10/04/14 18:53:09 D5YioVM40
「あ、ジョニー。気がついたんだ」
「あ じゃないわよ全くもう。そうそう、アタシも変な夢を見たの。
夢の中で何か言われた気がするんだけど何て言われたのかわかんない」
「ふむ、温泉に入ってウィルスの活性具合が変わったのかな。
ほら、ジェーニャもごらんの通りまた女性化してるんだ」
そこにカナダの飼育員がやってきた。
「やぁジェフ、休暇が取れたんでブ・・・いや、ジェレミーと一緒に日本に来たよ。
いろいろと大変だったみたいだね、力になれなくて申し訳ない」
「いや、来てくれてありがとう。嬉しいよ。
ところでジェーニャの具合がまだおかしいんだ。
眠ると女性化して、起きると男性に戻るのを繰り返してる。
一体彼に何が起こってるんだろう、わかるかい?」
飼育員はプルシェン子をじっと見ていた。
そして、ジョニ子とバトルに向かって静かな口調で話し始めた。
169:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 19:17:40 t6QfiPrDO
バトルやジョニ子が話す脇では
「…そういえば布袋さんとボロドゥリン君がいない、探さないと!」
小塚が言うとべるるんも続いて
「閉じ込められた方の老紳士も探さないといけないよ。」
と言い、探索隊を組む話になっていた。
「ちょっと待ってくれ!」
「パトリック!?」
Pチャンが何を言うのかに皆集中した。
「Sex Bomb祭はどうなったんだ!」
一同ずっこけた。
「ずっと練習してきた成果を見せたいんだ!」
「One Banana祭には出来ないのか?」
ヤグもまだ諦めてないようだ。
「うーん、プルシェンコさんはどうしよう?
ユカさんがいるホテルにでも運ぼうか?」
人に戻った大輔の問いに
「あ、じゃあ俺が行こっかな」
話を聞いたアボットが手をあげる。
彼はただ単にユカさんと会うついでにプルも運んでやろうとしただけなのだが…。
「(てめえ、いきなりしゃしゃり出てくんじゃねぇ…!)」
今まで見たことのない表情でガンつけてくるバトルを見て
「Nooooo!
冗談だよ冗談!Ahaha…!」
笑ってなかった事にした。
170:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 19:48:53 D5YioVM40
飼育員の話はにわかには信じられないものだった。
バトルはショックでかなり気が動転していた。
そこにアボットが手を挙げたもんだから
つい顔が険しくなってしまったようだ。
・・・もちろんそれ以外の理由もあるわけだが。
ジョニ子もその話を聞いてから何か様子がおかしい。
バトルはプルシェン子をお姫様だっこして、
飼育員と共にユカさんのいるホテルに向かった。
それを見送った後、ジョニ子が突然倒れた。
音もなくふわりと。
驚いて駆け寄ったジュベールはジョニ子の体に異変が起こっているのを見つけた。
「くそっ、温泉が逆効果になったんじゃないだろうな!」
171:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 20:38:41 wqn7STJfO
ホテルのラウンジでは、嗣彦を通してお互いの所在を知った光彦とユカが、お茶を飲みながら話していた。
と、にわかにロビーのホテルマンの動きがせわしくなった。何かあったようだ。
ユカ「ちょっと見てきます。こちらにいて下さい。」
172:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 20:44:35 E3r59nd90
275 :氷上の名無しさん@実況厳禁 :2010/04/01(木) 16:20:26 ID:Ij/YxvIGO
>>270
自分もPちゃんひそかに気になってたw
出てきてまたみんなを開いた瞳孔で見つめたらいいよ!
ここに来るとみんな好きになるなぁ。
次回、フィギュアスケーターズの華麗ないちにち
第○○回!
ジェフです!!
今まで散々手間かけ・・・いやお世話した・・・・ジョニー・・・
このスレのDIVA!!しかし・・・・・・今、僕達の目の前にいるきみは・・・
僕達が知らない・・・・・新しい君の姿・・・・・
次回
『ピカレスク----JOKERの仮面』
まさか・・・・嘘だと言ってくれ!!!!
ジョニ子さんとプルシェン子さんのガールズトークも冴え渡…ちょ、ちょっと、二人とも何やってるんですかー?!
いっけない、今日はここまで、またね~!
エアロ~、ティアラ~、小町~!ばいばーい!
173:172
10/04/14 20:46:15 E3r59nd90
すみません、予告ネタ参考したのバレタ・・・
ごめんなさい
174:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 20:48:30 FP4IVYbMO
飼育員は語った。
「新型ウィルスは、スケーターたちに抗体を作る。
その抗体を抽出し、投与された人間は、その力を手に入れることができる。
……と彼らは考えているようだ。
新型ウィルスは人間に適性化されたもので、クリプトン人には毒になる。
温泉で体が活性化したのはいいが、ウィルスまで活性化してしまったのでは……。
特に絶望を深く感じている者には、さらに強く作用するだろう。
治療法は……まだ……」
バトルは唇を噛んだ。
スケーターなら誰でも絶望を感じたことがある。
中でも重病化した者……真央、信成……皆、絶望の記憶が新しい者ばかりだ。
プルシェンコもそうだろう。
(なんとかしなきゃ、でもどうやって?)
隣のジョニーが何かせわしなく言っているのを聞き流しながら、バトルは焦った。
彼もジョニ子自身も、まだ気付いてきない。
……ジョニ子の血を輸血されたべるるんが、快方に向かったという事実の意味を。
175:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 20:56:33 wqn7STJfO
大輔と崇彦がとりあえずひとつひとつ楽屋のドアを開けていくと、ドアが壊れている楽屋と、その隣の楽屋にメモが置いてあった。
「小塚くんへ
隣の部屋で縛られていたおじいさんを連れて、とりあえずホテルの部屋に戻ります。ギターも一緒です。
布袋寅泰」
崇彦「ああ、良かった~、布袋さんとボロドゥリン、老紳士も無事だったよ~。」
大輔「どうやら敵もスケーター以外の脱出は見逃したみたいだね。」
大輔、小塚は顔を見合せて安堵のため息をついた。
176:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 21:18:24 wqn7STJfO
と、ふいに美姫の携帯が鳴った。
美姫「どうもこんにちはー。ノブ?いるわよ。今かわるね。…殿、濃姫さまからよ。」
信成「…なにっ、濃姫となっ?」
信成は携帯の相手の声を聞いた途端、マイハニーモード全開で、先祖から信成に戻っていた。
一気にリンクの温度が上がり、氷柱の残骸はどんどん溶け出した。
柱だと思われたまま助け出してもらえなかったライサも、氷が溶けてなんとか自力で脱出出来た。喜びを与一スピンで表現するライサ。
177:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 21:36:58 wmOKT7UgO
ライサまだ凍ってたのかwww
178:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 22:20:41 ek1XIfsZ0
経営者はマネキンを抱えて階段を上がる。
屋上までもう少し、うう、膝が痛い、腰が痛い。
ムロズさんも知っていた、経営者は本当に老人の体になりつつあることを。
「休憩しよう」と言ってやりたいけど、どうやって伝えたらいいんだろう。
そもそもどうして、俺に視覚と聴覚が残っていることが分かったんだろうな…
一方廊下では、招き○こ○ックが猫とアヒルに再分裂できずにジタバタ暴れ回っている
アルパカが困った顔をしながら、前脚で突いていた
179:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 22:22:30 TwbNLv0s0
「未来ちゃんの持ってる『あの本』は、中身じゃなくて、
本そのものが鍵なんだって、大ちゃん、前に言ってたよね?」
リンクに向かう通路を歩きながら、崇彦は大輔に尋ねた。
「うん。そのことも、夢の中で言われたような気がする」
「大ちゃん。俺は昔、長野で、あの老紳士に会ってる。彼は
あのとき、本を読んでいた」
バトルから祖父の名前を聞いたときから、崇彦の心には
引っかかっていることがあったのだ。
謎のメッセージ。そしてたびたび口に出されるクリプトン星の名前。
崇彦が祖父の部屋で、奇妙な模様が描かれた紙を見つけたのは、
彼が小学校に入る前のことだった。
衣装のデザインにも似た不思議な模様を夢中でチラシの裏に書
き写していると、祖父の光彦がそれは模様ではなく文字だと教えて
くれたのだ。日本ではない、遠い遠い場所の言葉なのだと。その場所の
名前は忘れてしまったが、何となくアメリカの大統領みたいだなと
思ったことは覚えている。
星、スケート、氷。
祖父はその不思議な言葉の読み方を、少しだけ教えてくれたものの、
その言葉のことは人に話してはならないと言った。一部の人だけにしか
使えない、秘密の言葉なのだと。
だが、数年後、崇彦は約束を破ってしまう。98年の長野五輪。彼は
祖父の部屋以外の場所で、初めてその文字を見つけたのだ。
「へんしん」
本を読んでいた老紳士は、驚いて顔を上げた。9歳の崇彦は得意気に笑う。
「坊やはこの文字が読めるのかい?」
「うん。おじいちゃんに、少しだけ教えてもらったんだ。……あっ、
いけない。文字のこと、人に言っちゃいけないんだった。おじさん、
俺がこの文字を読めること、秘密にしてくれる?」
老紳士が何と答えたのか、あとのことは覚えていない。高熱を
出して入院したことも、彼はまったく覚えていなかったのだ。
老紳士が託したスケート靴と本。その謎を解き明かすことが、
9歳の崇彦が言っていた「封印」を解く鍵なのかもしれない。
リンクの戻るなり、二人はサウナのような熱気と湿気に顔をしかめた。
「うわっ、暑っ! 未来ちゃん。『あの本』のカバーを外してくれないか。
それと、俺のスケート靴を取ってくれ」
「え? うん……」
未来は書店のブックカバーと、出版社の文庫カバーを取り外した。
「やっぱり……!」
カバーの外された本の表紙と、崇彦のスケート靴の踵の部分に、
クリプトン文字が刻まれていた。
180:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 22:23:45 wqn7STJfO
美姫「暑いわ~」
美姫はミンクのコートを脱ぐと、傍らの椅子にかけた。
その椅子には、昨夜の寝不足からすやすや眠るトイプー真央がうずくまっていた。
ミンクのコート=タラソワは、スケパシーでトイプー真央に話しかけた。
皮肉にも、真央は初めて通訳抜きでタラソワの話を完全に理解出来た。
タラソワ「マオ…疲れたでしょう…
あなたは世界選手権までずっと走り続けて来た…
ソチヘ向けてこれからという時にトイプードルになって思うように練習が出来ないのは、さぞかしつらいでしょう…
でもマオ、この体験はあなたのこれからのスケーターとしての人生を大きく変える…
この経験と、これから待っている恋…これがどんなに練習しても得られなかった神様からのレッスンなのよ…
私はいつだってあなたを気にかけているわ…あなたはいつまでも私の愛する生徒よ、マオ。」
真央「タチアナ先生!」
タラソワ「マオ!」
美姫「真央!タラソワ先生?」
2人は同時に人間に戻っていた。
181:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 22:25:32 D5YioVM40
そこはもやがかかった草原。
短い夏を謳歌するかのように花が咲き、鳥が歌う。
子どもの手を引いて走っている。
自分も子どもだ、同じくらいの大きさの手。
遊んでいるのではない。何かから必死に逃げている。
大人の手が伸びてくる。
「おいで」
「仕方がないんだ、しきたりは守らなくては」
「大丈夫、明日になったら忘れるから」
気がつくとひとりだった。大声で泣いた。
この世の終わりくらいの勢いで、泣いた。
プルシェンコは目を覚ました。
悪い夢だ。だけどあの風景を僕は確かに知っている。
182:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 22:26:48 D5YioVM40
「大丈夫か、ジェーニャ」
「あ、ああ、ジェフか。また変な夢を見ていたよ」
「だいぶうなされていたよ。ウィルスがまた動き出したのかな」
「そうかもな。ところでここはどこだ?僕はリンクにいたはずなのに」
「ここは市内のホテルだ。少しゆっくり休むといい」
飼育員が心配そうに声をかけた。
「ジェーニャ。その夢の話を聞かせてくれないか?」
「どうして?」
「ウィルスは宿主の潜在意識に働きかけて夢を見せる。
変身を伴う場合もその潜在意識に沿った形になるのが一般的だ」
「ああ、わかった」
プルシェンコは自分が見た不思議な夢を語った。
話しながら彼は以前に見た、エフゲーニヤが泣き叫ぶ夢と対をなしている事に気付いた。
(※前スレ809)
183:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 23:05:55 CCZrxdA20
二つのクリプトン文字を見比べる崇彦たち。
「わかるか?」
大輔の問われたが崇彦は静かに首を横に振った。
「・・・・あの時は・・・たしかにこの文字を読めていた。
でも、今はこの文字のどこまでが区切りかも分らない。」
黙り込む一同。
「・・・・・すけぱしー」
「?」
未来の呟きに大輔が反応する。
「どういう意味?」
「すけーとをあいし、あいされたものだけがこのほんのしょゆうけんをえる・・・・・」
「み、未来ちゃん?」
彼女のつぶやく様子がおかしいことに気づいた。
未来は本を抱きしめたまま、なおも呟き続ける。
「ぜつぼうとはのぞみをたつこと。きぼうとはのぞみを・・・・・」
そこまで呟いてきた彼女は少し黙り込んだあと、ゆっくりと気を失っていった。
「未来ちゃん!!」
「しっかりして!!」
「未来!!目を開けろ!!!」
「すぐにホテルへ!!」
大輔が未来を抱きかかえ、ホテルへと急いでいった。
184:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 23:06:35 wqn7STJfO
少し前。
ユカがホテルのロビーに行くと、愛弟子ジェレミーと共にプルシェンコ、バトル、ジョニーがいた。
あわててユカが光彦に伝えると、とりあえず光彦が最上階のスイートルームを3部屋押さえて、プルシェンコ、ジョニーを休ませる事にした。
3部屋の理由は、湯布院のT温泉と同じだ。リンクのスケーターズの疲労に配慮して、多めに押さえた。
ちなみに最上階のもう一部屋は、言うまでもなく、布袋、ボロドゥリン、老紳士がいた。これで4部屋しかない最上階は事実上貸し切りとなった。
チェックインが落ち着いたところで、光彦とユカがあらかじめ嗣彦から聞いていた布袋の部屋に挨拶に行った。
布袋はもう一人客がベッドで休んでいる事を伝えてから、リビングに光彦とユカを通した。
185:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 23:06:59 vE/rGq6C0
目が覚めたら鼻血ブー子決定だな、この未来
186:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 23:26:39 wqn7STJfO
>>184
ちなみにリョーシャは、ホテルに入るなり急に腹痛を覚えてトイレに行った。その間に一行がチェックインしてしまい、ロビーで1人ポツンと途方に暮れていた。
結局ジェーニャはジェレミーが運んだ。
気を取り直したリョーシャは、ホテルのフロア案内を見ながら寿司レストランを発見し、一気にテンションが上がった。
そこに未来を担いだ大輔と小塚が入って来た。
リョーシャは大輔と交代して未来を担ぎ、とりあえず一行は布袋の部屋に向かった。
187:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 23:54:45 D5YioVM40
プルシェンコは話が終わると、再び眠りについた。
どうやらかなり悪化しているらしい。
夢の話を聞き終えた飼育員は頭を抱えていた。
「まさかあの記憶が残っていたとは・・・」
それは、地球に移住する以前にプルシェンコが経験した、
辛く悲しい出来事の記憶の欠片だった。
そしてプルシェンコはまた悪夢を見ていた。
一面の氷原。真冬のロシアの風景みたいだ。
遠くに誰かいる。手招きをしている。
そっちに行ってはいけない気がするがなぜか逆らえない。
「あなたが殺した」
・・・いつか僕を消した、僕によく似た顔の女。
「あなたがいなければ消されずに済んだのに」
・・・なんの事?僕には記憶がないんだ。
「今あなたが消えれば戻れる」
・・・僕が消えれば? 誰の事だろう。思い出せない。
「まだわからないの?おバカさん」
・・・君は僕だよね?だけどどうしてそんなに冷たい目をしているの?
「思い出せなくても関係ないわ。さあ、消えちゃいなさいよ」
女は冷たい手をプルシェンコの頬にあて、顔を寄せてキスをした。
188:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/14 23:56:15 wqn7STJfO
崇彦「じいちゃん!なんでここに?」
ついさっき話していた光彦が布袋の部屋でお茶を飲んでいる事に、崇彦は混乱せずにはいられなかった。
光彦「湯布院に湯治に行った帰りでな。」
崇彦「あーもう!とぼけないでよじいちゃん!…そうだ、じいちゃんに読んで欲しいものがあるんだ!」
ユカ「長くなりそうね…とりあえず、未来を休ませなきゃね^ ^」
ユカは、ヤグに未来を運ぶ女の子部屋を案内してから、ヤグと大輔にとりあえずジョニ子とプルシェン子、バトルとジェレミーの4人がいる部屋を案内した。
ユカに未来を任せて、大輔は再び布袋の部屋に戻った。ヤグはプルの部屋に落ち着き、ジェレミーはヤグと交代すると、やっと未来の部屋に師匠を訪ねた。
189:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 00:02:20 wqn7STJfO
ヤグがスイートルームの一番奥のプルの部屋にそっと入ると、飼育員とプルが夢の話をしている途中だった。
190:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 00:22:59 wAu6VAiAO
飼育員とジェーニャの話に聞き耳をたてるヤグ。
(やっぱりあれが関係してるのか…?)
ジェーニャが再び眠るのを見計らって部屋に入る。
眠るジェーニャは完全に女性化していた。
バトルがヤグに尋ねた。
「今ジェーニャの夢の話を聞いたんだけど…女の子が泣いてるっていう。
リョーシャはなにか心当たりないの?」
「ああ…こいつはな、当初の予定じゃ元々地球に降りたら女になるはずだったんだよ。
星にいたときも性別こそないが完全に女みたいだったしな。
だけど結局男になることになっちまって、おかげで俺様と戦うハメになった。
まあそれはともかく…地球で無事に男として成長するためには女としての自我が邪魔だったんだな。
だから…」
「だから?」
「…いや、なんでもない」
「なんだよ!わかってることがあるなら教えてくれなきゃ!ジェーニャがこのままでもいいのか!?」
思わずヤグに詰め寄るバトル。…と、それを飼育員が横から制した。
「しかたありません、ヤグディンさん。このままプルシェンコさんを放っておくわけにはいきません。
それにジョニーさんも…。いいでしょう、本当のことをお話しましょう…」
191:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 00:24:21 26RexdELO
室内温度が上昇し、リンクは元の水の状態になってしまったが
「信成先輩、10月にはパパですね!おめでとうございます!」
とユズルがさわやかに言うと、なぜかブリザードが吹き荒れてリンクは見事に整氷された。
「やった~、これでSexBombが踊れる!」
Pちゃんは無邪気に喜んだ。
「そうだユズル、君は確かプルシェンコさんから直々に振付けを教えてもらったんだよな?
俺のは自己流だから、教えてくれよ。」
その横で、リベンジを目論むライサも熱い視線をユズルに向けていたが、黒(ry
192:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 00:34:48 NsdjsuR70
経営者が突然顔を歪め、腰を押さえた。
やばい、ぎっくり腰だ!ひとまず俺を下ろして座れよ!どうせ通じてないんだろうけどさっ
マネキンと言ったって、けっこう重いのだ。
階下から、アヒルと猫の絶叫が耳をつんざいた。
老人は驚いてよろけ、手を滑らせてマネキンを落としてしまった!
193:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 00:45:50 26RexdELO
信成も気を取り直して
「俺も俺もSexBomb教えて~!」
とユズルに言ったが、
(チャックは大丈夫なんだろうか?)
(洒落になってない気が…)
というツッコミをユズルが飲み込んだのは、内緒である。
194:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 00:47:59 NmVvypy90
「実はジェーニャは・・・双子だったんだよ」
ヤグディンは忌まわしい事を思い出すかのように言った。
「片方は身体能力が高いタイプ、もう片方は精神力が高いタイプだった。
クリプトン星では双子が生まれるというのは不吉な事で、
生まれてすぐに片方を処分するのがならわしなんだ。
まぁたいがいは片方が秘密裏に里子に出され、別々に育てられるんだが。
だがジェーニャの親はそれを拒んで、一緒に育てたんだ」
「ところが、長老達がそれを問題視して、片方を処分するように命令したのです。
ふたりはとても仲が良く、いつも一緒に遊んでいました。
もちろん両親は拒んだのですが、投獄されてしまって・・・
その間に、長老達が差し向けた村の青年団が・・・」
ヤグディンは忌々しそうに首を振った。
「生き残ったのは身体能力の高い方だ。いつもへらへらしてるヤツだった。
もちろん、長老は記憶を操作した筈なんだが、それから全然笑わなくなっちまったんだ。
で、あいつは自分から地球行きを志願したんだ」
「・・・実は、リョーシャは知らないみたいですけど、
本当は身体能力の高い方を処分するよう命令されていたんです。
実は、長老には巫女の役割をする子どもが必要だったんですよ。
その子が自らの命を投げ出す形で彼をかばったんです」
「そうか・・・とにかく、あいつの親が投獄される前にオレにカプセルを託していたんだ。
地球に行ったらこのウィルスを使え、って。
消された方の子どもの遺伝子がコピーされてたんだろうな、きっと」
195:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 01:02:13 KMY1SzR7O
布袋の部屋、プル達の部屋、女子部屋、そして残る部屋は一つ。
そこで休憩しようと数人の男子スケーター達が集まっていた。
大輔や崇彦のようにウイルスの謎解きには特に参加していない。
Sex Bomb祭は不参加のようだ。
べるるん「アドリアン、体調はどうだい?変じゃないかい?」
ADSL「大丈夫です…、変身のコツが何か掴めたっていうか…。
それより先輩こそ何か血が入ったものを補給しないといけないんじゃないですか?
外で徹夜じゃ大変だったでしょうし。」
トラ「…俺達も腹へったな。
よし、ホテルに寿司レストランがあったからそこで寿司食べよう、寿司!」
何だか暗い雰囲気を吹き飛ばそうと、トラなりの提案。
テン「わーい、寿司だー!」
ミハル「先輩のおごりか~w太っ腹だなぁw」
べるるん「いいのかいトマシュ?
じゃあバサシってやつが良さそうかな~。」
ADSL「日本の寿司(ニヤニヤ)、ごちになりますトマシュさん!」
「え、俺のおごり…まぁ、いいか!よし、行こう!
あ、他の奴らには気づかれないようにな!」
彼らは隠密に寿司レストランに移動した。
幸いな事に気づかれずに移動出来たようだ。
というのも、寿司に関して地獄耳なロシア人二人が今立て込んでいるからかもしれない。
196:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 01:04:05 NmVvypy90
バトルは呆然としていた。
「なんつーか、あいつってわけわかんないだろ?
普段はいつもヘラヘラしてて、ふざけたガキみたいなヤツなのに
時々妙に哲学的な事を言い出したり、ニジンスキーと交信したり・・・
女っぽかったり、男っぽかったり色々だ。
あいつの中に生きてる片割れが時々顔を出してるのかもな」
「ジェーニャが熱で星の記憶をなくした時、復元せずにそのままにしておいたのは
僕とリョーシャで交信して話し合って決めた事なんです。
あまりにも辛い記憶だろうから、って」
「ミーシンコーチの所で再会して、ジェーニャがあいつだって解った時はたまげたよ。
そして、昔みたいに明るいヤツに戻っていてちょっと安心した。
そうでなきゃどう接触したらいいかわからないくらい落ち込んでたんだ、あいつは」
197:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 01:08:58 NsdjsuR70
未亡人は、なにか上の方から大きなものが落ちたことに気づき、慌てて階段を上がっていった
あっちかしら?屋上に向かう階段?
二人を心配したりっぽんが背後をふわふわと飛んでいるのがなんとなく気味悪いけど、
そんなこと言ってられない。ていうか失礼すぎて言えない。
アリソンはまだアメリカの家で熱にうなされている。
トリノでの別れ際、キスをしようとしたら突然彼の顔がうさんくさい東洋人になった
なんか気持ち悪い、誰よあんた。
性格も声も変わって、変に貧乏くさくなってしまったような気がした
その後も彼はときどき電話してきた、でもだんだん本来のミハルらしさが失われてきたのがわかった
私はもう、強気でかっこいいミハルには二度と会えないの…?
そこでケータイが鳴った。ミハルからだ。
これで戻っていなかったら、気持ちに折り合いを付けて新しい恋を探そう。
198:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 01:12:44 NmVvypy90
>194
自己レス
スイマセン、一部推敲前のままでした。
誤)地球に行ったらこのウィルスを使え、って。
正)性別を決める時が来たらこのウィルスを渡してくれ、って。
199:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 01:39:31 WnT55ah0O
スウェーデン・チェコメンバーいいなw
あとリョーシャ先輩がなんだかイイ人になってる…!
200:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 01:53:57 KMY1SzR7O
レストランに着いたすぐ、ミハルはアメリカにいる彼女と電話しだした。
正直真横で後輩とその彼女のイチャイチャを聞かされても微妙だ。
てかこいつ人間に戻ったのは俺のおかげのようなもんなのに感謝の言葉ひとつもないじゃないか。
…まさか二枠で全部チャラだと思ってないだろうな。
…ちくしょー!俺だって後でペシャラたんに電話するもんね!
妙な張り合いをするチェコ先輩後輩をよそに、ADSLとテン君はムシャムシャお寿司を食べていた。
「ゼリーよりよっぽどうまい。」
「よく分からないけどここに来れてラッキーです。」
熊本名物の馬刺しを食べながら二人を見て微笑むべるるん。
ふと、ある事が気になった。
「トマシュ、僕に輸血された血はジョニーのものだよね?」
「?あぁ、確かにそうだ。
ユカリがそういって血を持ってきたんだ。
アルバンと一緒に見ていたから恐らく間違いない、それがどうかしたのか?」
不思議そうに答えるトラ。
「…なぜユカリはわざわざジョニーの血を多めに採ったんだろう?
検査ならあんなにいらないはずだ。
そして何故それを僕に輸血したのか…?
正直培養液よりよっぽど効き目があった…。」
べるるんは考え込んだ。
余談だが、トラの鉢巻きを見て職人さんは笑いをこらえるのに必死である。
201:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 02:06:25 YrwTPRsE0
その頃、リューキンはライサの机から写真を見つけていた。
URLリンク(uproda.2ch-library.com)
「ああ、これエヴァンが言ってたASO山の・・・」
誰が撮っていたのか、前スレ“宿命のライバル対決”の写真である。
他の写真にライサがベルビンを召還しているシーンが写っていた。
リューキンはそれをスキャナで取り込み、引き伸ばして額縁に入れ
居間のテーブルの上に置いた。そばのソファに座ってコーヒーを飲む。
そしてどの技をどの順番で繰り出すか計画を立てるのであった。 ライサ憐れ。
202:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 02:39:41 NsdjsuR70
べるるんが考え込むのをよそに、トラは人間に戻ったらぜひとも聞いてみたいと思ったことを口に出してみた
「アドリアン、お前自由に変身できるって言ってたよな」
「できますよ」
「蛇にもまたなれるんだっけ」
「なれます」
「年齢や性別、人種とか変えられたら楽しくない?」
「試してるところです、うまくやれば蛇以上に便利かもしれない」
ミハルは電話の向こうの彼女がなぜ大泣きしているのかさっぱり理解できなかったが、
愛してる、愛してると何度も念を押すように言っていた
歯ぎしりするトラの横でアドリアンは
「女になったら俺美人になれるかな」などと考えながらアナゴのお寿司を口に入れた
203:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 02:45:01 TbqJYFSm0
「信成殿」
侍クリスは話しかけた。たとえ‥
SexBombの練習に夢中なPチャン、ユズル、信成達に今話しかけるのは絶対無理と解っていても。
クリスは『何故、敵はいとも簡単に退散したのか?』に拘っていた。
しかも拘束した老紳士を残して。
「もくてき」であった「我々」の捕獲にも失敗している。
ヤグディン殿の話によると、小塚殿のスケータースーツ、此処の特殊な製氷機(攻撃能力あり)は、
地球の技術ではないと言う。
SexBombもまた、くりぷとん星という場所で執り行われていた儀式。うぃるすに感染した地球人もまた、
この儀式にて浄化される‥‥
‥これは。 謎はまだ多く残されており、それらは今は解けないとしても。
「敵はまた近かじか此処に戻ってくるのには間違いない、という拙者の推理でござる。」
何時しか話に耳を傾けていた三人は、大きく頷いた。
204:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 10:04:04 8ccwlOzv0
未来が持っていたカフカの本『変身』
その本を手にとって中身を確かめる光彦じいちゃん。
「・・・カバーはいつはずした?」
「ついさっき。ここにあるよ」
「ならよい。それは絶対なくすなよ。」
「う、うん、わかった。」
有無を言わさぬ声に驚く崇彦。
しばらく本を眺めていた光彦は口を開いた。
「これは・・・・医学書じゃ。」
「?!」
「もしかして、例のウィルスの!」
「その通り。」
大輔と崇彦は顔を綻ばせた。
この本を解読すればみんなを完治させることが出来る。
「だが、わしにはこの本は約せん。」
だが、光彦じいちゃんは難しい顔をしていった。
「なんで!!」
「わしには医学の知識がない。専門用語が分らなければ意味がないじゃろ。」
最もといえば最もな意見だ。
「そうか・・・じゃぁ、医学に精通したスタッフが・・・・あっ!!!」
何かを思い出した大輔。
「あの飼育員は!彼ならあの星に人だし培養液のレシピも知ってる。もしかしたら・・・」
「そうか・・・・・・そうだよね。」
「うむ・・・一理あるな。」
この本をあの飼育員に託す。
3人の意見は決まった。
「あと、さっきのブックカバーは絶対なくすな!アレはクリプトン文字を他の星人の目から逸らせる為のものだ。」
「そうなんだ。¢(ーー;メモシトク・・・」
崇彦は改めて本を見た。
その文字は未来が持っていたときは英語だったが、今は明らかに地球上では知られていない文字が並んでいた・・・・
205:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 11:04:54 26RexdELO
奥の部屋でブログを更新していた布袋は
「皆さんお腹空きませんか?良かったら、ルームサービスでもとりません?」
とリビングのメンバーにメニューを渡した後、奥の部屋で休んでいる老紳士を起こしに行った。
老紳士は
「本当にあなたには危ないところを助けていただき、何とお礼を言ったら良いやら…」
と言いながら、布袋とリビングに足を踏み入れた。
一同は一斉に振り返った。
光彦「あっ…あなたは…クリプトン星の長老じゃないか!」
老紳士「…ミツヒコ・コヅカ…元気そうだな…」
崇彦「えっ?えっ?この人、じいちゃんの知り合いなの?じゃやっぱり長野の時のあれは…」
老紳士はそれには答えず、大輔の手にあったカバーが外された『変身』に目を止めると、
「そのカバーを外してしまったのか…」
とつぶやいた。
老紳士「それは医学書だから、クリプトン星人でも理解出来る者は少ない。
私が知っている事で皆さんに話せる事を話しましょう…」
布袋は別室でとりあえず大量のサンドイッチをフロントに注文した。
206:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 11:33:01 KMY1SzR7O
もしトラとADSLの話をべるるんが聞いていたら
「禁断の鼻ピーを使い、しかもコーチに心配かけて新しい変身…?
ふざけるな!鼻ピーむしり取るぞ!」
「トマシュも余計な事言わないでくれ!この鉢巻き野郎!」
と温和な彼も流石に怒って後輩を止めただろう。
だが考え込んでいるべるるんはそれに気づけなかった。
これがまた後々面倒な事を引き起こす…。
その頃、久々に彼女との熱い電話を終え、ミハルは寿司を食べ始めた。
向かいで食べているカザフのテン君を見て、
「わかばや~し!」と言いそうになったがそれは何とか我慢した。
一方女子部屋。
今、ここにはいつの間にか増えたタラソワコーチ、真央と美姫、そして寝込んでいる未来とユカさんがいる。
「あらジェレミー^^あなたと人間の姿で会うのは久しぶりね。」
アボットはユカさんに会いにきたのだ。
「で、どうやって日本まで来たのかしら?
まさか試合でミスったあの四回転じゃないわよねー^^」
「Noooo!!!!!もう勘弁してー!!!!!」
そして早速なじられていた。
207:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 12:16:37 yhKO/gdOO
ランビエール宅
打ち合わせを続けるKVDP、チャッキー、ポンちゃんのもとにリスデマンがやってきた。衣装の修理が終わったようだ。
衣装に着替えて鏡の前に立ったKVDPは驚いた。
ずっと…夢にまで見た…こ…骨盤が付いてる!
背中側には肩甲骨と背骨まで!
喜びに震えるKVDPの姿を見ていたリスデマン、小さくガッツポーズ。
「ありがとう、リンディ。」と声を掛けるとリスデマンは柱の陰にさっと隠れてしまった。
208:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 12:31:46 EdUO0H8IP
リスデマン萌えが日に日に進行していってるのですが…
可愛すぎるぞリスデマン(*´∇`*)
209:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 12:36:27 26RexdELO
※もちろんKVDPの骨盤の刺繍の材料がランビのシマウマ衣装から取られた事は内緒である。
210:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 12:47:17 26RexdELO
布袋からの差し入れで、各部屋にボーイがサンドイッチを持って来た(誰も電話に出なかった1部屋を除く)。
「そう言えば、温泉まんじゅうがあったっけ」
ユカは湯布院から3ルッツコンビネーションジャンプを跳ぶ時に両脇に抱えていたまんじゅう4箱をクローゼットから取り出した。
211:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 13:42:42 NmVvypy90
ホテル最上階ではプルシェンコが昏々と眠り続けている。
衝撃的な話を聞かされて、バトルは魂が抜けたような顔で
プルシェン子の寝顔を眺めていた。
「おい、ジェフ。ヨダレが出てるぞ。セクハラすんなよw」
あんな深刻な話をした直後なのに切り替えが早いのがヤグ先輩の魅力だ。
「あ。そういえばジョニーはどうしたんだろう。ちょっと様子を見て来てくれないか?」
バトルは胸騒ぎを感じていた。
ジョニ子は隣のベッドルームで寝ている(スィートルームなので)。
飼育員さんが様子を見にいった。
「ちょ、おま!うは」
何語だか解らない言語で驚く飼育員さんの声に
ふたりが駆けつけてみると、ベッドの中には白く輝く翼を持つ天使がいた。
ジョニ子まさかの大変身である。
「なんか翼がヤケに多くねえか?」
ヤグディンに言われて飼育員が数えると翼は12枚あった。
「これは・・・ルシファー?」
バトルが呟いた。
「なんでまたそんな格上の堕天使になっちまったんだ、ジョニー」
「もしかしてジェーニャから新型に再感染したんじゃないでしょうか。
それにしても・・・何と美しい」
212:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 14:59:33 26RexdELO
コンコン
「ルームサービスをお持ち致しました」
プル達の部屋へボーイがサンドイッチを届けに来た。
「はあ~い(はあと)」
ドアを開け、ルシファー姿のまま迎えるジョニ子。
「こちらにサインを…!!!」
ボーイはそそくさとサンドイッチを置くと、
「失礼しましたっ」
とドアを閉めた。
ワゴンを押しながら、ボーイは頭をコツコツ叩いていた。
213:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 15:40:25 6Eri5RpS0
ところで、皆で氷壁を破壊しようとしていた時、
むろん海賊とジュベも奮闘していなかったわけではない。
海賊は、剣で氷を突き、砕き、切り刻み、千鳥足で歩いた。
ジュベは、両手で元気玉を作っては、皆に背後から投げつけていた。
一緒に手伝ったのに、ちょっと忘れられてるみたいだが、
海賊は酔っぱらっているので、そんなことには無頓着だった。
ジュベは達成感に満ち満ちていたので、忘れられていることに気付かなかった。
214:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 15:44:33 6Eri5RpS0
…ホテルの寿司屋で考え込むべるるん、寿司を食うミハル、ガリをかじるテンくんを置いて、
トマシュとADSLはそっと部屋に戻って来た。
さっそく「アドリアンは女に変身出来るか?」を試すためだ。
「こんなんでどおっすか?」
「…全然ダメじゃん」
「じゃあ…こう?」
「ちがうなあ」
「うーんと…アレ?」
「うわ!バカ!」
…ADSLがどんな姿になっていたか、あまり想像しないで欲しい…
「…わかってないなあ、もっとああでああであんな感じだよ!
お前のは、こうでこうでこんな風じゃないか」
トマシュがえらそうに言うと、ADSLも逆切れ気味だ。
「ああとかこうとか、ワケわかんない!
…大体俺を女にしてどーすんですか!?もっとなんか面白い…」
とそこまで言ったかと思うと、ADSLはふっと意識を失った。
まるでチョークスリーパーで落ちたかのように…ぱたっと倒れた。
215:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 15:52:46 6Eri5RpS0
…昏睡中のルトコフ。その片手に、妻ルトコワがADSL人形をそっと押し付けた。
夫を元気づけようという、せめてもの気持ちだ。
ルトコフの手は、人形の首をわしっとつかんだ。
「トマシュ…アドリアン!?一体どうしたんだ?」
寿司屋から部屋に戻って来たべるるんは、ぐったりした後輩を見て動転した。
しかし、ADSLはすぐまた意識を取り戻した。
「あれ…ここは…あ!俺、どれだけ眠ってたんですか!?」
「ほんの1分くらいだよ」とトマシュ。
「びっくりさせるな…」べるるんはとりあえずホッとした。
「ちょっと休んだら、昨日寝てないんだろう?それにゼリー食い過ぎだし、スシも食い過ぎ!
…あ、トマシュ、とりあえずミハルとテンくんを置いて来たから、支払いよろしく」
何をしていて、後輩がこんなことになったのか、
べるるんはそこまで気が回らなかった。
(今はまだ、コーチのことは、伏せておいた方がいいか…)
後輩を気遣って、コーチが昏睡中だということは、まだ告げていなかったのだ。
216:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 16:03:11 NmVvypy90
背中に生えた翼をばたつかせながらサンドイッチをパクパク食べるジョニ子。
ヤグディンとバトルは呆然とその姿を眺めていた。
「ほぅ、天使でも腹は減るのか」
「まぁね。食べる楽しみなんてこの時期しかないんだからいいじゃない」
「ねぇジョニー、普段は翼はしまっておいた方がいいんじゃないか?
その姿だとちょっとインパクトありすぎだよ」
「そうねぇ・・・ジャージなら隠れるかしらね。
でもSOCHIジャージだと翼みたいな模様がついてるから一緒じゃない?あはっ」
「堕天使か・・・。ルシファーはミカエルと闘って負けて堕ちたんだよな。
あれはヨハネ黙示録だったか?」
意外と宗教的な教養のあるヤグ先輩だった。
「ヨハネ黙示録のルシファー?でもヘビとか竜とかいろいろ解釈があるよね。
・・・ ミカエル・・・ ん?ヨハネ黙示録・・・ミカエル・・・
ジョニーとミハルか?ははっ、まさかw」
もちろん、ただの偶然である。
同じ頃、隣の部屋ではプルシェン子が目を醒ましていた。
目覚めても女性の姿のままで、青いはずの目の色は灰色に変わっていた。
217:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 16:05:26 FdeQWWMB0
バトルにまたフラグwww
プル子とジョニ子なんて恐ろしあ! 南無南無(-人-)
218:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 16:24:07 NmVvypy90
「おい、なんか寒くねえか?」
ヤグディンが言うと一同は恐怖に引きつった顔で言った。
「リョーシャ、うしろうしろ」
ヤグディンが振り返ると、そこにはブリザードを伴ったプルシェン子が立っていた。
「あら?ジェーニャよね?なんか雰囲気が違うけど・・・きゃっ」
ジョニ子が声を掛けると返事の代わりに氷のつぶてが飛んでくる。
バトルは気付いた。
これは前回彼の人格になっていたエフゲーニヤではない。
・・・そう、彼が以前夢で見たという、冷たい目をした凶悪な雰囲気の女だ。
しかし小さいことは気にしないヤグディン。
「お、ジェーニャ起きたか?
よし、ここのホテルのsushiレストランに行こうぜ、
もちろんバトルのおごりで」
「sushi・・・」
ブリザードはぴたりと止んだ。
219:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 16:58:36 SDokRZt2O
ジョニ子を美しいと言ったのは飼育員さんでは?
220:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 17:33:03 KhesG/CiO
かくしてバトルの奢りで寿司を食べることになった一行。
すでに引退してようが乙女だろうが何だろうが皆アスリート、実によく食べる。
しかもちゃっかり飼育員さんも加わって、ぬかりなくウニやらトロやらを注文している。
バトルは「水族館で働いてるのに良いんですか?」と遠回しに止めてみたが「それとこれは別ですよ」と爽やかに返されてしまった。
ヤグとジョニ子に至っては今や何を言っても通じないだろう。
内心はらわた煮え繰り返る思いでバトルはカウンターの隅に目をやった。
そこではすっかり裏(?)人格と化したプルシェン子が無言でもっさもっさと寿司を食べている。
美味いの不味いのかさっぱり分からない無表情だが、口に寿司を運ぶ手だけは物凄い勢いなので多分気に入ってるのだろう。
「あの…美味しいて思ってくれてたら嬉しいんだけど、出来れば僕の財布のことも考えて…って痛っ!?」
おずおずとプルシェン子に話しかけたバトルの眉間に小さい氷のつぶてが飛んだ。
思わず押さえた指の隙間から、汚いものを見るかの様な目をした彼女が見える。
(あ…これはこれでイイかも…)
悪いことは言わない。早く戻ってこい。
221:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 17:36:47 NsdjsuR70
まるで出産でもしているかのような壮絶なもがきがしばらく続いたと思うと、
突然小さな爆発音がした。
アルパカはびっくりしたが、なんとか吹き飛ばされるのをこらえた。
目の前に、なんとか分離して元の姿になったサラとアリッサが転がっている。
「よかったよ!お祝いに何かおいしいものを食べさせてあげたいよ!」
誰かにお願いしてコンビニのスイーツを買ってきてもらおう…
しかし、却って事態はややこしいことになっていた。
ふたりはお互いの顔を見合わせ、ぎょっとしたような顔をしている
アリッサが「アリッサ…?」と呼びかけているし、サラも自分の名前を呼びかけている
アルパカは愕然とした
222:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 17:39:00 3YgOF6jB0
ブリザードがやんだと同時にプルシェン子の目が元の青い目に戻った。
そして顔つきもいつものプルシェン子になっていた。
「な、なに?ジェーニャ、どうしたの?アタシ達のことが分かる?」
ジョニ子の問いかけに虚ろな目をしたプルシェン子はパッタリと倒れこんだ。
「うおっと!!」
すぐ傍にいたヤグディンがとっさにプルシェン子を抱きとめた。
「目が覚めても女だったよな・・・。コイツん中で2つの人格が争ってるってことかもしれねぇな・・・」
プルシェン子の眉根はきつく寄せられている。苦しそうな声で呻いてもいた。
「起こしたほうがいいかもな・・・。おいジェーニャ!!起きろ!」
ヤグディンが容赦なく顔を叩く。
「あ・・・、リョーシャ・・・・」
「気がついたか?どうしたってんだ?」
するとプルシェン子はヤグディンにすさまじい力ですがりついてきた。
「頼む!眠らせないで!!怖い顔の女が近寄ってくる!!!お願い!!」
やりとりを茫然と見ていたバトルがぽつりとつぶやいた。
「いいなぁ・・・アレクセイは」
「あーら、ジェフはジェーニャをどうしたいのかしら?」
にやにやと笑うジョニ子にバトルは赤面した。
いいかバトル、今のプルシェン子は白いエルフだけど、本当は無精ひげのオッサンだぞ
223:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 18:13:16 26RexdELO
寿司をつまみながら酒も飲んでいたために、プル達はさらにテンションが上がって来た。
「ふう、暑いからジャージ脱いじゃおっと。」
ジョニ子は羽根がきゅうくつになり、セミ個室という事もあって文字通り羽根を伸ばした。
そこに、トイレに行こうとミハルが通りかかった。
「ん?」
横の個室から、聞きなれた声がする。もしや。
コンコンッ
「はあ~い(はあと)」
ガラッ
返事もろくに聞かずにミハルが引き戸を開けると、そこにはヤグ、プル、ジョニ、バトル、飼育員がいた。
224:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 18:29:55 26RexdELO
ミハルはルシファージョニーと目が合った瞬間、閃光に包まれた。
そして、光が消えると、ミハルの背中にも羽根が生えていた。
ミハルはルシファージョニーから空気感染したのか、大天使ミカエルになってしまったのだった。
しかし、ただの大天使ミカエルではなかった。
このミカエルはムーンウォークも出来るミカエルだった。
しかも「ホーゥ!」といたるところで掛け声をかける。
225:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 18:37:53 NmVvypy90
ちなみにルシファーは堕ちているとはいえ、一応大天使。
しかもミカエルとは双子なので区別が難しい。
よい子のみんなは右回転(時計回り)がルシファーで
左回転(反時計回り)がミカエルだと覚えておこう。
>222
書き込む前には一応リロードを・・・
せっかくいい話なのに>220と矛盾してて残念orz
226:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 18:44:29 SDokRZt2O
なんとか222につながらないかな?
没にするには惜しい・・・
227:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 18:54:45 DtPT/Or80
マイコーが天国からお戻りになられたwwww
228:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 19:04:31 wAu6VAiAO
>>226
寿司食べるだけ食べたら突如戻ったよってことでよいのでは。
229:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 19:12:09 KMY1SzR7O
そろそろ支払いなのに戻ってこないミハルを探しに来たトラとテン君は驚愕した。
羽の生えた人間が二人もいたからだ。
しかもどうやらそれがミハルとジョニーで
ミハルはMJ(決してバスケの神の方ではない)の動きをしている。
ていうかどっちかといえばMJは俺の方じゃないのかな…プログラム的な意味で。
はぁ~、こいつを元に戻すために苦労するのは俺なんだよなぁ…。
落ち込むトラにヤグは
「おーい、暗くなるなよw
支払いは全部バトルがするからお前らも飲め飲め!」
バトル以外には意外と優しいリョーシャ先輩だった。
230:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 19:24:14 26RexdELO
ルシファーは「元」大天使で「現」堕天使。
ジョニーが読んでる聖書にはルシファーとミカエルが双子とは書いていない(ジョニーはカトリック)。
ミハルはマイケル・ジャクソンと大天使ミカエル半分半分なので、この物語限定の別の生き物ですホーゥ!ッダッダ!
231:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 20:04:30 NmVvypy90
無表情でひたすら高いネタばかり選んで食べるプルシェン子。
バトルはかっ○寿司で大はしゃぎしていた元のプルシェン子を思いだし、
遠い目をしていたがふとある考えが頭に浮かんだ。
「そうだ、領収書を貰っておいて、後で小塚に出してもらおう」
我ながらいいひらめきだと思うバトル。
勇気を出して初めての比較的高額なネタ、イクラを頼んでみる。
(それまではカッパ巻とかを食べていた)
「イクラってのはロシア語なんだぜぇ」と豆知識を披露するご機嫌のヤグディン。
ベルネルはデザートに桜餅をオーダーし、葉っぱをどうしたものか悩んでいた。
ここだけの話、あの50万円はリンク貸し切り・温泉水の送料等の経費で
とっくに無くなっている事などバトルは知るよしもなかった。
>230
了解。双子設定はなしで続行しまっす。
232:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 20:05:37 26RexdELO
MJに反応したのはトラだけではない。
プルシェン子もまたお酒がいい感じに入っていた事もあり、
「ホーゥ!」
と叫び出した。
人数が増えて個室が繋げられて座敷になったのをいい事に、プルシェン子・トラ・ミハルを中心に腰は振るわムーンウォークはするわ帽子は投げるわでMJ祭りになっていた。
その横でテン君はガリを食べながらニコニコしていた。
233:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 20:56:08 26RexdELO
布袋のスイートルームのリビングで老紳士の話を聞いていた崇彦は、なんだか嫌な予感がしてぶるぶるっと震えた。
大輔「タカ、寒い?」
大輔が心配げに崇彦の顔を見る。
崇彦「うん…よくわからないけど、なんだか嫌な予感がするんだ…」
大輔「俺もなんとなくそれ感じてる。
ここである程度話を聞いたら、ちょっと他のメンバーがどうなってるのか見に行った方がいいかな」
崇彦「そうだね。」
234:まとめ1
10/04/15 21:35:20 8ccwlOzv0
【阿蘇組】現在のメインステージ
《布袋部屋》ここが本拠地?現在未来の本を解読中
老紳士(クリプトン星最後の老子)光彦じいちゃん(小塚祖父。老子とは旧知の仲)
崇彦(時々9歳。アイテム・スケート靴をたくされる)大輔(白鳥。アイテム持ちの崇彦・未来を守る役を負う)
《女子部屋》ガールズトークの真っ最中?
真央(トイプードル)美姫(クレオパトラ・ラム風味)未来(安静中)タラソワ(恋愛指南)ゆか(鬼軍曹)ジェレミー(下っ端)
《チーム・ジョニ子》現在熊本のすし屋でせっぼん中
ジョニ子(ルシファー) バトル(新旧共に未感染。(もしかして唯一?)) プルシェンコ(女性化)
トラ(虎)ミハル(ミカエル)テン(コツメカワウソ)ヤグ(腰蓑)カナダの飼育員 べるるん ADSL
《スケート場》せっぼん練習中
信成(おめでた婚) Pちゃん ゆずる
リード姉弟(さびしく見守る)
((忘れられた人たち))
海賊(ロロ)ジュベ(白鰤)
235:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 21:37:03 sHAEG9PRO
規制憎い。
〉〉222は寿司屋に移動した後にもう一度ブリザードしたってことでいいと思う。
236:まとめ
10/04/15 21:37:26 8ccwlOzv0
【早稲田研究所組】お留守番中
あっこ(カメレオン)・ジェナ(?)・・経営者(経営者)・ムロズさん(マネキン人形)・
無良(ウリ坊)・サラ(猫)・アリッサ(アヒル)・アルパカ(カロリーナ)
・キーラ(婦警)・レピスト(未亡人)・ロシェット(テリーマン)
信夫・長久保コーチ・ゆかり・静香:本田(旧型抗体持ち)
村主(ピエロ、現在拘束中)
【ランビ家】
ゲデ子(牝牛)・リンデ(リス)・ポンちゃん(アロハ)
チャッキー(妖精)・ヴォロノフ(狼) アルバン(蜂)・KVDP(骨)・ランビ(てんとう虫)
【その他】
メリル(お姫様?)&チャーリー(ツルツル頭?):アボを心配してカナダ水族館にやってくる
ロロ(未感染):カナダの研究所
蛇と猫:専門業者が預かり中
モロゾフ(スネイプ先生):たぶんまだ自宅
ボロドゥリン(ギター):布袋の相棒
まとめてみました。補足等があったらお願いします。
237:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 21:44:59 KMY1SzR7O
>>234
べるるんとADSLは寿司屋じゃなくて四つめ(布袋女子プル達以外)のその他男子部屋
ADSLは寝ててべるるんは付き添いかと
海賊はフェルナンデス、恐らく彼もジュベもSexBomb祭にいる(見物)?
ユズルでなくてユヅル
だと思うよ、まとめ乙!
238:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 21:45:09 tquFhePDO
まとめ様、メル欄メル欄!w
239:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 21:46:49 KMY1SzR7O
>>234
あとジョニ子達はせっぼんじゃなくてMJ祭
後出来ればsageてね
240:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 21:53:12 SDokRZt2O
イリーナ(黒猫)は研究所かな?
241:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 21:57:08 5GaleqiX0
ライサ(黒電柱)は?
彼はスケート場でせっぼん練習してるのでいいんだよね?
242:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 21:58:18 26RexdELO
>>231
ありが㌧
>>234
まとめ乙です
【阿蘇組】→【熊本組】
阿蘇にはスケートリンクが無いので熊本市内にしたら閉鎖されていましたorz
243:234
10/04/15 22:05:55 8ccwlOzv0
ごめんなさいsageわすれました。
>>237>>238>>239>>240>>241>>242
御意見ありがとうございます。
244:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 22:10:51 NmVvypy90
>234
まとめ乙。
で、ジェレミーは女子部屋でいいのかしら・・・
245:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 22:28:35 26RexdELO
老紳士(長老)
「タカヒコがいつ呼ばれてもいいように、先にタカヒコの質問に答えよう。
まずこの本。
これは中身ではなく誰が持っているかが大事だと言ったね。
この本は、渡された者に特別なビジョンが与えられるというしるしのようなものでもある。
ミライ・ナガスは、その名前通り未来のビジョンを流される者としての使命を与えられて生まれて来た。
しかし、その時期が来ないと我々は知る事が出来ない。
私はどのスケート選手が選ばれたのかを調べていて、ミライの世界選手権の後のインタビューを観た。
そこでピンと来たので調べてみた結果、この本がミライに渡ったと確信したのだ。
もっとも、ミライ本人はインタビューで
『ナガスミライだから未来を流しちゃったのかな』
と言って、おやじギャグと書かれていたけどね。」
大輔と崇彦は顔を見合せた。
(てっきりあれはミライのいつものおやじギャグだと思っていたのに、そんな意味があったとは…!)
246:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 22:34:35 KMY1SzR7O
女子部屋ではサンドイッチや温泉饅頭をつまみながらおしゃべりを楽しんでいた。
未来はまだ奥で眠ったままだ。
アボットも成り行きでサンドイッチを食べていたが女子の話についていけないのと
「ジェレミー、あなたいつまで女子部屋にいる気かしら^^」とのユカさんからの言葉に部屋を出る事にした。
何となく他の部屋に行くがひとつは留守でもうひとつは何やら真剣な話をしている。
…入りづらい。
残りの部屋を開けると、そこには何やら考え込むべるるんと眠るADSLがいた。
「えぇと、ここで休んでもいいかな?
何だか他の部屋は居づらくてさ…。」
カナダから飛んだのと女子部屋でのユカさんからの言葉責めでかなりアボットは疲れていた。
「…あぁジェレミーか。いいと思うよ、どこでも使えば。」
どことなくアボットの事なんてうわの空でべるるんは答えた。
「あ、じゃあ奥で眠る事にするよ。考え中に悪かったね…」
べるるん達に気を使いつつ、アボットは奥のベッドでしばし眠りについた。
247:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 22:35:34 NmVvypy90
酒を飲み、MJ祭で盛り上がったプルシェン子はふとバトルに目を留めた。
もちろんバトルは相変わらず金ぴか防護服を着ている。
「その衣装・・・私のものです。よこしなさい」
驚いた事に口ではなく直接心に語りかけて来る。
「くっ・・・お前はジェーニャじゃないな?何者だ!」
返事はなく、ブリザードが吹き荒れる。
「化け物め!!!」
ヤグディンが後頭部に蹴りを食らわせると
プルシェン子は崩れ落ちた。
バトルはクレジットカードでお会計を済ませて領収書を貰い、
一同はプルシェン子を性別不明部屋に運び込んだ。
やがて、プルシェン子は目を醒ました。相変わらず女性のままだが
瞳は青くなり、冷たく邪悪な雰囲気は消え失せている。
そして>222に続く。
248:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 22:38:50 26RexdELO
老紳士
「しかし、まだ経験の浅いミライには負荷がかかりすぎ、ビジョンが与えられると、耐えきれずにヒューズがとぶように気を失ってしまうのだ。
しかしそれもしだいになくなる。」
249:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 22:38:57 cA04zVQw0
>>247
>「化け物め!!!」
>ヤグディンが後頭部に蹴りを食らわせると
>プルシェン子は崩れ落ちた。
ヤグ、容赦なさすぎワロタwwww
250:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 22:53:03 26RexdELO
>>234
またまたごめん。
老紳士はクリプトン星最後の老子ではなく長老です。たぶん。
もしかしたら孔子とか毛子もいるかもしれないけど。
251:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 23:15:20 mcVBLI060
べるるんの後輩心配ぶりが微笑ましいです……いいお兄ちゃんだなあ
ランビ宅チーム動かしたいけど、カオスすぎてどうすればいいのかわかんねw
252:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 23:21:28 8ccwlOzv0
老紳士は一息つくと話を再開した。
「さて、ではその本の中身について説明をしようか。」
一同は固唾をのんで見守る。
「その本の中身は『過去』じゃ。」
「過去?」
「でも・・・医学書だって・・・」
驚く大輔と崇彦。しかし、光彦じいちゃんは黙ってうなずいた。
「・・・・要するに、そこに書いてあるのは病気を治す方法ではない。病気の症例を記したもの。
カルテといったほうが分りやすいか?」
「ま、そのほうが理解しやすいわな。」
光彦・老紳士の言葉に若い二人は落胆を隠せない。
「せっかく・・・みんなが助かると思ったのに・・・」
「何挫けとるんじゃ!!!」
光彦じいちゃんに一喝されて顔を上げる二人。
「さっきも言った様に、この本は中身ではなく、持つもの方が大事。大切なのは『未来』ということだ。」
「ミツヒコの言うとおり。そしてお主らは二人は彼女を全力で守ること。その為に3つのアイテムを託すことに決めた。」
「3つ!!!」
耳を疑う大輔。崇彦は不思議顔。
「俺は確か、夢のなかで二つのアイテムを持ったものを守れって・・・」
「そうじゃ、そのための3つめのアイテムを今から渡す。」
老紳士は一度部屋に戻り3つ目のアイテムを手にして戻ってきた。それは・・・
「あれ?これは・・・・」
「さっき俺が着てた・・・スケータースーツ」
「崇彦のものと同じと思うなよ。アレはレプリカ、こっちは本家本元じゃ。」
そういってにやりと笑った。
「さて、そのスーツについてちょっと説明するかの!」
253:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 23:27:23 8ccwlOzv0
>>252
連投すみません。
本について、根本的な治療法ではなく患者単位の治療方法を記したものという意味で
カルテのようなものと表記しました。
言葉が足りなくてすみません。
254:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 23:29:01 26RexdELO
スケートリンクのせっぼん組は、踊り疲れて一休みしていた。
他のメンバーはホテルに行ったきり戻って来ない。
ユヅルが買って来た食料と飲み物も底をついたので、ホテルのレストランに行こうという話になり、全員でぞろぞろ移動した。
信成「おっ、焼肉レストランがあるじゃん!ここにしよう!」
一同はぞろぞろとレストランに入って行った。
255:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 23:33:42 NmVvypy90
ヤグディンはプルシェン子を抱きかかえ、ソファに座らせた。
「落ち着け、俺様がちゃんと起こしといてやるから。怖い顔の女って何だ?
さっきのお前も相当怖かったぞ。で、お前は誰だ?」
「アタシはエフゲーニヤ。アタシの事もジェーニャでいいわ」
「そっか、『も』って事は、エフゲニー・プルシェンコの事は知ってるんだな?」
「ええ、知ってるわ。彼はアタシの分身みたいなものよ」
「そうか、それじゃお前は俺の事、知ってるんだな?」
「もちろんよ。ミーシン先生のところで一緒だったもの。その後も何度か試合で会ってるわよね」
「ミーシン先生の所に来る前はどうしてた?」
「その前はアタシはヴォルゴグラードに住んでたわ、パパとママとお姉ちゃんと。
でも生まれたのはハバロフスクだって。全然覚えてないけどママが言ってた」
「その前は?何か覚えてないか?」
「やだぁ、生まれる前の事を覚えている人なんていないわよw」
「それもそうだな。あ、ちょっとお茶でも持ってくるよ」
ヤグディンはバトルに目配せをして、一緒に部屋の中にある簡易キッチンに向かった。
入れ替わりに、プルシェン子の左右にジョニ子とミハルが陣取った。
眠らないように刺激的な話をする為だった。
ってかあんたらはいるだけで刺激だ。
「参ったな、あれじゃまるっきり女の子だ。本人の人格はどこに行ったんだろ」
「さっきの怖い女はウィルスの影響だろうな。
そういえば後頭部を蹴られる度に人格が変わってる気がするな。
前もユカリに蹴られて変わってたし・・・しかも2回」
「おお、そうか。じゃあ本人が出てくるまで蹴るか」
「・・・やめろよ、死んじゃうよ」
256:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/15 23:59:11 yhKO/gdOO
ランビエール宅
ランビはベッドルームで黄色い汁を流していた。
ベッドの上に広げられていたのは裸のおねーさんの本…ではなく赤ぬこの衣装である。
クッションのてんとう虫+KVDPの左胸のハートアップリケの為に切り抜かれてしまった布地。
もう着られない…悲しみのあまり汁を出しすぎてグッタリしているランビ。
しかしアルバンがあることに気付いた。
切り抜かれた所は丁寧にまつり縫いされ、スパンコールで飾られている。しかもハートは鎖骨のすぐ下の部分…ということは
「ランビ、この衣装キューティーハニーにそっくりやで!」
喜びの汁を撒き散らしながら狂喜乱舞するランビ
ありがとうリンディ!
早く人間に戻ってこの衣装を着るんや!
そして新たなるセクシーランビで世界中のおにゃのこを虜にしてアハアハグヘヘ~♪
しかし2匹は気付いていない。クッションの為の丸い切り抜きはお尻の割れ目付近の布地を使っていたことを…。
257:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 00:07:31 QXltD/goO
バトルにトイプーを抱かせてあげたいww
258:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 00:12:55 g6qir3O80
>>257
同意ww
べるるんも膝抱っこしたし、ぜひバトルにも……
82年組の妙な縁w
259:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 00:13:22 CcKW5u7i0
「もし、僕の仮説が正しければ、の話なんだけど」
バトルは前置きして話し始めた。
「あのブリザード女は新型ウィルスに感染したジェーニャだ。
そして今現れている人格は、双子の片割れがウィルスの力でジェーニャの中に宿ったもので、
新型に体が乗っ取られそうになったんでジェーニャを守る為に出て来たんだろう」
「なるほど。でもウィルスが意志を持つなんて事はあるのか?」
「意志を持つかどうかは別として、結果として行動に影響を及ぼす事はあるだろうね。
狂犬病ウィルスに感染した人が水や風や光を怖れるように」
「それにしても、あのブリザード・・・。ものすごい憎悪だったな。
ウィルスによる変化に潜在意識が影響するんだとしたら、
もしかして星でのあの記憶が関わっているのかもしれない。
そういや、変な年寄りが来てるらしいが・・・なんかやばい気がするんだ」
「やばいって?どうやばいの?」
「俺は感応性が低いからよくわからん。でも今のジェーニャなら何か感じてるんじゃないか?」
「お湯が沸いたよ。紅茶でいいよね」
260:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 00:16:14 qnGeM/vJO
打ち合わせを終え、そろそろ日本へ向かおうとしたゲデ子・KVDP一行。
ランビも黄色い汁を出すのを止め、出発する準備をしていた。
しかしそんなランビ宅に訪れる者がいた。
コンコンッ
「ランビエールさん居ますか?警察のものです!
近所の方から通報が有りましたもので…ランビエールさ~ん!」
KVDP「け、警察だと?」
アルバン(またキーラとラウラ…やったらえぇけど違うみたいやな)
ランビ(わいのうち、変な噂立ちまくってんのか?いややわほんま…)
ポンちゃん「俺が出るわ!KVDPの骨スーツじゃ余計疑われそうやし。
…はーい、今開けまっせー!」
その時ゲデ子やヴォロ、リンデマンにチャッキーは何だか嫌な気配を感じていたが
ポンちゃんはドアを開けてしまった。
「…ハハハ、簡単に騙されるもんだな!!!!」
「スケーターども、怪我したくなかったらおとなしくしろ!
…何、ちょっと移動して体を調べるだけだ、安心しな…。」
(!!!!…アイツら、早稲田の研究所に襲ってきた奴らと同じ奴らや!)
直接襲撃者達を見たランビは思い出した。
(な、なんやて!まさかスイスのこんなとこまで…!)
ポンちゃん「な、何やこいつら!わいらは何も悪いことしてへんで!」
KVDP「…くっ、油断していた!」
チャッキー「安心しろったって無理だろ!」
ゲデ子(ヴォロは隠れて!あの人達は危ないわ…!)
ヴォロ(でも…俺も…。)
リスデマン(いいから下がってなさい!)
ほのぼのとしたランビ宅は一転、緊迫したものになってしまった。
…ほのぼの待ちだった方々、ごめんね。
261:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 00:21:28 s9mcDaWLO
信成、Pちゃん、リード姉弟、ライサ、ジュベ、フェルナンデスは焼肉レストランで乾杯していた。
ユヅルだけは寝不足がたたり「ちょっと部屋で寝て来ます」と言って焼肉を食べずに最上階に移動。
女子部屋から食料を分けてもらい、とりあえずジェレミーの隣のベッド(注・ツイン)で仲良くスヤスヤ眠るのだった。
なお、起きてから、ユヅルは部屋に備え付けのPCでジェレミーからツイッターを教えてもらい、お互いにフォローしあうようになった。
262:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 00:40:57 S2G6VSX50
「まずはお前からだ、もう一度言うが、怪我したくなかったら大人しく言う事を聞くんだな」
ランビ宅に押し入った男たちの一人がチャッキーの腕をグイっと掴んだ。
その時、窓ガラスが割れる音とともに家に何かが飛び込んできた。
「一体何が…ぐはっ!!!」
飛び込んできたものはチャッキーを捕えた男の額に直撃、男は気絶してばったり倒れた。
すかさずチャッキーは逃げ出してゲデ子やポンちゃんたちの側に駆け込む。
傍らではテントウ虫が胸を熱くして黄色い汁をだらだら流していた。
(あれは…ワイの一番のお気に入り『人妻乱れ宿』…よう戻ってきたなァ・・・!)
ランビが吹き飛ばしたコレクションの数々の内、一番のお気に入りDVDが地球一周をして戻ってきたのである。
263:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 00:48:51 s9mcDaWLO
>>262
DVDかわいいよDVD
264:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 00:56:11 /r4JsFA60
ほのぼの展開復活!職人様乙です。
265:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 01:00:07 qe5Ku+JHO
>>262
地球一周w
266:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 01:04:27 78iRSCHv0
>>262
ちょw熟女www
職人様すごいっすw
267:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 01:15:06 g6qir3O80
ランビのお気に入り『人妻乱れ宿』のおかげで、怪しい男たちの虚をつくことが出来た。
しかし、有利になったわけではない。向こうは屈強な男たち5~6人。
こちらはてんと虫に蜂、リスに牝牛に狼、そしてクワドエルフ。
立ち向かえそうなのは人型のポンちゃんとKVDPくらいしかいない。
じりじりと近づいてくる男たち。
後ずさる一行だが、逃げ場は既にない。
(ケヴィン、あなた、クワドコンボは跳べる?)
男たちに聞こえないよう、ゲデ子がチャッキーに囁く。クワドエルフは妖精であるため、ゲデ子の言葉を理解できるのだ。
(跳べると思うけど……僕じゃみんなを支えて跳ぶのは無理かもしれない……)
(大丈夫よ、あなたなら跳べるわ。……ポンちゃんとケビンさんもいるもの。三人で力を合わせるの)
(でも、外に出ないと……)
(隙は私が作るわ。……ヴォロをお願いね)
たん……と、ゲデ子は片足を踏みならす。二人の思考がスケパシーとなってスケーターたちに伝わったのか、みなが緊張した面持ちになった。
(エレーネ無茶や。一人で隙作るとかできるわけないやろ!せやろアルバンもそう思うやろ)
(無茶しちゃあかん。ワシらいま人間じゃないんやから!)
(あなたたちは虫だけど……わたしは、牛なのよ?)
にこり、と、ゲデ子が微笑む。もう一度、深く、ランビ宅の床を蹴ったかと思うと、勢いよく走りだした。
まさしく怒涛という勢いのステップ。情熱的なゲデ子のステップが、屈強な男たちを弾き飛ばしていく。
「みんな行くで!庭に走れ!」
狼ヴォロを抱き上げ、ポンちゃんが男たちを踏み越え走りだす。てんと虫と蜂はチャッキーの髪にしがみついた。
「このっ……牛がッ!---ギャッ!」
男の一人がなんとか衝撃をこらえ、立ち上がろうとする。しかし次の瞬間、男は仰向けに倒れた。
(リンディ! あなたは行って!みんなは私を抱えて跳ぶのは無理だけど、あなただったら大丈夫よ)
男の額に命中したのは、固いドングリ……
(女性を一人、残して行くわけにはいかないだろう)
リスデマンは、リスの顔に、ほんのりニヒルな笑みを浮かべてみせた。
ほのぼのしつつ、緊張しつつ……
268:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 01:24:28 X2uiNBSa0
欧州組のゆるさとなごみっぷりは神www
ヤグがバトルに厳しいのは真央に不意打ちキスかましたせいなのか?
よりによって保護者のいるとこでやっちゃったもんなw
ストーリー的にはジェーニャにメロメロが面白いけど、焚きつけるヤグの思惑にも注目したい
269:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 01:28:52 6kyQzEGT0
ここのヤグとプルは仲良さそうでいいな
職人様ありがとう
270:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 01:30:58 qe5Ku+JHO
ゲデ子かっけえ…
271:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 02:00:46 8V/bI+6y0
「ラウラさん助けてー、腰が痛くて動けないんだ」階段の上の方から経営者が叫ぶ
でもその前に踊り場で悲惨な倒れ方をしているマネキンのほうが気になる。
下手に手足や首がもげてなくてよかった、とラウラは言おうとして
りっぽんの存在を思い出し、言葉をぐっと飲み込んだ。
「アダム、誰か体が自由に使えて体力のある人を呼んできて」
おそるおそるマネキンを起こしてみると、顔の右半分に蜘蛛の巣状の大きなひびが入っていた
こわい。これ真夜中に廊下に置いておけば泥棒避けになりそうだわ。
272:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 02:09:52 2AsHPDtU0
襲撃者達はそれでもなお倒れなかった。
(くっそーどうすればええねん。エレーネが立ち向かってるのに
なんでワイは見てるだけしかできんのやっ)
いらだちのあまり、大量の黄色い汁を吹き出すてんとう虫。
「これだっ」
KVDPにひらめくものがあった。
チャッキーの頭からてんとう虫をはぎ取り、敵に向かっていく。
「みんなー目をつぶれーっ」
そう言うが早いかスピンで敵の懐に飛び込んだ。
屈強な男達の目に、身体に、てんとう虫の黄色い汁が飛び散る。
「うわああああっ目がっ目がー!」
お馴染みムスカ反応を示しながら男達がのたうち回る。
KVDPはなおも回り続ける。
普通のてんとう虫と違い、ランビてんとう虫の放つアルカロイド汁は強烈だった。
襲撃者達の神経を麻痺させてたちまち彼らは動けなくなった。
スケーターではない分、ウイルスに耐性がある代わりに
ウイルスに冒された者から出る分泌物の効果はてきめんのようである。
同様に黄色い汁が身体に飛び散ったKVDPは
男達とは違い、特に異変はあらわれなかった。
ウイルスに罹っているおかげだろうか。
ゲデ子が上からのしかかり押さえつけている間に
ポンちゃんとKVDPが、2人がかりで敵達を縛りあげる。
チャッキーが部屋に落ちている布きれで猿ぐつわをかませる。
よく見るとそれはリスデマンが、次のアップリケをつけるために
製作途中だったシマウマの衣装の切れ端だった。
273:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 02:10:09 2AsHPDtU0
(なんや、てんとう虫。すごいやないか)
(わしは何もしてへん。ケヴィンの機転のおかげや)
(なに言うてんねん。わしは汁は飛ばせへん。やけど
その小さい身体からあれだけの量をずっと出し続けるのが
どれだけ大変か。よお頑張ったなあ。疲れたやろ)
てんとう虫を称えるかのように、蜂が羽でてんとう虫の身体をさする。
蜂の優しさを感じながら、てんとう虫は力を出し切った疲れのあまりに
その場で気を失った。
飛ぶ力を失って地面に落ちそうになるてんとう虫を
そっとチャッキーの手が包みこむ。
敵を倒した栄誉を称えるべく、お気に入りDVDのパッケージの上に
てんとう虫をそっと寝かせるチャッキー。
『人妻乱れ宿』の上で眠るてんとう虫の顔はほんのり微笑んでいるように見えた。
274:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 02:38:23 8V/bI+6y0
もう一度掃除が必要そうだ、とぽんちゃんは思った
しかしKVDP…未だにええ匂いがして困るんやけど。なんか恥ずかしいわ
275:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 02:39:48 E+CMhoedO
チャッキーやめてあげてwww
276:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 02:46:48 x8NQ11ly0
チャッキー色々と可愛いなww
そう言えば妖精チャッキーの大きさってどのくらいなんだろう、手のひらサイズ?
277:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 02:54:58 CcKW5u7i0
性別不明部屋では2人の天使とプルシェン子が
MJ祭の続きで遊んでいた。
床には飲み過ぎたベルネルが倒れている。
飼育員さんが何気なくテレビをつけると、なにかドラマを放送しているようだ。
なぜか髪を黒く染めたトマシュ・ベルネルが出ている。
あれ?と思ってよく見たら、別人だった(どうやら要潤だったらしい)。
「お茶いれたよ、どーぞ」
「はーい」
バトルがプルシェン子に尋ねた。
「ところでジェーニャ、熊本に来てからなにか妙な気配を感じたりとか・・・
そういう事はないかい?」
「えー、わかんな~い。なんかもわ~んって感じる事は感じるんだけど、
フィルターがかかってるみたいになってよくわかんない」
「そうか、あ、お菓子あるけど食べる?」
「きゃー、食べる食べる(はあと)」
・・・別人格だったとはいえ、さっきあんなに寿司を食ったのに、と呆れるヤグディンだった。
278:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 05:48:17 qe5Ku+JHO
>>276
人間より少し小さいくらいじゃね?
279:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 07:47:35 s9mcDaWLO
女子部屋のユカの携帯が鳴った。
父信夫から、ランビエール宅に襲撃があったという連絡だった。
ユカ「やっぱり、あのままでは終わらないと思っていたけど
…そんなところまで…
わかった。こっちは大丈夫よ。うん。ジェレミーは寝てるわ。また連絡する。じゃあね。」
美姫「信夫先生から?」
ユカ「そう。ステファンの家に襲撃があったみたいなの。皆に知らせなきゃ。」美姫「手分けして行く?」ユカ「そうね、ありがとう。とりあえず今分かる人だけでもいいかな。」
真央とタラソワは未来についている事になった。
280:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 07:56:38 uzSwN6OyO
>>278
自分はもそんくらいで想像してたかも。手の平サイズでも可愛いと思うけど、
なんか描写見てるとわりと普通に人間っぽいサイズかと思ってた。
まあでも自分はその辺は職人さんにおまかせでいいやw
個人的にはチャッキーにジャンプコンボネタが来てたので
ダブルケヴィンの4-3-3に期待
281:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 08:26:19 F45NcmR8O
新スレになってから出て来てない銀盤の(ryネタも気になる
282:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 09:16:07 i+drGjLPO
第〇話 「はんぺん」
とかまでやるのか
つかヤグ先輩はいまだに腰ミノなの?もう着替えたの?
283:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 09:31:00 qnGeM/vJO
>>282
老紳士から衣装もらった時に着替えてたらNOT腰ミノだろうけど…
恐らく未だ腰ミノだと思うw
ジュベは白鰤かられんこんになった
284:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 09:49:05 CcKW5u7i0
テレビを見ていた飼育員が小声でヤグディンと話していた。
「そういえば、ジェーニャの背中に文字が浮かび上がったんだってね」
「ああ、ミツヒコじいさんが読んでくれたんだ
・・・あの秘術を使えるのはクリプトン星人でもごくわずかな層だけだろ?
高僧とか、あとは長老院のメンバーとか。
という事は僕ら以外のクリプトン星人が近くにいるんだよな。
それも肉体派じゃない方の・・・」
「ジェーニャは巫女として見込まれていた子の素養を受け継いでいるから
反応して文字が現れたんでしょう。
それにしても・・・背中に文字が浮かんでも本人には読めないよねぇ」
「ああ、本当にアホな技だw」
VIP部屋では老紳士がくしゃみをしていた。
「ところでジェーニャ。君の本体・・・いや、エフゲニーは今どこにいるの?」
バトルの問いかけにジェーニャの顔が曇った。
「彼は・・・凍り付いていて動けないみたいなの。意識もないわ。
助けてあげたいんだけど、私が助けに行ったらまたあいつに体を乗っ取られる」
「あいつって?」
「あたしにそっくりな顔の女よ。でもなんていうのかな。
恨みとか憎悪が凝り固まって出来てるみたいな・・・心の痛みとか。
ううん、リョーシャに虐められたとかオリンピックで転んだとかそういうレベルじゃないわ。
子どもの頃からよく知ってるけど、彼にこんな感情があったなんて」
285:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 10:25:23 Wnu+fMB+0
>>222です
流れをぶった切ってしまったのにうまく繋げてもらって、ありがとうございます。
ちゃんとリロードしてから書き込みますねorz
286:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 11:07:14 5KbETqCE0
エフゲニーは寒かった。なんで寒いのかもよく思い出せないくらい寒かった。
(ここはどこ・・・・・・? 僕どうなるの?)
寒い。寒い。エフゲニーは体を丸めて赤ん坊のように凍りついた。
「ジェーニャ?」
ハンガリーの自宅で、マートンは振り向いた。背中に誰かの視線を感じたのだ。
TVでは世界的なパンデミックについての続報が流れている。どうやら感染するのは一部の人らしいが・・・・・・情報が制限されているのか、詳しいことが分からない。
言いようのない胸騒ぎを感じる。あの甘えん坊は大丈夫なのだろうか・・・・・・?
しばし考えた末、マートンはストラディバリウスを構えた。キング・オブ・ザ・フォレスト。マジック・ストラディバリウス。アート・オン・アイス。
流麗な音色が空気に捧げられる。ニジンスキーの音だ。
(マートンが弾いてる・・・・・・誰か踊ってる)
凍りつくプルのまぶたの裏に、優雅な舞が映る。
――お前はいつも誰かに助けられてきた。
(・・・・・・ニジンスキー?)
――たった今もだ。私は私に捧げられた音色によってここに来た。ソルトレイクのときも、お前は助けられたのだよ。
(あれ、やっぱり金パンツの力?)
――あれは私ではない。もう一人のお前の助けだ。私のパンツは阿蘇山で力を解放され、世界に溶け込んだ。その結果私は今世界のどこにでもいる。阿蘇山に来なくとも、私は呼べばお前の元に来るのだよ。
(そっか、あのこに僕、助けてもらってたんだ。お礼を言わなきゃ。だってあのこは僕の・・・・・・あれ? あの子は僕の何?)
――お前はそれを思い出さなくてはならない。誰の助けもなしに。一人で。それがお前を助ける道であり、このパンデミックを解決するひとつの方法となるだろう。
(一人で?)
――そうだ。
(ニジンスキー、僕は誰よりも知ってるよ。皆の力がなければ、僕は何にも持ってないって事を。ミーシンもヤナもマートンも、くやしいけどリョーシャもいなきゃ、僕はここにはいなかった。だから僕は皆のために滑りたい。何をすればいいのかな?)
――氷の奥で眠れ。そして新たなお前に合うがいい。その凍てつく思いに触れてみれば、きっとお前は思い出す。
(そっか。ありがとうニジンスキー。僕を助けてくれて)
プルはニジンスキーに感謝すると、心の中のまぶたを閉じた。あの時あった凍てつく女に会うために。
それはプルの心の奥深く、深層心理と過去の世界へ旅たつことだった。
287:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 11:38:01 Wnu+fMB+0
ついさっきまでおしゃべりをしていたプルシェン子がことんと眠りについてしまい、
バトルはおおいにあせった。
あせったが千載一遇のチャンスとばかりにカメラを構える。
横ではジョニ子が「やーらしーー。セクハラよ~~」
とヤジを飛ばしているが、そんなことは気にしない。
「なんか変ったことでもあったか?」
バターン!!とドアを開けて大声を出しながら入ってきたのは
やっぱりヤグディンだった。
(確信犯だ・・・。絶対そうだ・・・・・)
こめかみがひきつりそうになったが、脳裏に真央の愛らしい笑顔が浮かんで
(そうだねマイ・プリンセス。僕には君がいるんだよね)
と額の青筋をひっこめることに成功した。
「おい・・・、こいつ寝ちまって大丈夫なのかよ。
まー、うなされてねぇから平気だと思うけどな」
ソファで昏々と眠るプルシェン子の髪をヤグディンはぐしゃっとかきまぜた。
プルの金髪がぐしゃぐしゃになるのが面白く、ヤグディンはプルの髪をいじくり続けた。
もしプルシェンコ(♂)の意識があれば
(やめてお願いそれだけは!!)
と泣いただろう。
やっぱりこれ以上髪を劣化させたくないのだ。
288:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 12:13:29 CcKW5u7i0
ジョニ子はふと、寿司屋に行く前に見た夢を思い出していた。
あの時、スケート靴が光ってなにか言われたような・・・
そうだ、あの声は確かに言っていた。
「お前の眠れる友を助けよ、心を解き放て」
ジョニ子は決心した。
「リョーシャ!やめなさい、毛根に悪いわ!」
ジョニ子の目に涙が浮かんでいた。他人事とは思えなかった。
その頃、なぜか小塚がくしゃみをしていた。
289:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 12:22:16 Quls+15lO
まさかのニジンスキー!
感動した!
290:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 12:26:32 QXltD/goO
>マイ・プリンセスwww
バトルが可愛く思えてきたwww
291:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 12:35:41 d0GArYBn0
>273
最後フイタ
292:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 12:50:16 i+drGjLPO
ヤグのいたずらをやめさせると、ジョニ子は宣言した。
「アタシ行くわ!ジェーニャを助けに!!今こそDIVAの出番なのよ!」
(あぁ…長かったわ。アタシが主役のはずなのにすっかり影が薄くなってたんですもの。
でもここからはアタシのターンよ!主役とその他大勢の格の違い、見せつけてあげるわ!
てゆーか、このままジェーニャ主役、みたいな流れにはさせないわ!)
…という心の声はもちろん飲み込んだ。
「助けに行くってどこ行くのさジョニー?ジェーニャはここで寝てるし…」
慌てるバトル。
「だまらっしゃい。どこへ、ってジェーニャの夢の中に決まってるでしょう。
ジェーニャの意識の中に入って目を覚ます手伝いをするのよ。アタシ天使なのよ!」
「えっえっ、そんなことどうやって…」と慌てるバトルを尻目に、
「ちょっとリョーシャ!アタシやジェーニャが寝てる隙に悪戯すんじゃないわよ!
ジェフ、ちゃんと見張ってなさいよ!なんかあったらマオに言いつけるわよ!」
とヤグディン&バトルに物申し、ベッドに身を横たえると、吸い込まれるように眠りに落ちた。
293:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 13:32:08 CcKW5u7i0
「なんか2人とも寝ちまったな」
「可愛い寝顔だよな・・・どっちも」
「このくるんとしたまつげは本物なのか?ちょっと引っ張ってみよう。
おっ、本物だ、すげー」
「アレクセイ・・・やめろよ」
イタズラ大好きヤグ先輩だった。
ジョニ子はジェーニャの心の中にうまく入り込めたようだ。
季節は春か夏らしく、周囲は花畑だった。
高山や高緯度地帯のように高い木がない世界だった。
草むらから雲雀に似た鳥が顔を出している。
「ここは早いところ、ジェーニャを探さなくちゃ」
翼を使って飛んでみようとするがうまくコツがつかめない。
何度か試してようやく飛べた。重力が大きいせいだ。
見渡すとひとりの少女が鼻歌まじりに花を摘んでいた。
口ずさむカリンカの歌唱力は・・・まぁご想像にお任せする。
294:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 13:56:58 /mD+Q1F40
熊本のホテル、男子部屋。
アボットはぐっすり眠っていた。その姿が豚になっているかどうかはわからない。
ADSLも寝具に潜り込んでいる、さっきべるるんに、ベッドに蹴り入れられた。
「自分の体調管理くらいしろ!貴様もアスリートだろがー!」
べるるんがついカッとなったのにも訳がある、ADSLが、
“MJ祭りに行く!俺もムーンウォークやる!”などと言い出したからだ。
(まったく、ふざけるな、僕の気にもなってみろ…コーチが見たら何て言うか…)
いっそ、コーチが昏睡中だと告げてしまおうかとも思ったが…
ルトコフコーチのこととなると、べるるんの胸は痛んだ。
(本当は、真っ先にアドリアンに報せなきゃならないけど…
きっとショックを受けるし、心痛でまた異変が起こったらどうする?)
ルトコワに、自分が後輩についている、と約束した。責任がある。
(一応“鼻ピー”は、「変身」制御に効果があるようだ、
副作用としては…眠気に襲われることかな?見ている限り。
コーチも危険な状態ではないし、やはりアドリアンには黙っておこう)
ええと、それから………
295:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 13:58:01 /mD+Q1F40
…ADSLは、寝具からちらっと目だけ出した。
べるるんは椅子に座ったまま、居眠りしている。
さっきは、普段優しい先輩に蹴り飛ばされて、おとなしく従ったが、
実は、今は眠くはなかった。寝たフリをしていたのだ。
(おっかなかったなあ…先輩も、徹夜で疲れてるんだよ、しょうがない。
心配ばかりかけて、すまないな…)
ADSLはADSLで、べるるんを気遣っていた。
(俺たちがさっき、変身の実験をしていたと知ったら、無茶するなって怒るだろうな…
そしたら身体に障るよ。そうでなくても、俺がさっき蹴っ飛ばされたくらいだから…)
…トマシュがADSLをけしかけた、と知ったら、トマシュはぶん殴られるかもしれない。
(やっぱり、黙っておこう。
でも、「変身」のコツがわかったと思ったのに、何で意識を失っちゃったんだ?
鼻ピーも使いこなせそうだと思ってたのに)
この時ADSLは忘れていた、
“遊びや自分のためだけに「変身」を使わない” と誓ったことを。
296:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 14:47:54 /mD+Q1F40
ADSLはそっとベッドを抜け出した。
そして音を立てずにべるるんに近寄ると、何やら寝言をつぶやいている。
(なんだろ…「ジョニーの血」…「輸血」…?それから?)
途切れ途切れのつぶやきを、しゃがんだままふんふんと聞きながら、
後輩はなんとなく、先輩の考えている事がわかったようだ。
(なるほどね。どうかなあ?でもみんなに言っとくべきか)
後輩は立ち上がると、先輩にそーっと毛布をかけて、部屋を出た。
コンコンコン。
「はーい、どなた?入って^^」ユカがノックに応える。
ドアからぬっと顔を出したADSLに、女子部屋はざわざわした。
…ADSLはまず、「ジョニーの血」という言葉からジョニーのいる部屋に行き、
ダイスケっていい人そうだから、と思って彼のいる部屋に行ってみたのだが、
どちらも取り込み中なのか、ノックしても気付いてもらえず、女子部屋に来たのだ。
(早稲田の取り調べ思い出しちゃって、なんだかなって気分だけど…しょうがない)
「あら、アドリアンね?ここは男子禁制よ?いえ冗談、どうしたの?^^」
「ユカ、みんなも、聞いてください。俺の先輩の、クリストファーのことなんです…」
「…吸血鬼に変身した先輩は、日光だけでなく、蛍光灯の光でも火傷を負いました。
そしてよりによって、後輩の俺の首に咬み付こうとするほど、重症でした。
その後先輩は、ジョニーの血液で輸血を受けて、『変身』に伴う症状が軽くなったんです。
光に当たっても、ある程度大丈夫みたいだし。鉄分は摂らなきゃダメみたいだけど。
先輩は、それで、『ジョニーの血液に、治療法があるのでは?』と考えてるみたいで…
…でも…
どうなんですかね、それって便宜的なもので、根本的な治療とはちがうんじゃないかな?
俺の鼻ピーと似たようなもんで…って俺は思ったんです、どうですかね。
以上、俺の話は終わりです。
なんだったら、後で先輩に聞いてください、今は疲れて寝てるんで」
ユカの微笑みが、心なし真剣になったように見えた。
「…興味深いわね…ところでその、鼻ピーって何なのかしら?^^」
「えぇー?言えないっすよお…SWEスケ連最高機密だし!(ニヤニヤ)」<最高機密はむろんウソである。
297:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 15:14:44 TXTkOmaF0
「こいつら、どうしようか」
縛り上げて木にくくりつけている襲撃者達を見ながらKVDPが問う。
黄色い汁のおかげで身動きはとれないが敵であることには違いない。油断大敵。
(敵やしトドメをさすこともできる…でもわしは
殺生は嫌いやねん。同じ人間や。せめて食いもんくらいはあげようや)
ハチがぶんぶん飛びながらみんなに提案する。
当然ハチの言葉は通じていないが、みんなが同じ気持ちなのは伝わった。
日本に向かう予定だったが、ここは予定変更。
ゲデ子の牛乳や冷蔵庫にまだ残っている飴ジュース、
リスデマンお手製のどんぐりクッキーにどんぐり団子。
それらを木にくくられている男達に振る舞う。
「あ…どうもすみません」
「おいしいっすね、このクッキー」
「このジュース、初めて飲んだけど不思議な味っすね」
はじめは戸惑った屈強な男達も和やかな空気にちょっと馴染んできた。
298:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 15:27:08 TXTkOmaF0
暖かい日の光に包まれてヴォロは眠りについている。
てんとう虫もいまだ人妻乱れ宿の上で眠ったままだ。
「ヴォロノフの調子も悪くなる一方だし、ずっとここにいるわけには…」
日本に行く方法を模索するが厳しい状況だ。
コンコンッ
再びランビ家のドアをノックする者が現れた。一同に緊張が走る。
「ランビエールさーん、赤ぬこ宅急便スイス支店のものでーす。
日本のジェフリー・バトルさんからお届けものでーす。ハンコお願いしまーす」
(なんや?本物の宅急便みたいやで)
ハチが応対しようとするがそれは無理だ。
ポンちゃんが荷物を受け取った。
それはランビ家襲撃の一報をうけた信夫が赤ぬこ宅急便の
「どんな場所でも世界中にその日のうちにお届けしますサービス」を使って送った
由布院温泉のお湯だった。
このサービスは大変割高である。しかし経費で落ちるだろう、と
信夫がバトルの名で送ったのだ。請求書はもちろんバトル行きだ。
299:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 15:42:07 8EyyrQ8U0
一方、原因究明担当の布袋部屋。(ただし、部屋主はヴォロギターで練習中)
高橋の与えられた3つ目のアイテム・スケータースーツ
「まあ、崇彦に与えたスーツと機能は同じじゃ。念じたものに変化が出来る。
・・・・但し、変化できる物がちがう。姿形自体を別のものに変えることが出来る!」
「姿かたち?」
それを聞いて崇彦は疑問に思う。
「それは・・・今回のウィルスの変身と同じ様に?」
「う~ん・・・・難しい質問じゃな。」
老紳士はため息をついた。
「このスーツは元々あるクリプトン星のアイテム・本とスケート靴を守るため技術者が開発したもの。
開発過程でウィルスの特徴に目を向けたかどうかは彼らに聴かんと分らんな。」
「そうですか・・・・・」
今度は崇彦がため息をついた。
「あの、このスーツについて質問してもいい?」
大輔が手を上げた。
「このスーツを着て念じれば姿形を変化させられるらしいけど、どんなものでも言い訳?」
「無論、何でもというわけではない。主の想像できる範囲のもの。主のスケート力を越えないもの。
そして、過去にこれを使用して変身したもの、の3通りじゃ。」
「へええ・・」
「かなり、話が長くなってしまったか。少し休憩するか?」
それまで黙って話を聞いていた光彦じいちゃんが大きく伸びをした。
しばし、お茶お飲みながらくつろぐ4人。
「(・・・・未来ちゃん、大丈夫かな・・・)」
崇彦の心配が募る。そして
「おれ、ちょっと未来ちゃんの様子見てきます。」
「あ、そうだ。俺も行く。」
二人は連れ立って未来のいる女子部屋に向かった。
「・・・なかなか際どかったな。長老殿」
「ああ、かなり緊張したよ。」
二人の老師は大きくため息をついた。
「若い二人にはまだすべてを話せん。なぜなら、自分の決める道は自分で決めなければならない。」
「今のわしらに出来ることは、あいつらの選ぶ未来を見守ること。決して邪魔をしてはいけないということだ。」
300:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 16:23:29 ryM8fLojO
ランビ宅のほのぼの展開に油断してたら、ニヒルなリスデマンにときめいてしまったw
301:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 16:59:59 Wnu+fMB+0
夢の中に入り込んだジョニ子は、よれよれの音符が飛び交うカリンカの主をようやく見つけていた。
ご機嫌でカリンカ(黒ミサver)を歌うプルシェン子はお花畑でひらりひらりと踊っている。
こころなしかげっそりした面持ちのジョニ子は、「ジェーニャ~~!!見つけ・・・」
と言いかけて声を呑みこんだ。
舞い続けるプルシェンコの前にもう一人の女が現れたのだ。
凶悪な顔をしたもう一人のジェーニャが。
カリンカの歌声は止んだ。
小鳥のさえずりも、木々のざわめきも、全ての音がなくなった。
にらみ合う二人のジェーニャにジョニ子の背中を冷や汗が伝う。
(どうしたらいいのアタシ?あーん、せっかく夢の中に来たのに~~)
302:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 17:31:02 CcKW5u7i0
ふたりのプルシェン子の間にブリザードが吹き荒れる。
「消えなさい。ちょろちょろ邪魔ばかりして」
「おあいにく様。あんたの好きなようにはさせないわよ」
「うるさいわね、いつまでもガキみたいな顔してかわいこぶって」
「なんですって?アタシはね、可愛くて抱きしめたくなるタイプなのよ!
あんたみたいな不感症ババアとは違うわよっ」
「言ったわねムキー」
「やるかこのアマ!」
ふたりが同時に氷の固まりを放つ。
砕け散る氷に埋もれ、周囲の花畑はみるみる凍り付いていった。
ビジュアル的にはFFの召喚獣、シヴァが2人で闘ってるのを想像していただきたい。
「もうちょっとちょっと、あなたたちいい加減にしなさいよ!」
「うるさいわね、あっち行って!」
ふたりのプルシェン子から同時に突き飛ばされて
ジョニ子はプルシェン子の心の中からはじき出されてしまった。
「あーっ、怖かったぁ。寒かったからダウン着ていくわ。
リョーシャ、アタシにイタズラしなかったでしょうね?」
がばっと起き上がりダウンジャケットを着込んで、
もう一度眠りにつくジョニ子だった。
303:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 18:43:04 HKypYcqVO
防寒対策を整えて再度ジェーニャの夢の中へ入り込んだジョニ子。
二人の戦いはまだ続いていたが、冷たい目のジェーニャの勢いがやや強いようだ。
青い瞳のジェーニャはそれでも必死に踏みとどまっていたが、遂に耐えきれなくなり、氷つぶてを受けて吹っ飛ばされる。
倒れているジェーニャに近づく、冷たい目のジェーニャ。
「散々手間をかけさせてくれたわね・・・これで終わりよ。」
思わず身をすくめる青い瞳のジェーニャ。
伸ばされた手が触れようとしてその寸前。
不意にその動きが止まった。
身体が小刻みに震えだし、やがてうめき声をあげながらその場にうずくまった。
304:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 20:04:33 s9mcDaWLO
布袋部屋のリビングにいた光彦は、奥の部屋でギターを弾いている布袋に声をかけた。
光彦「布袋さん、いろいろしていただいてありがとう。
実は車に湯布院の温泉水が積んであるんです。
このスイートルームのお風呂は追い焚きも出来るようだから、お礼にこちらのバスルームに温泉水を沸かしますので、ゆっくり温泉に浸かっていただきたい。いかがでしょう?
なあに、すぐ下の階にいるうちの役員に持って来させますからすぐ沸きますよ。」
布袋「へぇ~それは嬉しいなあ。いいんですか?そんな貴重なものを…」
光彦「なあに、また汲みに行きゃあいい。」
そんな訳で、布袋部屋のバスルームには湯布院温泉と同じ成分のお風呂が沸き、早速布袋はお風呂に入らせてもらう事にした。
老紳士「温泉水を大量に車に積んで来たのか。」
光彦「そうだよ。なにせ最近は滅多に遠出はしないからね。」
バスルームから布袋の鼻歌が聞こえてきた。
305:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 20:23:47 g6qir3O80
(俺はいったいなにをしているんだろう。ここは寒いよ。寒くて、こわい。悲しい。つらい。苦しい。
俺のからだを包むのは、ふだんの俺が持っていない毛皮で、毛皮と云っても、猫とかうさぎとかリスとか、
そんなやわらかいものじゃない。つやつやして、さわり心地がいいものなんかじゃない。俺の毛皮はごわごわしてて、
硬くて、強くて、防寒にはなるけれど、あたたかさなんて感じない。瞼の裏はすこし赤くて、どうしてかっていうと、
俺があたたかい陽だまりにいるからだ。濡れた鼻を、ほんのり花の香りがする風が撫でていく。ランビエールさんの家には、
きれいなきれいな花壇があるんだろう。ここにきて俺は、満足にものを見ていないし、聞いていないし、感じていない。
立ちあがろうって思ったんだ。けれど、すぐに心はくじけてしまう。立ちあがっても意味がないんじゃないかとか、
無駄なんじゃないかとか、そういう、このぬくもりに似つかわしくない、闇のような影のような、仄暗い渦に巻き込まれて、
抜け出せなくなってしまうんだ。
何かしなきゃって思ったのに、俺は結局、なんにもできなかった。
いつもいつも守られてばかり。この姿になってから、ずっとずっと。
ここは寒いよ。故郷の夜みたいだ。空気が凍っている。まるで刺が針のように、突き刺さるみたいだ。
でも故郷と違うのは、空気はちっとも澄みきってなんていないし、星のささやきも聞こえない)
仕方がなかったんだよ。
と、周囲はみんなそう言った。あの状況じゃ仕方がなかったんだ。君はピンチヒッターで、君の相棒は思わぬ棄権となってしまった。
それなのに君は、プレッシャーに負けずに頑張ったじゃないか。落ち込むことはないんだ。
けれどそんな声をかき消すように、聞こえてくるのは、責め立てる声。
『 』
聞きなれた声。見慣れた背中。それから笑顔。
いつも傍にいてくれたあの人は、あの時も、俺を庇ってくれた。
(ヴォロは隠れて!あの人達は危ないわ…!)
でも、俺も、……俺は……
(いいから下がってなさい!)
いつまで守られてれば気が済むんだ?
(ヴォロ、起きて、日本から素敵なものが届いたわ!)
こつん、と、エレーネの鼻先が、額にぶつかる。
素敵なもの?
それはなんだろう。ゆっくりと瞳を開けると、庭先はまばゆかった。
306:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 20:26:43 CcKW5u7i0
>304
もちろんそれは由布院市内のT温泉の湯である。
鼻歌はやがて
「目が、目がぁぁぁぁー!」という絶叫に変わった。
うっかり顔を洗ってしまい目に入ったらしい。
忘れてはいけない、この温泉はpH1.4である。
(※実在する温泉を参考に設定してあります)
ちなみに一般家庭で温泉水を追い焚きすると
風呂釜が傷むのでよい子は決してマネをしないでください。
307:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 20:42:18 kl4oleLY0
深夜。ADSLは一人、手洗い場の鏡の前に立っていた。
「変身」のコツをより深く掴むために…というよりは、もはや好奇心の方が強かった。
「大体トマシュさんの言い方分かりにくいんだよ…ああとかこうとか…もっと具体的に…」
と、目を瞑って開けた瞬間。
「あ」
数秒、時が止まった。男子トイレに女性がいる!…じゃなくて、自分が女性の姿をしているのだ。
それも、キーラそっくりの姿に。ADSLの言葉を借りて言えば、ADSLはキーラに「なった」のだ。
「…やっちまった」
体が震えたが、それはついになすべきことを成し遂げたから、というわけではなく、
何か自分がいけないことをしてしまったような気がしたからだった。
しかしADSLはもはや自分を止められなかった。それじゃあ人種も、と思った矢先に、
彼は高橋大輔に「なって」いた。
―先述の誓いのことは忘れてしまっているADSLだが、
先輩に見つかったら叱られるどころではすまないことは分かっていた。
(トマシュさんにだけ見せたら、すぐやめよう。
多分ウイルスの変身の延長線上のことだ、誰かに言わなくたって大したことない)
そう思いながらもADSLの顔からは冷たい汗が流れ続け、
その心臓は奇妙なリズムで鼓動を打ち続けていた…
308:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 20:55:56 s9mcDaWLO
大輔と崇彦は本とスケート靴、スケータースーツを持って女子部屋を訪れた。
未来はまだ奥の部屋で休んでいたが、リビングではADSL、真央、美姫、ユカ、タラソワがなにやら真剣に話していた。
大輔と崇彦もそれに加わる。
相談の結果、真央が未来を起こしに行く事になった。
真央「ミライちゃん?」
未来「う~ん…まおちゃん…ここはどこ?」
真央「熊本のホテルだよ。気分はどう?」
未来「う~ん。変な夢見たけど…よく寝た~ふあ~ぁ…みんなは?」
真央「リビングにいるよ。起きられる?」
未来「…ん…大丈夫。」
真央が先にドアを開けて、皆に合図をした。
ハッピーバースデートゥーユー♪×2
ハッピーバースデーディアミライ♪
ハッピーバースデートゥーユー♪
女子部屋にいるメンバー全員で手拍子をしながら歌った。
歌が終わると、大輔がろうそくのついたケーキを持って未来の前に差し出した。「未来、17歳の誕生日おめでとう!」
(キャーキャー夢みたい(。≧∇≦。)ダイスケさんがプレゼンテーターなんてっ)
ろうそくをふーっと消した瞬間、ミライが闇に隠れて鼻血を拭いたのはヒミツだ。
309:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 21:04:49 s9mcDaWLO
>>308
は
>>307
の前の出来事です。
310:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 21:13:05 hdlrhYs+0
うずくまった冷たい目のジェーニャは、粗い呼吸をつづけたまま動かない。青い目のジェーニャも、受けたダメージが回復しないのか体を起こそうともしない。
ジョニーは青い目のジェーニャを助け起こした。
「しっかりして、ジェーニャ」
「ああ、ジョニー、なんでここに?」
「私がDIVAだからよ。それより何が起こったの? あの冷たい方、動かないわよ」
「わからない……あ?」
会話の途中で、ジェーニャが上体を起こすそぶりを見せた。ジョニーは背中に手を当てて起きるのを手助けしてやる。ジェーニャは凍りついた花々の彼方、地平線を見つめた。
「エフゲニー」
かすかな声で呟く。ジョニーも同じ方向をみると、エッジが氷を削る音がした。
最初は雪の結晶ほどの大きさだった。それはどんどん大きくなりジョニーとジェーニャの前で止まった。
プルシェンコだった。だが、様子がおかしい。氷上に立つ時と同じ、威厳に満ちた表情の底から、今にも吹雪きそうな悲しみの色が見て取れた。
まるで涙で作った氷の結晶だ。
「ジョニー、どうしてここにいるんだい?」
「あ、貴方が急に寝てしまったから心配で、助けに来たのよ」
声にも、悲しみのブリザードが吹き荒れている。
「気持ちはうれしいけど、帰ってくれジョニー。これは僕の問題なんだ」
プルシェンコはジョニーの腕の中からそっと、もう一人の自分を取り上げた。ジェーニャはプルシェンコを見上げ、その両頬に手を当て
「どうしたの、エフゲニー」
と、母か姉のように聞いた。
「思い出したんだよ。ずうっとずうっと昔のことを。忘れなさいと言われたことを」
プルシェンコは答えた。そして振りかえる。冷たい目のジェーニャが、燃え上がらんばかりの憎悪で、プルシェンコをにらみつけている。
「彼女は、僕の忘れていた記憶と感情だ」
雪がすべての音を吸い取ったように、静かな告白だった。
311:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 21:13:35 g6qir3O80
>>308
ダイスケさんがプレデターなんてっ
に見えてびびったwそんなデーはいやだw
312:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 21:29:10 qnGeM/vJO
トマシュは性別不明部屋で目を開けた。
時計を見るとすでに夜の12時を過ぎていた。
奥から聞こえる声からまだヤグディン達は起きているのがわかる。
天使のミハルは時たま「…ホゥッ!」といいながら居眠りしていた。
ドアを開ける音がした。
音のした方を見るとそこには大輔が立っている。
「ダイスケ、どうかしたのか?」
質問には答えず、彼はトラを廊下に手招きした。
「…廊下に誰かいるのか?」
それともヤグ達に聞かれちゃマズイ話なのだろうか?
不思議に思いつつ、部屋から出ると大輔はニヤリと笑った。
次の瞬間、彼は彼では無くなった。
そこには大輔ではなく、ここにはいないはずのキーラが立っていたのだ。
「は…?な…何だこれは!?」
「…しっ!トマシュさん、声が大きいです…。
俺です、アドリアンですよ。」
次に変わった人物は青ジャージ姿のADSLだった。
いつも通りニヤニヤ笑っているが、どことなくおかしい。
トマシュは寒気がした。
「アドリアン…やっぱり変身は止めた方がいいんじゃないのか?
これは本当に…危険だ!」
「何言ってるんですか?
あなたも進めてたでしょ、酔っ払って忘れたんですか?」
辛そうに笑いながらそういうADSLを見て、トマシュはものすごく後悔した。
313:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 21:42:32 xy0GIQJD0
心配性で割となんでも一人でかかえ込みがちなべるるんがかわいくてしゃーないw
トラも前半に比べてずいぶん活躍してきたし
いつかべるべるコンビの恐怖の合体技を繰り出してくれることをほんのり期待しつつ…ww
トラ!がんばれトラー!
314:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 22:21:44 i+drGjLPO
プルシェンコに帰れと言われてぷうっと脹れるジョニ子。
「ちょっとジェーニャあ。せっかくDIVAのアタシがこんなとこまで来てあげたのにそれはないんじゃない?」
「君の気持ちはありがたいけど、これは僕の問題なんだよ」
しかしジョニ子は引き下がらない。
「そもそもアタシがここに来たのは、ジェーニャを助けてあげなさいって夢でお告げがあったからなんだから!
最近影が薄いし、ここらでいっちょドカーンと活躍して、
皆にアタシが主人公!ってことをしらしめてやろうだなんて、
決してそんな魂胆で来たわけじゃないんだから!!」
(どう考えてもそれが目的だろ…)
仕方がないのでプルシェンコがキャメルスピンでジョニ子を吹っ飛ばそうとしたそのとき、エフゲーニヤがそれを制した。
「待ってエフゲニー。ジョニーを追い返しちゃだめ。彼はきっとあなたを助けてくれるわ」
一方現実のホテルの部屋。
眠ったまま口を尖らせているジョニ子を見て、
「なんかあっちでも揉めてるっぽいね…」
と心配するバトル。
「ああ。でも心配したところで俺たちには手出しできないしな。
せっかくだから今のうちに遊ぼうぜー」
ヤグディンは油性マジックを取り出してジェーニャのまぶたに目を描きはじめた。
「あっあっ、そんなことしたらだめだってばリョーシャー!!」
315:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 22:28:39 CcKW5u7i0
もちろん次に「俺最近、日本語の勉強をしているんだ」と言いつつ
ジョニ子の頬に「ーニョジ」と書くのも忘れない、
ナイスガイなヤグ先輩であった。
316:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 22:34:24 s9mcDaWLO
>>315
しかしヤグ先輩の落書きは日本人が見ると
ーニヨヅ
にしか見えないのだった。
317:氷上の名無しさん@実況厳禁
10/04/16 22:41:02 g6qir3O80
ひどく喉が渇いていた。
いくら吸血鬼状態だったと言えど、昨晩から一睡もしていなかった体は、貪欲に眠りを求める。
意識は睡魔に誘惑されて、引きずられるように体の力も抜けていく。
体の上から重しを乗せられているようだった。そうでなければ、重力に弾かれ、底なし沼に落ちていく感覚。
重しを乗せられたことがなければ、底なし沼に引きずりこともない。思考は靄か霞か――故郷の街を埋め尽くす吹雪に閉ざされたように、はっきりしない。
アドリアンが目を覚まし、聞き耳を立て、そっと毛布をかけていったことも気づけなかった。
にも関わらず、喉元を這いまわる不快な感覚だけは、やたらと明瞭だった。
どくん
心臓が大きく、ひとつ、暴れる。無意識に、鈍った腕を動かし、おかしな鼓動を確認するかのように右手を添える。
それは渇きというよりも、飢えだった。
どくん、と、不規則に鼓動が胸を叩くたび、その渇望は増していく。
ジョニ子の輸血で、症状は軽くなったはずだった。馬刺しも食べた。鉄分は充分に足りているはずだった。
どくん、どくん、どくん
心臓の音が、大きくなるのに比例して、速度が遅くなっていく。
「……喉が乾いたんだ。僕は……血が……」
髪をかきあげ、べるるんは立ち上がる。かきあげた髪は、金から、美しい赤毛に変わっていた。
血が欲しい。どうせなら、美しい女性の血が。どうしてあの時、あの美しい女性の首筋に、この牙をつきたてられなかったんだろう。
アドリアンが掛けた毛布がはらりと床に落ちる。それを胡乱な瞳で見下ろして、べるるんは部屋を出た。
美しい女性は何処にいるのだろう。足は欲求にこたえるように、進んでいく。