい!良く見たら、数体の式神が必死にM君を回してるじゃないか。
 それも何度も!あんたら、あれほど神域には迷惑かけるなと…ホント何度言ったら分かるんだい!!」
しまった…俺には分からなかったのだが、結界に関係する式神が映り込んでいたようだ。
しかもおかんには、式神の種類でどこに行ったのか分かったらしい。
「私の時代は、どんなに才能ある人でも厳しい修行を積んだもんだ。
 あんたらもとっくに大人だ。私もきついこと言いたくないし、
 好奇心を持つなとも言わないけど、
 あんたらみたいな、ほとんど才能だけでやってる高下駄履きは、
 もう少し自重して貰いたいもんだよ!!!!!!!」
師匠も俺も、うな垂れながら力なく「スワセン…スワセン…」と言うしか無かった。

1時間近く経ったころ、なんとか説教から解放された我々は、
そのまま師匠の古物屋に避難する。
何事もなかったように師匠はパソコンに戻り、
俺は寝転がりながら漫画の棚に手を伸ばす。
「高下駄履きかぁ…皮肉たっぷりだが、上げ底より上手い表現かもしれんね…」
師匠が思い出したように呟いた。
俺もふと、思いついたので訊いてみる。
「ところで15巻まで読んだんすけど、グラ○プラー○牙ってぜんぶで何巻あるんすか」
「ん、100巻以上」
了。

訂正最初の投稿 真昼間から→朝っぱらから

605:本当にあった怖い名無し
10/09/16 21:43:02 F6dry2EF0
乙。 ストック分も楽しみにしてるぞ。

606:本当にあった怖い名無し
10/09/16 21:53:03 Tk3S1DGB0
はい、乙でした・・・。

メリーさんが来る前にw

607:本当にあった怖い名無し
10/09/16 22:04:35 psoGiYWe0

ノリが軽いホラーっていうのは2chっぽくて好きだわ
ブログブックマークしといた
ウニの師匠シリーズがたまに食う寿司ならAと師匠とオカンシリーズはカレーだわ

608:本当にあった怖い名無し
10/09/16 22:12:08 XIfrDHUQ0
新ジャンル「メリーさん」

男「あー・・・最近何も面白いこと無いな・・・」

プルルルルル

男「ん?電話か・・・もしもし」

女「私、メリーさん、今貴方の後ろにいるの。」

男「なんだよ、悪戯か?」

男「・・・!?うわあああ!」

女「私、メリーさん。貴方を殺しに・・・って、もしかして男くん?」

男「お前・・・もしかして、女さん・・・か?小学校で一緒だった・・・」


これが二人の再会だった――


609:本当にあった怖い名無し
10/09/16 22:12:53 XIfrDHUQ0
~第三遭遇と第四遭遇のはざまに~

 「つーわけで、いたずらじゃなさそうだ、どうもオレを守ってくれる類の電話らしいぞ?」

 「でもそのメリーさん・・・てのか?
 どうしてわざわざ電話で危険を教えるんだ?」
 「そ? そりゃ・・・恥ずかしがり屋じゃねーのか?
 それとも・・・直接出てくると自分も狙われてヤバいとか・・・?」
 「となるとさ? そもそも何でお前が狙われるの? って話になるんだが・・・。」

結局、謎は解決しない。
最初は自転車・・・そしてバイク・・・そんで昨日は車だ・・・。

なんかどんどん危なっかしくなってる気がするが・・・。
今のところ無事だしな・・・。
でも、昨日の電話の最後の笑い声も気になるっちゃあ、気になるな・・・。

はぁ、強がってはみたけど、
今日も家に帰るの気が重いな・・・。
後ろには注意して歩こう・・・。


610:本当にあった怖い名無し
10/09/16 22:14:11 XIfrDHUQ0
~第四遭遇~

オレは電話に期待と不安の両方の気持ちを抱いていた。
そりゃ、後ろからバイクや車に襲われてはたまらない。
だが、かわいい女の子の声で危険を教えてくれるとすれば、悪い気がしないものだ。

帰り道、オレはちょくちょく後ろを振り返る。
だが、そうそう、オレを狙ってくる者なんていやしない。
電話の着信も気になるな・・・。
今のところ、何の反応もない・・・。

ようやく、大きな交差点を通り過ぎようと言うとき、
待っていたかのように携帯が鳴りだした。
・・・発信先非表示・・・
間違いない、メリーさんだ!


611:本当にあった怖い名無し
10/09/16 22:14:46 XIfrDHUQ0
だが、オレはこの時、冒険心と言うか、好奇心で、昨日までとは違う反応を試そうとしていた。
電話に出るよりも先に危険の存在を!
真っ先に後ろを振り向くが、こっちに迫ろうとする車も何もない、
普通に一般人が歩いてるだけで、車は普通のスピードで、車道を流れている。
携帯は鳴りっぱなしだが、今日は何もないだろう。
・・・ではどんなセリフを吐くんだ?
ようやくオレは電話に出た。
 「はい、もしもし? いつもありがとな、今日は何かあるか?」
だが、オレの予想は裏切られる事となった・・・。
 『もしもし? 私メリーさん、いま、あなたに向かっているの・・・!』
え・・・どこに・・・あっ!?

右手の交差点から、急に4tトラックが曲がってきた!
それも車道をはみ出し、歩道に乗り上げて!!
勿論、その進路の先には・・・オレ・・・うわあああああああっ!?


612:本当にあった怖い名無し
10/09/16 22:15:53 XIfrDHUQ0
彼女はメリーさん。
いわゆる妖怪だが、基本的に人畜無害で、可愛らしい仕草で老若男女問わず、虜にしている。
男性からだけでなく、女性からも恋文を貰った事もある。
そんな可愛い彼女だが、怖い一面を持っている。
それは凶悪犯が現れた時、彼女はそいつを殺しに行くのだ。
「この世にはわからないことがたくさんある。どんな風が吹いても負けない人になろう。それでも弱い奴かならずいるもんだ。」
と着うたが彼女の携帯から流れ、着信があったことを伝える。
「またなの。あれだけ殺ってテレビにも出て、取材にも答えたのに懲りない人種が居るの。」
彼女は溜め息を吐き、凶悪犯に電話を掛けることにした。
今回の凶悪犯は男女問わず三十人殺傷の通り魔だ。
彼女は凶悪犯に電話をかけた。
凶悪犯は何の気まぐれか電話に出る。
「はい。もしもし。どなたですか?」
凶悪犯は呑気にも電話で通常の会話をしようとしている。


613:本当にあった怖い名無し
10/09/16 22:16:50 XIfrDHUQ0
「もしもし。私、メリーさん。今、あなたの後ろにいるの。」
「そうか。じゃあ、お前が人質だ!」
凶悪犯は躊躇なくメリーさんをがしっと掴んで、人質にした。
「あなた、死刑と私刑なの。」
メリーさんが包丁をどこからと取り出そうとすると、鬼のような、いや鬼の手がメリーさんの行動を止めた。
「鵺野先生、自重するの。ここはキャラスレじゃないの。創作文芸板なの。」
彼女の冷静なツッコミがぬ~べ~に入る。
「しかし、人殺しは見過ごせない…!」
「わかったの。人殺しはやめるの。とりあえず私刑にしておくの。」
「ま、待て…。」
「安心するの。電話で移動するだけなの。」
「どこにだ?」
ぬ~べ~は不敵な笑みを浮かべている。
「慌てないで聞いてるの。」
彼女は少しふくれている。
凶悪犯は話に入れないで困惑しているようだ。
彼女が電話をかける。
「もしもし、私、メリーさん。今、検察庁の検事正の後ろにいるの。通り魔をふんじばって、置いて帰るの。バイバイ。」
その後、通り魔逮捕のニュースが流れた。
「俺の出番はなんだったんだ?」
ぬ~べ~は扱いの悪さに苦悩した。


614:本当にあった怖い名無し
10/09/16 22:18:24 mKhvVjbs0
こいつ心の病気なの?

615:本当にあった怖い名無し
10/09/16 22:19:53 XIfrDHUQ0
これからも彼女は凶悪犯を殺し続けるだろう。
誰かに止められないかぎりは。
これは本当に余談ではあるが、彼女は見た目とは違い処女ではない。
婚約者もいるらしいが、それが作者ではないことだけは確かだ。
でめたし、でめたし。


616:本当にあった怖い名無し
10/09/16 22:25:38 XIfrDHUQ0
電話がかかってきた。
プルプルップルプルッ。
お尻をふと思い出した。
そんなことより電話にでないと。
電話に出てみた。
俺「もちもち。」
メリー「もしもし。私、メリーさん。今、あなたの後ろにいるの。」
俺「だからなんなんだよ。自分で自分を「さん」で呼ぶのおかしいだろks。」
後ろを振り返る。
か、かわいい!

―翌日。
楽しいピンク色の夜でちたうへへ♪

糸冬


617:本当にあった怖い名無し
10/09/16 22:30:59 XIfrDHUQ0
「私……」
「メリーさん! どこからかけてるんだ!」
「駅前の広場だけど……」
「すぐ行く! 待ってろ!」

「メリーさん! いったいどこにいるんだ!」
「タバコ屋の前。あなたの家に向かってるの」
「すぐ行く! 待ってろ!」

「メリーさん! どこにいるんだ!」
「返す物があるの。玄関のポストに入れておくね」
「だめだ! すぐ行くから待っててくれ!」

「メリーさん! 待っててくれって言ったじゃないか!」
「……ごめんね」
「頼むからもう逃げないでくれよ」
「……今、あなたの後ろにいるの」
「メリーさん! もう離さない!」


618:本当にあった怖い名無し
10/09/16 22:40:48 GtNezRuRO
>>557-572 赤緑
>>598-604 ◆7QPLwJZR/Ypf

超乙です!

>>556 去年だか一昨年も参加してたから本人だよ

619:本当にあった怖い名無し
10/09/16 22:46:47 XIfrDHUQ0
あまり知られていない話だが、メリーさんは羊を飼っている。

 メリーさんの羊という歌は有名だが、このメリーさんがいわゆる一つの
今貴方の後ろにいるメリーさんと同じである事を知っている人は少ない。
 最近は街中に在住するメリーさんも増え、羊を飼わない場合も多いのだが、
それでも拘るメリーさんは羊を何とかして飼っている。彼女もまたその一人だ。
 周辺住人から臭いだの煩いだのと苦情は出るが、それでも飼うのをやめて
ジンギスカンにしてしまおう、などとは彼女は思わない。そもそもジンギスカン
向きの羊ではないのだから、大して美味くは無い。いやいや、例え美味かろう
とも喰う事は無いに決まっている。何故なら、メリーさんの羊という歌がある
ように、メリーさんにとって羊はステータスなのだから。
 さて、今日も羊の乳をぐいっと飲み干し、メリーさんの一日が始まる。
味は……だが、健康にはいいこの一杯が、メリーさんの日課であるのは
言うまでも無い。
「行ってくるの」
 そう言って家を出ようとするメリーさんだったが、ここからまた別の日課が
始まる。メリーさんの羊は、歌にあるようにメリーさんについて来ようとする
のだ。メリーさんの羊が学校についていく。その歌詞の通り、羊はメリーさん
の傍から離れようとしない。いつもの事だ。いつもの事だから、どうすれば
いいかは心得ている。
「私メリーさん。今貴方の後ろにいるの」


620:本当にあった怖い名無し
10/09/16 22:49:25 XIfrDHUQ0
 瞬間的に羊の背後を取ったメリーさん。羊が声に驚き、目の前からメリーさんが
消えた事にたじろぎ、慌てて後ろを振り返った瞬間、メリーさんは今度は
振り返った羊の背後へと瞬間的に回り、そのままドアを閉めて家を出た。
 この一連の動作を繰り返す事で、自然とメリーさんの背後を取る能力が
鍛えられる―彼女が祖母メリーさんから聞いた話だ。もっとも、最近では
羊を飼わずしてメリーさん能力を身につけているメリーさんも多い為、眉唾
物の話ではある。 ドアの向こうから聞こえる羊の悲しそうな声を振り切る
事で、精神的にも鍛えられるという一石二鳥だ、とも聞かされていたが、
どうにもこうにも胡散臭い話ではある。
 だが、メリーさんの羊という歌が存在する以上、何らかの意味がメリーさんと
羊の相関関係に存在するのは確かだろう。でなければ、その歌自体が
存在しえないのだから。
 今日もそんな事を考えながら、メリーさんは“出勤”する。
「メリーさんのひつじ、メェメェひつじ、メリーさんのひつじ、まっしろね、なの♪」
 何となく歌を口ずさみながら、メリーさんは歩き出した。メェメェと鳴く声を聞きながら、
今日は餌を奮発してあげよう、と思いながら。


621:本当にあった怖い名無し
10/09/16 22:50:33 88ETvkzmO
今日はいったいどうしたのよ?
投下、投下でB29の爆撃か?

622:本当にあった怖い名無し
10/09/16 22:55:55 AG0IcrHA0
前から思っていたけど、誰かが投下するとすぐさま投下する。

赤緑と◆7QPLwJZR/Ypf
乙でした。
次も楽しみに待ってます。

623:本当にあった怖い名無し
10/09/17 01:59:52 q7T3Lm7+0
もうガチで精神病だと思う
逆に可哀想になってきた、頑張って生きてほしい

624:本当にあった怖い名無し
10/09/17 09:21:33 llM7X8y60
誰にも相手にされないのに、いつまでもこんな内容の話を書き続けるあたり、狂気を感じるよな>メリーさん

625:本当にあった怖い名無し
10/09/17 09:43:04 J/sON1IL0
>>621ー624
相手すんなよ、スルーしとけ

626:本当にあった怖い名無し
10/09/17 13:11:46 BgCKxf2P0
赤緑と◆7QPLwJZR/Ypf乙


627:本当にあった怖い名無し
10/09/17 14:52:11 u4mC8yfC0
なんでこのスレの住人はウニを指示しない人を迫害するの?

628:本当にあった怖い名無し
10/09/17 15:13:37 5RZBSRfqO
>>627
被害妄想ですね。
精神科の予約をお薦めします。

629:本当にあった怖い名無し
10/09/17 15:39:43 u4mC8yfC0
おまえバカだな
おまえみたいな敏感包茎野郎がいるからみんな面白がってイジクリまわすんだよ。

630:本当にあった怖い名無し
10/09/17 16:28:56 2+BG/ExB0
ウニと赤緑と◆7QPLwJZR/Ypf乙♪

631:本当にあった怖い名無し
10/09/17 20:57:55 mrqqf3DA0
洒落怖でまとめサイトからコピペしてる奴絶対此処の住人だろw

632:本当にあった怖い名無し
10/09/17 21:21:57 FlbqUYl00
洒落怖にも行ってるんかw 此処の住人じゃねーよ、ホームレスだよホームレスw

633:本当にあった怖い名無し
10/09/17 22:52:09 mrqqf3DA0
コテ名乗ってる時点で奴とは違うだろ
つーか、奴は洒落怖から書き手を奪ってこのスレを許さない!って明言してるんだから洒落怖荒らすことはしないだろう
むしろそれを知ってて洒落怖を荒らして「俺らと同じ憤りを思い知れ」ってやってるとしか思えん

634:本当にあった怖い名無し
10/09/17 22:58:18 oFrF3mDH0
気になるんなら直接荒らしに聞けよ
洒落怖の荒らしとか、スレと関係ない話題出すな

635:本当にあった怖い名無し
10/09/17 23:36:45 ZsytBAk80
ホントもう洒落怖とか関係ないしどうでもいい…
ただ面白い話が読みたいだけ

636:本当にあった怖い名無し
10/09/18 11:48:00 wr/wMwW4O
>>575
うちも喪中さん待ってるけど来ませんねぇ
文章も読みやすいしストーリーも好みだからまた投下して欲しいな
長いしラノベ調だから好き嫌いはあるけど。

637:本当にあった怖い名無し
10/09/18 13:47:46 cItdczxy0
知恵オクレ乙

638:本当にあった怖い名無し
10/09/18 16:04:18 r+4Pym0xO
今日はウニくるのか?

639:本当にあった怖い名無し
10/09/18 17:00:04 1WvC9LTAO
ウニ専スレにな

640:本当にあった怖い名無し
10/09/18 19:14:00 itqCB1JU0
忍来ないかな。。

641:本当にあった怖い名無し
10/09/18 20:00:18 X3nw4dQK0

 ,.――-、
 ヽ / ̄ ̄ ̄`ヽ、
  | |  (・)。(・)|
  | |@_,.--、_,>  
  ヽヽ___ノ


642:本当にあった怖い名無し
10/09/18 20:46:18 VtPZtRLrO
ウニうちで出版しねーかな

643:本当にあった怖い名無し
10/09/18 22:05:25 /o+OTUNi0
師匠ってどんな容姿なんだろう
勝手に諸星大二郎の妖怪ハンターのイメージになってる
読んだ事ないけど

644:本当にあった怖い名無し
10/09/18 23:05:50 Mw3q0GOUP
スレ違い

645:本当にあった怖い名無し
10/09/19 00:09:17 od9352WhO
ウニちゃん来ないかも・・。まぁ連休中に来てくれたらいいな。

646:本当にあった怖い名無し
10/09/19 12:02:04 3pfdlyOD0
ウニ専スレにな

647:本当にあった怖い名無し
10/09/19 15:18:38 iz9pb1lb0
>>639
>>646
m9(^Д^)

648:本当にあった怖い名無し
10/09/19 16:13:53 wl53QpC8O
ウニ専スレにな

649:本当にあった怖い名無し
10/09/19 16:47:57 3pfdlyOD0
>>642
御用命はニート御用達チラ裏印刷へ


650:本当にあった怖い名無し
10/09/19 17:15:31 RS6zuctl0
ウニ専スレに投稿するのは気が引けるからしないって、ウニ数年前に言ってなかったっけ?
とマジレス

651:本当にあった怖い名無し
10/09/19 19:35:27 IOWiRkopO
凄い巨大な釣り針だな

652:本当にあった怖い名無し
10/09/19 19:43:31 XgXzwDLh0
* ← uni

653:本当にあった怖い名無し
10/09/19 20:25:10 Y9F3Outo0
心が汚れきっている俺にはケツの穴にしか見えない

654:本当にあった怖い名無し
10/09/19 20:28:22 b1rU5t1I0
メリーさんマダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン

655:本当にあった怖い名無し
10/09/19 22:18:38 kfkUD4RQ0
ウニさん来るかな~

656:本当にあった怖い名無し
10/09/19 23:41:56 1LK5iwss0
>>642
どこだよ・・・w

657:本当にあった怖い名無し
10/09/19 23:46:53 NlhWXEb10
法政大学出版局だな

658:本当にあった怖い名無し
10/09/19 23:59:55 Gzx9rYIUO
出版してくれるなら10冊は買う
そして布教する

659:ウニ
10/09/20 06:50:52 fqprZnqiO
どこにも相手にされないからここに投下してるんだろが!

660:本当にあった怖い名無し
10/09/20 19:03:31 tzlJpMAw0
布教とかキモすぎ
薦められて読んでもラノベ程度の反応だろうよ
逆に「こいつこんなもの読んでるのかよ」と思われるだけ


661:本当にあった怖い名無し
10/09/20 19:12:40 fqprZnqiO
アンジェラメガネを買うと今ならもれなく鼻がついてきます。

こんな程度のコピーしか書けません

662:本当にあった怖い名無し
10/09/22 22:34:32 8c43elUkO
今週はどんなぱくりを見せてくれるのかな

663:本当にあった怖い名無し
10/09/22 22:51:27 RgebDrDa0
ここって洒落怖の派生スレですよね?
確かに死ぬほど、怖い噺はありますけど、みんなパクられるのだけはゴメンだということ?
まだまだ未発表の怖い話はありますよ


664:本当にあった怖い名無し
10/09/22 23:50:01 yUvmPU/C0
ちょっと何言ってるのかわかんない

665:本当にあった怖い名無し
10/09/22 23:53:18 neNLfwj00
洒落怖の派生スレwwwwwwwwwwww

666:本当にあった怖い名無し
10/09/23 05:34:27 3dw6CAIiO
ウニはパクリ屋

667:本当にあった怖い名無し
10/09/23 07:11:21 VszfTLZF0
そもそも師匠の上前ピンはねだろが。
たしかにウニは何も無いところから新たに話を起こすのはできないみたいだな。
どこかで読んだような話ばかりだ、だから新鮮味がまるでない。
同時にスレ住人の身勝手さにワロタ

668:本当にあった怖い名無し
10/09/23 14:18:29 XD81K8VG0
嫌いなものに粘着するお前の暇さにも笑うよ

669:本当にあった怖い名無し
10/09/23 15:32:52 3dw6CAIiO
暇だからしてんだろ(笑)

670:本当にあった怖い名無し
10/09/23 15:33:01 +ebCPEqgO
668カコイイ!まともな人も居たんだ此処。

文句だけ滴れてないで、もっと良い話でも書いてみたらいいのに。
書けるなら。プ

671:本当にあった怖い名無し
10/09/23 15:42:56 3dw6CAIiO
買えよ

672:本当にあった怖い名無し
10/09/23 16:20:42 kyLwAvVX0
何をだ

673:本当にあった怖い名無し
10/09/23 16:33:28 EIknYtWhO
ポケモンをだよ
言わせんな恥ずかしい

674:本当にあった怖い名無し
10/09/23 16:52:36 3dw6CAIiO
何色?

675:本当にあった怖い名無し
10/09/23 17:54:37 XfZq/3i9O
赤に決まってんだろ。言わせんな。恥ずかしい。

676:本当にあった怖い名無し
10/09/23 23:11:14 Lzn99aQp0
はあ?ポケモンは緑だろ?
赤…緑…はて?

677:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/09/24 13:32:35 VdrXXMuj0
[究明(後)]

1/13
時計を見ると、時刻は21時半を過ぎていた。

ここで会ってから、1時間か。
店内には、俺たち以外ほとんど客は居らず、こちらに聞き耳を立てているような怪しい者も見受けられない。

これからする話は、決して往来会の人間に聞かれてはいけない。
…この2人のためにも。

テーブルから、2人の紅茶のおかわりを持ってきた店員が離れるのを待ち、俺は話を始める。

俺「副会長が持っている壷については、まだ秘密があってね」
高城「秘密?」

俺「覗き込んだだけで霊感が身に付くなんて、そんな甘いものじゃないのさ、アレは」
真奈美「どういうことですか?」

俺「アレは、人を殺す道具だよ」
真奈美「え…」



678:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/09/24 13:37:38 VdrXXMuj0
2/13
俺「覗き込んだ人間から光を奪い、殺してしまう。アレは、そういった物なんだ」

それが、桐谷の家に伝わっていた話。
そして、それについて、より具体的な事を聞かせてくれた人もいる。

「その人間の輝きを…人としての大切なものを削り取って、狂わせる」
その人は、そう教えてくれた。

俺「でも…大抵の人間は死んでしまうけど、”素質”があると生き残ることができる」
そんな状態で生き延びることが、はたして良いのかなんて分からないが、それでも死なない人間がいる。
俺「そういった人には、もれなく霊感が身に付いているのさ」
真奈美「…」
俺「半分、死んでいるような人間だけどね」
真奈美「そんな…」

俺「往来会には、そういった人が何人か居るのでは?」
少々酷な質問かも知れないが、急に無言になった高城に聞いてみる。
すると、彼女は少し間を置いてからこう言った。

高城「…居るわね」


679:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/09/24 13:39:34 VdrXXMuj0
3/13
高城「副会長の部下は、ほとんど暗い目をしているわ…」
俺「…暗い目」
高城「えぇ…。あと、外に出て除霊活動をしている中にも数人…。私、何で気付かなかったの…?」
額に手を当てながら、高城が悔しそうに呟く。

真奈美「高城さん…」
気遣うような声を掛ける真奈美嬢。
そんな仕草に、2人の結びつきの強さを感じる。

俺「副会長が壷を手に入れてから―恐らく、往来会の設立と同じと考えて、約20年。その間に、彼は相当な数の人間にそれを使っているだろうね」
高城「そうね…」
俺「それで、何人の人間が命を落としているか…」
高城「…」
再び無言になる高城。
別に彼女を責めるつもりは欠片も無いが、彼女の立場上、そんな形になってしまう。

真奈美「あ、あの…」
そんな空気を察してか、真奈美嬢が口を開く。


680:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/09/24 13:41:05 VdrXXMuj0
4/13
俺「ん?」
真奈美「桐谷さんは、その、それを取り戻して、どうするつもりですか?」
俺「あぁ、それは勿論―割ってしまうつもりだよ」
真奈美「…ですよ、ね」

それは別に、世のため人のため…ではない。
自分のために、だ。

桐谷の家は、あの壷によって呪われている。
家に生まれた人間は、総じて早死にをするのだ。
それも、必ず上から順番に。

自分の”上”の人間が死に、自分の番が来ると、夢を見る…と、親父が教えてくれたことがある。
それは壷の夢で、壷の中で渦巻いているものに、自分が引きずり込まれるような夢だ、と。

原因が壷にあるのなら、それを破壊してしまえば良かったのにと、俺たちは親父に言った。
…しかし、そんなことは当然誰もが考えたことであり、誰もが実行しようとしたことだった。
そして、その結果はいつも同じだった。
親父でさえ―壷の呪いだと俺たちに教えてくれた親父でさえ、昔、壷を破壊しようとしたが、できなかったのだ。
理由を聞くと、急に目の色が変わり、ただ一言こう言った。

「あんなに愛しいものを、壊せるわけが無い」と。


681:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/09/24 13:45:51 VdrXXMuj0
5/13
俺と兄貴が生まれる以前に、桐谷の家からは壷が盗まれていた。
そのために親父は、俺たち兄弟は平気なのだと、信じるようにしていたらしい。
俺たちも根拠は無いが、そう思うことにしていた。

…しかし今から7年前、親父とお袋が事故で亡くなる。

その葬式が終わった後で、兄貴が俺に言った。
「壷の夢を見た」、と…。

俺「―それから、盗まれた壷を探し始めた訳さ」
俺はそう言って、2人の顔を見る。

真奈美「…」
真奈美嬢は、やや深刻そうな顔をしている。
この子には、ちょっと重い話だったかな?

一方、高城沙織は…
高城「あなたになら、それをどうにかできると思っているの?」
…と、質問をしてきた。
この反応の違いは年の功?なんて言ったら、流石に怒るかな。

俺「実際にご対面したことが無いから、正直分からないけど…とにかく、やってみるさ」
高城「…そう」


682:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/09/24 13:49:28 VdrXXMuj0
6/13
きっと、ダメだろう。

俺には壷を割ることはできない。それは分かっている。

俺は既に、夢を見てしまっている。
もちろん、見る前でも同じだっただろうが、その時点でもう、あれには逆らえないと悟った。

…だが、手が無い訳ではない。
とにかく見つけ出して、手元に戻ってくれば良いのだ。
そうすれば、後は―あの人がやってくれる。

俺「俺からの話は、以上だよ」
すっかり冷めてしまった珈琲を飲みながら、2人に言う。
俺「結局、自分の都合と言われればそれまでだけど、これがこちらの事情さ」
高城「…」
真奈美「…」

…無言。

うーん、やはり気が重い。
高城はともかく、汐崎真奈美には到底納得できる話ではないだろう。
彼女は、完全に被害者だ。言い訳がましくならないように話したつもりだが…。


683:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/09/24 13:53:17 VdrXXMuj0
7/13
高城「とりあえず―」
しばしの沈黙を破って、高城が口を開く。

高城「事情は分かったわ。真奈美ちゃんも、納得するしないは別として、事件の背景は理解できたわね?」
真奈美「はい」
返事を聞いて、真奈美に微笑む高城。
いい表情だな…と思っていると、こちらに向き直り、すぐに厳しい顔になる。

高城「それで、桐谷さんはこの後どうするおつもり?」

話を締めに掛かる高城。
やれやれだ。
結局主導権は取り返せず、俺からの話だけで終わり。こちらからは何も聞けず仕舞いだ。
…まぁ、既に大体のことは掴んでいるが。

俺「動くのを待ちますよ。神尾美加が」
彼女は動く。すぐに、必ず。
その時が勝負だ。

高城「そう…。これ以上被害者が増えないように、気を付けてね」

最後に、本心なのか皮肉なのか分からないことを言われ、話し合いはお開きになった。


684:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/09/24 13:55:15 VdrXXMuj0
8/13

桐谷「お尋ね者なので、先に失礼しますよ」

そう言って桐谷は席を立ち、簡単な挨拶だけして帰っていった。
…一応、私たちの会計も済ませてくれたようだった。

私「真奈美ちゃん…大丈夫?」
桐谷が帰ってから、黙り込んでしまった真奈美ちゃんに声を掛ける。

真奈美「あ…はい。ちょっと考え込んじゃって」
私「お店、出ようか。車で話しましょう」
真奈美「はぁい」

2人で外に出て、車に乗り込む。
周囲を警戒してみたけれど、これといって怪しい視線は感じなかった。
桐谷も、どこにかは知らないが、真っ直ぐ帰ったようだ。

私は車を出して、真奈美ちゃんの家に向かう。
時計を見ると、時刻は既に23時前だった。


685:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/09/24 14:03:07 VdrXXMuj0
9/13
私「ごめんね、こんなに遅くなっちゃって」
真奈美「いえー、連れてきてくれて、嬉しかったです」
私「なら良かったけど…」

私は散々悩んだ挙句、彼女を連れて行くことにした。

冷静に考えてみれば、桐谷を捕まえても根本的には何も解決しないことは、明らかだった。
それに、真奈美ちゃんにも事件の真相を教えてあげたかった、というのもある。

そして、その結果―
桐谷の動揺を誘うことができ、こちらの望むように、話を聞きだすことができた。

…もっとも、全てではないことは分かっている。
彼の中には、「話してはいけない事」がいくつかあるような様子だった。
その点は少し気になったけど、今はそれでも良い。
初めから、全てを聞き出せるとは思っていない。

真奈美「なんか、桐谷さんも大変ですよね…」
高城「…」
真奈美「結局あの人も、自分の知らないところで大変なことになっていて、助かるためには、あれこれしないといけない状況で…」

桐谷に同情的な真奈美ちゃん。
優しい子だな、と思う。


686:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/09/24 14:06:38 VdrXXMuj0
10/13
真奈美「私達も、今は待つしかないのかなぁ…」
高城「そうね…」
ハンドルを切りながら、真奈美ちゃんの呟きに答える。

往来会の…副会長の秘密を知ってしまった。
こうなった以上、真奈美ちゃんを副会長に近付ける訳にはいかない。

彼は、真奈美ちゃんを気に入っていた。
…素質があるから、と言って。

これは間違いなく、壷に関する素質のことだ。
副会長は、真奈美ちゃんにそれを見せるつもりだったのだろう。
事件の有無に関係なく…。

この件が無ければ、私は何も気付かなかっただろう。
汐崎さんもまた然り。
そうして、誰も知らぬまま…誰も助けられぬまま、彼女は壷を覗き込むことになっただろう。

そう考えると、恐ろしくて…悔しくて、仕方ない。
副会長は、堂々とそんな事をしようとしていた。
…いや、してきたのだ。今まで、ずっと…。


687:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/09/24 14:09:57 VdrXXMuj0
11/13
やがて、真奈美ちゃんの家の前に着く。
深夜だったので、思いのほか早く着くことができた。

私「それじゃ、何かあったらすぐに私か…牧村さんに連絡するのよ?」
真奈美「はぁい。送ってくれて、ありがとうございますー」
そう言って、真奈美ちゃんは車を降り…と。
真奈美「あー…そだ」
シートベルトを外したところで、真奈美ちゃんの動きが止まる。

私「何?」
真奈美「今日の話、牧村さんにした方が良いと思います?」
私「そうねぇ…」

巻き込むことを考えると、言うべきではない。
でも…

私「話すべきね」
真奈美「はーい。了解です」
相談するのに、力になってもらうのに、隠し事をしていてはダメ。
それに、こちらがどれだけ危険な状況かも、知ってもらう必要がある。


688:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/09/24 14:13:47 VdrXXMuj0
12/13
真奈美「で、あのぉ、もう1つ…」

何やらモジモジして、真奈美ちゃんが言ってくる。

私「なぁに?」
真奈美「あのぉ、名前で呼んでも良いですかぁ…?」
私「…?」

名前?

…あぁ。
私「もちろんよ。沙織です、よろしくね」
突然話が飛んだので、何のことか分からなかった。

真奈美「良かったぁ、それじゃ…」
そう言って、真奈美ちゃんは車を降りる。

真奈美「沙織さん、ありがとうございましたぁ」
私「おやすみなさい、真奈美ちゃん」

玄関の前に立ち、満面の笑みで手を振る真奈美ちゃんにさよならを告げ、私は車を出した。


689:赤緑 ◆kJAS6iN932
10/09/24 14:15:34 VdrXXMuj0
13/13
…良い子。それに、強い子。
帰りの車の中で、そんなことを思う。

父親が捕まってしまい、家に1人。寂しくて、不安で仕方ないだろう。
でもそんな素振りは少しも見せず、私に笑顔を見せてくれる。
汐崎が捕まってしまったのには、私にも原因があることを知っているからかもしれない。

…そう。私にも原因があるのに、あの子は私を好いてくれて、信じてくれる。
私も、あの子が好きだ。
きっと良い関係になれるだろうな、と思う。

でも―。

汐崎さんは、私の事を憎んでいる。
きっと今も、殺したいほどに憎んでいる…。
そう考えると、気分が滅入ってしまう。

もし、全てが上手くいくなら。
彼の気持ちが、こちらに向いてくれたら。
少女趣味と言われそうな、私の夢―好きな人と幸せな結婚をして、幸せな家庭を築けたら…。

この年になって、そんな空想をするとは思わなかったけど、そう考えると心が落ち着く。

これからどうなるか分からないけど、どんな時でも強い気持ちでいられますように…。
私はそう、自分自身に祈った。




690:本当にあった怖い名無し
10/09/24 14:40:05 rW369x3hi
赤緑乙
姉貴はそろそろか?

691:本当にあった怖い名無し
10/09/24 15:04:05 +xNH9e1g0
URLリンク(sasorizi.blog104.fc2.com)
無料の霊視らしい

692:本当にあった怖い名無し
10/09/24 18:01:09 huIY47D50
フッ… l!
  |l| i|li ,      __ _  ニ_,,..,,,,_
 l|!・ω・ :l. __ ̄ ̄ ̄    / ・ω・≡
  !i   ;li    ̄ ̄ ̄    キ     三
  i!| |i      ̄ ̄  ̄  =`'ー-三‐ ―

              /  ;  / ;  ;
          ;  _,/.,,,//  / ヒュンッ
            /・ω・ /
            |  /  i/             
           //ー--/´
         : /
         /  /;
    ニ_,,..,,,,,_
    / ・ω・`ヽ  ニ≡            ; .: ダッ
    キ    三    三          人/!  ,  ;
   =`'ー-三‐     ―_____从ノ  レ,  、


693:本当にあった怖い名無し
10/09/24 19:31:53 W8ZVdibv0

 ―とあるチャットにて―

LINE:メリーさんの羊って、都市伝説のメリーさんと関係あるの?
EXT:突拍子も無い疑問ですね。またどうして?
RANA:羊飼ってるメリーさんでもいた? なわけないかw
LINE:……向かいに住んでる外人さんが、羊飼ってるの。
MAO:写真うpしる!
LINE:勝手に人の写真アップできるか!
MAO:なっとくwww
LINE:で、もし関係あるなら、彼女、メリーさんだったりするのかな、って。
RANA:それ短絡的過ぎない? でも、確かあんたん家って結構街中だったよね?
EXT:そこで羊というのは、確かに違和感を覚えますね。まあ、メリーさんと
    メリーさんの羊とは、特に関係は無いのですが。
LINE:あれ、ないんだ?
EXT:ええ。マザーグースって奴ですから。
MAO:はんぷてぃだんぷてぃ!卵野郎キタコレwww
LINE:そうなんだー
EXT:MAOが知ってるというのが意外ですね……まあ、ですから関係ないかと。
RANA:でも、羊飼ってるって凄くない? ペット可のマンションとは言え。
LINE:ちょっと変わった人ではあるよね。でも、何か真面目そうな感じだったな。
    純朴というか、信じやすそうというか。
RANA:案外、名前はメリーさんなのかもよ?
LINE:今度話しかけてみようかなぁ、思い切って。
MAO:美人外人さんの写真うpきぼんぬ!
EXT:……きぼんぬは古いぞ。


694:本当にあった怖い名無し
10/09/24 19:57:36 W8ZVdibv0
 ―とある喫茶店にて―

「そういえば……メリー婆さん、お孫さん、まだアレ信じてるのかい?」
 婆さん、と呼びかけられた少女は、明らかに気分を害したようだった。
「婆さんって言うななの」
 その声も、姿形も、どこからどう見てもあどけない少女のものだった。
ただ一つ、その目だけは違っていたが。色々なものを見てきた、そんな
深さを持った瞳が、婆さんという言葉を発した男をにらみつける。
「わが孫ながら、あんなに騙されやすいのは心配なの……」
「でも、根性あるよねぇ。こんな街中で羊飼い続けるとか」
「……メリーさんの羊のメリーさんは、ただのメリーちゃんで私達とは
 関係ないの……なんて今更言えないの」
 困った顔で口元に手をやる少女の姿をした老女に、男はグラスを差し出した。
「ま、仕事の方はうまくやってるみたいじゃないか。この前もオカルト雑誌の
 取材を受けてたしね」
「私達取材して何がどうなるか、なの。書けないような事しかやってないの」
「記者さんも色々悩んで、結局書けなかったみたいだけどね」
「やっぱり、なの」
「いつものでいいかい?」
「うん、なの」


695:本当にあった怖い名無し
10/09/24 20:31:32 W8ZVdibv0
 グラスに注がれる琥珀色の液体をぼんやりと見つめながら、少女の
姿をした老女は思った。
(こんな“仕事”だもの……癒しになるものがあるなら、その方がいいの)
 例えそれが、自分の戯言から来た癒しであろうと、それが癒しである事に
変わりは無いだろう。本当に、何がどう転ぶかはわからないものだ―
そう思うと、自然と彼女の頬は緩んだ。
「乾杯するかい?」
「何に、なの?」
「そうだな……メリーちゃんに、でどうだい?」
「ん。なの」
「じゃあ」
『乾杯』
 グラスの打ち合わされる音が、静かな喫茶店の中に響いた―

                                      終わり



696:本当にあった怖い名無し
10/09/24 20:40:27 W8ZVdibv0
―私、メリーさん。今あなたの後ろにいるの。

 携帯を取った俺の耳に飛び込んで来た第一声。
 それが、かつて友人から聞かされたオカルトであるという事に気付くまで、そう時間は要さなかった。
 俺の人生ももう終わりか、そう思う一方で彼女の姿を、一目見てみたいという衝動にふと駆られる。
 無理もない事だ。その昔聞いた話が本当なら、後ろにいるのは可憐な少女に他ならないのだから。
 この世の終わりに目にするのがそれであるというなら、決して悪い話でもなかろう。
 だからこそ、俺は振り返ったのだ。なのに―。

「………いない?」

 そこにいるはずの電話の主は、ついに姿を見せる事はなかった。どこを向いても、その姿を認められやしない。
 結局俺は命拾いしたのだ。
 喜ぶべきはずのこの状況を、けれどどこかで残念に思う俺がいる。
 そんな胸のうちを、知らず知らずのうち口ずさんでいた。

―oh メリーさん 突然何処へ消えたのか……。



 それは嵐の去った、真夏の夜の話だった。


――

某バンドの曲を聴いてるうちに、半ば発作的に書き上げてしまった。お目汚しスマン。


697:本当にあった怖い名無し
10/09/24 20:43:32 W8ZVdibv0
メリーさんのひつ○

「メリーさん協会協約第1条『汝、みだりに殺すなかれ』」
女は、淡々と条文を読み上げた。
「メリーさん協会会員番号1645番メリー・キョーラギ。
あなたは、これを破りましたね?」
「み、みだりにって、まだ三人しか……」
金髪の少女が、震える声で返す。
「三人も、です」
黒髪の女性が彼女の言葉を遮った。
「……初犯ですから、比較的軽い刑とします」
タン、と手元の槌を鳴らす。彼女はメリーさん協会の審判員なのだ。
「判決、『メリーさんの棺』」
「ひぃっ!?」
メリー・キョーラギはのけぞった。


698:本当にあった怖い名無し
10/09/24 20:46:35 W8ZVdibv0
「ああああ! 出して、出してなのおおおお!」
棺の中から、悲鳴が聞こえてくる。
『一昼夜、針と刃にまみれた棺の中で眠る』
それは、『都市伝説』であり爆発的な回復力を持つ『メリーさん』のために
定められた刑の一つ。

なお、犬猫に玉葱をやるなど動物に対し過失を行った場合は、
羊に足の裏を舐められる『メリーさんの羊』刑も存在する。

「目理依散記録、っと」
私の名は目理依散。現在は協会の広報部に所属しているメリーさん記者である。
前職は実益を兼ねて行動したら左遷された。
刑事やってる弟には情けないと泣かれた。


699:本当にあった怖い名無し
10/09/24 20:59:10 W8ZVdibv0
「もしもし。わたし、メリーさん。今、あなたの後ろにいるの。」
「相棒?」
「え?」
「AIBO!」
「え・・・ちが・・・わたし、メリーさ・・」
「この野郎!意 味 不 明なことしやがって!」
「(この人こわいよぅ・・・)」
「速攻魔法発動!着信拒否!月額315円を払って
      効☆果 発動!
 こいつは電話番号を非通知にしている奴からの着信を何度でも無効にできる!」
「そ・・そんな・・・それじゃ私お仕事ができなくなっちゃ・・・」
「さあいくぜまず一回目!口裂けを墓地に捨て!着☆信☆拒☆否!」
「キャャァッ!」
~中略~
「HA☆NA☆SE! 」
「とっくにメリーさんのパケ数は0よ!もう勝負はついたのよ!」


700:本当にあった怖い名無し
10/09/24 21:07:29 W8ZVdibv0
「もしもし、私メリーさん。今日で真マジンガー衝撃Z編が終わってしまうの」
「いやそれこのスレと全く関係ないよね」
「保守代わりなの。あとあなたと私で二代目あしゅら男爵にならない?」
「そんな衝撃のプロポーズ初めてだよ!!」
「衝撃じゃないプロポーズは受けたことあるの?」
「ないけど……。それに俺は君を抱きしめられない運命なんて要らないよ」
「も、もう、やだ恥ずかしいのっ!」


701:本当にあった怖い名無し
10/09/24 21:12:53 W8ZVdibv0
「もしもし……私なの、メリーさんなの……」
「ああ……まあその何だ、気をしっかり持って」
「今川監督の話は噂には聞いていたけどまさかあんなオチなんて……」
「虚無ったり投げっぱなしに定評のあるダイナミック作品に、
続編投げっぱなしに定評のある今川監督……答えは推してしるべし、か」
「でも俺達の戦いはこれからだ!エンドなのはどうでもいいの」
「え?」
「私のあしゅら男爵がああああ!」
「……メリーさん、さては版権キャラと熱愛するスレの
あしゅらとのイチャイチャの作者だね?」
「うん……ぐすっあしゅらたん……」


702:本当にあった怖い名無し
10/09/24 21:13:32 DD5zQR1/0
あぼーんされるだけだって分かってる?

703:本当にあった怖い名無し
10/09/24 21:15:11 W8ZVdibv0
    _,,/;;;;;;ヾヾ 、,;;;;;;;;''ヽ_
   ノ;_;,-―--''''゙゙ ̄ フ::::;;:'-、
  //          l、::::::: l、
 (ヾ:::l            |::::::、::、::::.ヽ,
、ノ:::::.| _,,、   ,、、__  |:::::::::::ゝ::::::>
ゝ:::::::|''=・-`l ト'=・=ー` ヽ:::::::::::ゞ:::ゝ
  ヽ.| `     ー   ,ヽ::,-;:::;;::/
   |    、_,、,`       l/6l::::ノ
   |     !      , , l_ ノ:/
   __|   -'ー-ヽ   / /`)
  ヽ  | ,  ̄    __l_/,,-'=i______
__,,\`、_ ー-―' _//='''_-;;;;;;(( oo((    ))
;;;;;;;;;;○>\ ̄ ̄//○'.;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|l |l |l |l |l ||

私ペリーさん。今、浦賀にいるの。


704:本当にあった怖い名無し
10/09/24 21:22:28 W8ZVdibv0
シャカシャカ シャカシャカ
「~♪」
「・・・」
シャカシャカシャカシャカ シャカシャカシャカシャカ
「~~♪」
「・・・・・・」

「そろそろいいかな」

トゥルルルル
「はい、もしもし」
「あら、そんなに早く出なくてもいいのに♪
私メリーさん。今あなたの後ろに居るの♪」
「5分前から居ましたよね」
「えぇっ!?」
「イヤホン使った方がいいのと、あまり大音量で聞いてると耳によくないよ」
「~♪」
「聞けよ」


705:本当にあった怖い名無し
10/09/24 21:27:42 W8ZVdibv0
「もしもし、私メリーさん。落し物を拾ったの」
「うわっ! な、生首!? メリーさんまさか……」
「違うの! 私は殺してないなの! それに、これは生首の幽霊なの」
「生首の幽霊ー? でも触れるよ」
「でもでも、人間のものじゃないの! その証拠にホラ……」
「(パチクリ)」
「うわっ! 本当だこんな状況なのにまばたきした!」
「とりあえず警察に届けるの」
「警察って……こんなの持ってたら大変なことになるよ」
「大丈夫なの。プロの知り合いがいるの」

~3分後~


706:本当にあった怖い名無し
10/09/24 21:30:23 W8ZVdibv0
「というわけで、これが落し物なの」
「あー……」
「(誰だよこのオッサン)」
「これ、うちの若いモンのだわ。なあ、そうだろ、首成?」
「(パチクリ)」
「やっぱ体も無いと話せないのか。ま、すぐに連絡するから。
助かったぜ、メリーさん」
「困った時はお互い様なの。それじゃあね、イゾーちゃん」
「ちゃん付けはやめてくれよ。……ああもしもし、サキか?
私メリー。今、あなたの後ろにいるの」
「き、消えた!? メリーさん今のオッサン誰!」
「……目理伊三ちゃん。昔馴染みの刑事さんで……『メリーさん』なの」


707:本当にあった怖い名無し
10/09/24 21:36:03 z4PKqVTs0
病気だからな

708:本当にあった怖い名無し
10/09/24 22:26:25 Cpw66Txp0
嫌なだけならスルー出来るが実害があるってのがなぁ…

709:本当にあった怖い名無し
10/09/24 23:08:21 W8ZVdibv0
「もしもし」
「もしもし。私メリーさん。今あなたの後に娘が居るの」
「はぁ!?」
「あっ!待って!振り向かないで!」
「何なんだよ」
「えと、その、初めてだから心配で。出来たら車の通らない道を通って欲しいの」
「めんどくせぇな。つか今バイパス渡ってる」
「!! わかりました…お願い、あの子を守ってあげて」
「振り向かずにか?」
「ええ」

ズデッ
「いだっ!」
「!」
「!」
「今、いだっ!って聞こえたけど」
「…っ…」
「おーい。…泣いてんのか?」
「あぁあやっぱりまだ早すぎたのよ私が子どもの頃とは違うものねああぁ」
「落ち着けよ」
「あぁあぁあ…」
「俺がちゃんと家まで連れて帰るから」
「え…?」
「だから、ちゃんと帰った時いっぱい褒めてやれ。
あと、あの子の大好きなハンバーグもな」
「あなた…!」


710:本当にあった怖い名無し
10/09/24 23:09:54 W8ZVdibv0
2日後…

昨日は特に何も起こらなかった…

間戸さんの顔が少し窶れている気がした

本人は元気そうなアピールをしていたが…
気のせいだろうか……



ぼんやりしながら仕事作業をしていた
今日は全く頭が回らない感じ…疲れているのだろうか
別に考え事をしている訳でもなかった……
何度も大あくびをかいて

「コラァ!!」

と上の人から怒られてしまう

余りやる気も出ないまま仕事は終わった



711:本当にあった怖い名無し
10/09/24 23:11:08 W8ZVdibv0
住んでる所へと帰宅し、ご飯食べ→銭湯行って→残っていたビールを飲み→寝ようとした時、

…何処からか

???「……め………ん。」

何か微かに声を聴いた…

???「…め……ち…ん」

ハッキリとは聴こえない

赤マント「(め…ちん?…何を言ってるんだ?)」

???「め……ちゃん」

赤マント「(…めちゃん?……寝言だな…うん。寝言だ!)」

面倒臭いので聴くのは止めた
実際にはさっき飲んだビールの酔いが来たのか…眠気で頭が更に回らなくなってきたからだ

赤マント「駄目だー!…おやひゅみ~♪」

目を瞑り、周りは暗闇に染まる…



712:本当にあった怖い名無し
10/09/25 01:47:58 y2+QZ29Y0
>>676
おい召喚するのやめろ

713:本当にあった怖い名無し
10/09/25 05:20:53 D0TCe2og0
もう2~3行で見分けられるようになってしまった

714:本当にあった怖い名無し
10/09/25 12:16:24 /CjH/O290
ひよこ鑑定士みたいだな

715:本当にあった怖い名無し
10/09/25 15:11:48 OWAqQsE90
>>703にはちょっと不覚を取った

716:本当にあった怖い名無し
10/09/25 17:09:57 5bugHsA40
週末だ
ウニさん来てくれるかな

717:本当にあった怖い名無し
10/09/25 18:40:31 RE2dLmRHO
専用スレにな
祈れば、ゴミはゴミ箱へ、ってな
こちらは赤緑とメリー、他新人で手一杯だから

パクリ野郎は荒れるからくるなよ

718:本当にあった怖い名無し
10/09/25 19:02:09 gfirwV2C0
>>717
とりあえず、お前をあぼーんにすればいいわけだな

719:本当にあった怖い名無し
10/09/25 19:13:29 Qq21vkdhO
うむ。

720:本当にあった怖い名無し
10/09/25 19:14:09 W1YJUkRk0
樹海に行ったとき目の前を一面壁で覆われたことある。上に登ることも左右どちらにいってもひたすら壁が続いていた。
結局そこで寝てしまった。起きたらその壁はなく無事に遊歩道まで戻れた。
あの壁はなんだったんだろうか・・・
それ以来樹海には怖くていってない・

721:本当にあった怖い名無し
10/09/25 20:47:28 Am3roEF10
ウニさん待ち

722:本当にあった怖い名無し
10/09/25 21:14:12 y2+QZ29Y0
幻覚だ

723:本当にあった怖い名無し
10/09/25 22:11:05 p0ZW+0n3P
>>720
面白い話だが、そもそも樹海って怖いだろ
何しに行ったんだよ

724:本当にあった怖い名無し
10/09/26 00:36:28 SOC6uqtzO
>>720 ぬり壁
ウニさん来ないのか

725:本当にあった怖い名無し
10/09/26 04:54:06 6S9AegXJO
ウニの書き込みがこの板内のあるスレと何気に呼応している件。

師匠スレは問題外。

726:本当にあった怖い名無し
10/09/26 06:49:45 6S9AegXJO
ウニは古巣に戻るとさ

727:本当にあった怖い名無し
10/09/26 06:56:05 szdLa9bC0
ってかそろそろ自分の国に帰ってくだちゃいな。

728:本当にあった怖い名無し
10/09/26 11:18:58 9v++jU4L0
>>720
おいおいスレタイ読めないのか?
ここはシリーズ物専用スレだ。単発ものはスレ違い
>>722-723もなぜそれを指摘しないで普通に感想述べてるんだ?
そういう事するからメリーさん野郎が居直ってるのが分からないのか
ダブルスタンダードはいかんぜよ

729:本当にあった怖い名無し
10/09/26 12:00:13 Lweww6A4O
誤爆だろ。
樹海スレあるし。

730:本当にあった怖い名無し
10/09/26 18:08:09 p1tn0aUWO
メリーさんは病気なので放置汁

731:本当にあった怖い名無し
10/09/26 21:10:16 0zPYLM1rO
>>730
うむ。

732:土の下   ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:20:36 Lt8tjlVs0
師匠から聞いた話だ。


大学一回生の春。僕は思いもよらないアウトドアな日々を送っていた。それは僕を連れ回した人が、家でじっとしてられないたちだったからに他ならない。
中でも特に山にはよく入った。うんざりするほど入った。
僕がオカルトに関して師匠と慕ったその人は、なにが楽しいのか行き当たりばったりに山に分け入っては、獣道に埋もれた古い墓を見つけ、手を合わせる、ということをライフワークにしていた。
「千仏供養」と本人は称していたが、初めて聞いた時には言葉の響きからなんだかそわそわしてしまったことを覚えている。
実際は色気もなにもなく、営林所の人のような作業着を着て首に巻いたタオルで汗を拭きながら、彼女は淡々と朽ち果てた墓を探索していった。
僕は線香や落雁、しきびなどをリュックサックに背負い、ていの良い荷物持ちとしてお供をした。
師匠は最低限の地図しか持たず、本当に直感だけで道を選んでいくので何度も遭難しかけたものだった。
三度目の千仏供養ツアーだったと思う。少し遠出をして、聞きなれない名前の山に入った時のことだ。
山肌に打ち捨てられた集落の跡を見つけて。師匠は俄然張り切り始めた。「墓があるはずだ」と言って。
その集落のかつての住民たちの生活範囲を身振り手振りを交えながら想像し、地形を慎重に確認しながら「こっちが匂う」などと呟きつつ山道に分け入り、ある沢のそばにとうとう二基の墓石を発見した。
縁も縁もない人の眠る墓に水を掛け、線香に火をつけ、持参したプラスティックの筒にしきびを挿して、米と落雁を供える。
「天保三年か。江戸時代の後期だな」
手を合わせた後で、師匠は墓石に彫られた文字を観察する。苔が全面を覆っていて、文字が読めるようになるまでに緑色のそれを相当削り取らなくてはならなかった。
「見ろ。端のとこ。欠けてるだろ」
確かに墓石のてっぺんの四隅がそれぞれ砕かれたように欠けている。


733:土の下   ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:22:29 Lt8tjlVs0
「地位や金銭に富んだ人の墓石の欠片をぶっかいて持っていると、賭けごとにご利益があるらしいぞ」
師匠はポシェットから小ぶりなハンマーを取り出してコツコツと、欠けている端をさらに叩きはじめた。
「ここは土台もしっかりしてるし、石も良い物みたいだ。きっと土地の有力者だったんだろう」
「でも、いいんですか」
見ず知らずの人の墓を勝手に叩くなんて。
「有名税みたいなもんだ。あの世には六文しか持って行けないんだから、現世のものは現世に、カエサルのものはカエサルに、だ」
適当なことを言いながら師匠は大胆にもハンマーを振りかぶり、砕けて落剥したものの内、ひときわ大きな欠片を「ほら」と僕にくれた。
気持ちの悪さより好奇心の方が勝って、僕はそれを財布の中に収める。やがて夏を迎える頃にはそんな石で財布がパンパンになろうとは、まだ思ってもいなかった。
「もっと古いのもあるかも」
師匠はその二基の墓を観察した結果、少なくともその先代も負けず劣らずの有力者であり、その墓が近くに残っている可能性があると推測し、再び探索に入った。
しかしこれが頓挫する。
日が暮れかけたころ、沢に向けてかつて地滑りがあったと思われる痕跡を見つけただけで終わった。そこに墓があったかどうかは定かではない。
師匠は悔しそうな顔をして地滑りの跡をじっと見つめていた。
その時だ。僕と師匠の立っている位置のちょうど中間の地面の落ち葉が鈍い音と共にパッと宙に舞った。驚いてそちらを見ると、続けざまに自分の足元にも同じ現象が起きた。
「痛」
師匠が右のこめかみのあたりを手で押さえる。
石だ。石がどこかから飛んできている。気づいてすぐに周囲を見渡すと、果たして犯人はいた。
沢の向こう岸の斜面に猿が一匹座っている。こちらの視線に気づいて、歯茎を剥き出して唸っている。怒っているというより、せせら笑っているような様子だった。
そして地面から手ごろな石や木片を掴むと力任せにこちらに投げつけてくる。遊んでいるというには強烈な威力だ。小さなニホンザルと言っても木から木へ両手だけで移動できる腕力だ。

734:本当にあった怖い名無し
10/09/26 21:23:18 WRM4dDuf0
わーお!

735:本当にあった怖い名無し
10/09/26 21:23:51 NiUdrvV70
ウニさんキター!!
いきなり終わりとかびっくりしたけど支援w

736:土の下   ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:27:04 Lt8tjlVs0
僕は身の危険を感じて逃げ出そうとした。
しかし師匠は一言「痛いんだけど」と口にすると、次の瞬間、沢へ向かって駆け出した。
「なんだお前はこらぁ」と叫びながら斜面を滑り降り、ズボンが濡れるのも構わずバシャバシャと水をはねながら沢を渡り始める。
止める暇などなかった。
猿のイタズラにブチ切れた師匠が相手を襲撃するという凄い絵面だ。
猿も沢の向こう側の安全地帯から一方的に人間を攻撃しているつもりが一転、身の危険を感じたのか、掴んでいた石を投げ捨てて威嚇するような奇声を発した後、斜面を登って木立の中へ逃げ込んだ。
師匠も負けじと奇声を発しながら沢を渡り切り、斜面を駆け上って木立の中へ飛び込んでいった。
僕は思わずその斜面の上を見上げるが、鬱蒼と茂った木々が小高くどこまでも続いている。猿を追いかけて獣道もない山の奥へ分け入るなんて、正気の沙汰じゃない。
止めるべきだったと思ったがもう遅い。師匠の名前を呼びながら、戻って来るのをただ待っているしかなかった。
猿なんだぜ。猿。
そんなことを呆然と再確認する。素手の人間が山で猿を追いかけるなんてありえないと思った。
それにあんな深い山の道なき道を走るなんて、崖から落ちたり尖った竹を踏み抜いたり、考えるだに恐ろしい危険が満載のはずだった。
自分も沢を渡り、居ても立ってもいられない気持ちでうろうろと周囲を歩き回り続け、小一時間経った頃、ようやくガサガサと斜面の向こうの茂みが動き、師匠が姿を現した。
全身に小枝や葉っぱが絡みついている。
バランスを取りながら斜面を滑り降りる様子を見た瞬間に、僕は「大丈夫ですか」と言いながら近づいていった。
師匠は「逃げられた」と言って顔をしかめている。
何度か転んだのか服は汚れ、顔にも擦り傷の痕があった。しかし右腕を見た時には、思わず「だから言ったのに!」と言ってもいないことを非難しながら駆け寄った。
師匠は暑いからと上着の袖を捲り上げていたのだが、その剥き出しの右腕の肘から下にかけてかなりの血が滴っているのだ。
新しいタオルをリュックサックから取り出してすぐに血を拭き取る。師匠はその血に気づいてもいないような様子で、いきなり手を取った僕を邪険に振り払った。

737:本当にあった怖い名無し
10/09/26 21:30:31 77Ks0NPB0
初ウニさんです。
支援です。

738:土の下   ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:30:33 Lt8tjlVs0
「なんだおい。大丈夫だよ」
「大丈夫なわけないでしょう」
とにかく傷の様子を確かめようと、もう一度無理やり腕を掴む。
あれ?
傷が……
ない。
顔にもあるような擦り傷くらいしか。
呆然とする。
だったらこの血は?
拭ったタオルにはべっとりと血がついている。見間違いではない。
「大丈夫だって言ってるだろ」
師匠は乱暴に腕を振り払うと捲り上げていた袖を元に戻し、沢を渡り始めた。
僕はしばらくタオルの血と師匠の背中を見比べていたが、やがて「見なかったことにしよう」と結論付けて手の中のタオルを投げ捨てた。考えるだに恐ろしいからだ。
そして「待ってください」とその背中を追いかける。

師匠はまだまだやる気満々で、それから日が完全に暮れるまでにさらに二箇所で墓を発見した。
山歩きに慣れた人の後ろをついて行くだけで僕は息が上がり、「もう帰りましょう」と何度も訴えたが、そんな言葉など無視して「こっちだ」と道なき道を迷わず進まれると、溜め息をつきながら追いすがらざるを得ないのだった。
山道の傍で見つけた最後の墓は墓名もなく、小さめの石を二つ重ねただけのもので、そうと言われなければ気づかなかったに違いない。
師匠は手を合わせたまま呟いた。
「こんな小さなみすぼらしい墓を見るとさ、なんか嬉しくなるな」
「なぜです」
意外な気がした。
「金が無かったのか、縁が無かったのか…… もしかしたら名前も付けられないまま死んだ子どもだったのかも知れない」
「きちんとした墓を建ててもらえなかった人のことが、なぜ嬉しくなるんです」
師匠は静かに顔を上げる。


739:土の下   ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:34:41 Lt8tjlVs0
「それでも、その人がいたという証に、こんな小さな墓が残っている」
苔むした石の台座に線香が二本。煙がゆったりと立ち上っている。師匠は腕を伸ばし、線香に水を掛けた。
「こうして手を合わせる人だって、気まぐれにやってくる」
さあ、帰ろうかと言って立ち上がった。僕も慌ててリュックサックから出したものを片付ける。
帰り道は真っ暗で、持参していた懐中電灯をそれぞれ掲げた。来た時とは違う道だ。師匠は近道のはずだと言う。
足元にも気を付けつつ、師匠の背中を見失わないように見通しの悪い下り坂を慎重に歩いたが、心はさっきの小さな墓に繋ぎ止められていた。
(その人がいたという証か……)
死は死を死なしむ、という言葉がふいに浮かんだ。誰かの詠んだ歌だったか。
人が死ぬということは、その人の心の中に残っているかつて死んだ近しい人々の記憶がもう一度、そして永遠に揮発してしまうということだ、という意味だったと思う。
さっきの墓の主も、きっともうなんの記録にも、そして誰の記憶にも残っていないだろう。
それでも石は残る。
その意味を考えていた。
ぼうっとしていると、師匠の声が遠くから聞こえた。
「おい」
我に返ると、師匠が道の途中で立ち止まり、藪の切れた脇道の方に懐中電灯を向けていた。
「どうしたんです」
横顔が心なしか緊張しているように見える。
「自殺だ」
「えっ」
驚いて駆け寄る。
草が生い茂り、一見しただけは道だと思わないような場所に、誰かが通ったような痕跡が確かにある。
踏まれて倒れた草の向こうに懐中電灯を向ける。師匠と僕の二つの光が交差し、照らし出される先には宙に浮かぶ人影があった。
首吊りだ。
思わず生唾を飲み込む。
窪地の木の下に人がぶらさがっている。

740:土の下   ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:38:32 Lt8tjlVs0
ガサリと音がして、横にいた師匠がそちらに向い動き出す。止める間もなかった。
僕は一瞬怯んだ。ひと気のない夜の山中に、人の形をしたものが人工の明かりに照らされて空中にある、ということがこれほど怖いものだとは。
まだしもぼんやりとした霊体を見てしまったという方がましな気がした。
それでも師匠の背中を追って足を踏み出す。軽い下り坂になっている。青っぽいポロシャツにジーンズという服装がほぼ正面に現れる。その姿が後ろ向きであることに少しホッとした。
さらに坂を下り近づいて行くと、かなり高い位置に足があることに気づく。背伸びをしても靴に手が届かない。
死体のベルトの位置に、張り出した枝が一本。きっとあそこまで木登りをして枝に足をかけた状態から落下したのだろう。
恐れていた匂いはない。春とはいえこの気温の高さだから、二、三日も経っていれば腐敗が進んでいるはずだ。首を吊ってからそれほど時間が経っていないのかも知れない。
だがシャツから出ている手は嫌に白っぽく、血の通った色をしていなかった。
師匠は前に回り込んで、首吊り死体の顔のあたりに懐中電灯を向けている。そして「おお」という短い声を発して気持ち悪そうに後ずさった。
僕は同じことをする気にはなれず、その様子を見ているだけだった。
やがて一頻り死体を観察して満足したのか、師匠は変に弾んだ足取りでその周囲をうろうろと歩き回り始めた。
「下ろしてあげた方がいいでしょうか」
僕はそう言いながらも、あの高さから下ろすのはかなり難しそうだと考えていた。高枝切バサミかなにかでロープを切るしかなさそうだ。
「まあ待てよ」
師匠はなにか良からぬことを企んでいるような口調で、腰に巻いたポシェットの中を探り始めた。
さっきまで見ず知らずの人の小さな墓に手を合わせていた人間と同一人物とは思えない態度だ。この二面性が、らしいといえばらしいのだが。
「お、偉い、自分。持ってきてた」
おもちゃの様な小さなスコップが出てきた。師匠はそれを手に首吊り死体の真下のあたりにしゃがみ込む。
そして右手にスコップを振りかざした状態でくるりと首だけをこちらに向ける。
「面白いことを教えてやろう」

741:本当にあった怖い名無し
10/09/26 21:42:23 jW00KyhK0
支援!
リアルタイーム!

742:土の下   ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:45:27 Lt8tjlVs0
その言葉にぞくりとする。腹の表面を撫でられたような感覚。
ズクッ、と土の上にスコップが振り下ろされる。落ち葉ごと地面が抉られ、立て続けにその先端が土を掘り返していく。
「こんぱくの意味は知っているな」
手を動かしながら師匠が問い掛けてくる。
魂魄? たましいのことか。
確か『魂(こん)』の方が心というか、精神のたましいのことで、『魄(はく)』の方は肉体に宿るたましいのことだったはずだ。
そんなことを言うと、師匠は「まあそんな感じだ」と頷く。
「中国の道教の思想では、魂魄の『魂』は陰陽のうちの陽の気で、天から授かったものだ。そして『魄』の方は陰の気で、地から授かったもの。どちらも人が死んだ後は肉体から離れていく。だけどその向かう先に違いがある」
口を動かしながらも黙々と土を掘り進めている。僕はその姿を、少し離れた場所から懐中電灯で照らしてじっと見ている。師匠の頭上には山あいの深い闇があり、その闇の底から人の足が悪い冗談のようにぶらさがって伸びている。
寒気のする光景だ。
「天から授かった『魂』は、天に帰る。そして地から授かった『魄』は地に帰るとされている。現代の日本人はみんな、人が死んだあとに、たましいが抜け出て天へ召されていくというテンプレートなイメージを持っているな。貧困だ。実に」
なにが言いたいんだろう。ドキドキしてきた。
「別に『人間の死後はこうなる』ってハナシをしたいんじゃないんだ。ただ、経験でな。何度かこういう首吊り死体に出くわしたことがあるんだ。そんな時、いつもある現象が起こるんだよ。それがなんなんだろうと思ってな」
スコップを振る腕が力強くなってきた。
「同じ首吊りでも室内とか、アスファルトやらコンクリの上だと駄目なんだよな。だけどこういう……土の上だと、たいてい出てくるんだ。死体の真下から」
ひゅっ、と息が漏れる。
自分の口から出たのだとしばらくしてから気づく。さっきまで汗にまみれていたのが嘘のように、今は得体の知れない寒気がする。
「お。出たぞ。来てみろ」
師匠がスコップを放り投げ、地面に顔を近づける。

743:土の下   ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:49:21 Lt8tjlVs0
なんだ。なにが土の下にあるというのだ。
動けないでいる僕に、師匠は土の下から掬い上げたなにかを右の手のひらに乗せ、こちらに振り向くや、真っ直ぐに鼻先へつきつけてきた。
茶色っぽい。なにかとろとろとしたもの。指の隙間からそれが糸を引くようにこぼれて落ちていく。
「なんだか分かるか」
口も利けず、小刻みに首を左右に振ることしかできない。
「私にも分からない。でも、首吊り死体の下の地面にはたいていこれがある。これが場所や民族、人種を超えて普遍的に起こる現象ならば、観察されたこれにはなにか意味があるものとして理由付けがされただろうな。……例えば、『魄』は地に帰る、とでも」
とろとろとそれが指の間からしたたり落ちていく。まるで意思を持って手のひらから逃れるように。
「日本でもこいつの話はあるよ。『安斎随筆』だったか、『甲子夜話』だったか…… 首吊り死体の下を掘ったらこういうなんだかよく分からないものが出てくるんだ」
師匠は左目の下をもう片方の手の指で掻く。
嬉しそうだ。尋常な目付きではない。
僕は自分でも奇妙な体験は何度もしたし、怪談話の類はこれでも結構収集したつもりだった。なのにまったく聞いたこともない。想像だにしたことがなかった。首吊り死体の下の地面を掘るなんて。
なぜこの人は、こんなことを知っているんだ。
底知れない思いがして、恐れと畏敬が入り混じったような感情が渦巻く。
「ああ、もう消える」
手のひらに残っていた茶色いものは、すべて逃げるように流れ落ちてしまった。手の下の地面を見ても、落ちたはずのその痕跡は残っていない。どこに消えてしまったのか。
「地面から掘り出すと、あっと言う間に消えるんだ。もう土の下のも全部消えたみたいだ」
師匠はもう一度スコップを手にして土にできた穴の同じ場所に二、三度突き入れたが、やがて首を振った。
「な、面白いだろ」
そう言って師匠が顔を上げた瞬間だ。
強い風が吹いて窪地の周囲の木々を一斉にざわざわと掻き揺らした。思わず首をすくめて天を仰ぐ。

744:本当にあった怖い名無し
10/09/26 21:52:47 NiUdrvV70
もいっちょ支援

745:土の下  ラスト  ◆oJUBn2VTGE
10/09/26 21:55:09 Lt8tjlVs0
ハッとした。
心臓に楔を打ち込まれたみたいな感覚。
地面に向けている懐中電灯の明かりにぼんやりと照らされて、宙に浮かぶ首吊り死体の足先が見える。
朽ちたようなジーンズと、その下の履き古したスニーカーが先端をこちらに向けている。さっきまで、死体は背中を向けていたはずなのに。
懐中電灯をじわじわと上にあげていくと、死体の不自然に曲がった首と、俯くように垂れた頭がこちらを向いている。
髪がボサボサに伸びていて、真下から覗き込まないと顔は見えない。
風か。風で裏返ったのか。
背筋に冷たいものが走る。
首を吊ったままの身体は、その手足が異様に突っ張った状態で、頭部以外のすべてが真っ直ぐに硬直している。
風でロープが捩れたのなら、また同じように今度は逆方向へ捩れていくはずだ。
そう思いながら息を飲んで見ているが、首吊り死体は垂直に強張ったまま動く気配はなかった。
その動く気配がないことが、なにより恐ろしかった。
僕の感じている恐怖に気づいているのかいないのか、師匠はこちらを向いたまま嬉々とした声を上げる。
「どっちだろうな」
そう言ってニコリと笑う。
どっちって、なんのことだ。天を仰いでいた顔をゆっくりと師匠の方へ向けていく。首の骨の間の油が切れたようにギシギシと軋む。
「誰かが首を吊って死んだから、さっきのへんなものが土の下に現れるのか。それとも……」
師匠はそう言いながら自分の真上を振り仰いだ。そして頭上にある死体の顔のあたりを真っ直ぐに見る。視線を合わせようとするように。
「あれが土の下にあるから、人がここで首を吊るのか」
なあ、どっちだ。
そう言って死体に問い掛ける。
肩が手の届く位置にあれば、親しげに抱いて語り掛けるような声で。


746:本当にあった怖い名無し
10/09/26 21:57:09 bOl51QWRO
しえんっ

747:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:00:05 jW00KyhK0
ウニさん乙です
支援しながら読んでたけど今回も面白い!
師匠w

748:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:02:28 3uw+P/aU0
ウニ、乙。
やはり独特の良さがあるな。

749:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:05:00 ADf5RvUi0
乙っした

750:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:05:46 fDnXQZ2IO
ウニさん乙です

毎回楽しみにしてますー

751:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:10:28 ZuGNYOSU0
死縁


752:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:23:39 Buaj8nD60
ウニさん乙でした!

753:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:25:26 dR/cctDvO
ウニさん乙でした!
加奈子さんの話好きだから嬉しい。
この息の詰まるような緊迫感が良いわー。


754:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:26:11 k939ERWF0
ウニさん~~~~~~~~~~~!!
嬉しい~!
いつもありがとうございます。

755:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:33:54 72+wqeef0
ウニさん、お疲れさまです。
楽しく読まさせてもらいました。

756:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:39:31 Voac/rD+O
ウニちゃん~~!
うるうる(喜)

757:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:43:40 PTabL23x0
ウニさん、初めまして。
感じるがゆえの哀しみ、、、加奈子さん視点は特に読み応えがあります。
秋の夜長にぴったりのお話をありがとうございました。
お疲れさまです。

758:本当にあった怖い名無し
10/09/26 22:56:05 byKOzIO00
最初から今夜は終わり噴いたwwwwww
そんな感じの短編もぜひお願いしたい。

759:本当にあった怖い名無し
10/09/26 23:20:15 TEOfiIax0
やっぱ読ませるなぁ。
乙です。

760:本当にあった怖い名無し
10/09/26 23:22:57 GZSXyPRV0
思った物が描けていないって不安?
そう言う時もあるよ。

761:本当にあった怖い名無し
10/09/26 23:39:48 Hr3GLPg40
ウニ乙!
魄の茶色い液体に、匂いはないのかのう?
魂に近いはずのエーテルにも、匂いはないのかのう?

762:本当にあった怖い名無し
10/09/27 00:06:08 lZIePQjU0
一レス目のメル欄見てびっくりしたわwwww
ウニ乙

763:本当にあった怖い名無し
10/09/27 00:10:19 quj5dHZS0
パンツぬいだ

764:本当にあった怖い名無し
10/09/27 00:13:54 OfjfUaaO0
ウニ乙!!!!
あ~これで1週間頑張れるわ

765:本当にあった怖い名無し
10/09/27 02:00:34 /Rtjn7dB0
ウニさん
師匠シリーズ大好きです。
毎週お願いします!!!!!

766:ベニヤ板
10/09/27 10:56:08 QuC7uZ1Y0
「え~と、元気でしたか。……多田さん」
なんだか面映い。ここ数日、砕けた仲間同士の掛け合いしかしてなかったので、口が滑らかに動かない。
元気だとその人は言った。
以前より少しふっくらしたようだ。髪の毛も伸ばしている。なにより、あの真摯で鋭かった眼差しが柔らかくなっている気がする。
(『なぞなぞ』より引用)

登場する人たちと取り巻く空間を勝手に頭のなかで作り上げて僕(達)は既に読んでいる。物語ということだ。
そこには決定的には入り込めるわけがない。自分なら…という形で恋愛感情の兆しを見出したとしても。書かれたものなのだから。
師匠にとっての師匠。「僕」にとっての京介。そして、こんな想像をしている月並みな自分をすこし笑ってみる。

で、皆さん、この多田というひと、かつて髪が短くて、眼差しがいまよりも鋭かった女の人。僕らが既知の誰かなのだろうか…。
こうして、馬鹿な僕はウニ氏の紡ぎだす物語にもうすこし余計な入り込み方をちょっとしはじめている。

767:本当にあった怖い名無し
10/09/27 10:58:13 XQsmolCRO
たぶんお前以外はみんな大体わかってるよ<多田さん

768:本当にあった怖い名無し
10/09/27 11:56:35 zIweDeWg0
ウニ氏乙ー!!
ここんとこちょくちょく来てくれて嬉しい!!
あー幸せ
しかし上から死体に覗き込まれるイメージしながら読んでたせいで頭からそのイメージが離れない・・・

769:本当にあった怖い名無し
10/09/27 12:25:46 S3cVPj3w0
『もしもし…私メリーさん…今貴方の家のm(ワンワンワン!!!)ひぁっ!?な、何!?っあっやっ嫌ぁぁぁあ!やめっ!?くるなぁ~~ッッ!(ワン!!ワンワン!!!)』

ウチの番犬は頼りになるなぁ、と感心しつつ俺は玄関に向かうのであった


770:本当にあった怖い名無し
10/09/27 12:26:59 S3cVPj3w0
差出人不明の方から封筒が届いた

メリーさん「これ、誰からなの?」

疑問に思いながらも封筒を開けてみると折り畳んでいる一通の手紙が入っていた

メリーさんは気になり折り畳んでいる手紙を開いてみた…

その手紙には矢印の先端に黒い点が1つあり「今日、此処へ来て下さい」と描かれた地図だけが描かれていた

メリーさん「誰かの悪戯かしら?」

始めは疑っていたが、とりあえず地図に描かれた所へ行ってみる事にした…


目的地に着いたのだが、地図に描かれた場所は、電信柱の下で周りは家しかないただの細い道
電信柱に付いた蛍光灯が切れ掛かっており、周りは薄暗くなったり明るくなったりとチカチカ光って不気味な所だった



771:本当にあった怖い名無し
10/09/27 12:35:40 S3cVPj3w0
メリーさん「あ!」

メリーさんは電信柱に貼ってある始めに届いた同じ封筒に気付いた

封筒を電信柱から剥がし、中身を見るとまた一通の折り畳んだ手紙が一枚
メリーさんはその手紙を読んで見ると…

また地図と矢印が描かれただけ……
ではなく、地図の絵の下には、
「中身を見ずに、足もとに置いてあるブシを揺らさづ持つて矢しるしの所え」

と、明らかに始めに届いた手紙とはまた、別の人物が書いたのであろう汚い字で書いてあった

メリーさん「…随分…酷い字ね…」

誤字と汚い字に呆れる顔をしたメリーさんの足元にはそれらしき黒いブツが置いてある
ブツといっても黒い箱で横が30cm位はある少々重たい箱

メリーさん「きっとコレのなのね」

メリーさんは、書かれていた通りにブツを拾い上げ、嫌々ながら揺らさない様に両手で矢印の所へと運んで行った…


772:本当にあった怖い名無し
10/09/27 12:44:45 S3cVPj3w0
運んでいる時…メリーさんは、ふと思い出す

メリーさん「(あれ?そう言えば……今日…、私誕生日だったんだっけ?)」

今日は自分の誕生日だった事を思い出し、何だか嬉しくなってきた

ふわっ

メリーさん「冷たっ!」

メリーさんの鼻の上に冷たい何かがふわりと降ってきて…
空を見上げると

メリーさん「…雪だ」

まるで、雪がメリーさんの誕生日をお祝いしに来てくれた様に見えた


773:本当にあった怖い名無し
10/09/27 12:52:16 S3cVPj3w0
メリーさんは「ハッ!」、と黒い箱(ブツ)を見て気が付いた

メリーさん「(もしかして…この箱って…私のバースデーケーキかプレゼントが入ってるんじゃあ…)」

メリーさん「(今日、私の誕生日だし、黒い箱を揺らしちゃいけないのは壊れやすい物が入っているからで、封筒(手紙)の宛先人は私の誕生日を祝ってくれる人…でしょうね。フフフ…わざとビックリしとこっ♪)」

推理してしまい、メリーさんの顔が嬉し笑いで笑みを見せた

しかし、そのまま着いて知っていた顔をしていたら祝ってくれる人に申し訳ないし、雰囲気がぶち壊しになる
メリーさんは、分からなくて、着いてからビックリする事にした

メリーさん「~♪」

ルンルン気分で軽やかに歩くメリーさん
歩くスピードが早くなっていた


774:本当にあった怖い名無し
10/09/27 13:11:09 S3cVPj3w0
漸く地図に描かれていた目的地に着くと目の前には、ごく普通の一軒家が建っている

一応地図を確かめ、間違いない事が分かると、メリーさんはその家のインターホンを鳴らす

メリーさん「(知らなかった振り…知らなかった振り…)」

自分に言い聞かせている間に

???「はーい。どうぞー」

と家の主でだろうか、入って良さそうな返事が来た

メリーさん「…お邪魔しまーす」

メリーさんはゆっくりと玄関を開けて中へ入って行った

家の中は暖かく、雪が降り冷えてきていた体を、暖かさがメリーさんを包み、体を暖めてくれる



775:本当にあった怖い名無し
10/09/27 13:17:25 S3cVPj3w0
………誰かが現れてもいい筈だが…
……誰も来ない

奥では複数の人の笑い声と騒ぎ声が聴こえる

メリーさん「(皆で私を驚かせようとしてるのね…)」

そう思い、そのまま声の元へドアを開いて入って行くと…

パンパンパーン♪
一同「メリークリスマース♪」

皆がメリーさんに向かってクラッカーを鳴らす

メリーさん「え!?!?」
……予想と違かった
誕生日を祝ってくれるのだと思っていた

メリーさんは自ら皆に

メリーさん「今日…私の…誕生日で……呼んだんじゃないの?」

一同「……………え?………」

数秒間…時間が止まったかの様に静まり返り硬直してしまった


776:本当にあった怖い名無し
10/09/27 13:20:44 S3cVPj3w0
一同の中の1人、クリスマスパーティーを誘った張本人『エンジェル様』がメリーさんに

エンジェル様「え、えっとー?……誕生日…だったの?」

メリーさんは頭をコクコクと立てに振った

メリーさん、エンジェル様「「…………。」」

暫くまた無言の空気になった時、メリーさんの口が開いた

メリーさん「…私の(プルプル)…私の誕生日で呼んだんじゃ(プチッ←堪忍袋の尾が切れた)無いんかァァァァァァァ!!!!」

その後
メリーさんは、やけ酒ならぬやけケーキを食べまくり…


メリーさん「ギャー!!……た、体重が…」

…○キロ太ってしまい(現在○4キロ)
それ以来、メリーさんはクリスマスが嫌いになってしまったとさ

遅れましたが、改めまして「創作板、メリーさんスレ」一周年(越え含み)おめでとうございます
あと、早いけど
『メリークリスマス』


777:本当にあった怖い名無し
10/09/27 13:28:25 S3cVPj3w0
時は12月25日。所謂クリスマスというやつである。
町は華やかに彩られ、賑やかになっているが万年一人身の私にはなんら関係ない。
むしろ言わせて貰おう。
憎悪だ。どこもかしこもカップルカップルカップル。幸せそうな面をしてどこへ行く。
メリークリスマスメリークリスマスメリークリスマスうるさいんだよ。ここはどこだ、日本だ。キリストを祭りたいならローマにでも行ってくれ。
例え冬至で柚子湯に入ることはあってもクリスマスにケーキなぞ絶対に食わないぞ。今日は平日ナリ。
町を歩けばサンタ服に着替えた女性の方々。寒くないッスカ、恥ずかしくないッスカ、年考えろよプギャー。
など毒づきながら歩いているとぶるぶるとポケットに入れた携帯が震え始めた。非通知表示された画面を少し見つめたあと通話ボタンを押す。
「私、メリーさん。い」「間に合ってます」
糞、個人攻撃までするのかサンタクロース。そんなに私を殺したいか。精神的に。かつてどこかの英雄が戦った日本引きこもり協会という組織が
あったらしいが俺は世界サンタクロース協会と戦わなきゃいけないのか。なんて運命だ。
再び携帯が鳴る。同じく非通知。通話ボタンを押す。
「私、メリーさん。一人しかいないからね」
「へぇ、今どこにいるの?」
「えっとね……秋田!」
「なまはげぇ」


778:本当にあった怖い名無し
10/09/27 13:35:43 S3cVPj3w0
通話を切る。というかここは東京だ。一体どこから向かっているんだ。
いつも通りコンビニに入り、弁当とビールを一本レジに持っていく。
「いらっさいませ」
なんともやる気に溢れない言葉だ。ふと店員と目が合う。そして悟る。ああ、そうか。
すっと右手を差し出す。店員は迷うことなく左手を出して、強く握手を交わす。
「アリガトーゴザイマシター!」
覇気に満ちた言葉を聞きながら、店を後にする。再び携帯がぷるぷる。
「わt」「我輩はメリーである。名前はまだない」
「メリーって名乗ったじゃん! あ、今埼玉だからもう少しまtt」「ださいたまぁ」
通話を切った後、電源を落とそうか悩んだが仕事の電話が来ると困るのでつけとくことにした。
それにしても人が多い。お前ら、早く家に帰って楽しい食卓でも囲めよ。
普段はちょっと寂れてる商店街も人がごったがえし、芋を洗うがごとくといった呈を成している。
荒波人波を押しのけ、普段の三倍の時間をかけて商店街を抜ける。
もちろんその間、子どもの泣き声叫び声笑い声をフルコーラスでお送りさせてもらってます。うるさい。
子どもは昔から嫌いだ。行動に意味はなく、言葉に道理はなく、結果は常に自己のため。
成人になるまで所詮動物だ。むしろ首に縄でもつけてペットにすればいい。というか子ども産むな。害悪だ。
脳みそを悪意で満たそうとしていると再び携帯が震えた。
「警察にいいますね」


779:本当にあった怖い名無し
10/09/27 13:37:53 S3cVPj3w0
「待ってタンマタンマ! なんでそんなに私の話を聞いてくれないの!」
「生憎メリーと名のつくものには殺意しか沸かなくてね」
商店街前の横断歩道。青が点滅している。押しのけそこのけ急いだものの寸前で赤になってしまう。
隣には姉妹だろうか。おそろいの服を着た子どもがやんややんやとはしゃいでいる。
手にはプレゼントで貰ったのだろう。包装紙に包まれた四角い箱を持っている。
母親らしい人も両手に荷物でおとなしくしなさいと口でしか言えないようだ。
「ひどいなぁ。もう。ひどいなぁ」
「で、何用かな。もうこれ以上いたずら電話されると困るんだけど」
「いたずらじゃないよ。ほら、前を見て」
言われて前を見る。道路上にはさきほど子どもが持っていた箱がぽてんとタイミングよく落ちた。
「あー!」
子どもが飛び出す。おや、タイミングよくトラックが。親は手を離せない。
なけなしの金で買ったコンビニ弁当とビールが宙を舞う。携帯も自分の前を飛んでいる。
子どもの服を右手で掴み、後ろに引っ張る。さらに一歩踏み出し、その足を軸に地面に落ちた箱を回転しながら左手で取り
子どものほうへと投げる。ここまで来れば誰でもわかる。私はそこで体制を崩した。
トラックは止まらない。地に尻を着きかけた体は再び宙を舞う。


780:本当にあった怖い名無し
10/09/27 14:17:59 S3cVPj3w0
しばし空中遊泳をしたあと地面に叩きつけられる。追撃に携帯が胸に落ちてくる。
だから子どもは嫌いだ。危険を顧みず、平気で自殺行為をしてくれる。
「もしもーし、聞こえる?」
耳元まで跳ねてきた携帯から聞こえる声。残念ながら返事はできない。
「私、メリーさん。今、あなたを迎えにきたの」
ぼんやりとした視界に赤色が入ってくる。ただその赤色だけ妙にくっきりとしている。
クリスマスは嫌いだ。まともなサンタクロースが来やしない。自分を見て、赤色が笑っている気がする。
「君も赤くてサンタみたい」


781:本当にあった怖い名無し
10/09/27 15:05:00 S3cVPj3w0
『私メリーさん。今新スレにいるの』
 そのわけのわからない電話がかかってきたのは、僕が布団に入って
ようやく眠りに落ちた頃で、当然ながら僕はその電話によって叩き起される
事になり、寝ぼけた頭で必死にその電話の意味を理解しようとしていた。
 メリーさん。それは、都市伝説として有名な存在だ。トイレの花子さんや、
百キロババアなんかと同じ、本当に存在するかどうかは疑わしいのに、
誰もがその存在をまことしやかに他人に伝える、そういう存在。
 その存在からの電話が、今まさに僕にかかってきているのだ。
 そこまでは、なんとか理解できた。
 ……でも、いわゆるメリーさんのセオリーとは、その電話は違った。
 新スレとは、一体なんだ?
『パソコン、持ってないの?』
 メリーさんの声が、電話越しにではあるが、わずかに沈んだように
感じられた僕は、慌てて本の山の中にうもれていたノートパソコンを
掘り出し、そのスイッチを入れた。
 元々機械に弱い僕は、大学に進学する際に買った、当時としては
最新の機能を持ったそれをずっと眠らせるままにしていたのだけれど、
幸いと言うべきか否か、久しく電源をつないでいなかったそれも、
内蔵電池に残っていた電力で何とか起動した。
『ありがとう、なの』


782:本当にあった怖い名無し
10/09/27 15:10:46 S3cVPj3w0
 なぜお礼を言われたのかはわからなかったけれど、僕はどういたしまして、
と答え、次の言葉を待った。程なくして、メリーさんは次なる指示を僕に
与えてきた。
『2ちゃんねるにアクセスして欲しいの。創作発表板という板があるの』
 2ちゃんねる? ……聞いたことはあった。悪名高い、誹謗中傷と荒らし
の巣窟だと言われる、それでも日本で一番の大きさを誇る、掲示板群……。
 僕は検索によって、何とかその目的の場所へとたどり着いた。
 創作発表板。そこはそういう名前の掲示板のようだった。創作し、それを発表
する為の掲示板。そこで僕は、メリーさんに言われるよりも速く、あるキーワード
を使って検索をかけていた。
 そのキーワードとは―メリーさん。
 そうして出てきたのは、まだレスポンスが一つもついていないトピックスだった。
 私メリーさん2。それがそのトピックス―2ちゃんねる風に言うならば、
スレッドの―名前のようだった。
 絵でもSSでも何でも、メリーさんに関する物ならば何でも書き込んでいい、
そういうスレッドのようだった。
『私は、そこにいるの。そこにいるけど、見えないの。だから……』
 メリーさんは言う。


783:本当にあった怖い名無し
10/09/27 15:13:56 S3cVPj3w0
『貴方に……貴方にも、私を見えるようにして欲しいの』
 ……趣味で小説を書いていたのは、高校二年の頃までだ。大学受験に
備えてその趣味をやめて、もう何年にもなる。もう、ずいぶんと小説なんて
書いていない。
 でも……。
 僕にできるのは、そのくらいだと、そう思った。それしかできないと。いや、
それをしなければいけないんじゃないか、と。
『お願い、なの』
 何故かはわからない。都市伝説からの電話。それ自体が夢でも見てるんじゃ
無いかと、そう言われれば頷いてしまうような状況で、それでも僕は全く電話
の向こうから聞こえる声を疑おうと言う気にもならず、そしてこの"私メリーさん2"
スレッドにまでたどり着いた。たどり着けた。
 ここに……この中に、彼女はいる。
 僕がここに書けば、彼女は見えるようになるのだ。彼女の存在は、他の人にも
認識できるようになるのだ。
 何故かはわからない。
 でも、僕は、確かに思った。
 書こう、と。頼まれたからではなく、自分が彼女の為にそうしたいから、だから
書こうと、そう思った。
 少し、時間がかかるけど……それでもいいかな?
『ありがとう、なの』
 電話の向こうの声が、心なしか弾んだような気がした。


784:本当にあった怖い名無し
10/09/27 15:18:49 S3cVPj3w0
 目を覚ませば、数年の間埃をかぶりっぱなしだったノートパソコンに電源が
入っていて、電池残量が少ない事を知らせるランプの点滅が目についた。
 一体、僕はいつこのパソコンの電源を入れたんだっけ?
 そう思ってモニターを覗き込むと、そこには一つのサイトが表示されていた。
 2ちゃんねるの、創作発表板。
 ……ああ、そうだ。僕は確か昨日、誰かから電話を貰って―
「私、メリーさん」
 その声が聞こえたのは、僕がそんな事を考え始めた、その瞬間だった。
 耳の真横で、まるで背後から抱きしめられ、囁かれるように聞こえたその
声は、確かにこう言った。嬉しげな、弾んだ、可愛らしい声で。
「今―貴方の後ろにいるの」



785:本当にあった怖い名無し
10/09/27 15:23:47 S3cVPj3w0
 都市伝説。民話。神話。怪談。そんな風に称される物語に登場する存在は、
総じて一つの特徴を持っている。
 それは、人の認識によってその存在を維持する力を得る、という事。
 人がその存在を信じれば、人がその存在を現実のものと認識すればする程、
彼らはこの世界に確たる存在として在るのである。
 これは、そんなお話―――

                              終わり


786:本当にあった怖い名無し
10/09/27 15:39:52 S3cVPj3w0
「へえ、メリーさん次スレ立ったんだ」
いつもの様に部屋に篭って、2ちゃんねるを巡回する。そこへお約束のごとく、非通知で電話が掛かってきた。
「わ、わたし、めりーさんっ!いま、あなたのうしろにいるのー」
幼い子どもの声だった。しかし、確かメリーさんは15、6の少女だったと記憶している。
ただの子どものいたずらか。だがまあ、少しくらいは相手をしてやってもバチは当たらないだろう。

「メリーさんってさ、段々近づいて来るもんじゃなかったっけ?いきなり後ろに来てもいいのかい?」
少しいじわるな質問。
「う……じゃ、じゃあね、いま“ちり”にいるのー。そこからだんだん近づいていくのー!」
一気に地球の反対側までワープしちまったよ、この子。やはりメリーさんには瞬間移動能力があるのだろうか。
「そうかそうか、じゃあ来るの待ってるよ」
俺はそう言ってから電話を切った。



787:本当にあった怖い名無し
10/09/27 16:00:19 S3cVPj3w0
程なく電話が掛かってくる。非通知だ。
「いまあなたのうしろにいるのー」
「もしもし、どちらさまですか?」
わざととぼけてやる。
「あ、ごめんなさい、わたしめりーさんなのー、うしろにいるのー」
メリーさんが謝っちゃったよ。なんか段々面白くなってきたな(からかうのが)。
「だからすぐに近づいてきちゃダメなんだって。徐々に徐々に近づいてこないと。」
「わ、わかったのー。いま“ゆーらしあ”にいるのー」
範囲が広すぎて分かんねえよ。
「ユーラシア大陸のどのあたり?」
「えっと、えっと、かんばんがあるけど、なんてかいてあるのかわからないの……」
外国の人形だが、日本の都市伝説だからなあ。
「うん、じゃあ場所が分かったらまた電話して」
「え、え?ちょ、ちょっとまっt」
ぷつん。つーつー。
途中で電話を切ってやった。メリーさんが必死になって、自分が今、どこにいるのかを探し回っている姿が目に浮かぶ。



788:本当にあった怖い名無し
10/09/27 16:04:12 S3cVPj3w0
2時間ほどして、また電話が掛かってきた。
「もしもし、めりーさんなのー。いま“ぷさん”にいるらしいのー」
らしい、とは。ちゃんと調べたのか。えらいぞ、メリーさん。
「それで、次はどこに来るの?」
「……そろそろうしろにいっちゃだめ?」
「まだだめ」
「うー、わかったのー。」
承諾すんなよ。
「じゃあ次の場所についたらまた電話してくれよな」
「うん、りょうかいなのー」
ガチャン。


789:本当にあった怖い名無し
10/09/27 16:14:52 S3cVPj3w0
電話の前で全裸待機。いや、別に悪い意味はないぞ。風呂に入ってただけだからな。
お、掛かってきた。
「もしもし、めりーさんなのー」
俺の指摘のお陰か、初めに自分の名前を名乗るようになった。
「今はどこにいるんだ?」
「えーっと、おしろから北に70 西に40のばしょなのー」
なんでドラクエやってるんすか、メリーさん。
「いいか、そこには地雷が埋まってるから、絶対に足元を調べるんじゃないぞ」
「え?こ、こわいのー。わかったの、ここはしらべないようにするのー。ろとのしるがみつかったら、またでんわするのー」
ガチャン。
……いや、はやく近づいてきてください。全裸待機は正直寒いんです。


790:本当にあった怖い名無し
10/09/27 16:22:39 S3cVPj3w0
そのまま待機すること30分。ようやく電話が掛かってきた。
「もしもし、めりーさんなのー。いまあなたのおうちのまえにいるのー」
おお、ようやくメリーさんらしくなってきたぞ。ここでそのまま電話を切るってのが、定石だよな?
ガチャン

プルルルル
「もしもし、めりーさんなのー。いきなりきるなんてひどいのー。じょうしきがなってないのー」
メリーさんに説教されてしまった。
「ごめんごめん。それで、今はどこ?」
「いまはあなたのへやのまえまでいくところなのー」
耳を済ませると確かに、コツン、コツン、と足音が聞こえる。
「うわー、こわい(棒読み)。」
ガチャン


791:本当にあった怖い名無し
10/09/27 16:28:42 S3cVPj3w0
プルルルルル
間髪入れずに掛かってくる。これぞメリーさんだ。そろそろ後ろに来る頃か?
「もしもし、めりーさんだけど、そろそろうしろにいってもいい?」
「いや、聞くなよ」
「だ、だって……」
やばい、涙声になってる。
「も、もう後ろ来ていいよ。よく頑張ったな、メリーさん」
「え、えへへ。じゃ、じゃあ、いうの、
いま、あなたのうしろにいるのっ」



792:本当にあった怖い名無し
10/09/27 16:34:23 S3cVPj3w0
バッ
言われた瞬間に振り向いた。
だが後ろには誰も立っていなかった。当然といえば当然か。まあでも、楽しませて貰ったよ。ありがとう、めr
「ここなの、ここにいるのー」
目線を下に。確かにそこには金髪蒼眼の女の子がいた。声相応のサイズだったため、気付かなかったのだ。
「ごめんごめん、ちびっちいから気づかなかったよ」
「ぷー、まったくもってしつれいなのー」
ぷくーと頬を膨らまさて抗議する。



793:本当にあった怖い名無し
10/09/27 16:48:57 S3cVPj3w0
メリーさんを観察してみる。
真っ赤なドレスに赤い靴が人形みたいでかわいい。いや、人形か。
よく見ると、きちんと鎌も持っていた。(サイズの)サイズは雑草を刈り取るやつによく使う、小さな物だったが、使い方次第では十分凶器になりうる。
「こらこら、女の子がこんな危ない物を持ってちゃいけません。これはぼっしゅーします」
ひょい、と取り上げる。
「あ、かえしてなのー。それがないとめりーさんじゃなくなるのー」
メリーさんの言葉はスルー。少し背伸びしてタンスの上に乗っている荷物の上に鎌を置く。メリーさんはぴょんぴょん飛び跳ねているが、届くはずもなかった。


794:本当にあった怖い名無し
10/09/27 18:23:34 WXarilmoO
>>766
???なぞなぞの子持ち女が、本気で誰だかわからないと言ってるの・・?
わざと?つーかその引用文モロだし。

795:ベニヤ板
10/09/28 00:07:37 8Yuft6Ih0
あのお、物語に対する思い通りにはままならない自分なかの軋みを言ってみたかっただけなの。
あるいは、こんな簡単に訳もなくいつものメンバーが顔を揃える都合の好さを腐してみたかっただけ。
現実は散らばってまとまらなくって「賽の河原」みたいなもんでしょ。離れてしまったら二度と会えない。
でしょ。もう諦めてしまってるでしょ。現実には。
赤子を抱くこの人が、あの京介で、この先その関係性のなかでなにも起こらず、そのまんま。なんて我慢できますか。
勝手に想いをその架空の登場人物に抱いてる。それを支えに読んでいる。だってえのに、それが「空振り」、なんて口惜しいですよ。

796:ベニヤ板
10/09/28 00:11:16 8Yuft6Ih0
泊めてもらったときに、生理の鉄臭い匂いに言及するの、覚えてますか?
鮮やかな女性の描写でした。ありありと想像できました。一人の女性を。

797:ベニヤ板
10/09/28 00:25:20 8Yuft6Ih0
それに感応する「僕」がいないのには、首を傾げてしまう。
山のむこうの小学校の淡い存在としての教員と思念が交流するように、
それなりの人には抑えきれない思いが普通は寄せられるように、
此処にもそんな普通の葛藤があってしかるべきだろう、と思いはじめてる。

おばけ話の火遊びのような際物の面白さをとっくに越えてるんだもの。ウニさんの語る世界は。

798:本当にあった怖い名無し
10/09/28 00:58:55 yfpcz/wLO
無職童貞友達いません

まで読んだ

799:本当にあった怖い名無し
10/09/28 01:17:41 uPHaG8NO0
まじでオカルト

800:本当にあった怖い名無し
10/09/28 03:10:46 CVqAcf4D0
まあ、オカルト板だからねぇ・・・w

801:本当にあった怖い名無し
10/09/28 07:42:06 1oS1gUcYO
ウニさんは女性かな?

802:本当にあった怖い名無し
10/09/28 10:10:44 PhW1gq5MO
ウニさん、本当にありがとう。
辛い時や苦しい時に、たくさん師匠シリーズに救われた。
跳ぶ とか、もうプリントアウトして持ち歩いている。
おおげさかもしれないけれど、人生の支えです。



803:本当にあった怖い名無し
10/09/28 12:11:07 Xy8JxKc+0
>>802
>おおげさかもしれないけれど、人生の支えです。

こういうヘドが出るような馴れ合いはすんなよ。まじでキモイ
何が苦しい時に助けられた、だよ
そんなタイプの小説じゃねーだろ。どんだけ浅い人生なんだお前

804:本当にあった怖い名無し
10/09/28 12:47:47 vD5lDHwNO
誰が何を支えにしたって人の勝手。そっとしておけば?


805:本当にあった怖い名無し
10/09/28 14:46:18 SB9vT+M7P
他人にいちゃもん付けるのが>>803の支えなんだろ

806: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/09/28 15:57:42 oE8Cbhqd0
ウニさんの後はきついけど、あえて俺は投稿するぜ。

自己責任で読んで下さい。警告したので始めます。

"友達 前"

そいつは、ずっと目覚めないはずだった。

俺は17の時に、そいつの魂を"アレ"に喰わせてしまった。
もちろん、そうするつもりはなかった。
たまたま、発動したところにそいつが居ただけだ。

そいつとは、幼稚園からずっと同じで
友達の少ない俺にとっては、唯一の親友、と言っても差し支えないくらいだった。
スポーツ少年で社交的なそいつとは、性格や背格好こそ違うが
話せば、お互いの考えていることが殆ど分かるほどに通じ合っていた。

あの日も、
不良やタチの悪い教師にやたら絡まれまくる俺を
そいつが、いつもみたいに庇おうとしただけだった。
人気の無いところで囲まれてボコボコにされている所に
彼が駆けつけたとき、
すでに精神的に限界に近いほど磨耗していた俺は
いつもみたく"アレ"を制御することが出来なかった。
気が付いたら、
そこにいた全員が地面に崩れ落ちていて、
その中にはそいつも居た。
俺は、何が起きたか理解すると共に、沸きだしてきた
強烈な自責の念や恐怖に混乱し、叫びながら駆け出して、
二度とその場に戻る事は無かった。

807: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/09/28 15:58:52 oE8Cbhqd0
グシャグシャの制服で、茫然自失と街角をさまよっていた時
何度か、街頭テレビから短く、
俺が起こしたことの「結果」についてのニュースが流れていたが、
俺が"殺した"彼らは、生物学的には何の問題なく生きていて
外傷も痕跡も、目撃者すらまったく出ないままに
謎の事件として処理されつつある。ということをどこの局も伝えていて
俺のせいに"すら"してもらえない様子だった。
学校側は、俺が何度も被害者たちと小競り合いを起こしていたことも
事件の直後に失踪したことも知っていたはずだが
お決まりのパターンで口を閉ざした。



それから、忙しく月日は経ち
おばさんや当時クソガキだったAにも出会い
"アレ"に関わる様々な揉め事も、少し落ち着いていた大学2年の夏、
散々悩んだ挙句、意を決し
俺は、初めてそいつの病室を訪ねた。
代表して…と言うとおかしく聞こえるかもしれないが
元々他の犠牲者とは親交が無く、あまり良い思いでもないので
少なくともそいつに謝ることで
全てに何らかのケジメを付けたかったのかもしれない。

808: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/09/28 16:01:34 oE8Cbhqd0
ベッドの側でリンゴを剥いていたそいつの母親は
3年ぶりに会う俺を
自分の子供に再開したように驚き、喜んで迎えてくれた。
予想外の歓待に、しばらく途惑って声も出なかったが、
そんなこちらの様子などお構いなしで
涙ぐみながら、当時の状況を語りだす彼女の様子を見ていると
次第に落ち着いてきてもいた。
どうやらそいつの母親すらも
俺が関わったとは微塵も思っていないようなのだ。
「この調子なら、この世に居る誰も、
 俺の罪など気付いてはいないのだろう。
 これはもう、過ちを許されたことと同じではないのか」
というバカな考えすら頭を過ぎった。
彼が昏睡状態になってからのここ数年の状況を
一通り話し尽くし、涙で崩れた化粧を直しに母親が出て行くと
気分の良くなった俺は、寝ているそいつに話しかけた。

「許してくれたのか…ありがとうな」

この世の全てに話しかけたつもりで、そう述べて
綺麗に、八つに切り分けられたリンゴを取ろうと屈むと
ふと、目の前に人影が出来ていることに気付く。
頭を上げると、
そいつが、ベットから上半身を起こし
憎しみのこもった表情でこちらを睨んでいた。

「そんなわけねぇだろ」

そんな、まさか…驚いて何も返せずにいると
畳み掛けられる

「死ぬまで苦しみ続けろ」

809: ◆7QPLwJZR/Ypf
10/09/28 16:08:31 oE8Cbhqd0
許してくれ…と言おうとするのだが
口が渇ききっていて、声が出ない。
苦しんでいる俺をそいつは、
侮蔑を含んだニヤニヤとした表情で眺め回し、
おもむろにこちらに手を伸ばすと、
リンゴに添えてあったはずの果物ナイフを差し出してきた。

「みんなバレてんだよ下衆が…。お前の大罪は世界中の既知だ」

「それが嫌なら、これで死ね。今すぐ死ね」

目の前が歪んでいく、上下がゆっくりと入れ替わりがら、風景の色を巻き込んで左右に回転していく
その狂った視界の中、そいつの顔とギラギラと光るナイフの刃だけが
はっきりとした輪郭を保っている。

「そういえばお前は"アレ"に憑かれてるから、死ねないんだったよな」

いつの間にかベットから立ち上がっていたそいつが、俺の右肩辺りに手を伸ばす

「それは嘘だ。ただの都合のいい言い訳だな」

「お前は」

一呼吸置いてから、怒鳴るように喋りだす

「お前は!!俺に真の意味で謝ろうとは思っていない!!!
 "アレ"の主は"まだ"お前だ!!!お前が主導権持ってんだよ!!
 本当にその気があんのなら、お前の命の2、3個なんて簡単だろ!!!」

「きいてんのか?あ!!どうなんだ!?」


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