07/01/08 21:26:50
ペーパークロマトグラフィーだけで毒物である化合物の同定が不十分なのは
言うまでもない。
もちろん警察や三重衛生研究所でもIRその他を用いて分子構造を分析し、
総合的に判断して毒物をTEPP製剤としたわけだね。
そこまでは当時の分析機器、技術から考えて特に問題はない。
ペーパークロマトグラフィーが問題になっているのはその精度ではなく、
ニッカリンTなら出ているはずのスポットが飲み残しのぶどう酒検体では
出ていないことだ。
検察は三重衛生研究所の「加水分解によって消失した」との説明を真に受け、
そのとおり主張したが、もとよりこの「加水分解によって消失した」という前提が
まちがっている。
なぜなら、トリエチルピロホスフェートの加水分解速度はTEPPのそれよりも遥かに
遅いという実験結果が出ているからだ。
したがって、犯行に使用された毒物はニッカリンT以外のトリエチルピロホスフェート
をほとんど含まないTEPP製剤である可能性が極めて高いと考えるべきであり、
科学的根拠なしに「混入されたのがニッカリンTであっても、トリエチルピロホス
フェートが検出されないこともあり得るものと判断され」などと認定してはいけない。
実験データもなしにこういった主張をすると、自然科学の分野では相手にされない。
検察と有罪を維持する裁判所は、こういった自然科学の分野では通用しない主張ないし
認定を平気でしているので話にならない。主張したいなら、「ニッカリンTにおいて、
トリエチルピロホスフェートが加水分解によって消失した後もTEPPが残っている場合
がある」ことを実験によって証明しなければならないはずだ。