07/05/17 20:53:38 lNN/Dhqm
>>1の虐殺SS書いてやる
401:名無しさん@秘密の花園
07/05/17 21:13:25 THhA72IV
>>399
無理はせずに休息を。
のんびりしたペースでも大丈夫ですよ。
402:名無しさん@秘密の花園
07/05/17 23:29:35 kSy92RUx
>>401
ありがとう。
では、いきます。
403:名無しさん@秘密の花園
07/05/17 23:31:38 kSy92RUx
「ひとみさん…… 」
俺は、満を持してコートに入ってくる、良く知っている女性を
見つめている。
電車での思わぬ出会いから、多くのシーンが脳裏に浮かぶ。
ひとみさんは、髪を後ろにまとめており、いつもより凛々しい感じが
する。
センターサークル付近で目が合うが、すぐに逸らされる。
言いようが無い寂しさが胸をよぎり、遠ざかる後ろ姿を、ただ眺めること
しかできないでいる俺の肩が軽く叩かれた。
振り向くと由菜ちゃんが、背の高い俺を見上げていた。
「絶対に勝ちましょうね。山田さん」
励ますようにいってにっこりと微笑むと、脇を通り抜けていった。
そうだ― ひとみさんは戦う相手だ。今は自分の全ての力を出し切る
ことしか考えまい。
試合の再開を告げる審判の笛が鳴り、サイドから相手の選手が蹴りだす。
(フットサルではサッカーとは異なり、サイドラインを割ったボールは
スローインではなく、キックでコート内に入れる)
出場したばかりのひとみさんが、早速ボールを足元に納めると、猛然と
駆け上がりながら叫んだ。
「みんな、あがってっ」
普段の彼女からは想像もつかない大きな声とともに、赤ビブスの選手達が、
自陣内に殺到してくる。
ひとみさんは、左サイドで守備についている、夏美さんにフェイントをかけて、
僅かに造られた隙に一気に抜け出す。
しかし、すぐさま亜由美さんがフォローに入り、危険な香りを漂わせている
選手をフリーにはさせない。
速攻を止められたひとみさんは、サイドから上がってきた7番の選手に
パスを送り、すぐさまダッシュ。ダイレクトで返されたボールを受け取る。
404:名無しさん@秘密の花園
07/05/17 23:35:07 kSy92RUx
綺麗すぎるワン・ツーを決めて、ゴール前に躍りこんだひとみさんは、
均整の取れた右脚を振りあげる。
しかし、絶妙のタイミングで、キーパーの中川君が前に飛び出して、
ほとんど横に倒れこむようにボールを押さえにかかる。
「危ない! 」
ぎりぎりのところで二人の衝突は避けられ、ボールは中川君が抱え込んだ。
審判の笛はならない。
「走れっ」
声を振り絞った中川君が投げたボールを、後ろに戻っていた亜由美さんが
受け取る。
彼女は激しく息をつきながらドリブルで駆け上がるが、マークがきっちりと
ついており、抜け出せない。
「夏美! 」
鋭く叫んだ亜由美さんは、センターサークル付近にいた長身の夏美ちゃんに
パスを出すが、彼女はわざとスルーして、ボールは右サイドの由菜ちゃんの
足元に納まる。
小さな身体をゴールに向けるが、全力疾走で戻ってきたひとみさんが前に
立ちはだかり、激しく競り合う。ここは1対1の勝負だ。
405:名無しさん@秘密の花園
07/05/17 23:37:02 kSy92RUx
必死の形相をした由菜ちゃんが、荒い息をつきながら、何度もフェイントで
抜きにかかるが、冷静になっているひとみさんは通さない。
美少女と美女のガチンコの競り合いに周囲の歓声がひときわ大きくなる。
二人の技術はほとんど互角だが、疲労度がまるで違う。由菜ちゃんは、
ひとみさんの激しいプレッシャーに、コーナー付近まで押し込まれる。
俺は、彼女の近くまで走って大声をあげた。
「由菜ちゃん。パスだっ」
辛うじて反応した由菜ちゃんが、ノールックでボールを送ってくれる。前には
スペースが空いている。
激しい疲労と耳鳴りで、朦朧となりながらも、懸命にゴールに向かって突き進む。
もう時間がほとんどない。ゴール前には屈強なディフェンダーが、またもや立ち塞がる。
俺は、ほとんどぶつかる直前まで、相手を引き寄せてから、ヒールでパスを流す。
後ろに回っていた、夏美さんが期待通りにボールを受けて、すぐさまミドルシュート
を放つが、相手キーパーも鋭く反応し、パンチングで大きく弾かれる。
高く浮き上がったボールは、ルーズとなり、激しい奪い合いになる。
相手のゴール付近に密集する混戦の渦中に、ひとみさんも、由菜ちゃんも飛び込んでいく。
審判が腕時計を見た瞬間、ボールの確保に成功した由菜ちゃんが、ゴール前に切り込んで
いた俺に、絶妙のパスを送ってくれる。
ほとんど意識が混濁していた俺は、本能だけで、つま先で突くように蹴る。
次の瞬間、ボールは相手ゴールの右隅に放り込まれ、直後に試合の終了を告げる
長い笛が鳴った。
406:名無しさん@秘密の花園
07/05/17 23:39:48 kSy92RUx
今回は選択肢はありません。
たった、10分間の試合なのに、物凄い時間がかかってしまいました。
407:名無しさん@秘密の花園
07/05/18 23:13:57 tcYbJ6yP
誰もいないうちに、ちょこっと書いておこうかな。
408:名無しさん@秘密の花園
07/05/19 00:08:15 zZX4Q4jZ
全ての体力を使い果たした俺は、ゴールを見届けた後によろめいた。
しかし、歓声をあげながら駆け寄ってきた由菜ちゃんと、夏美ちゃんに倒れる寸前で
抱きかかえられる。更に、亜由美さんと、中川君も加わってもみくちゃにされる。
こみ上げてくる歓びと、信じられないという思いが渦巻き、荒い息と鼓動が交互に響く。
「信じられないよおっ」
歓喜を爆発させて、何度もコート上を飛び跳ねている由菜ちゃんと、静かに微笑んでいる
夏美ちゃん、真夏の向日葵のような笑みを見せてくれる亜由美さんに囲まれながら、
試合後の挨拶の為に、ゆっくりとコートの中央に向かって歩いていく。
悔しそうな、或いは呆然とした表情を浮べている相手方の選手達と礼を交わした時、
ひとみさんと再び、視線が絡み合う。
彼女は何も言わないまま、静かに手を差し伸べ、俺の手を軽く握った。
至近から見た、ひとみさんの頬には微かな涙の跡が残っていた。
俺は、コートの外に並んでいるベンチの近くで倒れこみ、半ば這いずるようにして
ペットボトルを掴むと、貪るようにミネラルウォーターに口をつける。
何度も喉を鳴らして一気に飲み干すと、ようやく気分が落ち着いてくる。
短時間ながらも、激しい運動により多量の汗をかくフットサルでは、こまめな水分補給が
欠かせない。特に気温が上がっている日は要注意だ。
次の試合までには時間があるので、俺は立ち上がって、クラブハウスへと向かった。
チームのメンバーも一旦散って、各所で観戦や休憩に入っている。
緑色のネットに覆われたコートの端をゆっくりと歩いていると、ひとみさんがベンチに
座っており、ややぼんやりとした表情で、他所のチームの試合を眺めていた。
俺は、前の試合の事もあって、少し躊躇ったが、思い切って声をかけてみる。
「あの…… ここよろしいですか? 」
ひとみさんが、整った顔をあげ、俺を見つめて―
「ええ。どうぞ」
柔らかく微笑むと、少しだけ位置をずらしてくれた。
409:名無しさん@秘密の花園
07/05/19 00:55:49 zZX4Q4jZ
「まさか、試合が始まる前までは、山田さんが出場しているなんて全く思わなかったです」
「ひとみさんが途中で出てきた時には、ホントに心臓が止まりました」
俺の言葉に、ひとみさんは軽く微笑みながら、言葉を続ける。
「最後はお見事でした。でも、とっても悔しかった」
彼女は小さくため息をついて、両肩を竦めて見せる。試合の勝ち負けにこだわる姿は
意外で、新鮮だ。
南西から心地よい風が吹き抜けて、ひとみさんの解かれた髪が揺れる。
「前から、フットサルをされているのですか? 」
ひとみさんは大きく伸びをしてから、答えてくれた。
「流石に毎週は行けませんけど、日頃のストレスを解消するにはいい機会ですので」
「確かに、会社はいろいろ溜まりますね」
「ええ。やっぱり取引先や上司には気を遣いますから。でも、思いっきり身体を動かすと
もやもやした事は忘れちゃうんです」
今日のひとみさんは、飲み会の時とはかなり印象が違っている。あまり飾り気は
ないけど、凄く自然な感じがする。
「山田さんはどうなんです? 」
逆に問い返されて戸惑っている俺に、少しだけ悪戯そうな瞳を投げかけてくる。
「山田さんのチーム。可愛らしい方や、綺麗な方ばかりですね」
まさか、ひとみさんは?
一瞬、変な妄想を浮べてしまい、慌てて頭から追い払った。
「実は飛び入り参加なんですよ」
俺は頭をかきながら、急に欠席が出来て人数が足らなくなったから、誘われた事実
だけを話した。流石に痴漢ごっこの件を言うわけにはいかない。
「でも山田さん、チームに凄くなじんでいました。ちょっと羨ましくなっちゃうくらい」
「皆、びっくりする程真剣だったから、つい熱くなってしまって」
ひとみさんと話が弾んで、俺の胸が高鳴り始めた時―
ベンチの傍に歩み寄ってきた女性が、声をかけてきた。
410:名無しさん@秘密の花園
07/05/19 01:00:04 zZX4Q4jZ
さて選択肢です。
声をかけてきた女性は―
①鈴木さやかさん
②黒川由衣さん
③黒川由菜ちゃん
411:名無しさん@秘密の花園
07/05/19 13:33:45 e9EZt2hi
ひとみさんが運動出来るとは以外。
けっこう天然っぽかったから運動音痴だと思ってたw
ここでさやかさんが出て来たらまた修羅場が起りそうだなぁ
個人的にはお姉さんの由衣さんを②
412:名無しさん@秘密の花園
07/05/19 20:12:02 zZX4Q4jZ
>411
それでは、②でいきますか。
ひとみさんの運動能力については、書かれていないと思ったから、
勝手に設定してしまった。
21氏がみてたら、こんなキャラじゃねーとか絶叫しているかもしれんw
413:名無しさん@秘密の花園
07/05/19 22:47:15 zZX4Q4jZ
「山田さん、お疲れ様。大活躍で― 」
黒川さんは俺に声をかけた瞬間、隣に座っていたひとみさんの姿に気がついて
呆然と立ち尽くす。
しかし、ひとみさんは、黒川さんの表情の変化には、特に注意を払っておらず、
「あっ、黒川さん。こんなところで会えるなんて嬉しいです」
普段どおりの微笑みを、尊敬している会社の先輩に向けて、小さく頭を下げる。
「あ…… こんにちは」
ひとみさんの小春日和のような笑顔が、黒川さんの凍りついた表情を
少しずつ溶かしていく。
「もしかして、黒川さんもフットサルをされるのですか? 」
ひとみさんは、興味津々と言った表情で尋ねるが、黒川さんは首を振った。
「私は妹の試合を覗きにきたの。是非、来てくれって由菜からメールが
あったから」
由菜ちゃんは、俺が補充要員として、試合に参加してくれそうだと分かった
時に、姉の由衣さん宛にメールを打ったと思われる。
恐らく、カフェテリアで俺に向かって、
『これから私たちが行くところに付き合ってくれませんか? 』
と、尋ねた直後だろう。
その時点で、まだ黒川さんが鈴音さんの家にいたとしても、フットサルの会場
までは一時間程度しかかからないから、試合の開始時刻までに到着する
事は困難ではない。
414:名無しさん@秘密の花園
07/05/19 22:49:33 zZX4Q4jZ
「先輩の妹さん。由菜さんって名前なのですか? 」
「ええ。そうよ」
「彼女には、もの凄い迫力で気圧されてしまいました」
俺は思わず苦笑いを浮べてしまった。ひとみさんも、試合に対する意気込み
という面では、全く引けをとらなかったからだ。
「もうっ。なんで笑うんですかあ」
ひとみさんは、頬を少しだけ膨らまして、軽く俺の身体を押した。
反則的なまでに可愛らしい仕草に、俺の理性がぐらついてしまうが、同時に
黒川さんの様子が気になっていた。
昨夜、黒川さんは、ひとみさんとさやかさんが互いに恋愛感情を持っている
事を知ってしまったばかりで、大きなショックを受けていた。
結果、酔い潰れた黒川さんを、彼女の昔の恋人である鈴音さんのマンション
に運んで、思わぬ一夜を明かすことになった。
もっとも、鈴音さんの励ましによって、黒川さんは落ち着きを取り戻した
ようではあるが……
たった一日が経過したくらいでは、とても辛い経験から、気持ちを切り替える
事など不可能だ。
一方で、ひとみさんへの恋心も変わるはずはなく、黒川さんの想い自体を
知らないひとみさんと、どのように接すれば良いのか分からず、彼女の心は
極めて不安定になっていると思われた。
415:名無しさん@秘密の花園
07/05/19 22:51:26 zZX4Q4jZ
「あの子の高校はね。練習試合の日を除いて、休日に部活動をすることが
禁止されているの」
「すごく珍しいですね」
ひとみさんは、驚いた顔つきになって言った。
「だけど、由菜はスポーツが大好きだから、お嬢様学校のテニスだけじゃ飽き
足らないみたい」
黒川さんは、フットサル場に隣接しているテニスコートで、コーチに教わり
ながら、テニスボールに向けて、懸命にラケットを伸ばしている、幼い女の子達を
眺めながら、小さく息を吐いた。
「由菜ちゃん、いや、由菜さんは、物凄く気合が入っていましたからね」
俺は慌てて言いなおしたが、黒川さんは、
「そのままでいいですよ」
と、言ってくれた。
「すると私が出ているところも、見られてしまったんですね」
ひとみさんは思い出したように呟き、整った顔を赤らめながら俯いた。
「とっても恥ずかしいです…… 」
「いいえ。格好良かったわ。普段と違ったあなたはとても新鮮だった」
今日初めて、黒川さんの微笑みを見たような気がする。いつもの理性的な彼女に
戻っていることに、俺はほっと胸を撫で下ろした。
416:名無しさん@秘密の花園
07/05/19 22:53:38 zZX4Q4jZ
テニスコートへ向けていた視線を戻した黒川さんは、ひとみさんの綺麗な瞳を
覗きこみながら尋ねる。
「いつからフットサルを始めたの? 」
「3年前からです。さやかに誘われたのがきっかけで」
ひとみさんは、何気ない口調で恋人の名前を出してしまい―
黒川さんの表情が一変した。
まずい。とても嫌な予感がする。
黒川さんは、表面だけは辛うじて平静を保っているが、瞳とその周りが非常に
険しいものに変わっている。
しかし、ひとみさんは、彼女の決定的な変化に全く気がついていない。
黒川さんは、擦れそうな声を絞り出し、何気なさを装って尋ねる。
「彼女、試合には出ていなかったようだけど。今日は来ているのかしら? 」
ひとみさんは、人差し指の先端を柔らかい唇にあてながら口を開いた。
417:名無しさん@秘密の花園
07/05/19 22:58:41 zZX4Q4jZ
それでは選択肢です。(大きな分岐点になるかもしれません)
さやかさんは……
①今日は用事があって不参加だ。
②用事があるものの、遅れて参加する。
418:名無しさん@秘密の花園
07/05/19 23:26:15 jXhJ/Vfu
ままま迷う!
しかしここはさやかさんには眼を瞑ってもらいたい。
という事で①!
419:名無しさん@秘密の花園
07/05/19 23:40:11 zZX4Q4jZ
>418
何故か急に修羅場が書きたくなったw
420:名無しさん@秘密の花園
07/05/20 00:12:50 peK/PiKV
修羅場来るぅぅーーー!! さやかさんComing!?
421:名無しさん@秘密の花園
07/05/20 00:26:24 pIup8JgO
>420
は、一応②かな。(間違っていたら訂正お願いします)
書き始める時点で、多い方にするつもり(同数なら先着の①に)
422:名無しさん@秘密の花園
07/05/20 09:50:22 pIup8JgO
それでは同数なので、先着の①にします。
423:名無しさん@秘密の花園
07/05/20 10:21:20 pIup8JgO
「さやかは事情があって、不参加なんです」
黒川さんの顔を見ると、表情は元に戻っている。
「何か用事でもあるのかしら? 」
「ええ。マンションの下見に行っています 」
「マンション? 」
「本当は、私も一緒に行く予定だったのですが…… さやか、私まで抜けると
チームがきつくなるって言われて、断られちゃった」
ひとみさんは、軽く舌を出した。
西に傾いている太陽が、ひろがり始めた灰色の雲に覆われて、日差しが
さえぎられる。
「本当は一緒に行く予定だったの? 」
眼鏡の位置を少しだけ直しながら、黒川さんは何気ない口調で尋ねる。
「ええ。さやかと一緒に住むことに決めましたから」
424:名無しさん@秘密の花園
07/05/20 10:22:44 pIup8JgO
「えっ」
小さな叫び声がニ箇所であがった。一つは俺、もう一つは黒川さんだ。
「都内のマンションってやっぱり高いじゃないですか。ですが、ルームシェア
をすれば半分になりますから、何とかやっていけると思います」
ひとみさんは、さやかさんとの新生活のビジョンを実に楽しそうに語っている。
しかし、黒川さんは身体を細かく震わしながら、スカートの裾が皺になって
しまうくらい、強く握り締めている。
「いつから、住む予定なの? 」
俺は、背中に大量の冷や汗を垂らしながら、二人の会話をただ呆然と眺める
ことしかできない。
冷静な仮面をかぶり続ける黒川さんの鋭すぎる質問に、ひとみさんは無邪気に
答えてしまっている。
「そうですね。できれば今月中にも決めてしまいたいです」
彼女は、微笑を絶やさずに言った。
敢えて繰り返すが、ひとみさんは黒川さんの想いに全く気がついていないから、
彼女を責めようとは思わない。
しかし、黒川さんにとっては、あまりにも残酷な事実が明かされたことになり、
俺はある種の危惧を覚えざるを得なかった。
「そう。場所が決まったら教えてね」
黒川さんの無表情がひたすら怖い。
「もちろんですよ。是非遊びにきてくださいね」
「ええ。そろそろ由菜にも会いたいし、失礼させていただくわ」
「ゆっくりなさってくださいね」
「そう…… ね」
低い声で言うと、黒川さんは、背中を向けてゆっくりと去っていった。
425:名無しさん@秘密の花園
07/05/20 10:25:37 pIup8JgO
黒川さんの後ろ姿が完全に消えるのを確かめた後、俺は疲労と憔悴のあまり、
深いため息をついて、ベンチの奥深くに身を沈めた。
「大丈夫ですか? 山田さん」
ひとみさんの声に我に返ると、彼女の顔がドアップで迫っている。
「あ、いや」
俺は、距離の近さに慌ててしまって、何もいうことができない。
「ものすごい汗をかかれていますよ」
あなたが原因です、とはとてもいえない。
「もしかして、体調が悪いのですか? 」
彼女は心配げな表情で尋ねながら、ポケットから取り出した薄桃色のレースが
付いた、ハンカチで額の汗をぬぐってくれた。
「えっと、ひさしぶりの試合だったから、やっぱり疲れが出たみたいです」
動悸を押さえながら辛うじて俺が言うと、ひとみさんは柔和な表情のまま提案する。
「次の試合まで、休まれませんか? 」
「えっ? 」
「山田さんたちが出る試合の時間は知っていますし、私の肩をお貸ししますから」
改めて普通の意味での『異性』として認識されていないことに、微かな寂しさが
胸をよぎるが、百合萌え男としてはせっかくの申し出を断る事なんてできやしない。
ありがたくひとみさんの肩をお借りすると、俺は、疲労に眠気が上書きされて、
急速に意識が薄らぎ、眠りに落ちて行った。
426:名無しさん@秘密の花園
07/05/20 10:27:06 pIup8JgO
時間的には短いが、深いノンレム睡眠に沈んでいた俺にとっての一瞬後 ―
ひとみさんに優しく身体を揺すられると同時に、鈴の鳴る様な澄んだ声が上から
降ってくる。
「山田さん。そろそろ起きてくださいね 」
「ん…… 」
俺は、ぼんやりとした状態のまま、小さく声を漏らして瞼を開いた。
少しずつ視界と意識が明瞭になっている。
「そろそろ次の試合ですから」
二人が座っていたベンチの前には、俺が代役で参加したチームの一員である
女性が立っていた。
427:名無しさん@秘密の花園
07/05/20 10:30:52 pIup8JgO
さてここで選択肢です。
二人の前に立っていたのは……
①由菜ちゃん
②夏美ちゃん
③亜由美さん
修羅場は、この時点では先送りされました。
428:名無しさん@秘密の花園
07/05/20 20:29:44 wBuEKFqb
修羅場がなくてホッとしたようなw
では軽い気持ちで夏美ちゃんを②
429:名無しさん@秘密の花園
07/05/20 21:16:31 JTFXVtRy
>428
読んでくれている人が、どういう方向性を望んでいるのか
分からないから、いつも戸惑っていたり。
かなり、好き勝手やらしてもらっているのは、
ありがたい限りなんだけどw
430:名無しさん@秘密の花園
07/05/20 23:12:26 JTFXVtRy
それでは②でいきます。
431:名無しさん@秘密の花園
07/05/20 23:14:43 JTFXVtRy
俺は、迎えに来てくれた夏美ちゃんと、コート脇をゆっくりと歩いていく。
次の試合を行う場所とはかなり距離が離れていた。
「ごめんなさい」
ひとみさんと別れて間もなく、夏美ちゃんからの口から出た言葉は意外にも
謝罪だった。
「どうして謝るの? 」
「気持ち良さそうにお休みになっていたから、無理をされているのかと思いまして」
「そんな事、気にしなくてもいいよ」
俺は、彼女の細やかな気遣いに嬉しく思いながらも、反面ちょっと情けない
思いにかられた。いかに三十路に突入したとはいえ、女子高生に体力面で心配
されてしまうとは。
「私も、最初の頃は全然動けませんでした」
夏美ちゃんは、少し恥ずかしそうに言ってくれる。
彼女は、最初は由菜ちゃんが言った通り、無口なタイプかと思っていたけれど、
今の俺に対してはごく普通に口を開いてくれるようだ。
「あの、夏美ちゃんって呼んでいいかな」
俺は鼻に指先をあてながら訊いてみた。
「ええ。構いません」
「夏美ちゃんが、このスポーツを始めたきっかけって何なのかな? 」
クラブハウスに着いた時から感じていた疑問を、思いきってぶつけてみた。
432:名無しさん@秘密の花園
07/05/20 23:21:55 JTFXVtRy
「私と由菜は以前、学校の休日になると、隣のコートでテニスをしていました」
夏美ちゃんは、テニスコートを懐かしそうに眺めながら話し始めた。
俺は、黒川さんが、由菜ちゃん達が通う女子高は、休日の部活動が原則禁止
だと話していたことが脳裏に蘇る。
「ちょうど半年前ですが、由菜がフットサルをやりたいって言い出しまして」
「彼女は、何に対しても凄く積極的な感じがするね」
「ええ。何処かに繋いでおかないと、遠くに飛んでってしまいそう」
夏美ちゃんにしては珍しい、冗談めかした言い方に、思わず笑ってしまった。
「ちょうどその日、クラブハウスの掲示板に、新規メンバー募集の張り紙を
見つけて、次の週から中川さん達と一緒にプレイすることになったんです」
なるほど。俺は大きく相槌を打った。
チームの結成に至る経緯を聞いたところで、クラブハウスから離れた
次の試合のコートに辿り着いた。
俺より一足早く着いていた黒川さんが、妹の由菜ちゃんと話している姿が見える。
由菜ちゃんは夏美ちゃんの姿を認めると、嬉しそうにぶんぶんと大きく手を
振っている。
「次の試合も頑張りましょうね」
片方の瞳を閉じながら、夏美ちゃんはさらりと言うと、由菜ちゃんの元へと
走っていった。
433:名無しさん@秘密の花園
07/05/20 23:24:20 JTFXVtRy
今回は軽い話になりました。(選択肢はありません)
平日は、更新間隔が空くと思われますが、よろしければ、
ごゆるりとお待ちください。
434:名無しさん@秘密の花園
07/05/21 19:25:09 4e0917b6
夏美ちゃんと由菜ちゃん、百合カップルだらけですね~♪
生活に支障がないようにゆっくりと書いて下さい
お疲れさまです
435:名無しさん@秘密の花園
07/05/21 21:25:20 wqydC4CY
>>434
ありがとうございます。ペースには気を付けたいと思います。
先週は、少し無理をしすぎたかもしれません。
由菜ちゃんと、夏美ちゃんの女子高生コンビは、
書いていても楽しいですね。
436:名無しさん@秘密の花園
07/05/22 23:31:41 nvGZ/O8A
2試合目では、由菜ちゃんの動きは更に鋭さを増しており、開始直後に夏美ちゃんから受け取ったパスから、
ミドルシュートを見事に決めて先制点をあげる。
相手のカウンターで同点に追いつかれた後、亜由美さんがコーナーから蹴りだした、低い弾道のボールに
由菜ちゃんは果敢に飛び込む。ボールは一歩も動けないキーパーの脇を抜けて、勝ち越しに成功する。
さらに1分後には、ゴール前の混戦から抜け出した亜由美さんがゴールを決め、差を2点に拡げる。
終盤には、由菜ちゃんが、焦った相手選手のパスミスからボールを奪うと、一気にドリブルでゴール前まで
駆け抜け、飛び出したキーパーを冷静にかわし、ハットトリック(1人で3得点)を決めた。
大勢のギャラリーの喝采を一身に浴びた、由菜ちゃんの大活躍により、試合は4-1で快勝した。
今回は、2試合目の直後に3試合目が組まれている。4チームで開催されているリーグ戦なので、
勝てば優勝となる。しかし、相手チームも2勝をあげており、更に南米系の外国人が参加している
多国籍チームで、今までの相手とは体格と動きがまるで違っていた。
更に、味方チームはメンバーぎりぎりで戦っている為、疲労がほとんど抜けないまま、試合に入らざるを
得なかったこともあり、開始早々から劣勢に追い込まれる。
鋭いドリブルで守りを切り崩されてからの、強烈なシュートを立て続けに決められ、中盤までに2点を
失ってしまった。
それでも、中川君が好セーブを連発して、試合の流れを食い止めると、爆発的な得点力で会場の観客を
熱狂させている由菜ちゃんが、カウンターからの速攻からシュートを見事に決めて、1点を返して希望を繋ぐ。
しかし、味方の反撃もここまでで、結局1-2で最終戦を終えた。
俺は、最後の試合が終わって、コートから戻る時には疲れ果てていた。しかし一方では、もう終わって
しまうのかという、ある種のもの足りなさも感じていた。ランナーズ・ハイ、つまり、激しい運動を立て続けに
繰り返しているうちに、身体が順応した状態になっていたのかもしれない。
更衣室で着替え終わった後、クラブハウスでチームのメンバーが再び顔を合わせる。
由菜ちゃんと、夏美ちゃんは女子高の制服姿で、亜由美さんは薄めのブラウスにタイトなスカートを
合わせており、中川君はジーンズとTシャツというラフなスタイルだ。
俺の顔をみつけた、中川君が笑顔で話しかけてくる。
「今日はお疲れ様でした。もしよろしかったら、6時半からチームの皆で食事にいきませんか? 」
腕時計を見ると、ちょうど4時を回ったところだ。
437:名無しさん@秘密の花園
07/05/22 23:35:06 nvGZ/O8A
ここで、選択肢です。
中川君の誘い(メンバーで食事にいくこと)を受けますか?
①喜んで行く、と答える。
②用事があるからと、丁重にお断りする。
438:名無しさん@秘密の花園
07/05/23 20:49:43 R/l6BxPx
それはもちろん行きますよ!
① もしや中川君もウホッ?w
439:名無しさん@秘密の花園
07/05/23 22:04:47 wilkpvPJ
>>438
あらたなる新世界へ。ってBLじゃねーw
それでは、①でいきます。
440:名無しさん@秘密の花園
07/05/23 23:26:05 wnbRaGkJ
中川君たちのお誘いを喜んで受けた俺は、一旦家に戻り、軽くシャワーを浴びてから、とんぼ返りの
ような形で駅前の店に着いた。
一時はひろがっていた雲はすっかり消えており、空は、地平線上に沈んだ太陽の名残を残している
稜線付近の山吹色から天頂の濃紺色に至る、見事なグラデーションを描いている。
「確か、ここだったよな 」
渡された地図を覗きこみながら、店の看板を見つけて視線を下ろすと、由菜ちゃんが
「こっちですよー」
と、大きく手を振ってくれている。
既に、俺以外のメンバーは到着しており、亜由美さんと中川君の服装は変わらなかったが、高校生の
二人は私服に着替えていた。
夏美ちゃんは長い脚が映える白のパンツルックと、落ち着いた紺色の上着で大人っぽさを演出していた。
一方、薄い黄色のキャミを纏った由菜ちゃんは、華奢な肩のラインがくっきりと露になっており、思わず喉をなら
してしまうような、仄かというにはやや強すぎる色気を放っている。
店内に入ると、若い女性店員が元気な声で迎えてくれる。彼女の案内で、2階の掘りごたつ式の個室に着くと、
小柄な由菜ちゃんは、夏美ちゃんの隣にすぽんと納まるように座って、早速メニューをひろげて覗きこむ。
夏美ちゃんの隣には中川君が座り、反対側の席に俺と亜由美さんが着くことになった。
俺もメニューをひろげて― 半分くらいが理解できず首を捻る。亜由美さんが微笑みながら言った。
「珍しいでしょう」
確かに― このあたりでは珍しい琉球料理の店だ。ゴーヤチャンプルーや、海ぶどうなど、沖縄特有の
メニューがずらりと並んでいる。
「お飲み物は何になさいますか? 」
案内してくれた店員が、はきはきとした口調で注文をとる。
「泡盛」
最初に夏美ちゃんが声をあげた。女子高生にしては渋い選択肢である。
「うっちんハイ! 」
由菜ちゃんは、聞き慣れない飲み物を頼むが、これもアルコールだ。
無論、未成年の飲酒を指摘するつもりはない。俺だって高校の頃は飲み屋で騒いでいた。
亜由美さんはカシスオレンジ、俺と中川君はビールを注文し(残念ながらオリオンビールではなかった)
かくして、打ち上げのお食事会― 否、飲み会が始まった。
441:名無しさん@秘密の花園
07/05/23 23:29:03 wnbRaGkJ
さて、飲み屋編?です。(ちなみに選択肢はありません)
どちらかというと、部活の打ち上げに近い雰囲気ですね。
442:名無しさん@秘密の花園
07/05/23 23:38:41 m5ZApfLl
空の描写が綺麗ですねー。
こんどは琉球のお酒ですか?
作者さんの趣味がまたもやw
誰か酒豪がいる予感w
443:名無しさん@秘密の花園
07/05/23 23:46:49 wnbRaGkJ
>>442
少し前に、琉球料理の店に行ったので書きたくなったり。
完全に趣味に走ってますね…… 生暖かい目で見守ってやってくださいw
444:名無しさん@秘密の花園
07/05/24 21:59:52 UWeAvCFN
すいません。いきなり根本覆す発言します。
誰か、おおまかでいいからキャラの外見と
カップリング(?)教えて。
445:名無しさん@秘密の花園
07/05/24 22:06:23 bxB7FxBg
>>444
今も見ているのかな。
把握している限りにおいて書いておこうか?
446:名無しさん@秘密の花園
07/05/24 23:07:47 bxB7FxBg
とりあえずこんな感じかな。
佐藤ひとみさん…… 最初に主人公が痴漢から助けた女性(エルメス)。
ロングが似合う綺麗な人。さやかさんの恋人。由衣さんの後輩で受付をしている。
鈴木さやかさん…… ひとみさんの恋人で、職場は違うが同じ会社に通う。髪は黒のショートで、軽いウエーブが
かかっている美人。ひとみさんとルームシェアする為、マンションを探している。
黒川由衣さん …… マーケティング部所属で、ひとみさんの職場の先輩で、ひとみさんの事が大好き。
眼鏡をかけた理知的なキャリアウーマンで仕事には厳しいが、お酒にとことん弱い。
上野恵さん …… 合コンに来た元気な女性。由衣さんと同じ会社で総務に所属。
パーカ娘(破桜院卯女ちゃん)…… 由衣さんの後輩。とんでもない天然どじっ娘で、散々由衣さんを困らせるが、実家は大富豪。
中沢鈴音さん …… ボーイッシュな長身のバーテンダー 由衣さんの女子高時代の恋人。性格がさっぱりしている
ところが人気で、当時はプレイガールぶりを発揮していたらしい。
黒川由菜ちゃん…… 由衣さんの妹で女子高生。小柄で胸も小さめ。ツインテールが似合う可愛らしい子。
夏美ちゃんの恋人でいつも一緒に過ごす。とても活動的でテニス部に入っているが、
週末はフットサルを楽しんでいる。
相沢夏美ちゃん…… やや無口。由菜ちゃんの一つ上の先輩で彼女とは相思相愛。スポーツも一緒に楽しむ。
クオーターで目鼻立ちがくっきりとしており、背がずば抜けて高い。髪はベリーショート。
朽木亜由美さん…… 綺麗なお姉さんといった感じの美人で、柔らかい印象がある。
ゆるいウエーブがかかった黒髪を後ろにまとめている。
由菜ちゃん、夏美ちゃんとは、同じフットサルのチームに入っている。
447:名無しさん@秘密の花園
07/05/25 00:35:22 8WCfy7Ke
たった400なのに読めないならやんなくていいよ……
448:名無しさん@秘密の花園
07/05/25 05:45:06 VKcEiLRO
>446 乙
わかりやすくていい
449:名無しさん@秘密の花園
07/05/26 00:13:27 Eldcr4gD
2階の個室で開催された飲み会では、今日の試合の感想から話が始まった。
「由菜ちゃん。ホント凄かったねえ 」
グラスの端に整った唇をつけながら、亜由美さんは目を細めた。
「なっちゃんが、いいパスを出してくれたからです」
全4チームを通して、見事に得点王に輝いた由菜ちゃんは、泡盛を飲んでいる夏美ちゃんに笑顔を向けた。
「由菜は、ゴールの匂いが分かる」
夏美ちゃんは、抽象的な感想を口にすると、早くも一杯目を飲み干して、店員に2杯目を注文する。
飲み放題のコースメニューだから、いくら飲んでも値段は変わらないが、ペースがひたすら早い。
俺が不安げに彼女の飲みっぷりを見つめていると、中川君がからからと笑った。
「夏美ちゃんは物凄いのんべえだから心配しないでください」
「そんなことないですよ…… 」
夏美ちゃんは、不満げに頬を膨らましながらも、届いた2杯目の泡盛も瞬く間に飲み干してしまう。
一方、うっちんハイを飲んでいた由菜ちゃんは、半分飲んだだけで、顔が紅潮して呂律も怪しくなっている。
「えへへ…… うっちん。美味しいねえ」
由菜ちゃんは、隣の夏美ちゃんにもたれながら、ちびちびとお酒を舐めている。彼女達が通う高校のシスターが
見れば、卒倒してしまいそうな光景である。
暫くすると、料理も届き始めて、ゴーヤーチャンプルーや、海ぶどうがテーブルを賑わす。
海ぶどうとは海藻の一種で、濃い緑色をしている。普通のぶどうより遥かに小粒ではあるが、形が非常に
似ている事から、名付けられたらしい。微かな苦味と、口中にひろがる旨みが癖になるお勧めの一品だ。
料理が一段落して、お腹も大分膨れていた頃、顔を真っ赤にした由菜ちゃんが、度肝を抜くようなことをのたまった。
「ねえ。王様ゲームしよー」
あまりにもベタな遊びの提案に俺が唖然とする間に、中川君が喜んで賛成してしまい、夏美ちゃんも、亜由美さんも
乗り気になっている。マジでやるつもりなのか ―
俺が何も言えないでいるうちに、由菜ちゃんはバッグからマジックペンを取り出して、割り箸の端に番号を振っていく。
やたらと手際良く準備が整ってしまい、最初の王様も中川君に決まる。彼は悪戯そうに笑いながら、これまた心臓が
飛び出るような命令を布告した。
「①番と③番がポッキーゲーム」
俺は④番だから今回は対象外だ。8割の安堵と2割の口惜しさが胸をよぎる。では誰と誰?
450:名無しさん@秘密の花園
07/05/26 00:15:53 Eldcr4gD
さて選択肢です。
① 1番が由菜ちゃん、3番が夏美ちゃん。
② 1番が由菜ちゃん、3番が亜由美さん。
③ 1番が亜由美さん、3番が夏美ちゃん。
451:名無しさん@秘密の花園
07/05/26 19:42:05 ZJnUlaVT
ここは王道で①!
由菜ちゃん夏美ちゃん!
452:名無しさん@秘密の花園
07/05/26 19:48:56 Eldcr4gD
>>451
了解!
①でいきましょう。
453:名無しさん@秘密の花園
07/05/26 21:09:01 Eldcr4gD
現在、時刻は午後7時30分。ポッキーゲームには早すぎる気がするが、そもそもポッキーなんて何処にあるんだ?
と疑問に思った矢先に、表情を変えずに亜由美さんがポシェットから箱を取り出す。一見爽やかそうに見える男女で
構成されているフットサルチームの、底知れなさに恐れを抱きながら、俺は夏美ちゃんと由菜ちゃんを見つめている。
二人は、一瞬だけ視線を絡み合わせるものの、すぐに逸らしてしまい、恥ずかしそうに耳まで赤くして俯いている。
「なんか、緊張しちゃうよー 山田さんが見てるし」
いきなり俺のせいにされてしまった。流石に不本意なので、由菜ちゃんにちょっと意地悪を言ってみる。
「由菜ちゃん。無理はしなくてもいいよ」
「無理じゃないもん。ポーキー1本食べるだけなんて、赤子の腕をひねるようなものよ」
ものの例え方がかなり違うけれど、興奮して意固地になった姿は可愛らしい。
「なっちゃん! いくからねっ」
大きな声で宣言すると、細い棒の黒い方をくわえ、小ぶりな胸を反らして待ち構える。夏美ちゃんが黄色い方に唇を
つけた事を確認すると、「ふぉんふぁあ、ふふぁーふぉ! 」 と、国民的菓子をくわえたまま、不明瞭な合図をして食べ始めた。
「ちなみにたくさん食べたほうが、次の王様だから」
女子高生二人がおりなす、エロチックなゲームを目の当たりにしながら、亜由美さんは冷静に解説してくれる。この人も何か
一癖ありそうな感じがするのは、俺の考えすぎなのだろうか?
「んん…… 」
好スタートを切った由菜ちゃんの口から漏れた音を聞いてから、ようやく、夏美ちゃんも意を決して食べ始める。
「んくっ…… 」
小さく喘ぎながらも、由菜ちゃんのリップを塗った可愛らしい唇は確実に進んでいく。少女達の距離が急速に縮まり、互いの吐息が
もろに顔にあたる。秒針が一周するころには、由菜ちゃんは半分近くまで達したが、夏美ちゃんは三分の一に留まっている。
「これは、由菜ちゃんの勝ちかなあ」
中川君は、ビールをぐびぐび飲みながら楽しそうに実況している。亜由美さんも瞳の色を輝かして、少女達の唇の動きを見守っている。
俺はというと― ごめんなさい。興奮しっぱなしデス。
美少女二人の妖艶な真剣勝負を、余裕をもって観察できるのは、中川君や亜由美さんのように、よっぽど親しくなった人か、
EDの懸念がある人か、女性に興味がない方の何れかだと断言したくなる。俺が、各方面から顰蹙をかいそうな感想を抱いて
いるうちに、宝塚の男役的な雰囲気を醸し出している夏美ちゃんと、あどけない顔つきをした由菜ちゃんの唇が同時に動いて、
小さくなったポッキーがぽきんと折れ、彼女達の唇がしっかりと重なった。同時に、タイミング良く女性店員が料理を運んできて―
「お待たせしま…… 」
と言ったきり、完全に硬直してしまったのは気の毒としかいいようがなかった。
454:名無しさん@秘密の花園
07/05/26 21:10:53 Eldcr4gD
(今回は選択肢はありません)
無理に一レスに納めようとしてしまった。(反省)
455:名無しさん@秘密の花園
07/05/26 22:30:19 H/azeVCC
亜由美さんの用意周到さが恐ろしスw
そして乱入した店員が女性なのもまた百合。
さらに反省する作者さんに乾杯♪
456:名無しさん@秘密の花園
07/05/27 00:49:32 j2HxbJcK
暫く、清水港に水揚げされた冷凍マグロのような硬直状態に陥っていた女性
店員は、二人の女子高生が、重ね合わせていた唇を離すとようやく解凍されて、
ぎこちなく動き始める。
最初に渡されたメニューの一覧表から、「海鮮和風カルパッチョ」と、
「ヒラヤーチ(沖縄ちぢみ)」であると推測されるが、店員は、混乱状態から
脱しておらず、料理の説明を完全に忘れてしまい、強張った笑顔を張り付かせながら、
ロボットのような手つきで料理を配っているだけだ。
もっとも、精神的なショックを受けている彼女を、更に追い込もうと考えている
人は、流石にいなかったが。
一方、由菜ちゃんは茹でタコのように赤くなった顔を両手で覆い、夏美ちゃんの
後ろに隠れている。夏美ちゃんは困ったような苦笑を浮べて、寄りかかってきた
小柄な少女の髪の毛を優しく撫でながら、もう片方の手でコップを持って、
本日5杯目の泡盛をぐいぐいと飲んでいる。
亜由美さんは、多くの男性を魅了するであろう、天使のような微笑をたたえたまま、
ライチソーダに口をつけている。中川君は「ぷはー 」と、さも美味しそうな声を
あげると、店員にビールのお代わりを頼んでいた。
最後までぎこちない表情のまま一礼して店員が去ると、夏美ちゃんの影に隠れて
いたはずの由菜ちゃんが、急にふんぞり返って宣言した。
「次は、私が王様ですからね! 絶対に文句なんか言わせないんだからっ」
457:名無しさん@秘密の花園
07/05/27 00:51:49 j2HxbJcK
確かに、ポッキーの『50%以上』を食べたのは由菜ちゃんだったけど、
王様ゲームって、こんな形で次の王様を決めてしまっていいのかな?
しかし、俺の根本的な疑問に誰も答える事はなく、嬉々として由菜ちゃんは
割り箸を配っていく。
「ふふ。割り箸の微妙な形状を見抜かれないように、家から新しいのを持って
きました。あと、番号はまだ見ないでくださいね」
某有名作家の書いた麻雀漫画で、牌の裏側に付いた微かな傷から、牌の
種類を的確に見抜いてしまう雀士のシーンが鮮明に脳裏に蘇った。確か
『ガン牌』といっていたはずだ。
「イカサマ麻雀じゃないんだから、そこまでしなくても…… 」
と、遠慮がちに呟いた俺を、華麗にスルーした由菜ちゃんは、割り箸を配り
終えると、右手を高々と挙げて宣言した。
「では王様として、庶民の皆さんに命令をします」
由菜ちゃんは、えっへんと、非常にわざとらしい咳払いをした後、
「4番は、1番の耳掃除を膝枕でしなさい」
と言った。
「へ? 」
今、何とおっしゃいましたか?
「耳掃除ですって。山田さん、まさかしない人じゃないでしょうね」
「いや。するけど」
しかし、肝心の耳掻きは…… たぶん、あるんだろうな。
期待に背かず、亜由美さんのポシェットから、竹製の耳掻きが取り出される。
しかも、白い綿菓子のような梵天付きだ。
彼女のポシェットは異空間に繋がっている、としか思えない。
「それでは、割り箸の番号を見てください…… 」
小悪魔そのものの笑みを浮べながら、由菜ちゃんが厳かに命令した。
458:名無しさん@秘密の花園
07/05/27 00:55:38 j2HxbJcK
さて、選択肢です。
① 1番が夏美ちゃん 4番が亜由美さん
② 1番が亜由美さん 4番が夏美ちゃん
③ 1番が俺 4番が亜由美さん
④ 1番が俺 4番が夏美ちゃん
⑤ 1番が俺 4番が中川君
(注:BAD ENDあり)
>>455
亜由美さんが何故か黒くなってしまったw
459:名無しさん@秘密の花園
07/05/27 11:14:19 cohoJ+8e
ここは・・・一番・・・かなぁ。
460:名無しさん@秘密の花園
07/05/27 19:14:48 18azN/eQ
亜由美さんもはや何でもありw
麻雀漫画って哭きの竜?
ここは迷わず⑤!
…ってのはBADっぽいから①で由菜ちゃんの焼きもちを見たい。
461:名無しさん@秘密の花園
07/05/27 20:21:31 cJArE65T
あげるな糞が
462:名無しさん@秘密の花園
07/05/27 20:29:59 CE78VQyi
ん…… では①でいこうか。
>>460
残念!
福本伸幸の「天」の銀次だったり。
463:名無しさん@秘密の花園
07/05/27 20:38:19 +z7sm0Nq
>>461
勘違いてるようだから
このスレを>>10から読んでみることをお勧めする
464:名無しさん@秘密の花園
07/05/27 22:12:30 CE78VQyi
全員が手元の割り箸を見つめた後―
夏美ちゃんが小声で、
「私…… 1番」
と呟き、直後に亜由美さんが、いわくありげな表情を浮べながら、
「私は4番だわ」
と、実に楽しそうに微笑んだ。
亜由美さんの言葉を耳にした瞬間から、由菜ちゃんの顔が青ざめる。
「えっ、亜由美さんが4番ですか? 」
由菜ちゃん本人にとっては予想外の展開だったようだ。
「夏美ちゃん。こっちにいらっしゃい」
しかし、戸惑っている少女に構わず、亜由美さんは夏美ちゃんを呼び寄せた。
5人で6人席を使っている為、亜由美さんの隣は空いている。
夏美ちゃんは、由菜ちゃんの、戸惑いから怒りに変化を遂げつつある顔色を
気にしながら、渋々と立ち上がる。
「王様の命令は絶対ね。由菜ちゃん」
亜由美さんは、からかう様な言葉を紡いで、由菜ちゃんをわざわざ挑発する。
駄目だ。このひと、完全に面白がっている……
急に雲行きが怪しくなった展開の中、夏美ちゃんは亜由美さんの横に腰掛けた。
「準備はいいかしら。夏美ちゃん? 」
「は…… はい」
亜由美さんは、ゆっくりと夏美ちゃんの膝に頬をくっつけて寝そべると、
悩ましげな声で囁いた。
「あなた。とってもいい香りがするわ」
「え…… そうですか? 」
意外な言葉に頬を赤く染めて、夏美ちゃんが言葉を返す。
465:名無しさん@秘密の花園
07/05/27 22:13:28 CE78VQyi
やばい。由菜ちゃんの爆弾が膨らんでいく。
「ええ。それにとっても柔らかくて気持ちがいいの」
「はあ」
夏美ちゃんはちらりと横を向いて体が固まる。
憤慨している由菜ちゃんの針のような視線に冷や汗を垂らしながら、それでも、
亜由美さんから渡された耳掻きを軽く掴む。
「やっている間はくれぐれも気を散らさないでね。危ないから」
「はい」
亜由美さんの注意に素直に頷くと、亜由美さんの耳朶に先端をあててゆっくりと
動かしていく。
「くぅ…… 」
亜由美さんは、くすぐったそうに上半身を微かに震わす。鈴の音を鳴らしたような
透明感がある声が個室に響きわたる。
「んあっ…… 」
時折、衣擦れの音とともに、微かな喘ぎ声を漏らす亜由美さんに、困惑しながらも
何とか耳掃除を終えて、夏美ちゃんは明らかにほっとした声を出した。
「あの…… 終わりましたけど」
「夏美ちゃん」
長身の少女を見上げながら、亜由美さんは囁いた。
「逆もお願い」
夏美ちゃんは再び由菜ちゃんを見る。しかし、沸騰寸前のやかんのように
なっている恋人に、視線だけでごめんといってから
「分かりました」
と、素直に頷いてしまう。
466:名無しさん@秘密の花園
07/05/27 22:14:19 CE78VQyi
亜由美さんの整った顔が、夏美ちゃんの胸の下にくっついている。
妖艶という言葉では伝えきれない程の、濃厚な色気を周囲に振りまいており
俺は何度も喉を鳴らしてしまう。
「夏美ちゃんって、胸あるのね」
ほんの少しだけ肩を竦めた亜由美さんが、いたずらっぽく笑った。
「そ、そんなこと…… 」
長身の少女は、恥ずかしさで首筋まで真っ赤になっている。
「とっても可愛いわ。夏美ちゃん」
囁くように駄目を押してから、亜由美さんは耳を上方に向けた。
美少女が美女の耳掃除をするという、いかにも百合的な光景が眼前で展開
されている。
しかし、夏美ちゃんの正面に座っている由菜ちゃんが、嫉妬が詰まった風船を
限界まで膨らましている様子を見て、俺は落ち着かない気分になってしまう。
それでも時々、亜由美さんが「あっ」とか、「んあっ」とかいう、悩ましげな声を
聞いてしまう度に、もともと豊富とはいえない理性が吹き飛ばされそうになる。
目と耳に毒としかいいようのない光景が十二分に続いた後、夏美ちゃんはようやく
亜由美さんから解放された。
耳掃除の途中、半ばお約束のように件の店員が中川君が頼んだビールと、
夏美ちゃんが頼んだ泡盛を運んできたが、亜由美さんは一顧だにしない。
哀れな女性店員は、最早あきらめの表情で首を左右に振ると、桃色の空気に
染まった個室に飲み物を置いて、そそくさと立ち去った。
467:名無しさん@秘密の花園
07/05/27 22:16:45 CE78VQyi
耳掃除を終えて、夏美ちゃんは深いため息をつきながら元の席に座った。
しかし、亜由美さんは、何故か今頃になったぽっと頬を赤らめ、
「凄く良かったわ。夏美ちゃん」
と、身体をもじもじさせながら言った。
「ど、どうも…… 痛あっ」
頬を緩めかけた夏美ちゃんは、思いっきり手の甲をつねられて叫んだ。
「夏美ちゃんの、ばかぁ! 」
涙目になった由菜ちゃんが、恋人に理不尽な怒りをぶつけて、背中を
ぽかぽかと叩く。
「あらあら由菜ちゃん。いただけないわね」
亜由美さんは、一方的に制裁を加えている由菜ちゃんを眺めながら嗜める。
この人とことんやるなあ。と俺が感心しているうちに、ついに由菜ちゃんが
噴火した。
「全部、そうぜんぶ、亜由美さんのせいなんだからあっ! 」
由菜ちゃんには申し訳ないが、可愛らしい子犬がきゃんきゃんと吼える、
という表現がぴったりと当てはまる。
「由菜ちゃん。王様は貴方なのよ。そして庶民は暴君の仕打ちに耐えるだけなの」
亜由美さんの方が何枚も上手である。
「うー 」
反論する術を巧妙に封じられた由菜ちゃんは、低い声で唸ると、
夏美ちゃんが注文した、泡盛が注がれたコップをひったくるように掴み、
一気に飲み干した。
羞恥ではなく、酔いの為に顔を真っ赤にして、ぷはーと言いながら手の甲で
濡れた唇をぬぐっている。
中年男性のような仕草をみせる、小柄な女子高生の姿を眼前にしてしまい、
俺は深いため息をつきながら、手元のビールを飲み干すことしかできなかった。
468:名無しさん@秘密の花園
07/05/27 22:21:45 CE78VQyi
今回は選択肢はありません。
ちなみに >460の予想通り、⑤が BAD END です。
主人公が新世界に目覚めて旅立っていくという、ある意味では
HAPPY END かもしれませんが……
469:名無しさん@秘密の花園
07/05/27 22:33:05 CE78VQyi
誤字訂正します。
>467 2行目 今頃になった(誤)→今頃になって(正)
470:名無しさん@秘密の花園
07/05/28 16:38:33 cC4S4Kef
今回は久々の?百合でしたね~
女性店員になにかのフラグが立った気もw
471:本物のれずですw(嘘です
07/05/28 16:52:05 e/f+mimC
彼氏います・・・でもおんなです
472:本物のれずですw(嘘です
07/05/28 16:55:00 e/f+mimC
わぁ-
皆かれーにぬるーしてりゅ
473:名無しさん@秘密の花園
07/05/28 22:46:06 R0ylFD/a
久しぶりにのぞいてみたら、物凄く進んでるな。
でも、百合萌え男としては自分と女性のキスより女の子同士のキスのほうが嬉しいんじゃないか?w
修羅場が増えすぎると整理が大変だから、素直に①番で
474:473
07/05/28 22:48:49 R0ylFD/a
ごめん、使ってたビュワーが更新してなかった。逝ってくる
475:名無しさん@秘密の花園
07/05/28 23:52:54 CZrcK/UL
だからあげんな糞
お前こそ勘違いすんな俺は>>10ぐらいから居るぞ
糞虫が沸いてるから警戒してんだよ
476:名無しさん@秘密の花園
07/05/29 10:52:23 hU2/DnqK
俺はもはや脳内アポーンしてるから気にしなくなったw
477:名無しさん@秘密の花園
07/05/29 13:49:00 C07LmqGW
色々な意味で危険すぎる「王様ゲーム」は2回だけで、なしくずし的に終わった
ことは幸いというべきだろう。
5分後には、妖艶な雰囲気はすっかりと消えて、穏やかな雑談に戻っており、
話の中で中川君と亜由美さんが大学時代の先輩・後輩の関係であることを知った。
「中川君たちは、大学でフットサルをやっていたの? 」
「いいえ。違いますよ」
彼は首を振ってから、ウーロン杯に口をつけながら話した。
「元々は、文芸部の部員だったの」
アンニュイな表情で、俺に見つめながら、亜由美さんは微笑んでいる。
「そうなんですか」
驚いた声をあげる俺に、少しだけ苦笑を浮べてから、中川君が続きを話す。
「でも文芸部に入る人はほとんどいなかったんです。部誌とかはちゃんと
つくったのですがね。それで2年前ネタに詰まった時に、気晴らしに友達が誘って
くれたフットサルをしてみたら、これが面白くなりまして」
中川君は、一気に言ってから更に続ける。
「僕は大学を卒業してから、自分でチームをつくろうと思って、在学中の亜由美
を誘ったんですよ」
「だから、掲示板を使ったのかい? 」
俺の質問に、中川君は少し驚いた顔をして頷いて言った。
「もう掲示板を知っているのですか。それなら話が早い。ご存知の通りあそこで
メンバーが足りないチームは、新人の募集をしています。それを通して、
今日来てないユウや、由菜ちゃん、夏美ちゃんが集まったんですよ」
478:名無しさん@秘密の花園
07/05/29 13:49:57 C07LmqGW
亜由美さんは俺を見つめて、やんわりと微笑みながら、
「山田さんもどうかしら。結構楽しいと思うわ」
と、誘ってくる。
顔色を変えずに黙々と泡盛を飲んでいる夏美ちゃんと、暴飲がたたって、
すっかりと酔いが回ってしまい、
「うーん。頭痛いよう」
と、先輩の膝の上で呻いている由菜ちゃんを交互に見つめる。確かに面白そうだ。
「時々なら、構わないよ」
「本当ですか? 」
中川君が喜色を表にあらわした。
「ありがとうございます。好きな時に参加してもらえば結構ですから。
うちはだいたい土曜日の午後に試合を組んでいるので」
メンバーが増えて喜んでいる彼と、亜由美さんは、連絡用のメアドと電話番号を
教えてくれた。
「本当は毎週やりたいのですが、ごらんの通りメンバーもぎりぎりで、対戦相手も
上手く見つからないことが多いので、月に1・2回が限度なんですよ」
少し、残念そうな表情で中川君は言った。
しかし、これだけ美しい女性が揃っているのだから、希望者なんて直ぐに
集まりそうなものだけど。
「うーん。どうでしょう。亜由美、由菜ちゃん、夏美ちゃん、揃って綺麗すぎるから、
却って近づけないかもしれませんね」
中川君の歯の浮くような台詞に、亜由美さんが笑いながら彼の脇腹をつつく。
「私たち、まだまだ弱小なんです。今日は由菜が爆発してくれたから、なんとか2つ
勝てましたけど」
亜由美さんは残念そうに肩を竦めてみせた。
479:名無しさん@秘密の花園
07/05/29 13:51:27 C07LmqGW
話が一段落ついた時、店員がアイスクリームを持ってきた。どうやらラストの
メニューのようだ。
「今日は、本当にごめんなさいね」
お盆からアイスを下ろした女性店員の手が、亜由美さんの言葉でぴたりと止まる。
「あっ、いえ」
正統派の美人である亜由美さんにまっすぐ見つめられて、おそらく学生バイトと
思われる店員はしどろもどろになる。
「少し調子に乗りすぎてしまったわ。貴方のお仕事を邪魔しちゃって、申し訳なく
思っているの」
亜由美さんの真剣な表情と言葉に、スレンダーだが少し幼い顔つきをした
女性店員は、またもや顔が赤くなってしまっている。
「あっ、いえ、全く構いません」
もしかしてこれは―
「あ、あの、よろしければまたご利用ください。お待ちしていますから」
店員は懐に手を伸ばすと、数枚の割引券を亜由美さんに差し出す。
「ふふ、ありがとう」
亜由美さんは柔らかく微笑み、優しく店員の掌を包んだ。
完全に舞い上がってしまった女性店員は、危なっかしい足取りでアイスを
配り終えると、名残惜しそうに部屋を後にしていった。
480:名無しさん@秘密の花園
07/05/29 13:54:58 C07LmqGW
「あのー 亜由美さん」
俺は、思わず口を開いてしまう。
「何でしょう? 」
彼女は柔和に微笑む。
「亜由美さんも、もしかして、由菜ちゃんみたいな…… すみません」
俺は己の軽率さを恥じたが、亜由美さんは表情を変えずに話してくれる。
「気にしなくてもいいです。ご明察の通り女の子が好きですが、特別なひとは
いません。それに、どちらかというと、由菜ちゃんや夏美ちゃんがじゃれあって
いるのを眺めている方が楽しいわ」
歌うように言ってから、耳元の髪を少しだけかき上げ、スプーンを伸ばして
バニラを口に含み、
「冷たいっ」
と、眉をしかめた。
俺と亜由美さんは、性別こそ違うけど、当事者でいるより外から眺めている方を
好むという点において、似たような立ち位置にいるのかもしれない。
アイスを食べ終わると、既に9時半を回っていた。そろそろお開きの時間である。
夏美ちゃんが、膝の上で眠っている由菜ちゃんを起こして、ふらふらと
立ち上がった。
彼女はまだ頭痛に悩まされているようで、顔をしかめている。
中川君が全員から料金を集め、会計を済ませる。亜由美さんがタクシーを呼んで、
5分程店の前で待っていると、車が2台連なって店の前に止まった。
「山田さん、お先に失礼します。由菜ちゃんと、夏美ちゃんをよろしく
お願いします」
先頭の、中川君と亜由美さんを乗せた車は、一足早く夜の街に消えていった。
481:名無しさん@秘密の花園
07/05/29 13:55:43 C07LmqGW
俺は、あれだけ泡盛を飲んでもけろりとしている夏美ちゃんと、頭痛で額を
抑えている由菜ちゃんに後ろに座ってもらい、自らは助手席に乗り込んだ。
「どちらまで行きましょう? 」
タクシーの運転手が尋ねてくる。俺は後ろを振り返って言った。
「夏美ちゃんの家をまず案内してくれないかな」
彼女は小さく頷き、運転手に道を教えた。
色とりどりのネオンが己の存在を強烈に主張している繁華街を過ぎ、
左右を住宅街に挟まれている道路に出る。
時折、乳白色をしたヘッドライトが眩い光跡を描くと同時に、空気が擦れる
ような音が耳朶に届く。
あらわれては瞬く間に後方へ流れゆく、街灯の光を眺めるのは好きだ。
昼はごく平凡な姿をした街も、夜は叙情的に変わる。
しばらくしてから、後ろに座っている夏美ちゃんが口を開いた。
「今日は、長々と付き合っていただいて、ありがとうございました」
最近の高校生には珍しい礼儀正しい言葉遣いに、戸惑いを覚えながら答えた。
「こちらこそ楽しかったよ 」
俺の返事に夏美ちゃんは視線を下ろしながら言葉を紡ぐ。
「由菜がこんなにはしゃいだのも久しぶりですから 」
もはや指定席となった夏美ちゃんの膝の上で、由菜ちゃんは子猫のように
丸まって夢の世界の住人となっている。
「この子。お姉さんと二人暮しなんです」
482:名無しさん@秘密の花園
07/05/29 13:56:59 C07LmqGW
「まさか…… 」
「いいえ。由菜のご両親は健在です。ただ実家が遠くに離れているので、
由衣さんのアパートを下宿代わりにしているんです」
俺の早とちりを、夏美ちゃんは冷静に訂正してくれた。
「それでも、本人はやっぱり寂しいと思います。由衣さんは仕事で帰りが遅く
なることが多いらしいので」
夏美ちゃんは、愛しそうに由菜ちゃんの華奢な背中をゆっくりと
撫でながら言った。
「山田さんとは、また一緒に試合をしたいです」
彼女は、少しだけ微笑むと白い紙を渡してくる。
「これ、私のメアドです。連絡がある時はこちらにお願いします」
今日はいろいろな人からメアドを貰うことになった。一期一会の出会いは
大切にしたいものだ。
お返しとして自分のメアドを教えると同時に、タクシーは夏美ちゃんの
家に着いた。
彼女は、膝の上に寝ている由菜ちゃんを揺り起こす。
「うーん」
小さい吐息を漏らしながら、子猫のような少女はようやく瞼を開けた。
「それでは失礼します。あと、由菜をおねがいします」
「ああ。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
483:名無しさん@秘密の花園
07/05/29 13:58:18 C07LmqGW
玄関先で手を振ってくれた夏美ちゃんに頷くと、寝起きの由菜ちゃんに運転手へ
自宅の場所を伝えるように促した。
由菜ちゃんが半ば寝ぼけながら指示した場所は、夏美ちゃんの家からは車で
3分程という近距離だ。
しかし、1分も経たないうちに由菜ちゃんは、うつらうつらとしながら、
再びシートに沈み込んでいる。
俺はきちんと彼女の家に着く事ができるのかという、不安を抱いていたが、
きっちり3分後、由菜ちゃんの指示どおりの場所にタクシーは到着した。
運転手に少しだけ待って貰うように頼んで、千鳥足になっている由菜ちゃんを
支えながら、玄関脇の呼び鈴を鳴らす。
姉の由衣さんは―
484:名無しさん@秘密の花園
07/05/29 14:03:08 C07LmqGW
さて選択肢です。(重要な分岐点にしたいと思います)
黒川由衣さんは、
① 自宅にいる
② 自宅にいない
>470
女性店員が妙に気に入りました。それにしても我ながら百合が薄いですねー
>473
気にするなw
485:名無しさん@秘密の花園
07/05/30 14:11:02 SSwOQxUO
一気に投下されてた!
うう、どっちが百合的にいいのか判断できん…
直感で②
486:名無しさん@秘密の花園
07/05/30 20:28:15 oPxqSFYv
黒川さんがいたら姉妹百合?? あえて②を。
487:名無しさん@秘密の花園
07/05/31 22:58:42 HHnXmOGj
選択肢は②ですね。
申し訳ないが更新は週末になります。
それまでごゆるりとお待ちください。
488:名無しさん@秘密の花園
07/06/01 18:19:01 vbLqfdNo
お待ちしております。
489:名無しさん@秘密の花園
07/06/02 00:10:53 p/TVvbFa
俺は、呼び鈴を何度か押したが、返事は無い。
部屋の中も電灯がついておらず、暗いままだ。
「留守なのかなあ。お姉ちゃん」
由菜ちゃんは、未だ辛そうな顔つきのまま、不安そうな声を漏らした。
「どうやら。そうみたいだね」
「お姉ちゃん。夜遅くなる時や外泊する時って、必ず連絡してくれるのに…… 」
半ば呟くような声で言いながら、由菜ちゃんは、暗闇の中で財布に入っている
家の鍵を何とか探り当ててドアを開けた。
俺は、玄関先で靴を脱いでいる少女に声をかける。
「由菜ちゃん。大丈夫? 」
「うん。でも今日はもう寝ますね」
彼女は、やや強張った笑顔を作ってはいたが、口調はしっかりしていた。
少しは酔いが醒めているようだ。
「ああ。今日はお疲れ様」
「山田さん。わざわざ、送ってくれてありがとうございました」
由菜ちゃんは、ぺこりと頭をさげた。
「気にしないで。では、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
由菜ちゃんの可愛らしい顔を、もう一度だけ眺めながら、俺は玄関のドアを
ゆっくりと閉めた。
490:名無しさん@秘密の花園
07/06/02 00:13:00 p/TVvbFa
女子高生二人を送るという、とりあえずの役目を終えて、待たしていたタクシーに
再び乗り込む。
「どうも、お待たしてすみません」
俺は、業務書類をチェックしていた運転手に声をかけた。
「いえ。お気になさらず」
やや事務的な口調で言うと、書類をしまった運転手はアクセルを踏み込んだ。
夜が更けていくにつれ、闇が一層深くなる。街灯の明かりも少なくなった
暗い道を、タクシーは静かに走っていく。既に運転手には自宅へ向かうように、
伝えてある。
しかし、俺は由衣さんの不在が気になってしまい、不安が深まるばかりだった。
昨日から今日にかけて、由衣さんにとっては衝撃的な事実が立て続けに
明らかにされたことが、どうしても記憶の淵にこびり付いてしまい、離れない。
想いを寄せているひとみさんが、さやかさんと付き合っており、更に、
ひとみさんが、さやかさんと同居生活を始める予定であることを、
由衣さんは知ってしまった。
しっかりしているように見えて、脆い部分を合わせ持っている黒川さんは、
果たして大丈夫なのだろうか?
もちろん、他の友達と飲みに行っていたりして、単に帰りが遅くなっている
だけなのかもしれない。俺の心配は杞憂に過ぎない可能性は十分にありえる。
また、由衣さんと知り合ってからは、まだ日は浅く、彼女のプライベートに
踏み込む事に対して、強い躊躇いを覚えるのも事実だ。
どうすれば良い? 俺は自分の心に何度も問いかける。そして―
491:名無しさん@秘密の花園
07/06/02 00:22:20 wnvinFGB
お待たせしました。選択肢です。
① 鈴音さんが働いているバーに電話をする。
② ひとみさんにメールを送る。
③ 直接、由衣さんにメールを送る。
④ 飲み屋の近くの駅に戻る。
私は、5月2日から書いていましたが、そろそろ話は終盤に向かいます。
できることならば、きちんと最後まで書ききりたいとは思います。
(もちろん、新たなる書き手さんに引き継ぐことができれば、良いのですが)
492:名無しさん@秘密の花園
07/06/02 11:01:31 TJ2pl8LI
一ヶ月ありがとうございました。
おかげさまで随分進みました。
では厳かに選択を。やはりひとみさんに何かを期待して②
493:名無しさん@秘密の花園
07/06/03 14:04:56 ECZeTWDC
では②でいきます。(今から書くので投入は後ほど…… )
494:名無しさん@秘密の花園
07/06/03 16:20:58 ECZeTWDC
俺はひとみさんにメールを送ろうとして、大きな失敗に気が付いた。
あの時、ひとみさんのメアドを貰っていない。
どうする?
必死に考える。ひとみさんのメールを知っているのは黒川さんだが、彼女自身に
直接連絡するのは、事情があって憚られる。
とにかく考えろ! 俺は自分の思考にフル回転を命じ、きっかり5分後―
おんぼろコンピューターは主人の命令を忠実に果たして、電流のような
閃きを与えてくれた。
俺は、中川君の電話番号を押す。
『もしもし』
3コールで繋がった。
「もしもし。山田です。夜分申し訳ない。実は教えて欲しい事があって」
『何です? 』
「今日、最初に対戦した相手チームの窓口になっている佐藤さんという方に
連絡とりたいんだけど」
『佐藤さん、ですね』
「彼女のメアド、分かるかな?」
『あ…… ちょっと待ってください。今送信しますね』
「ありがとう」
『いえいえ。お気になさらず』
彼は、理由を聞こうともしなかった。中川君には明日きちんとお礼を言う
必要がある。
495:名無しさん@秘密の花園
07/06/03 16:27:56 ECZeTWDC
中川君との通話を終了してから1分ほどで携帯が鳴り、ひとみさんの
アドレスが送られてくる。
俺は、黒川さんが未だ帰宅しない事実を告げ、彼女の行方に心当たりが
あったら教えて欲しい、という旨の文章を打ち込んで送信する。
但し、ひとみさんが携帯電話を持っていないと今回ばかりは意味が無い。
繋がるかどうかは賭けだ。そして、3分後―
俺は賭けに勝ったことを知った。
『黒川先輩のこと、心配です。心当たりのある場所があるので、申し訳ありませんが
N駅まで来ていただけませんか? 』
ひとみさんからのメールが届く。俺は、同意の返事とともに、ひとみさん自身の
携帯番号を教えて頂くよう、お願いをする。
既に非常事態だから、余計な遠慮は無用である。
『分かりました。私の番号は― です。一度お電話ください』
着信された2通目のメールを開き、携帯の発信ボタンを押して耳に当てる。
『こんばんは。山田さん』
「夜分遅く申し訳ありません。俺は今からタクシーでN駅に向かいますが、
30分ほどかかります」
『私が車を出します。車種は日産の青のシルフィです。駅の南口のロータリーで
お待ちしています』
「ありがとうございます」
俺は安堵のため息をつきながら通話を終えて、タクシーの運転手にN駅へ
向かうように伝えた。
496:名無しさん@秘密の花園
07/06/03 16:32:57 ECZeTWDC
ちょうど30分後、タクシーはひとみさんの家の最寄り駅である、N駅に到着した。
料金が1万3000円というのは、予想外の大出費だが、今は気にしている
場合ではない。
俺がロータリーの端にとまっていた車に近寄ると、やや丸みを帯びたシルフィの
ライトが瞬きをして合図を送ってくれる。
ひとみさんが駆け寄った俺を確認すると、僅かに微笑みながら助手席のドアを
開けてくれる。
「本当に、申し訳ないです」
時刻は既に11時を回っている。ひとみさんにはよくぞ車を出してくれたと
感謝するしかない。
「いいえ、いいんです。私も心配していましたから」
「ひとみさんも、黒川さんの様子が気になっていたんですか? 」
「ええ。今日の試合の後、黒川さんが、憂鬱な表情で駅に向かって歩いているのを
見かけたんです。その時、声をおかけすれば良かったのですが…… 」
後悔するように言ってから、彼女は車を発進させた。
しばらくは駅前の商店街を低速で走り、信号を右折して国道に入ると、アクセルを
踏み込んで速度を上げていく。
流石に、国道は通行量が深夜になっても絶えることはなく、大きな音をたてながら
疾走するダンプと幾度もすれ違う。
車が市街地を抜けた頃、俺はひとみさんに尋ねた。
「ひとみさん。心当たりの場所はどこなんですか? 」
「港です。なぎさ埠頭と呼ばれているところです」
なぎさ埠頭は、N駅から車で30分ほど国道を南に走ったところにある。
昼間はカップルでそこそこ賑わうが、この時間帯にはほとんど人はいないはずだ。
497:名無しさん@秘密の花園
07/06/03 16:38:16 ECZeTWDC
「しかし。何故そこなんです? 」
「そうですね。山田さんにはお話をした方が良いかもしれません」
巧みなハンドル捌きでシルフィを操りながら、ひとみさんは口を開いた。
「話自体は、3年前に遡ります。当時、私は新入社員で、黒川さんはOJTでした。
つまり、マンツーマンで仕事の基本を教えて頂いていたのです。
しかし、黒川さんは同時に、大きなプロジェクトをかかえていて、しかも
それが難航しており、とても悩んでおられました 」
国道から道をそれて、港湾に向かう道路に入ると、交通量が激減して闇が深くなる。
ひとみさんが窓を開けると、潮の匂いが鼻腔をくすぐるとともに、彼女の綺麗な
ロングが吹き込んだ風によって揺らめいた。
「当時の週末のことです。黒川さんと飲みに行った時、先輩は話してくれたんです」
『私、泣きそうな事があると港に行くの。なぎさ埠頭ってとこが特にお気に入りね』
「どうして、港なんですか? 」
『海を眺めていると何故か心が落ち着くわ。佐藤さんもそうは思わない? 』
「懐かしそうに、黒川さんが話してくれた時の表情が忘れられません。それに、
なぎさ埠頭は、地下鉄からでもいけますから」
一気に言ったひとみさんは、小さくため息をついた。彼女の話によると、
プロジェクト自体は2ヵ月後に成功裏に終わり、会社における黒川さんの評価も
高まったという。
「黒川さんは、たぶん…… そこにおられると思います。あくまでも私の勘でしか
ありませんが」
ひとみさんの慎重な口ぶりとは裏腹に、かなり確信を持っているようだ。
俺も彼女の意見に同意したい。それにもし見つからなければ、別の場所を
改めて探し直さなければならないのだ。
498:名無しさん@秘密の花園
07/06/03 16:40:21 ECZeTWDC
ひとみさんは、埠頭近くの広い駐車場に車をとめた。
俺と彼女は夜の港を歩きながら、黒川さんの姿を懸命に探し始める。
沖合いには何隻ものタンカーや大型船が行き交い、船の各所に備え付けられて
いる、色とりどりの照明灯が瞬いている。
一方、港の護岸沿いの道は暗く、うっかりすると足を外して海に落ちかねない。
俺とひとみさんは、小道を寄り添うようにして歩いていく。
闇の中を10分ほど歩いて、もしかして外れか? と焦り始めた時―
ちょっとしたスペースに備え付けられた小さなベンチで、子猫のように丸く
なっている女性がいた。
「黒川さん! 」
ひとみさんが半ば叫ぶように言うと、眼鏡をかけている女性は顔をあげ、
驚きのあまりに、瞼を大きく開いた。
そして、突然の闖入者が佐藤ひとみさんであることを確認すると、
わっと泣きながら、彼女の懐に飛び込んだ。
499:名無しさん@秘密の花園
07/06/03 16:44:03 ECZeTWDC
今回は選択肢はありません。
選択肢の結果、一気に緊迫した状況になりました。
PS
どちらかというと、百合よりハードボイルドといった感があるのは
気のせいでしょうか。
500:名無しさん@秘密の花園
07/06/03 18:16:18 j2zZmn1s
やはり埠頭といえばハードボイルドですね
ハードボイルド百合は新ジャンルですw
しかし中川君は良い人ですな
501:名無しさん@秘密の花園
07/06/03 19:32:36 ECZeTWDC
>>501
彼は好漢ですね。
実は選択肢を呈示した後、ひとみさんにメアド教えて
貰ってない、ということに気づいてしまって
とても焦ったというのは内緒ですw
502:名無しさん@秘密の花園
07/06/03 19:34:28 ECZeTWDC
自分にレスしてどうするorz
501は、>>500さん宛です。
503:名無しさん@秘密の花園
07/06/03 19:51:43 hd1epyTZ
>ひとみさんにメアド教えて貰ってない
気付いた作者さんスゴいw
教えてもらってたと思い込んでたw
504:名無しさん@秘密の花園
07/06/03 20:41:47 ECZeTWDC
>>503
具体的には、>143の選択肢で、③が選ばれた結果、
>148で、黒川さんが自分のメアドを
「ひとみさんのアドレスは教えたくなかったのだろう」
という理由で、主人公に教えていました。
単純ながら、話の展開としては重要なミスになるところでした。
505:名無しさん@秘密の花園
07/06/07 23:51:04 SGwjVbrO
港を出たばかりの貨物船が鳴らした哀愁を含んだ汽笛と、水面をゆっくりと
進む船がつくり出した小さな波が、コンクリートの壁にぶつかって砕ける音が、
微かに耳朶に届いている。
夜に入って再びひろがった雲に遮られて、本来であれば天空に瞬くはずだった
無数の星達の存在は隠されている。
古びたベンチから立ち上がった黒川さんは、ひとみさんの白いブラウスに顔を
押し付けて、子供のように泣きじゃくった。
ひとみさんは、尊敬すべき先輩が胸元で泣いていることに驚いていたが、暫くは
何も言わなかった。事情をある程度知っている俺も、二人の傍で立ちすくんだままだ。
沖合いを通った貨物船が完全に闇夜に消えて、黒川さんの嗚咽がようやく
収まりかけた時、ひとみさんはポケットからハンカチを取り出した。
「黒川…… 先輩? 」
由衣さんは、差し出された白いハンカチを受け取り、熱くなっている瞼を抑えた。
しかし、溢れ続ける涙をとめることはできないでいる。
「私…… わたしね 」
黒川さんが喉の奥に詰まった重苦しい塊を吐き出すように、言葉を紡ぎ始める。
「あの、あのね…… 」
懸命に声を出そうと懸命にもがく。そして―
顔をあげて、ひとみさんをまっすぐと見つめて言った。
「私、あなたの事が好きなの! 」
黒川さんは、大きく前に踏み出した。
506:名無しさん@秘密の花園
07/06/07 23:52:55 SGwjVbrO
「新入社員研修の時、あなたの顔を見た時から気になっていた。あなたのOJT
(教育担当者)になれた時は本当に嬉しかった。佐藤さんという苗字じゃなくって、
ひとみと呼びたかったわ。でも、あなたの隣にはずっと鈴木さやかさんがいた。
私、本当に嫉妬したわ。
鈴木さんが何処かに転勤したら、私にもチャンスがあるかもしれない、なんて
馬鹿なことを考えたりもした。
でもね。鈴木さんの話になると、あなたが物凄く嬉しそうな顔をするんだから
どうしようもなかった。
私、あなたの笑顔が見られるなら、親しい先輩後輩という関係で満足すべきと、
懸命に自分を抑えつけた。でも、でもねっ」
冷静という仮面をかなぐり捨てた黒川さんは、ほとばしるような熱い想いを
伝え続ける。
「見守るだけが幸せなんてことは、私の単なる逃げに過ぎなかった。
だから、私、素直な気持ちをそのままいうわ。
ひとみ、あなたの事が大好きなの。世界中の誰よりも大好きなの! 」
黒川さんは、ありったけの想いをこめて、ひとみさんへ恋心を伝えた。
俺は― 彼女の告白を目の当たりにして、自分自身に対してやり場のない憤りが
わきあがった。
由衣さんは、泣きじゃくって化粧が落ちてしまって、何度も言葉に詰まりながらも、
全ての勇気を振り絞った。自分の気持ちを大好きな相手に伝える事ができたのだ。
それに比べて俺は…… いつまでたっても傍観者に過ぎないのか?
黒川さんは告白を終えると同時に、大きな荷物から開放されたような、晴れやかな
顔つきに変わっていた。
幾筋かの涙の跡が頬に残ってはいるが、今まで見てきた中でも最高の笑顔だ。
彼女はぐっしょりと濡れたハンカチを右手で掴んだまま、ただ、答えを待っている。
そして、先輩から衝撃的な告白を受けたひとみさんは―
507:名無しさん@秘密の花園
07/06/07 23:56:50 SGwjVbrO
選択肢です。
① ひとみさんは、黒川さんの告白をことわった。
② ひとみさんは、黒川さんの想いを、その場で拒絶することができなかった。
③ 暗闇の奥から、誰かの足音が近づいてきて……
508:名無しさん@秘密の花園
07/06/08 20:08:10 gUbZZ1zl
黒川さんカッコイイー!
ひとみさんの胸で泣きじゃくる姿も可愛い!
③は修羅場フラグっぽい?
やっぱり②でお願いします 作者さんに感謝!
509:名無しさん@秘密の花園
07/06/08 21:30:17 AxvRYEIt
ここはやっぱり②だろうなぁ。
と言いつつ、どれを選んでもドラマティックな展開が待ってそうで w
510:名無しさん@秘密の花園
07/06/09 22:15:12 uj7cOL+O
それでは②でいきます。
511:名無しさん@秘密の花園
07/06/09 22:24:13 uj7cOL+O
佐藤ひとみさんは、先輩からの申し出に、承諾することも拒絶することも
できずに、呆然として立ち尽くす事しかできなかった。
即座に断られなかったことから、黒川さんは、大いにチャンスありと
判断したのだろう。一気にひとみさんに近づき、耳元で囁く。
「ひとみ。さやかさんと別れなくてもいいのよ」
「どういうことですか? 」
怪訝そうな表情で、ひとみさんは尋ねる。
「ひとみの自由にして貰えればいいの。もし、私の申し出を受けたとしても、
後になって、やっぱり嫌になったら、いつでも断ってもいいの。
文句なんか絶対言わないことを約束するわ」
「そ、そんなこと…… 」
「それに、このままさやかさんと一緒に住んでもいいのよ」
黒川さんの言葉はやはり、甘い誘惑と言うべきなのだろう。
俺は、雲行きが怪しくなっている状況を感じた。由衣さんの言葉を
聞き漏らすまいと、全神経を集中させる。
「ひとみを拘束したり、困らせたりするつもりはないの。もちろん、あなたに
嫌な思いをさせるつもりなんて全くない。私の気持ちを押し付けることも
しない。全ての選択権はあなたにあるわ」
これは、ひとみさんにとって都合の良すぎる申し出だ。だからこそ、
彼女は困惑したまま動けない。
512:名無しさん@秘密の花園
07/06/09 22:25:05 uj7cOL+O
ついっ―
黒川さんは更に半歩間合いを詰める。二人の距離は、肌が直に触れ合いそうに
なるまで縮まっている。
「でも、そんなことしたら…… さやかが何というか」
ひとみさんは、由衣さんの勢いに押されながらも、ようやく反論らしき
言葉を口にする。
「もし、さやかさんに責められたら、全部私のせいにしてくれればいいわ。
強引に迫られて仕方がなかったって言えばいいの。
ひとみは全く罪悪感なんて感じる必要はない。悪いのはぜんぶ…… 私」
「あ、あの、でも」
俺は、ひとみさんがはっきりと、黒川さんの告白を断れないことが
不思議だった。
優柔不断なのか、尊敬している先輩の告白に気持ちがぐらついているのか。
彼女の揺れる心を正確に推し量ることはできない。
しかし、ひとみさんの真面目な性格から考えると『ふたまた』なんて
器用な事ができるとは、とても思えないのだが。
513:名無しさん@秘密の花園
07/06/09 22:26:18 uj7cOL+O
「ねえ、ひとみ」
「はい…… 」
「少しだけ、あなたに考える時間をあげる」
「え? 」
「もし、私の告白を断るのなら、首を横にふってちょうだい」
黒川さんは視線を決して逸らさずに言ったが、表情は自信に満ち溢れていた。
この時点に至っては、明確に断られることなんてありえないことを
確信していたからだ。
そして、ひとみさんは― 予想通り、首を動かすことが出来なかった。
「ありがとう。ひとみ」
時計の秒針が二回りした後、無言の承諾を得た黒川さんは優しく微笑んだ。
同時に、ひとみさんの後ろに腕を絡めて、ゆっくりと顔を近づけ、
唇をあっさりと塞いでしまう。
ひとみさんは、身体を硬直させて瞼をしきりに瞬かせている。
信頼している先輩が、いきなりそういう行為に出た事が、信じられないと
いった様子だ。
それでも、拒絶の仕草を見せる事はなく、黒川さんのなすがままに唇を
許している。
514:名無しさん@秘密の花園
07/06/09 22:27:39 uj7cOL+O
「んん…… 」
ひとみさんの喘ぎ声が夜風に乗って、俺のところまではっきりと届く。
ぞくぞくするような妖艶な声だ。
黒川さんはゆっくりと、渇いた唇を動かして、ひとみさんの硬くなった
身体を少しずつほぐしていく。
彼女の右手は、ひとみさんの背中に回っており、綺麗な指先が白いブラウスを
軽くなぞっている。
暫くの間、黒川さんは、ひとみさんの柔らかい唇の感触を味わっていたが、
拒絶のそぶりさえ見せないことを改めて確認すると、舌を伸ばしてゆっくりと
唇の間に割り込ませていく。
「んぐぅっ! 」
ひとみさんのくぐもった悲鳴が漏れた。力が抜けて膝が崩れ落ちそうに
なるところを、黒川さんに支えられる。
すっかりと脱力した後輩を愛おしそうに抱きしめると、ひとみさんの
舌に絡みつかせていく。
515:名無しさん@秘密の花園
07/06/09 22:30:33 uj7cOL+O
「ん…… んぅ…… んあっ」
ひとみさんと黒川さんの唇から、途切れることなく続くあえぎ声は、
俺の心を深くえぐった。
女性同士のディープキスに背徳感を覚えたわけではもちろんない。むしろ、
百合萌え男としては堪能すべき状況といえる。
しかし、ひとみさんには、既にさやかさんという恋人がいるのに、
積極的な黒川さんに押しきられる形で、結局は受け入れてしまったことに
形容しがたい、やるせなさを感じてしまったのだ。
それに、黒川さんの悪魔のような甘い囁きに乗ってしまったひとみさんが、
自ら修羅場を選択してしまったことに対して、強い危惧を覚えざるを得ない。
「んあ…… くぅっ」
濃厚なキスを続けながら、黒川さんの右手は巧みに動いて、ひとみさんの
ブラウスの内側に指をもぐりこませる。
ひとみさんは、反射的に身体を捩って逃れようとするが、黒川さんは
もう離すことはしない。
俺は―
516:名無しさん@秘密の花園
07/06/09 22:43:04 uj7cOL+O
さて選択肢です。
①黒川さんと、ひとみさんの行為を、見ていることしかできなかった。
②彼女達の愛撫をこれ以上、見続けることができなくて、立ち去る事にした。
③二人を見ていたが、マナーモードにしていた自分の携帯が震えて……
>>508-509
ありがとう。感想が貰えるからこそ続ける事ができます。
ちなみに、前回呈示した選択肢では……
①は、NORMAL ENDです。ひとみさんとさやかさんは結ばれ、黒川さんはひとみさんを
すっぱりとあきらめます。
③は、たちの悪いナンパ男の登場で、アクションシーンの予定でした。
今回選択された②は、修羅場となる可能性があります。
517:名無しさん@秘密の花園
07/06/09 23:14:31 e2+lJ7ba
おおーっ!とうとう本格的な百合がっw
黒川さん口説き上手すぎw 手練だ♪
ウワワワ前回の選択は修羅場でしたか
ええい黒川さんもう突っ走れw ①で!
518:名無しさん@秘密の花園
07/06/12 21:26:29 Ai836KZ8
俺が代わりに抜いといてやるから百合萌え男おまいは見てなさい
519:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 18:40:51 IOoqMClG
保守
520:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 19:18:46 DrCReU48
長い間放置してしまい、申し訳ありません。
①で書くことにします。
521:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 21:09:29 DrCReU48
俺は、彼女達から視線を離すことができなかった。二人の愛撫に視線が
釘付けになってしまっていた。
黒川さんは、もぐりこませた手を器用に動かすと、ひとみさんのブラの
ホックを簡単に外す。
ブラは簡単にほどけ落ちて、彼女の薄い服ごしから乳房と乳首が見えてしまう。
「ひとみ…… 大好き」
ひとみさんの耳元で、黒川さんは囁く。
「せんぱい…… 」
巧みなキスに翻弄されたひとみさんは、ほとんどなすがままにされている。
黒川さんは、ひとみさんの豊かな胸をまさぐりながら、時折、乳首のあたりを軽く捻る。
「つぅ、せんぱい……だめっ、んんっ」
綺麗な脚をぶるぶると震わせながら、ひとみさんの艶のある喘ぎ声が夜風に乗って
聞えてくる。
「ひとみは本当に可愛いね」
眼鏡をかけている黒川さんは、ひとみさんの顎をつまむと、顔を寄せる。
ひとみさんは、瞼を閉じて唇を上に向けて、黒川さんは期待通りに口を塞いだ。
「ん、んくぅ」
黒川さんとひとみさんのキス。
最初は、軽く唇を重ね合わせるだけだ。ふたりの唇が軽く触れ合い、
時折、小さな喘ぎ声が漏れる。
しかし、すぐにもの足りなくなったのか、黒川さんは舌を伸ばして、
ひとみさんの唇の中に割り込ませていく。
522:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 21:11:18 DrCReU48
「んんっ」
ひとみさんは僅かに抵抗するものの、黒川さんの指先が彼女の乳首を軽く
捻っただけで、胸に注意をとられてしまい、口腔内への侵入を簡単に許してしまう。
「ん…… んむぅ」
黒川さんの舌端が、ひとみさんを捉えて絡みつく。
とろとろとした唾液が混ざり合い、淫らな音が微かに届く。
俺はどうしようもない程大きな煩悩を抱いたまま、彼女達の痴態を
ただ、見つめている。
真夜中の埠頭でふたりの交わりは尚も続く。
星を塞いでいた雲の切れ間から、東から昇り始めた下弦の月が覗き、
ひとみさんと黒川さんを照らし出す。
激しく濃厚なキスを交わし続ける二人が、月光によって鮮やかに浮かび上がり、
妖しくも幻想的な情景が醸し出される。寄り添うふたりから伸びた長い影が、
俺の足元まで届いた。
523:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 21:13:26 DrCReU48
ひとみさんの口内を味わい尽くすと、黒川さんは、乳房の愛撫を続けながら、
もう一方の手を下に伸ばして、スカートの中に入れようとする。
「!? 」
先輩の淫らすぎる行為に驚いたひとみさんが、唇を離して、身体を捩って
抗おうとするが、黒川さんは、冷徹な口調で言い放った。
「逃げないで。ひとみ」
「で…… でも」
ひとみさんの、心の迷いにつけこむように黒川さんは、彼女のスカートを
捲くりあげた。
ひとみさんの健康的な白い太腿と、薄いピンクの下着が視界に飛び込み、
俺は釘付けになってしまう。
この状況を敢えて止めようとする男は、異性に興味がないごく一部の
例外を除いては、地球上に存在しないと断言しても良い。
黒川さんは、ひとみさんの小さなレースがついた下着の上から、
丹念な愛撫を始める。
最初は臀部を、細く長い指を滑らして円を描くように撫でていく。
「くろかわ、せんぱいっ…… やめてくださ…… んっ」
黒川さんの愛撫に、ひとみさんは形の良い眉を歪めながら、
お尻を左右に振って逃れようともがく。
しかし、黒川さんの愛撫は極めて上手く、瞬く間にひとみさんの
抵抗は弱まっていく。
524:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 21:14:28 DrCReU48
「ひとみ。貴方は私に全てを任してくれればいいの」
謡うように囁きながら、お尻を撫でていた手を前に回す。
ひとみさんは、女性の最も大切な場所を守ろうと、反射的に太腿をぎゅっと
閉じるが、黒川さんは、ゆっくりと秘められた場所に指先をあてると、
意地悪そうな笑みを浮べて言った。
「ひとみ。ずいぶんと濡れているわ」
「そんな…… 嘘です」
「本当よ」
狼狽しながらも否定するひとみさんに対して、冷静な口調で断定すると、
彼女の愛液によってつくられた、染みがついた部分を弄ぶ。
「んあっ」
小さく悲鳴をあげて、ひとみさんは下半身を震わす。
「我慢、しなくていいからね」
とても甘い誘惑の言葉。
黒川さんは、ひとみさんの胸を揉みしだきながら、下着の上から
大切な部分を愛撫していく。
ものすごく巧みに指先が動き、瞬く間にひとみさんの秘所から
噴き出した愛液は量を増していく。下着から漏れだした粘性のある液体が、
健康的な太腿の根元から溢れ出して、とろとろと下につたっていく。
525:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 21:15:19 DrCReU48
「せんぱいっ、こんなとこで…… んあっ、駄目ですっ」
絶え間ない刺激に悶えつつも、ひとみさんは顔を紅潮させて、
抗いの言葉を紡ぎだす。
いくら真夜中とはいえ、夜風がじかにあたる外で、しかも男である
俺の眼前で、黒川さんと立ったままエッチをするという、
凄まじく異常で倒錯的な状況は、真面目なひとみさんにとっては、
とてつもなく恥ずかしいものであるはずだ。
しかし、黒川さんの愛撫が上手すぎて、弱々しい抵抗をするものの、
絶え間なく与えられる快楽に流され、結局は溺れることになってしまう。
「くぅ…… だめ、だめです…… 」
強まるばかりの悦楽に耐え切れず、ひとみさんの吐息と喘ぎ声が、
次第に大きくなる。
頃合い良し、と踏んだ黒川さんは、下着の中に手を潜りこませて、
ひとみさんの秘所を直に愛撫する。溢れる愛液に指先を濡らしながら、
的確にアソコを刺激していく。
「ひとみ。感じてるのね」
「せんぱいが、わるいんで…… ひゃんっ」
淫らな行為を仕掛けてくる、とても悪い先輩をにらみつけようとするが、
秘所の突起を軽く捻られると、敏感になった身体は反応してしまい、
喘ぎ声しかあげられなくなってしまう。
526:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 21:16:46 DrCReU48
「素直でない子には、おしおきしないとね」
黒川さんは意地悪そうに言うと、背後から抱きしめるような態勢をつくる。
ひとみさんの乳房を揉みながら、下着の中に入れた指を細かく動かして、
愛撫によって膨らんだ突起を、軽く押し潰すように揉んでいく。
「んあっ…… せんぱい…… だめ、くぅ」
激しい刺激にひとみさんは喘ぎ、愛液をかき回す、くちゃくちゃという
淫らな音がはっきりと聞えてくる。
ひとみさんは、必死に声を抑えようと我慢を重ねるが、黒川さんの
厭らしい責めに耐え切れず、大きな声を何度もあげてしまう。
「ひゃん、だめっ…… ホントにダメっ……んあっ、ああ! 」
健康的な肢体を細かく震わせながら、ひとみさんは悦楽の階段を
昇っていく。限界はすぐ傍にまで迫っている。
「ひとみ。イキなさい」
黒川さんが短く命令した。
ひとみさんは、悪魔のような先輩の愛撫に完全に弄ばれながら、
長い髪を振り乱して激しくよがりまくる。
「んあ、いっちゃう、ほんとに…… いっちゃうのっ」
なおも懸命に耐えるが、黒川さんの愛撫は、加速度的に早く、激しくなる。
「だめ、ああっ…… んあっ、いくっ、いくのっ…… んあああああっ! 」
立ったまま全身を硬直させて、ひとみさんは小刻みに震わし、ついに
絶頂を向かえる。そして。
快楽の頂を超えると、全身の筋肉が弛緩して、糸が切れたマリオネットの
ように崩れ落ちかけ― 黒川さんよって支えられた。
527:名無しさん@秘密の花園
07/06/24 21:22:09 DrCReU48
ちなみに、今回は選択肢はありません。
久々に濡れ場を書いたような気がします。
えろはぬるいかもしれませんが、ご容赦を。
528:名無しさん@秘密の花園
07/06/25 15:24:13 AH6iaQCT
少子化対策は小梨税で:第2ラウンド
小梨、非婚が大嫌い【育児板】
スレリンク(baby板)l50
529:名無しさん@秘密の花園
07/07/01 00:10:39 g/1EQBUO
俺は、彼女達の愛撫が終わる頃、背を向けた。
二人をまともに直視できなかったからだ。
断じて、愛撫を重ねたひとみさんと黒川さんを軽蔑したわけではない。
百合萌え男としてはありえない。では、何故?
俺の脳裏にさやかさんの顔が浮かんだからだ。
黒川さんが、強引にさやかさんを奪ったとしたら、さやかさんは黙ってはいないだろう。
いわゆる修羅場に、俺は居合わせたくない。綺麗な百合だけがみたいんだ。
と、思ったところで、自分のあまりの身勝手さに辟易した。
だれもが、自分の思うとおりに生きられるわけではない。
黒川さんだって必死の思いで、ひとみさんへの愛を貫きたいと、
果敢に行動したわけだし、ひとみさんだって、黒川さんを
傷つけたくないという「善意」が、あのような結果に
なってしまったのだ。
どちらにせよ、黒川さんとひとみさんが『ああいう形』で結ばれたからには、
今日の俺は、埠頭にいても仕方がない。
腕時計を見れば既に午前1時を回っており、地下鉄は終電を過ぎているが、
大通りに出れば空きのタクシーくらいあるだろう。
俺は、混乱する思考をまとめられないまま、タクシーを拾い、そのまま家に帰った。
ただ、タクシーに乗る直前に、ひとみさんの車に立ち寄り、1枚の名刺を挟んでおいた。
名刺の裏には、「申し訳ありませんが、お先に失礼させていただきます」
とだけ書いておいた。
530:名無しさん@秘密の花園
07/07/01 15:38:39 +o6ll9WR
ご苦労様です。読み応えがありました。
今回は我々読み手にとっても登場人物にとっても
つらい選択でしたね。
今後どうなっていくのか目が離せません。
531:名無しさん@秘密の花園
07/07/01 17:33:44 Hq2ZngW6
>530
いつも読んでいただいてありがとです。
更新頻度はごらんの通り、期待できませんが……
今後も読み手の方に選択肢を呈示する場面があろうかと思います。
ただ、私の不徳の極みで申し訳ないのですが、
スレ進行がとまっている状況ですので、場合によっては自動的に進行する
(自分で選択する)場合があるかと思います。
この点、ご理解いただければ幸いです。
532:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 16:05:21 dKvO9Gui
やあ、こんにちわ。>>278です。えっ?知らない?うん、まぁそれは良いや。300レスも前の話だし。
消えた後も時々図書館のパソコンを使って見に来てたんだけど、
自分で出すだけ出して書いてあげられなかったキャラ(バーテンダーさんやパーカ娘のお母さんとか)がいた事がちょっと心残りでね。
で、本編の流れにはついて行けそうもないし、二人のエピソードを保守代りに番外編みたいな感じで投下したいんだけど、ダメかな?
まぁ、完成させる自信もないしダメと言われたら即あきらめるよ。
一応、暫く待って返事が無ければ出来てるところまでで投下するけど、ダメならダメって言って脳内あぼーんしてくれ。
533:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:13:49 dKvO9Gui
えと、じゃあとりあえず置いていきます。
主役はバーテンダーさんです。
534:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:15:20 dKvO9Gui
家は、裕福ではないけれど幸せな家族だった。
お酒がダメで接待嫌いな父は私が寝る前には帰って来たし、母との仲も良かった……と言っても、本当にそうだったのかは分らない。けれど、平仮名だらけの作文と幼き日のかすかな記憶がきっとそうであったと確信させてくれる。
『中沢すず音』
他の子たちが平仮名を間違えている中で、一人だけ漢字交じりの名前。その理由は思い出さなくても分かっている。
私の中で幼稚園の頃の記憶は三つ。一つは、父や母と過ごした何気ない幸せな家庭の記憶。二つ目は、「私立の小学校を受けないか?」と言われた時の記憶。そして、最後の一つは……
永遠の、初恋。
535:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:16:15 dKvO9Gui
既に朧げな友人達の顔と夏の空を覆う雲の形が、まるでパステルか水彩画の様にぼやけて浮かぶ。確実なのは晴れていたこと。そして、その日はまるで前日までの暑さが嘘の様に涼しかったと言う事。
私たちは公園でボール遊びをしていた。それが何だったかは覚えていないけれど、私は逃げるウサギでも追う様に、ただただ白いボールを追いかけていた。
ポンッ、ボールが道路に飛び出る。こんな時、他の子だと一緒に飛び出しかねないから、ボールを取りに行くのは必ず私の役目と決められていた。
既に走り出していた私が追いつくことを諦めて速度を落とし、向かいの歩道にボールがたどり着いたころ、大きなトラックが交互に、まるで間を縫うように通って行く。
瞬間、ボールを見失う。
「あっ……」
トラックの覆いが解けると、そこにはスッケチブックを片手に、ボールを抱えた女学生の姿。襟と裾とにフリルのあしらってある純白のブラウス、シックな濃い藍色のベストに肌を隠すロングスカートの組み合わせが、当時の私にはとにかく大人びて見えた。
フワリ、ウエーブのかかった濡羽色の長髪が振られる。現れたのは透き通るような白い肌と艶やかな桜色の唇、影を落としそうな程に蓄えられた長いまつげ、吸い込まれそうな瞳……その美しさに幼い私は、言い様のない恐怖と感動とが混じった不思議な感覚に襲われた。
目を離せない……いえ、瞬きさえもできない。
536:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:17:17 dKvO9Gui
見たこともない美しい生き物が、一歩、また一歩とこちらに近づいてくる。
「これ、貴女のではなくて?」
艶めかしさに満ちた声、いえ、艶めかしさの塊が音に直されたもの。聞いただけで、まるで身体を撫でまわされた様な感覚……
「あ……」
ボールを渡されて、初めて正気に戻った。同時に、甘く柔らかい香りが鼻腔をくすぐる。香水ではない。この人の、肌自体の香り。
「もしかして、違ったのかしら?」
「い、いえ。あ、ありがとうございます!」
慌ててお礼を言うと、振り返りざまにボールを友達の方へ投げやった。
「お友達?」
「んぅ、ふぅ……」
耳元で言われ、背筋をぞくぞくとした物が走る。
「残念ね。お暇なら、手伝って貰いたかったのに」
「あ……」
手伝う……? 何を……?
いや、何でも良い、もう少しそばにいたい……
「あ、あの、大丈夫です!」
「本当? でも、お友達は?」
そっと指が頬を撫でる。まるで、飛切りに上等なシルクの布で頬を撫でられた様な、滑らかで優しい感触……
「いえ、ちゃんと断りますから……」
「そう。じゃあ、もしも手が空いたら向こうの噴水に来ていただけるかしら? あ、あの水が出ているところよ」
そう言って道路の向かいを指さすと、あの人はその方向へ歩いて行ってしまった。
その後姿は、見送る私にはまるでダンスのステップにさえ見えた。
537:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:18:25 dKvO9Gui
私に与えられたのは、絵のモデルと言う役目。言い換えれば、目の前の美しい人と少しの会話を楽しむ喜び。
「お名前は、なんと言うの?」
「す、鈴音です。中沢、鈴音」
「そう。スズネちゃん……きっと『鈴の音』で鈴音ちゃんね。いい名前だわ、貴女の声、とても奇麗ですものね」
そう言うこの人の声に比べて自分の声が良い物にはとても思えなかったけれど、とにかくお褒めの言葉を授かったのが嬉しかった。
「あ……え……」
名前を尋ねようとして、自分から話しかけるには何とお呼びして良いのか判らずに口を閉ざす。目の前の人を、他の人達と同じように『お姉さん』『お姉ちゃん』と呼ぶのには、ひどく抵抗があった。
「今日は演劇部……そうね、お遊戯で、お父様やお母様の前で絵本の真似などしなかった?
あんな事をしているのだけど、今度やる劇のイメージを掴む為に、街で自分の役に役立ちそうな物をスケッチする事になったの。私はお姫様の役をする事になったのだけれど、街中にそんな物が見つからなくて。そうしたら突然、目の前に可愛らしい女の子が現れたものだから」
お姫さま? 私が?
この人がお姫様なのは分かった。この人はそのまま『お姫様』と呼んでも問題のないくらい奇麗な人なのだから。だけれど、どうしてそんな人が自分を選んだのかが分からなかった。お姫様の絵が描きたいのなら、鏡の中を覗けば良いのに……
「けれど私、本当は王子様の役をやりたかったのよね」
溜息混じりにそう言ったのを聞いて、私は思わず口を開く。
「そんなの、変です!」
「あら、どうして?」
「だって、どう見てもお姫さまです。奇麗で、華やかで……」
その台詞には、クスリと笑みが返された。
538:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:18:58 dKvO9Gui
「でもね、物語のお姫様は殆どの場合、いつも幸せを待っているの。『何か素敵な事は起こらないかしら』『私の王子様が早く来ないかしら』って……でもね、私は誰かを幸せにしたいの。例えば、鈴音ちゃんみたいに可愛いお姫様を幸せにする王子様になりたいの」
嗚呼! 何と嬉しい言葉! この美しい人が、自分などを『可愛いお姫様』と呼び、剰え『幸せにしたい』などと言ってくださる!
身体が―特に太もものあたりが―何とも言えないくすぐったさに襲われる。
「さ、出来たわ。もう少し続けたかったけれど、もう時間が来てしまったみたい」
そう言って見せられた絵に描かれていた私は……これは、本当に私?
優しいタッチで描かれた鉛筆画の少女は、可愛らしく悪戯っぽい笑みを浮かべ、それでも失われることがない気品の様な物に満ちていて……その、なんと言うか……
「わ、私、こんなに素敵な人じゃありません!」
その一言に尽きた。
「あら、貴女はとても魅力的よ。さ、これで端の方にお名前を書いていただける?」
そう言われて、私は困った。
目の前にあるのは、完成した一つの美しさ。そこに自分の文字を、どうあがいたところで圧倒的に醜い物を入れてしまえば、それだけが浮いて折角の絵が台無しである。何より、自分の書いた名前がこの絵と一緒に見られるのは、恐ろしく恥ずかしい事だった。
「あの、これは私が書かない方が……」
「これは鈴音ちゃんと出合った思い出なのよ? 鈴音ちゃんに書いて頂かないと、意味がないの。お願いできるかしら?」
539:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:21:02 dKvO9Gui
嫌です、等とは言えるはずもない。だからせめて、簡単そうな『中沢』ではなく、難しそうに見える『鈴音』を平仮名で書いた。幾ら漢字が書けるはずが無いとは言え、単純そうに見える『中沢』を平仮名で書くのは恥ずかしくて出来なかった。
その点『鈴音』ならば、特に『鈴』の字は小学生の中学年でも難しいだろう。それならば、少しは平仮名で書いても恰好がつく、そう思ったから。(ただし、実際に小学生になって漢字を習い始めると、『鈴木』という名字のせいで皆すぐに覚えてしまったのだけど……)
私が絵の美しさと自分が書いた文字の汚さとの落差に恥ずかしさを覚えながらスケッチブックを渡すと、遠くにやはりベストとブラウスにロングスカートの女学生が見えた。
「お姉ぇーさまぁー、そろそろ帰りましょーう」
「はぁーい」
そう返事をされていた振り向きざま、私は柔らかな匂いに包まれ、頬にそっと何か柔らかで幸せな物が触れたのを感じた。
「次は唇にしてあげるわ。それまでに、もっと素敵なレディになるのよ」
その瞬間、先ほどの物が頬への接吻だったと気づき、頭にカァッと熱が上がってくる。
「今日はありがとう。御機嫌よう、きっとまた逢いましょう」
先ほどの接吻で腰を抜かされた私は、地べたにへたり込んでその後姿を見送った後、そのまま暫く幸せの裡に『お姉さま』と、聞いたばかりの素敵な呼び名を口の中で繰り返し続けたのでした……
540:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:22:08 dKvO9Gui
それから私は奇麗に平仮名を書く練習と、簡単な漢字の勉強を始めた。勿論、もう一度お姉さまに逢えた時のために。
学が無いと思われたくなくて外国、特にヨーロッパの国々の名前を覚え、常識がないと思われたくなくてニュースや歴史を学び、頭が悪いと思われぬ様に算数の勉強をして、
演劇をしているお姉さまと話をしようとシェークスピアを始めとして国内外の様々な文学作品を読み漁った。
そんな時に、私は一つの作品と出合う。
吉屋信子、『花物語』。
この作品であの『お姉さま』が上級生への呼び名だと知る。そうして、少女達の思いが次第に自分の思いと重なってくる……
恋。私は自分の気持があの『初恋』と呼ばれている物だとこの時に確信した。
「私があの人と同じ制服に身を包み、一目お会いして『お姉さま』と呼べたならばどんなに幸せでしょう」
やや言葉の色がうつったまま溜息混じりにそう漏らして、私は窓から外を眺めた。
季節は疾うに秋を過ぎ、冬さえも流れ、もう直ぐ春を迎えようとしていた。
541:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:23:16 dKvO9Gui
いつの間にかやって来ていた春も終わりを迎え、漸く待ちわびていた夏が来た。
去年、お姉さまと出合えた季節。それが夏。だから私は、もう一度出会えるならまた夏だと思っていた。
晴れの日は友達とあの公園で遊び、友達が帰った後もギリギリまで本を読んであの公園で過ごし、雨の日は、近くの図書館で勉強をしながらチラチラと窓越しにあの公園を眺める。そんな日々がずっと続いた。
一日、また一日と夏が過ぎていく中で、私はもどかしさと切なさと、悲しさを覚える。
私が無力感に打ちひしがれた頃、夏は終わりを迎えてしまう。
542:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:23:47 dKvO9Gui
それから去年と同じように秋を越し冬になり、両親は私に「私立の小学校を受けてみないか?」と一冊のパンフレットを差し出す。そこには、確かに見覚えのある制服。
まさか、そう思いながらパンフレットに載っている全ての写真を穴が空くほど見つめ続け、あの日のお姉さまと同じ制服に身を包んだ女学生達の写った写真を見つける。
直ぐに母に問うたところ、高等部の生徒の半数は小・中等部からエスカレータ式に上がってきた生徒らしい。だから、私がもし小等部に受かれば、高等部に入れることが決るのだと言う。
つまり、この試験に受かれば確実にお姉さまと同じ制服を着る事が出来る。
勿論、私がこの学校に入れたとしてもお姉さまに逢える訳はない。それどころか、恐らくお姉さまは既に卒業されてしまわれているかも知れない。だけど、あの制服を着ることで少しでもお姉さまを近くに感じる事が出来るのならば……私にはそれだけで十分だった。
そうして、季節はまた春へと廻っていく……
543:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 18:26:07 dKvO9Gui
以上です。
需要があれば小学生編~も書きますが、「嫌だ」「そんなスレじゃない」と言われたらこれで終わりますので。
544:名無しさん@秘密の花園
07/07/04 21:52:08 G7jqpOgT
>532氏
>283だけど。
お帰りなさい、それとも、はじめまして?
ネットへの接続環境はもう大丈夫ですか?
本編といっても、縁あってここまで書いているけれど、
本来は通りすがりにすぎないから、お気兼ねなく。
鈴音さんの話は興味深く読ませていただいたよ。
煩悩にまみれた自分とは全く異なり、凛として、澄んだ話を
書けるのが羨ましかったり。
できれば続きをキボンヌ。
545:名無しさん@秘密の花園
07/07/07 20:08:47 bNhh+giZ
>544氏
いえ、はじめましてではないです。でないとバーテンダーさんの名前が分からないので。
それと、俺も結局は煩悩まみれになので羨ましがる必要はないですw
じゃあ、とりあえず続きを書いてみますが、他の人はそれで良いのかな?
それとも、もしかしてあの頃の人はもういないのかな……
ついでにお姉様の名前とかも募集中。
546:名無しさん@秘密の花園
07/07/09 19:41:06 vtGq55I+
~鈴音編ーその2~
小学校に通い始めて2カ月もたったころ、既に学校は私にとって苦痛を伴う場所でしかなくなっていた。
始めは、いじめだと思っていた。
五月の初めごろだっただろうか? お気に入りだったピンク色のチェック柄をしたボールペンが筆箱の中から消えたのだ。
初めてのお小遣いで買ったものだったのでそれなりにショックだったけれど、探しても見つからなかったし、残りのインクも少なかったので寿命だと思って諦めた。
ところが翌日、机の上には奇麗に包装された如何にも高そうな万年筆。
子供心に理由もなくこんな物を受け取るのが悪い気がしてクラスの子達に聞いて回ってみたのだけれど、誰が置いたか分からないので返しようもなく……結局『きっとボールペンを借りた子が、壊したか何かでお詫びに置いたのだろう』と結論付けて受け取った。
けれど、似たような事が幾度となく続く。
その内に、『もしかしたら自分は誰かからいじめられていて、それを知った子が置いてくれているのではないか?』と思い始め、ぼんやりとした不安に包まれるようになった。
そんな時、私は聞いてはいけない事を聞いてしまう。
547:名無しさん@秘密の花園
07/07/09 19:42:21 vtGq55I+
「やっぱり、鈴音様にはあんな玩具よりも、私の送った本物の時計が似合ってらっしゃるわ」
放課後、教室に忘れ物を取りに来た私は、クラスの子のその言葉を聞いてドアにかけた手を止めた。
「私、鈴音様からハンカチをお借りした時、『洗って返しますから』と言って持ち帰ったの。それから『無くしましたので』と言ってもっと似合う物とすり替えたのですけど、家ではそのハンカチを眺めて、鈴音様の事を思い出すのですわ」
「あら、無くしてしまったと言って、鈴音様は怒りませんでしたの?」
「鈴音様は大人ですもの。笑って許してくださいましたわ」
「流石は私達の鈴音様よね」
そこまで聞いたところで、私は急いでその場を離れた。
体育の時間に時計が無くなったのも、貸した物が何時も返ってこないのも、全てクラスの子達が、いえ、もしかしたら違うクラスの子達も……私の周りの人間が組んでしていた事だったのだ。
確かに、それなら全て納得が行く。誰が何を盗っていこうとも、犯人など見付かるはずもなかったし、周りの子供達は私と違ってお金持ちの子供ばかりだったから、高価な物でも簡単に置いていける。それに、無くなるのは何時も『可愛らしい物』ばかり。
私がお姉さまに何時逢っても良い様な立ち振る舞いを心がけていたことで、周りの子達の目に私はとても素敵に、大人びて映っていたのだ。そして、その姿に何時しか憧れ、その内に皆で理想の『中沢鈴音』を作り上げる事を思いついた……
けれど、それが分かったところで何か出来るはずもない。
一般人が一人とお金持ちが多数では経済差があり過ぎる。幾ら子供用の物を買っても、次の日にはまた別の物に換えられてしまうだろう。私に似合う、黒や銀色をした大人用の物に……