10/03/25 15:05:33
少し怯えた感じで話すM君だが、実は彼も現在は鬼軍曹的な立場だという。
「主将のKがあんなでしょ?だから僕が引き締めないとね。今になって少しMさんの苦労がわかりますよ。
僕はあそこまでキツくないだろうけど・・」
そう言い掛けるとM君は突如立ち上がり
「そこー!何をしとるか!グラウンド10週!!」
そう後輩を叱り飛ばした。後輩は返事もせず不貞腐れた感じでグラウンドを走り出した。
「最近の若い奴は態度が悪いんですよ。僕等の頃には考えられない事ですよ」
「この前もノック中に球を顔面にぶつけた奴を注意したら半泣きで睨んでくるんですから」
M君はMより暴力的ではなさそうだが少し神経質のようだ。
彼が神経質になったキッカケは家庭にあるという。
彼は家庭の事情によりある日突然苗字が変わったらしくそのあたりから神経質になったのだという。
「Mさんには3年になってから初めて怒られました。『お前も偉くなったな』と言われたんです。
Kの個人プレーに不貞腐れた僕を一喝してくれました。ああ俺もMさんに怒られるようになったかと思うと
少し嬉しかったな。でも怒られた後『こんな時こそお前がチームを纏めろ』と言われて、ああMさんも変わったな、
大人になったなと思ったもんですね」
最後にM君にも同じ質問で締めくくった。
「もう一度Mの下で野球やりたいと思うかい?」
M君は即答に近い形で答えてくれた。
「やりたいっすね。今ならMさんも僕の事わかるだろうし。墨谷に入れたら今度は最初から怒って貰えるんじゃないかな」
こう言いながら罰走している後輩を蹴っ飛ばして練習へ戻っていった。
「Mの下ではやりたくない」
こういう返事を期待した私は鬼軍曹で有名なM君にMッ気がある事を図らずも悟ってしまった。