07/05/06 20:38:33 +8GZ9lu7
『チョゴリちゃんの心配』
「ほうれ小遣いニダ。どうだたくさんあるだろう」
上機嫌なカンコパパが、子どもたちにお小遣いというには少々多額なお金を渡しています。
「アボジ、こんなにたくさんもらっていいニカ?」
チョゴリちゃんがびっくりして聞くとパパが言いました。
「昔、日ノ本家に協力してお前のおじいちゃんたちを苦しめた奴らから財産を取り上げたニダ。おかげで臨時
収入ニダ。ウェーハッハッハ」
「そう……」
「なんだ、もう少しうれしそうな顔をせんか。悪い奴らから巻き上げて得た金だ。遠慮なく受け取るニダ」
お小遣いをもらったのにチョゴリちゃんが浮かない顔になったのは、今日学校でアーリアちゃんから聞いた
話を思い出したからです。
「昔、マル教時代のことさ。アメリー家は悪い奴らだから、それに味方するようなことをいう奴をみかけたら
こっそり告げ口するようにって、シュタ爺さんにきつく命令されてたんだ。たとえ友だちでも、いや、友だち
どころか、親子や夫婦でもね。家族同士でお互い告げ口をするのが当たり前だったのさ。そのせいで今でも
当時のことが話題になるたびに家の中がギクシャクしてるんだ」
アーリアちゃんの言葉を反芻して考え込んでいたチョゴリちゃんに、カンコ君が声をかけました。
「チョゴリ、日ノ本家の味方をするようなことを言ったらおまえも小遣い没収だぞ」
とたんにチョゴリちゃんの顔がさっと青ざめ、体が小刻みに震え始めました。
「お、おい冗談ニダ。そんなにマジでビビるなよ」
余りの動揺ぶりにカンコ君はあわててフォローしましたが、チョゴリちゃんは黙り込んでしまいました。
翌日、養護施設の前にたたずんでいる女の子を職員の人が見つけて声をかけました。
「やあ、チョゴリちゃんじゃないか。久しぶりだね。元気にしてるかい」
すると、返ってきたのは意外な言葉でした。
「あ、あの。も、もしも、ウリが家を出なければいけなくなったら、またここに置いてもらえるニカ?」
「え?」
「な、なんでもないニダ」
チョゴリちゃんはそう言って走り去りました。職員の人は思いました。
「なんだか思いつめた様子だったなあ。あの家、何か事情がありそうだな」