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カンヌ国際映画祭(5月12~23日)を初めて取材した。世界最大の映画祭とされ、最先端の映画が集まってくる。
受賞作の多くは世界の注目を集め、これまで日本でも多くが公開されてきた。しかし今回、閉幕直後に聞いた限りでは、
賞を競った出品作19本のうち、日本で公開が決まっているのは日本映画「アウトレイジ」だけだという。
作品の質が劣っているのではない。日本では、カンヌ出品作のような映画は観客が激減して商売にならなくなり、
配給会社が買い付けを控えているのだ。数字の上では好調な日本映画界の、負の一面を目のあたりにした思いだ。
こうした映画は、日本では、単館(アート)系と言われる映画館が上映の場だった。
その多くは、低予算ながらも、創作への強い意志や、人間への鋭いまなざしが詰まっている。人の心や、場合によっては
社会を動かすきっかけにもなる。多様な社会や文化、ものの見方を知る上で大きな役割を担ってきたと思う。
74年に東京・岩波ホールがこうした映画の上映を始めてから、同様の映画館が次々と生まれ、単館系と呼ばれるように
なった。80~90年代には若者たちの間で、そこで最新の洋画をいち早く見ることがファッションとされ、ブームとも
いえる人気を得ていた。
しかしここ数年、こうした映画館から「お客が大幅に減少している。特に若い人が足を運んでくれない」といった声を
聞くようになった。若者たちの間で、単館系映画を見たと言うと、友達から「変わってるね」と言われるという。
若者の芸術や社会への関心が薄れ、分かりにくい映画を敬遠しているようなのだ。
映画界全体では、観客はむしろ増えている。09年の総興行収入は前年比5・7%増の2060億円と、史上2番目を
記録した。だが多くの人を集めるのは、テレビドラマをスケールアップした映画ばかり。昨年、興行収入85億円の
大ヒットになった「ROOKIES-卒業-」などは、説明過多で「ここで泣きなさい」と観客に押し付けているように思う。
そんな映画があってもいいが、そればかりになってしまうことが心配だ。
TITLE:- 毎日jp(毎日新聞)
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