10/07/18 21:58:54 IfdOhoFn
ボクがまだ仔狐だったころから、大人の狐たちは高い枝に飛びついてブドウを食べるのが当たり前だった。
大人の狐は『ブドウを食べないと真の幸せは得られない』『ブドウを食べない狐は歪んでる』『据膳ブドウを食わぬは狐の恥』なんて言う。
ボク達の処のブドウは結構変わっていて、実が熟すほど枝も高くなるし、実は再生しないけど皮はすぐに再生する。
だから、齧ってみないと中身があるかどうかさえ判らないし、高い枝のブドウは食べ残しだったり、腐っていたりする確率も高い。
だから皆なるべく低い枝のブドウを狙うし、ブドウを食べるのは完全に自由だから、熟したブドウはすぐに食べ残しのブドウになるんだ。
想像してみてよ、他の狐の唾液まみれの食い散らかされたブドウ…。そんなブドウ、ボクは据膳でも食べたくないよ。
だから、ボクは確かに狐だけど、ブドウを食べる自分を想像することさえできない。
でも、狐のほとんどは結構果敢に飛びついている。食べ残しや腐ったブドウを食べるハメになっても皆諦めないんだ。
美味しいブドウを食べた狐の話(真偽の程は定かではない)を信じて、次こそはおいしいブドウなんじゃないかと飛びつき続けるんだ。
自分は美味しいブドウを食べたこともないけど、皆が飛びつきつづけるのはブドウが美味しいからだ、とブドウを擁護する狐すら居る程だ。
そんな風にブドウを食べ続けた仲間達はほぼ例外なく、尻尾と顔つきが貧相になって、喋る言葉も変わり、ホントに頭が悪くなり、
鎖に繋がれ獲物を取り上げられるのが平気になり、僅かな残飯で満足するようになっていく。狐をやめて犬になっちゃうんだね。
犬になった狐達は自分が幸せだと主張するし、それが真の幸せとかの主張につながるらしいんだけど、説得力がなさすぎて、もう笑うしかない。
ブドウが旨いか不味いかなんてボクには判らないし、判りたくもない。ブドウがなくても何も困らないし、ブドウには何の興味もないからね。
ボクは兎や鶏なんかを食べられれば、それで満足なんだ。