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高野和明「13階段」(講談社文庫)
2001年の江戸川乱歩賞受賞作。
傷害致死罪で服役した三上は仮釈放となるが、刑務官の南郷の依頼で、死刑執行間近の囚人の事件を
再調査する弁護士事務所の手伝いをすることに。死刑囚は記憶喪失だったが、事件当時に覚えていた
唯一の手掛かり「階段」をもとに調査を進める二人は、強盗殺人事件の真相へと肉薄してゆく。だが
死刑執行のタイムリミットも刻々と近付いてくる・・・。
最初の捜査で警察は何をしていたのかなあ。それに偶然が重なりすぎるし、死刑執行のタイムリミット
によるサスペンスの盛り上げも陳腐。三上の過去の或る事件と、それに対する葛藤なども、もうちょっ
と伏線を匂わせておく方が良いし、「階段」の件が明らかになる部分の盛り上がりも不発。あの死刑囚は
「階段」より××××を強烈に記憶するのが普通じゃないの?とも思いますが、それじゃタイトルになら
ないしなあ。
それでも、グイグイと読者を引っ張ってゆく力量はどこから来るのだろう?「サザエさん」みたいに、マン
ネリの題材でも面白いものは面白いということか、或いは「死刑執行」というのは、いつまでも読者を惹き
付け続ける、切り札のテーマということか。
なお、例の依頼人については上手いと思いました。実現性には問題あるけど、或る小道具について伏線も
張られているし。あと、ラストの南郷のセリフも余韻を残して良い感じ。