15/12/31 14:06:27.18 CAP_USER.net
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日本では貧困が拡大している、と前回、書きました。
では、そもそも貧困とは何でしょうか。どれぐらいの数の人々が貧困状態なのでしょうか。
貧困の定義や指標については、いろいろな考え方がありますが、よく使われるのは、金銭的な指標を用いた
「絶対的貧困」と「相対的貧困」です。
アジアの一部や、アフリカのかなりの国々では、その日の食べ物に困る、まともな衣類や生活用品を買えない、
住まいもない、といった人々が大勢います。最低限の衣食住も満たせず、生きていくこと自体が厳しい状態、
それが「絶対的貧困」です。たとえば世界銀行は、1日の生活費が1.25ドル未満(物価水準や為替レートを
考慮した購買力平価換算)を指標とし、そのレベルの人口が2010年時点で12億人(20.6%)にのぼるとしています。
それに比べると、日本は全体としては経済的に豊かです。でも、物の値段や住まいの確保にかかる金額が違うし、
そもそも一般的な生活水準が違いますよね。
そこで、先進国や中進国では「相対的貧困」という考え方が用いられます。
「その社会のほとんどの人々が享受している習慣や行為ができない状態」という意味です。
現代の日本で、1日3食まともに食べられない、テレビも冷蔵庫も電話もない、という暮らしなら、
誰もが「貧乏」と思うでしょう。路上生活の場合、アルミ缶集めなどで月3万円ぐらい稼いでいる人はけっこういて、
世界銀行の絶対的貧困のラインに比べると、はるかに多いわけですが、その程度の収入で、
アパートを借りて普通に生活していくのは無理なのです。
6人に1人が相対的貧困
先進国・中進国が加盟する経済協力開発機構(OECD)は、相対的貧困の簡便な指標として、
1人あたり所得の中央値の半分というラインを用いています。
中央値というのは、所得の多い人から順番に並べて、人数的に真ん中に位置する値です。
たいていの国では、所得を調査すると、低所得の人の数が多く、高所得の人は少数です。
そんなふうに統計的な分布が偏っている場合、平均値ではなく、中央値を利用するほうが妥当とされています。
中央値の半分を貧困基準(貧困線)とし、年収がそれに満たない人を貧困ととらえるのです。
正確に言うと、1人あたり所得には「等価可処分所得」という数字を使います。税金や社会保険料を除いた
世帯の手取り収入(社会保障給付を含む)の合計を、世帯の人数の平方根で割って調整したものです。
日本では、民主党政権だった2011年以降、「国民生活基礎調査」のデータから計算した
相対的貧困率を厚生労働省が公表するようになりました。
昨年7月に公表された「平成25年国民生活基礎調査の概況」によると、2012年の中央値は年収手取り
244万円(月20万円ほど)で、貧困ラインはその半分の122万円(月10万円ほど)。
それを下回る貧困層の割合は16.1%でした。ほぼ6人に1人が貧困ということです。
赤ちゃんからお年寄りまで含めた計算なので、実数だと、約2000万人になります。
貧困が、決して、ひと握りの人たちだけの問題ではないことがわかります。
この貧困率は、所得だけで算出しており、資産を考慮していません。
しかし、同じ調査で世帯単位の貯蓄状況の回答を見ると、「貯蓄なし」の世帯が16.0%、「50万円未満」を合わせると20.9%にのぼっており、
所得の貧困層とおおむね重なると思われます。
しだいに上昇してきた貧困率
日本の相対的貧困率は、1985年に12.0%だったのが、年を追って上昇してきました。
17歳未満の子どもの貧困率もだんだん上がり、2012年は16.3%になりました
。表にすると、次のようになります(中央値・貧困線の単位は万円)。
気になるのは、名目の中央値・貧困線も、消費者物価指数の動向を加味した実質の中央値・貧困線も、
2000年代に入ってかなり下がっていることです。社会全体として所得水準が低下したわけです。
貧困線が下がると、同じ所得の人でも、貧困層にカウントされにくくなります。その点を考えると、
低所得の人々の現実の生活水準は、相対的貧困率の数字の動きで見るよりも、もっと厳しくなっているのではないでしょうか。