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ガバナンス・国を動かす:第3部・中央と地方/5止(その1) 揺れる二元代表制
首長と議会--ともに民意を代表する地方自治体の「二元代表制」が揺さぶられている。震源地は、原口一博総務相(50)の
肝いりで設けられた「地方行財政検討会議」だ。
会議は、地方自治法の「抜本的見直し」による「地方政府基本法」の制定という壮大な目標を掲げている。
今年1月20日の初会合で、筑波大の岩崎美紀子教授(55)は「憲法改正まで射程に入れているんでしょうか」と疑問を投げかけた。
検討項目の一つに、二元代表制の見直しにつながる「自治体の基本構造の多様化」が挙がっていたためだ。二元代表制は憲法93条に
基づいている。原口氏は「改憲というか創憲」と言葉を濁した。
多様化の例として、会議では橋下徹大阪府知事(40)の唱える「議会内閣制」が紹介された。国政の議院内閣制のように、議員を
自治体の執行部に政治任用し、首長と議会が行政責任を「共有」する構想だ。原口氏は「選択肢の一つ」と前向きに評価している。
首長と議会は必ずしも協働関係にはない。名古屋市では河村たかし市長(61)が「市民税減税の恒久化」「議員報酬半減」を
公約したものの、4月21日に議会から否決された。河村氏は「議会は市民の縮図ではない」と反発し、議会解散に向けて署名活動を
開始。「二つの民意」はぶつかり合ったままだ。
鳩山内閣の地域主権改革が進んだ場合、自治体は統治(ガバナンス)の力量が一層問われる。原口氏は、首長と議会の分立が有効に
機能していないとみて「上からの統治機構改革」を提起した。
ただし、橋下構想は議会を首長の下部組織におとしめる可能性がある。2月15日の第2回検討会議では、鹿児島県議会の金子万寿夫議長
(63)が「執行部に議員を取り入れると二元代表制を崩す原因になる」、富山市議会の五本幸正議長(73)も「二元代表制を実質的に
変質させるのは、慎重にすべきだ」とそれぞれ異を唱えた。
3月27日には、広瀬克哉法政大教授を呼びかけ人代表とする「自治体議会改革フォーラム」が検討会議の動きに反応して東京都内で
緊急集会を開いた。この場で三重県議会の三谷哲央議長(62)は「橋下知事は大変危険なことを堂々と言っている。(議会内閣制は)
葬り去らなければいけない」と訴えた。
とはいえ、大多数の住民にとって地方議員の存在感は乏しい。議員の出身が特定業種に偏っていたり、オール与党化して首長の監視機能を
放棄している議会も少なくない。
こうした議会不信を取り除き、首長に対抗する力を強める方策として「議会基本条例」を制定する動きが全国に広がっている。議会活動に
ついて市民への説明義務などを盛り込んだものだ。4月末までに制定した地方議会は104。07年2月、市で初の基本条例を制定した三重県
伊賀市議会には約400自治体が視察に訪れた。
上からの自治体改革か。それとも、下からの活性化か。成熟した民意こそ、その当否を判断できる。
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