09/11/09 23:15:52
「で、どうすんのこれから。あたしもう会場に入るのはご免蒙るわよ」
「私も嫌だな……ま、二人は先に来たときの車で帰っていいわよ。後は私が何とか
しとくから」
「その『何とか』だけどさ、このお礼は三倍返しじゃ済ませて欲しくは無いわね」
「何も知らない民間人巻き込んでこんな茶番仕込んだんだから、勿論タダじゃ
終わらせないわよー」
「おぉー、期待してるわよ作戦部長」
「まっかせなさいな。そんなわけでシンちゃんも心配しないで今後は……」
「もうやめて下さいよ!」
屯している集団の幾つかがシンジの叫びに振り向いた。
ミサトとアスカはシンジの表情に我に返って、ばつが悪そうに目線を反らす。
誰も何も言い出せずに数瞬が過ぎて、最初に行動に出たのはミサトだった。
「じゃ、後は任せて……」
そう言い置くと、行きたくないと言っていた会場内にそそくさと消えていった。
『ミ・サ・トぉ……逃げたなぁ!』
取り残されたアスカは必然的にシンジと対峙することになる。
とはいえシンジの気持ちを上手く汲み取る手段なんて、アスカには全然と言って
いいほど持ち合わせていない。その上後ろめたい思いが足を引っ張った。
いつものような強気な出任せでも言おうとした気力は、シンジの責め立てる視線
に消され、それでも尚対応を考えているうちに、慣れない髪型がやたら気になって
むずむずしてきた。
『ええい!もうなるようになれ!』
そう思って無造作にカチューシャと髪留めを抜いて頭の重心を低くする。
「あ……」
予想の範囲外のアスカの反応にシンジが戸惑っている隙に、アスカはさもあたり
前のようにつかつかと車へ向けて歩き出した。
立ち尽くすシンジにアスカは面倒くさそうに声をかける。
「何してんの、早く行くわよ……」
454:543
09/11/09 23:19:09
それでは今宵はこの辺で。
なんか感想レス増えてびっくりしてますが、中途では放り出さずに
完走はすると思いますんで、見捨てずに読んでいただければ幸い。
455:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/09 23:36:55
だから、どこがLASやねん。
456:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/10 00:26:17
GJ
457:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/10 00:40:35
>>453
[゚д゚]ゞ <デフラグ完了
/[_]
| |
!!!!、、、、、、、、、、、、、、、。。。。。。。。。。。。。。
「「「「「「「「「「」」」」」」」」」『『『』』』・・………………………………
ぁあああいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい
うううううううううううううえええええぉぉおおおかかかかかかかかかか
がががががががきききききぎくくくくくくくくくくくけけけけげここここご
ささささささささしししししししししししじじじすすすすすずずずせせせせせせせ
そそそそそそそそそそたたたたたたたたたたたたたたたたただだだだだちちちちち
っっっっっっっっっっっっつつつつつてててててててててててててててててててててて
でででででででとととととととととととととととどどどななななななななななななななななななな
にににににににににににににににににににににににね
のののののののののののののののののののはははははははははははははははばびへほ
まままみむむめめめめももももももももももももゃゃゃゃややよよよよよよよよよ
らららららららりりりるるるるるるるるるるるるるれれれれれれろわわわわわわわわわ
をををををををんんんんんんんんんアアアアアアカカカカカカカサササ
シシシシシシシシシジジジジジジジススススススタダチトトトミミミャュンンンンンンンン
悪囲引応応下何何何何何過我会会外巻慣間幾期帰気気気気汲叫強型隙嫌言言言言言
戸後後後後向向考行行行合込込今最済作作三残仕思思私私視持持車車取取手手終集
重出出出出瞬初尚消消上上場場情心心振人人尽数声責先戦線線前然然全想早造足対
対待誰団段知置茶張長低的倒逃頭動屯内二入任任配倍髪髪抜反反範番必表部返返歩
民無無免面蒙目勿予欲来立立留力礼論惑峙ーーー
458:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/10 01:44:34
>>457
ひでぇwwwww
459:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/10 02:03:27
乙
展開まったく読めないなw続き楽しみに待ってる!
460:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/10 02:11:22
>>457
デフラグさんワラタw
461:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/10 06:52:04
これも十分LASだろ
462:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/10 12:42:39
本当にどうなるの?
気になって夜も・・眠れる。
463:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/10 13:11:28
GJ!さりげなくアスカがシンジを、シンジがアスカを気遣うような部分が良いですね
こういう場面でのゲンドウは頼りになるがエグいw
464:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/10 19:40:30
ゲンドウが態々、葬式に行くってのは如何かな?まぁ、そんな事言いだしたら
派生なんてできないけどね
465:543
09/11/12 00:37:16
毎度毎度皆様こんばんわ。
変わらず続き投下いたします。
賛否も色々頂いて有難い限りですが、プロットで
大筋書き上げて変えるつもりもないので反映できず
申し訳ないです。
それでは以後、薄味LASイラネ的な方々のNGワード
経験の唄
で御願いします。
466:経験の唄
09/11/12 00:38:07
*
「アパートに行かなくていいわ。御殿場駅まで送ってちょうだい」
「え?しかし……」
「いいからやって」
「は、かしこまりました……」
「あ、アスカ?」
「アンタにも付き合ってもらうわよ。どうしても真っ直ぐ帰る気になれないの」
抗議しようとしたシンジは、アスカの顔を見た途端にその気が失せた。
ミサトと対等に話し、シンジを叱咤激励し、会場では咄嗟に庇おうとした
アスカはそこにはいなかった。
シンジと同じように苦悩と悔しさと後悔を滲ませ、ぶつけ所を失った爆発
しそうな感情の渦をひたむきに押さえ込んでいるようにシンジには見えた。
塞ぎこんで落ち込んでいたシンジの気分が、単純なことを見逃していた。
『そうだよな……アスカもパイロットなんだよな……』
口でどんな強がりを言っても何も感じていない訳もなく、冷静に割り切って
受け止められる訳でもないのだ。
「わかったよ……」
「悪いわね」
「いいさ。僕も、なんだかすぐに家には帰りたくないや……」
「……別に、あたしに合わせなくてもいいのよ」
「ホントだって。」
「信じらんないわよ、そんなおべんちゃら」
「ホントだよ」
「信じない」
「ハハ、別に信じなくったっていいよ」
『そう言う言い方されると、私のほうがバカみたいじゃない……』
いや実際バカかもしれないと思いながら、アスカの口元に少し笑みが浮かぶ。
シンジはそれに気付きもせずに、一度もこちらを向いてくれないアスカの
背中をじいっと眺めていた。
……だからアスカは振り向けないのだけれど。
467:経験の唄
09/11/12 00:39:10
ハイヤーの運転手は最後までこれでいいのかという顔をしつつ、きちんと
御殿場駅まで送ってくれた。
車から降りてひと伸びしたアスカを、シンジは黙って見つめる。
「どうする?これから」
「まずは昼ご飯ね。何するにしてもお腹へってたら気合入らないもの」
「もう1時か。言われてみるとお腹減ってきた」
「いい反応ね。あんまり長いこと辛気臭い顔しててもいい事なんてないわよ」
「わかってるよ……」
アスカがばちんと叩く背中の感触も、今日は何かの救いのようにシンジは感じた。
駅ビルに二人で入ると、よく利いた冷房で体が少し震える。
「アスカ、何にする?」
「ん、オムライス食べたい」
『迷いが無いよなー、いつも…』
シンジの何食べたいの問いに大概アスカは即答する。
もっとも、即断即決が過ぎてシンジが一方的に振り回されることも多いの
だけれど、シンジはそれにはあまり気を留めていない。
上手い具合にあったオムライス専門店に入り、お互い自分の好きそうな品物
を注文した。
「あたしはこのケチャップのやつ」
「んー、じゃあ僕はこのチキンとほうれん草の照り焼きクリームソース」
「かしこまりました、メニュー繰り返します……」
ウェイトレスがオーダーを繰り返している間、アスカはシンジの頼んだメニュー
を見本写真と共に見返す。
「どうしたの?」
「何がよ」
「頼んだ後でメニューじっと見てたから、何かあったのかなって」
「なんか、あんたの頼んだの方が美味しそうな気がして……」
アスカは自分の意地汚さを自覚して、何となく目線をシンジから逸らしながら
呟いた。
「あるよねそういうの。じゃあアスカ、どっちも半分こしようよ」
「え?」
『そ、それは何て名案!』
468:経験の唄
09/11/12 00:40:24
心の中で叫んだアスカの快哉は、表に出るときは『多少喜んだ感じ』に減殺
されている。シンジにはそれでも反応としては十分だったみたいだ。
「……いい?きっちり均等に半分こよ!」
「大丈夫だよ。多い方はアスカにあげるし」
「なにそれ、あたしが食い意地張ってるような言い方しないでよ」
「別にそんなんじゃないって」
「うそ臭い……」
「ほ、本当だってば……」
アスカの追及を逃れるべく、シンジはアスカの前に開いているメニューを
あちこち指差しながら「これどんな味なんだろ?」「カルボナーラ風ってなん
だろね?」などと一々問いかけた。
多少アスカは鬱陶しく思いながら、シンジの問いかけに淡々と答えては、言葉の
接ぎ穂を失って言い淀むシンジを眺めていた。
『ばーか。メニューの講評よりも、今日助けてくれたアスカさんに一言くらい
欲しいものね……』
触れられたら逆切れするのを自覚しつつ、生返事をしながらアスカはそんな事を
考えていた。
「アスカ昨日帰ってくるの遅かったけど、ここのビルに来てたんだったりして」
些細な受け答えの最中、無邪気に軽口を言うシンジに、アスカは虚を突かれて
思わず「そうよ」と答えてはっとする。
「あ……」
二人同時にそう口にしてから、そのまま二人で固まった。
……実はアスカ、この駅ビルにはつい昨日来ている。
ミサトにからかわれた化粧品を見立ててもらって買った店は、この上の階にある。
何となく気恥ずかしくてそのことを黙っていたのだ。
気まずい時間が流れる中、先ほどのウェイトレスが注文の品をもってきた。
「お待たせしました――」
469:経験の唄
09/11/12 00:43:40
我慢し切れなかったアスカは、昨日ここのビルに買い物に来て、オムライス
専門店というフレーズにすっかりやられてしまった事を、ぽつりぽつりシンジに
説明した。
シンジはそれにくすりと笑ったきりで突っ込んで聞かなかった。
「しかしさあ、あんたが作ってくれれば外で食べる必要ってないんだけどね」
「流石にハードル高いよ。こんな感じでふわふわのとろとろはまだ作れないや」
「お弁当に入れてくれてもいいんだけど」
「ごめん、それもっとムリ」
「わかってて聞いてんのよ、バカ」
食べ物の力は偉大だった。約束どおりお互い均等に半分ずつオムライスに舌鼓
を打ちながら、お互い機嫌がいい時の穏やかな会話が続く。
満足して食べ終わるとアスカはさっと席を立ってしまい、慌ててシンジも
追いかけて会計を済ませた。何となく居場所を見つけられずに駅ビルを出て、再び
むせるような暑さと湿気が纏わりつく。
「どこに行くっていうのよ……」
アスカは露骨に不機嫌になる。さもシンジのせいでこんな目にあっていると
言わんばかりの態度だ。
律儀に自分の責任を感じたシンジは、この宙ぶらりんな状況を何とかしようと
頭をフル回転させていた。
「アスカ、カラオケ……」
「アンタばかぁ?日本語のテロップ出てくる上に知らない歌ばっかりのところに
あたしを連れてってどうしようってのよ!」
「じゃあ、映画……」
「却下!ていうか、つまんない映画だったらあたし多分映画館で叫ぶわよ?」
「なんで叫ぶんだよ!」
「気に入らなけりゃ文句を言うのが当たり前じゃない!」
「いや、意味わかんないし。あ、それじゃビリヤードとか……」
「なんかキューでアンタ殴りそうだからやだ」
「じゃあどうするんだよもう……」
470:経験の唄
09/11/12 00:46:07
『デートメニューには期待してなかったけど……』
シンジにこの先どうするかを考えてもらうのは無茶があると知りつつ、自分で
考えるのは嫌なのでアスカはこうやって甘えている。
何度かシンジの献身ぶりに見返りがないという事は言ったはずなのに、シンジ
はまるで自分の態度を変えない。
バカな奴と思っていたその行為が、アスカの心を少しずつ溶かしていった。
気付かないうちにその態度はアスカの中で『当たり前』のものになり、無意識
のうちに『当てにしている』ものになっていた。
「ねえ、他に何か無いわけ?」
「うーーん……」
困惑を全身で表現するシンジに少々愛想が尽きたアスカは、何の気なしに周囲を
眺め回す。
少し繁華街から外れると、街は急速に退屈なる。
諦めて第三新東京市まで帰ろうかと言おうとしたとき、遠くから甲高い金属音が
して、ふと音の方向を振り返った。
音の先には、低いビルの屋上に緑のネットを張った建物がある。
何だろうと眺めているとき、また同じような金属音がする。
「シンジ、あれ、なんなの?」
「あれ……って、あのビルの屋上の?」
「他に何があるのよ?」
「あー。バッティングセンター……かな?」
「はぁ?なにそれ?」
「えーと、何て説明すればわかってもらえるんだろ……」
「?」
471:543
09/11/12 00:49:14
今日はここまでで。
少々長くなりますが、次回で終了できるかと思います。
それではまた皆様ごきげんよう。
472:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/12 02:12:47
気になるがなー
473:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/12 07:48:53
乙
なにが始まるの?
何か・・好きだ、この話が。
474:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/12 18:49:43
良いね。続きを楽しみにしてるお
475:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/12 23:03:22
このgdgd感では次回で終わらない方に賭けたいw
476:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/13 18:11:41
別に無理して終わる必要もないし
477:543
09/11/14 00:55:36
皆様こんばんわ。
予告どおり最終投下行かせて頂きます。
ただ今回十レス越えちゃうと思うので、支援途中であると嬉しいです(このレス含む)。
それでは以後、
・バッティング理論に一家言ある方
・帰宅の電車で取り返しのつかない乗り過ごしされた方
のNGワードは
経験の唄
で御願いします。
478:経験の唄
09/11/14 00:56:35
*
「つまり、飛んできた球をバットで打つ。要はそれだけの事なのよね?」
「うん、簡単に言うとそうなるんだけど……」
「簡単この上じゃない。問題ないわ。さ、行くわよ」
「い、行くの?」
「話聞いてると結構スカッとさせてくれそうな感じだし、当然よ」
『いや、確かにきちんとボールをバットに当てればそうだけど……』
シンジにでも、アスカはまず間違いなくまともにかすりもしないと予想できる。
そんなシンジの危惧は無視して意気揚揚と赤毛の少女がバッティングセンターに
喪服で乗り込む。
入口で退屈そうに新聞を読んでいたおじさんが、アスカの格好と前のめりな勢い
に呆然としながら姿を見送った。
「ところでこのケージ、何か違いがあるの?」
ズラリと並ぶ扉を右から左に一瞥して、アスカがシンジに尋ねた。
「えっと確か球の速さとか球の種類が違ってたはずだよ」
「へぇーえ、じゃあ一番球の速いケージってどれよ?」
「あ、あのアスカ……初心者なんだしせめて最初は球速遅いやつから……」
「あんたバカ?あたしらの仕事はいつだってぶっつけ本番でしょ!だから最初に
一番難易度高いとこぶつかってそれをモノにする。それがパイロットってもんよ!」
『その持論に僕を巻き込まないで……』
容易に予想できるその後の展開を憂鬱に思いながら、渋々『球速150km
ピッチャー野茂』のケージにアスカを案内した。
シンジの説明に従って投入口にお金を入れてバッターボックスに立つ。
投球口のスクリーンにピッチャーの姿が映し出された。
「へーえ、本格的ね……」
感心してそう呟くアスカは、見よう見真似のフォームで来る球を待ち構える。
『あ、手の位置逆だ…』
「アス……」
ズドンッッッッ!!!
479:経験の唄
09/11/14 00:57:22
シンジが声をかける隙もなく、悠々と構えていたアスカの余裕を全て打ち砕く
勢いで、白い楕円の物体が猛スピードで通過した。
それから後はもう大変だった。
球速にびびったアスカはボックスに棒立ちになり、シンジが慌ててケージ内に
入るまで足がすくんで動けなかった。
それこそシンジがバットの持ち方から立つ位置まで教えたが、アスカは丁寧
にシンジにバットを託すと一目散にケージの外に消えた。
『えー………』
仕方無しにバットを構えるシンジの肘の下を風切り音と共に白い楕円体が過ぎる。
『あははは、ムリ』
バットを振り抜くのを諦めると、シンジはバットを平行に差し出した。
それだけでも威力は半端なかった。辛うじて左手に残ったバットと、両腕を襲う
強烈な痺れが暫く取れない。以降はバットに当てることも出来ずにケージを出た。
少々ばつが悪そうなアスカは、そのあと結構素直にシンジの助言に従って
『80km ソフトボール』のケージに移動した。
「まずは止めたバットに当てて感触味わってみるのもいいと思うよ」
「そ、そうね」
先ほどの鬼球速にびびってしまったのか、アスカはかなり腰が引けている。
バットはわざと当たらないように工夫しているんじゃないかと言う疑い
すら思い浮かぶ、ぎこちない持ち方だった。無理矢理ケージの中で付き合わ
されているシンジも、溜息交じりにバットに手を添える。
「ほら、ちゃんと平行に持たないと当たりにくいから」
「う、うん」
シンジの手がアスカの手を支えるように添えられたバットが、飛んできた
ボールを力なく受け流す。
「わ、わぁぁ!」
アスカがすぐさま手を離し、簡単に二人の手からバットが落ちた。
「ダメだよちゃんと握ってないと」
「わ、私に当たったらどうしたらいいか判らないじゃない!」
「よければ…いいと思うよ」
480:経験の唄
09/11/14 00:58:41
なんか昔誰かに似たようなことを言ったなと思いつつ、シンジはアスカの
後ろに回りこむ。
「アスカ、ちゃんと支えとくから逃げないで、集中してよ」
「な、ちょ……!」
おそらくはシンジは純粋に手助けのつもりなのだろうが、アスカに覆い被さる
ようにバットを握っていると、否が応でも体が密着する。必死になっているシンジは、
自分の行動があまりわかっていないらしい。
『ど、ど、どっちに集中しろってのよ―ー!』
首筋からお尻にかけて存分にシンジの感触を味わいながら、アスカは
一人で混乱して興奮していた。
その時間を打ち破ったのは、シンジに握られた両手に痺れるような衝撃が
走ったときだった。
鈍い打撃音と共に、捕らえたボールは転々と地面をマシンに向けて転がって
ゆく。
「お、おぉーーーー……」
アスカは呆然と転がるボールを眺めて、もう一度手に残った痺れを味わう。
『いい、これいい』
浸っている間に投げ込まれた一球を余裕で見逃し、球の来る方向を見据えて
アスカはバットを差し出す。今度は打球がケージの上で跳ね返って落ちた。
「シンジ、これ面白い!」
「そ、そう?」
感触がどういうものかが解ると、不安や恐怖は途端に薄れたようで、
アスカは当てるだけだったバッティングが、段々おおきく振りかぶって
構えるようになった。
このケージに入ってコインが三枚目になる頃には、アスカは一心不乱に
ボールを追いかけ始める。自然に左足がステップすることを覚え、顔には
シンジの見慣れた獰猛さが顕れてきている。
すっかり夢中になったアスカからそっと離れると、シンジはケージの外に
出た。
481:経験の唄
09/11/14 01:00:15
『やっぱアスカは運動神経いいなあ……』
気付けばアスカは立ち位置はバッターボックスの中でもベース寄りに
移っている。
ボールも段々正面に飛ぶようになり、当たりもライナー性のものが
混ざり始めた。
「えいっ!」「やっ!」「この!」
当たりが良くなるに従い、アスカが打つたびに気合と共に叫ぶように
なり始めた。
「あんたもやってみれば?楽しいわよ」
段々自信もついてきたのか、清清しい顔でケージから出てきたアスカはそう
シンジに提案した。休む間もなくもっと早い球を打つためにアスカは『110km
スライダー 渡辺俊』のケージに向かう。
「えー、あまり自信ないんだけどなあ…」
と呟きつつ、シンジはアスカの手前の『100km ストレート 岸』の
ケージに向かった。シンジも何だかんだと楽しくないわけでもないらしい。
アスカは映し出される画像に三球くらい面食らったあと、画像よりボールを
追いかけはじめて、打球がガンガンスピードを上げていった。
2回目のコインを入れる頃には大体のコツを掴んだらしく、アスカの打球は
大体前方に飛んでゆく。
「ふう……」
画面が切り替わって東急終了になると、シンジは目の前で一心不乱にバットを
ぶん回すアスカを眺めた。心なしか、その様に鬼気迫るものを感じる……
そう思った矢先にアスカが呟く。
「戦自の……」
タメのあと、叫び声と共にアスカは一気呵成に力を解放する。
「バッカヤロォーーー!」
金属バット特有の爽快な打撃音。アスカは両手から体を突き抜け、その衝撃を
存分に味わう。
482:経験の唄
09/11/14 01:01:32
フルスイングで雄叫びを上げるアスカの背中が、シンジの中の何かを燃え
上がらせた。
『良く恥ずかしくないなあ…でもなんかいいかも……』
なにか浮き浮きしながらシンジはコインを投下する。
何故だか球筋がさっきとは比べ物にならないくらいはっきりしていた。
シンジがバットを構えると、タイミングを取りながらステップを踏んで
思い切り振り抜く。
軽快な金属音を震わせて、ボールは弾丸になってホームランの的の下まで
飛んだ。
「っっしゃあ!」
思わず叫んだその声にアスカが振り返る。
それで怖じ気づきそうになったシンジに、アスカはにやっと笑って向き直り、
さっきよりも張り上げる声が大きくなった。
「どぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁ!!!」
力み過ぎて空振りしたアスカは、悔しそうにバットで地面を叩くとすぐに
また構えた。
『っはは!凄いなアスカ……』
なんだかシンジも楽しくなってきて、いつもの弱気が消し飛んでしまい、
いつしかアスカと競うように声を張り上げて球を打ち返していた。
たまにお互いの意味不明な叫び声に滑稽さを感じながら、二人とも相手を
からかう事もしなかった。
……なんで大騒ぎをしているのか、その理由が同じだったからだ。
483:経験の唄
09/11/14 01:07:06
*
「あはは、僕もう肩が抜けそう」
「あたしも明日の筋肉痛が怖いわ……」
「アスカ、明日は女子の体育バスケじゃなかった?」
「うぁ……」
二人がバッティングセンターを出たのは、もう学校帰りの学生たちがちらほら
他のケージに入ってくるようになった夕方四時ごろだ。
よくもまああんなに長い事いたものだと話しながら駅まで帰り、今こうして
電車を待っている。
「またこようねアスカ」
「そ、ね。ストレス溜まったら来るといいかもね」
「そういえばアスカ、凄い叫んでたもんね」
「あ、あんたも人のこと言えないじゃないの!」
「他の人迷惑して無かったかなあ?」
「知ったこっちゃないわよそんな事。店の人も何も言わなかったし、いいんじゃ
ないの?」
ホームラン賞で貰った金属バットを足でコンコン叩きながら、アスカは上機嫌
だった。
「若いっていいねえ」
そう呟いたおじさんの言葉にシンジは意味深なものを感じていたが、アスカは
額面通りに受け取ったらしい。
乗り込んだ電車の中はまばらに乗客がいるだけで閑散としていた。
そろそろ低くなり始めた太陽光線が窓から飛び込み、二人の視界を狭める。
発射のベルが鳴って扉が閉じ、ちょっとした静寂のあとで低いモーターの唸り声が
響き、電車の振動が小刻みに体を揺らせた。
心地よい疲れに浸っている中、二人の会話は途切れた。
たまに線路沿いの建物が、オレンジに染まる車内に影を投げかける。
「あんた…………エヴァから、降りる?」
頬杖をついて窓の外に顔をそむけるアスカが、ポツリとシンジに聞いた。
ストレートな質問にシンジは困惑しながら答える。
484:経験の唄
09/11/14 01:09:25
「え……と、そう言われると考えちゃうな……」
「なんか、今日の事でそんな事言いだしそうな気がした……」
「……」
「あたしは止めないからね。自分で考えてよ」
アスカの表情はシンジの位置からは窺い知れなかった。
電車は山越えに入り、トンネルに突入した衝撃音の後で、車内にまた静寂が
訪れる。
真意は測りかねたが、今日の一日の流れからシンジも存外素直に心のうちを
吐露できた。
「最初にエヴァに乗ったときの戦闘で、トウジの妹が怪我したんだ」
「……」
「それで、会った初日にトウジに殴られてね……まあ、それは仕方ないと思う」
「まだそれ尾を引いてるんだ?」
「ううん、トウジとはその後の使徒の戦闘とかでも色々あって、今は何とも
ないんだ。それよりも殴られた後のやりとりの方が今から考えるとひどいなって」
「また殴られたとか?」
「うん、そう。『僕だって好きでエヴァに乗ってるんじゃない』って言った瞬間に、
ガーーンって」
「あんたってホントに馬鹿ねぇ…殴られて当然じゃない」
「あははは、僕もそう思う」
アスカはやっとシンジに振り向く。その顔は暴言の割にシンジにもわかるくらい
安堵が滲んでいた。
「なぁんだ、じゃああたしが今日わざわざ釘刺す必要もなく覚悟は出来てたって訳ね」
「いや、そんな事無いよ。やっぱりああ言って貰わないといろいろ恐かったし。
その……アスカがいてくれて助かったよ」
そう言ってにこやかに感謝するシンジに、アスカは何も言い返せなくなって沈黙
で答えた。
あとに続く無言の時間は、少し居心地が悪く感じながらも、二人とも嫌では
なかった。何も喋らなくても、横に戦闘の相棒がいる。立場を理解できる唯一の存在が
そこにいる。それだけで充分だった。
485:経験の唄
09/11/14 01:11:46
ぼうっと流れる景色を眺めていたアスカに、暫くしてシンジの頭が肩に乗りかかって
きた。
吃驚して見たシンジの顔は、無防備で締まりがなくて、それがアスカにはどこか
安堵を感じさせた。
『しょうのないやつ……』
そう思いながら前髪をつついて、眉をしかめたり寝返りを打とうとするシンジを
見遣る。自分の顔が今まで人に見せたことのない優しさを醸し出していると、当の
アスカは全く知らない。
……今日一日怯む心を思い止まらせたのは、アスカにとってはシンジだった。
出かける前の照れくささも、葬儀会場の敵意も、バッティングセンターでの怖気
づきも、自分ひとりでは乗り切れても、今のような気分にはなれなかっただろう。
『誰かがいるっていいもんだわね……』
肩にかかる体重と体温。嗅ぎ慣れた髪の匂いに、仄かな汗の匂いが混じっている。
いつの間にアスカも疲れが出て眠り込んでしまい、気がついたときには夕闇に
染まる芦ノ湖を眺めていた。
シンジの髪についたヨダレを咄嗟に拭うと、文字通りシンジを叩き起こして一通り
詰った後、次の駅でホームに下りた。
跨線橋を渡り向かいのホームに移動すると、手近なベンチに二人で座る。
乳白色の西の空が闇に溶けようとするのを、シンジがぼうっと眺めていた。
自分が隣にいるのに空を眺めるシンジにアスカは少し不満だったが、『ま、いっか』
と思い直して同じように空を見た。
時折視界を蝙蝠が横切り、闇と静寂が深まるにつれて、ホームの照明がぎらぎらと
輝きを増す。スピーカーから機械的な女性の声で電車の到着を予告し、微かな轟音が
段々と近付いてきた。
立ち上がったときに二人同時にミサトからのメールが入った。
486:経験の唄
09/11/14 01:14:45
『ゴメン!今日も本部に泊まり!!それはそうと保安部から報告聞いてるけど、
二人ともとっとと家に帰りなさい!
追伸:戦自よりさっき報告あり。戦闘時避難誘導に1個連隊派遣。善通寺の精鋭
部隊らしいわよん
以上!』
「よかったねアスカ」
携帯を閉じたシンジがにこやかにアスカに話しかけると、当のアスカは難しい顔で
まじまじと携帯画面を凝視していた。
「漢字多くて追伸のほうがちょっと意味不明……」
「あ、それなら避難誘導に戦自が部隊派遣してくれるって内容だよ」
「へーえ、…………そっか。ミサト、頑張ってくれたんだ」
「うん、そうみたい」
ちょうど開いたドアに合わせて二人で車内に入り、適当に座った座席でも、二人は
さも当たり前のように肌が触れ合う至近距離で座った。
不意にアスカがかざした左手を、シンジが同じく左手でハイタッチをした。
車内に小気味いいぱちんという音が反射し、誰もいない車内に響く。
―すっかり日の落ちた窓の向こうには、自分たちが守った街並みが光の帯になって
横たわっていた―
<<劇終>>
487:543
09/11/14 01:22:27
あれ?ちゃんと投下できた……?
まあいいやw
以上で終了です。
出てくる設定やキャラの動きが何かあるようでそうでもない、微弱LASに
お付き合い頂いた皆様ありがとうございます。
さすがにこう長いのは今後はあまり書かないと思います。
時間あるときにぼちぼち書いていきたいと思いますので、そのときにまた
皆様にお付き合いいただければ幸い。
それではまたの機会に。 ノシ
488:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/14 02:04:27
GJ
489:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/14 02:09:49 UJb4+3zz
同人キャラっぽくなくてよかたよ
490:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/14 03:17:09
なんかこう……アップルティーの香りのような甘さだな
491:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/14 03:39:03
いいね。思った以上に面白かった
こういう爽やかな感じもいいね
GJ&乙でした。新作投下も気長に待ってるぜ
492:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/14 06:19:33
GJ面白かった
493:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/14 07:13:25
ホームラン賞でバットが貰えるのか…
494:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/14 11:42:25
ホームラン賞で金属バットw
なんちゅう商売だ。
495:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/14 12:24:56
GJです。
いいねぇ。大好きです
496:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/14 21:35:20
>>487こんなところで善通寺の名前を聞けるとは…
学生時代を思い出しますた
497:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/15 12:37:28
GJでした!
ほぼアスカとシンジしか出てないのに甘すぎないのは、2人の間に流れる爽やかな雰囲気がそうさせてるんでしょうね
癒やされました
498:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/17 05:40:22
いときおまだかのぅ
499:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/17 16:55:28
俺もいときお町~
500:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/18 01:16:53 Bp/Ahb37
マイナーなギャルゲーSS祭り!変更事項!
1. SS祭り規定
自分の個人サイトに未発表の初恋ばれんたいん スペシャル、エーベルージュ、センチメンタルグラフティ2、canvas 百合奈・瑠璃子シナリオ
のSSを掲載して下さい。(それぞれの作品 一話完結型の短編 10本)
EX)
初恋ばれんたいん スペシャル 一話完結型の短編 10本
エーベルージュ 一話完結型の短編 10本
センチメンタルグラフティ2 一話完結型の短編 10本
canvas 百合奈・瑠璃子 一話完結型の短編 10本
BL、GL、ダーク、18禁、バトル、クロスオーバー、オリキャラ禁止
一話完結型の短編 1本 プレーンテキストで15KB以下禁止
大文字、太字、台本形式禁止
2. 日程
SS祭り期間 2009/11/07~2011/11/07
SS祭り結果・賞金発表 2011/12/07
3. 賞金
私が個人的に最高と思う最優秀TOP3SSサイト管理人に賞金を授与します。
1位 10万円
2位 5万円
3位 3万円
501:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/20 00:50:54
いときおさんまだ~(゜∇゜)?
502:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/21 19:59:40
しつこい
503:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/25 23:53:55
まち
504:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/27 03:23:24
気長に投下街
505:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/27 20:35:06
17スレ目>>132の続き待ち
506:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/27 22:11:00
>>505
>>133
507:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/29 17:41:34
ちがう
ここ21スレ目
508:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/11/29 19:09:59
死んだ子の歳を数えてもしょうがない。
509:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/03 20:18:17
今年は来るかな?
510:パッチン
09/12/04 14:18:45
綺麗に、そして可愛くデコレーションされたケーキがアタシの目の前に。
妙にキラキラしてるのはケーキが輝いてるから?それともアタシの目が輝いてるから?
赤いイチゴと白い生クリームが彩る甘いケーキは、ロウソクの小さな炎に照らされ、少し幻想的でもある。
そしてそれらに囲まれる中央部分で、チョコレートクリームが幸せの言葉を作っていた。
お誕生目おぬでとうアスカ
「ごめんね、手作りだから上手く書けなかったけど…」
「ば、バカ。こういうのが良いのよっ」
申し訳なさそうにテレた笑みを浮かべるシンジ。
でも完璧じゃない…むしろ失敗した文字の方がシンジの可愛さを更にアップさせてるのよ。
ああ、そんなに顔を赤くしないでよ…。
その染まる頬に目立つ白。
アタシは立ち上がって、彼のほっぺについた生クリーム…舐めてあげちゃう。
「あ、アスカ!」
「・・・シンジって甘いね」
あはは、とうとう真っ赤になっちゃった。
ねえねえシンジ?幸せだよね?
アタシはすっごく幸せだよ?
「プレゼント欲しいよぉ…シンジぃ」
「う、うん」
両肩にシンジの手が置かれる。
ゆっくりと顔が近づく…。
キスキスキス…キスしちゃう。
511:パッチン
09/12/04 14:20:01
あ・・・れ?
唇にフニャンとした感触が来ない…
目を開くとそこには困惑したシンジの顔がある。
「あ、アスカぁ…キスできないよ」
「な、何ですって!」
ヤバいヤバい!この感覚は最近よくある!
アタシはいつものように右手でパーを作り、思いっきり自らの頬をひっぱたく。
感覚無し
ヤバいヤバいヤバい!
焦るアタシ…今度は両手でグーを作り、自らの体中を滅茶苦茶にポカポカ叩く。
ふはは、痛くも痒くないわ
やだやだやだやだやだっ!
かくなるうえは、左手をチョキにして自らの両目に…
「す、ストップストップ!アスカもうやめてよ!」
「や、やだぁそんなわけない!痛いはずなんだからぁ!」
前から抱きつくように制止してきたシンジを半狂乱になりながらアタシは振り払おうとする。
「し、シンジお願い、生爪を剥がして!流石に痛いと思うの!」
「いい加減にしてよアスカ!もう朝なんだよ!
これは・・・夢なんだから!」
すると一瞬大好きなシンジの顔がぼやけて・・・大嫌いな朝日。
知ってる天井。
12月4日の朝という現実がアタシを包んでいた。
512:パッチン
09/12/04 14:21:22
『アル日のバースデイコール』
「おはよアスカ。お誕生日おめでとう」
「あ…うん」
「ミサトさん今日は早いらしいから、もう出ちゃったよ。帰りにケーキ買ってきてくれるらしいから」
「はいはい…」
いつものように眠そうにシンジの言葉をあしらいながら、アタシは朝食の並ぶテーブルにつく。
特別な日なのに当たり前のように振る舞う。バカだなぁ
なに大人ぶってるんだろ…。夢の中みたいに甘えたいのに。
和朝食がセオリーの葛城家の食卓。
今日はハムエッグに…トースト。ジャムはアタシの好きなオレンジ…。
「何コレ、誕生日プレゼントのつもり?」
「え?い、いやそうじゃなくて…」
「安上がりで済んで良かったわねぇ。ま、アンタには料理くらいしか無いもんね」
ああ…もう嫌だ、この口…
「ぷ、プレゼントは別にあるよ!朝食はオマケ!」
「はいはい、期待しないで待ってるわ。いただきまーす」
くだらないことしか出ない口が嫌い…。
お仕置きを与えるように下唇をキュッと噛みながら、アタシはトーストに手を伸ばした。
シンジの料理を味わう一番幸せな部分のはずなのに、この口がシンジを一番傷付けちゃう…。
513:パッチン
09/12/04 14:22:55
朝食後、興味のわかない休日の朝のバラエティーをソファーに腰掛け、ぼんやり眺める。
ふんわりオムライスの作り方なんて、何度も見たわよ…。
今夜は一応葛城家だけでアタシの誕生日パーティーを開催するらしい。
しかしあくまで今夜。
…誕生日の朝に何をやってるんだろう、という思いがキュッと胸を切なくする。
いや、いままではこれが当たり前。訓練漬けだったアタシは誕生日を特別な物と考えたことはあまり無かった。
訓練を終えて家に帰れば、無人のキッチンテーブル上にバースデイカード。そして冷蔵庫には1人分のケーキ。
それが誕生日。
なのに今年のアタシは求めている…。
フッと左を向けばフローリングの床にペタリと座り、テレビを見ているバカシンジ。
改めて言えば…好きな人。
加持さんへの気持ちとは違う、見るたびに…思うたびにドキドキする感じ。
今もキューンと締め付けられる胸が痛い。
多分アタシは弱くなったんだと思う…コイツのせいで。
ううん、なれるならもっと弱くなりたい。
素直になりたい…!
甘えてみたい…!
夢で見た誕生日パーティーが頭をよぎる。
「・・・ねぇ、ミサトが帰ってくる前に誕生日パーティー始めない?」
「え?」
514:パッチン
09/12/04 14:24:16
「ねぇやっぱりマズいよ…ミサトさんが知ったら怒るよ絶対…」
「大丈夫よ!どうせ山ほどあるんだからバレないわ」
トポトポとグラスに注がれる赤い液体は大人の香り。
キッチンテーブルの上にはさんざん乱暴に捻られて、ボロボロになったコルクが1つ。
我ながら情けない作戦だと思うが、現状打開にはこれしか無かった。
今年の誕生日は・・・デレたいのだ。
「そ、そもそも僕達まだ15歳だし、法律で禁止されてて…」
「ペンペン!アンタ歳いくつ!?」
くわっと3本爪をたてるペンペン。
「ほら!一本いっとく?」
手近にあったエビチュを投げると、小躍りしながら受け取り、プルタブを折るペンペン。
「見てみなさい!3歳のボーヤでもあんなにグビグビ飲めるのよ!」
「あ、あれは人間じゃないだろ!」
はんっお酒なんかでビビるなんて男失格ね!と、また強がるアタシ。
でもでもでも…それもここまでよ…。
グラスを天にかかげ、中で揺れるソレを蛍光灯の光に当ててみる。
「アンタは飲まなくていいわよ。アタシ1人で楽しんじゃうから…」
アタシを変えて…お願い。
その願いと共にグラスに口付けたアタシは、目を閉じてゴキュっと喉を鳴らした。
515:パッチン
09/12/04 14:26:50
『あ~しゅか~♪』
『きゃっ!ちょ、ちょっと何ですか葛城一尉!』
『いやんっお堅いんだからぁ~ミサトちゃんって呼んでよぉ』
『お酒臭い!飲んでますね!』
『ドイツのビールは世界一いいい!』
『は、離して下さい!アタシこれから大学入試の勉強するんですから!』
『ありり?アスカちゃんはまだそんな歳じゃないはずでしょ?大人の階段のぼるのが早いわねぇ~』
『ヤダぁ離して下さいよ!酒飲みの上司に絡まれるなんてゴメンです!』
『酒飲みとか絡むとか言っちゃイヤンイヤン♪甘えん坊ミサトちゃんって呼んで♪』
『な、何言ってるんですか!』
『お酒を飲むと本当の自分が出てくるものなのよんっ♪』
『ほ、本当の自分…?』
『そうよぉ!本当のあたちは甘えん坊ミサトちゃんなのだ!』
『お、お酒って飲むと甘えん坊になるの?』
『みゅふふふ♪さてさて真面目ん坊アスカちゃんの成長具合についてでも測ろうかしらん♪』
『ちょちょ、ちょっと!くすぐったいからやめて下さい!』
『あららん成長ゼロね?こりゃ将来成長してもCが限界かしらん』
『い、いい加減にしなさいよバカミサトおおお!』
『きゃあきゃあ♪アスカちゃんが名前で呼んでくれたのよん♪』
・
・
・
516:パッチン
09/12/04 14:28:20
「ちょ、ちょっとアスカ大丈夫?」
「ふみゅ…らりるれろ…?」
シンジの声に、夢に堕ちてテーブルに突っ伏していたアタシは顔を上げる。
グワングワンと揺れる脳、熱い頬、回らない舌。
それはアタシの望んでいた感覚とは、どこか違う世界。
「足りらいのからぁ…」
「ちょっと待っててね!すぐ冷たい水入れるから」
「みゅみゅみゅのみゅ…」
冷蔵庫に駆けていくシンジをよそに、アタシは更にワインをグラスに注ぐ。
「あ、アスカぁ…もう止めた方がいいよ…」
「くぴくぴっ…ぷはっ。シンりぃアタひ酔ってりゅ?」
「よ、酔ってるよ完全に!そこまで来て自覚無いってヤバいよ!?」
酔ってるのよね…言えるかな…
「し、シンり!よく聞きなしゃい!」
「え?」
「あ、あの…そにょ…あらひ…しんりが…しんりで…みゅみゅみゅが…みゅみゅみゅで…」
「アスカ??」
だ、だめ!シンりの顔見てたら恥ずかしくなる!
焦ったアタシは更にワインをグりゃスにぶち込んでしまう。
・・・ていうか、もう心の声にまで酔いが回ってきてりゅわ。
こんなに酔ってるのに、らめなんて…。
お酒に頼っても無理なんれ…こんなんりゃ一生素直になんかなりぇないよ…。
517:パッチン
09/12/04 14:29:52
「アスカ・・・どうしたの?」
ガクンとうなだりぇるアタシを心配したシンジが、ソッと近くに来てくれりゅ。
「苦しいの?・・・ねぇ、なんで無理やりお酒なんか飲もうとしたの?もしかして嫌なことでも…」
「さわりゃないれよ!!」
優しい言葉と共にソッと背中を撫でてくりぇたシンりの手を、アタシは思いっきり弾く。
あぁ結局またやってりゅ…バカアしゅカ…。
「アンタらんかに心配してもりゃわなくれも大丈びゅよ!」
「で、でも本当に苦しそうだったから!」
「大きにゃお世話しゃまにょ!!」
グスッ…にゃにがお酒は本当の自分が出りゅものよ…
頭は痛いし、気持ちわりゅい…オマケにいつみょよりカリカリすりゅなんて…。
「ごめん・・・でも僕は本当に心配だったから…」
「うりゅしゃあああああい!そみょそも誕生日パーティーなんて、誰も望んでにゃいのよ!」
「・・・アスカ」
「アンタの用意ちたプりぇゼントなんか、いりゃないし必要にゃいもん!さっしゃとゴミ箱にでも捨ててきなしゃいにょ!」
あぁもう死にたいよ・・・
世界の終わりみたいに色んな物が崩れりゅ・・・
いっそ…地球ごと爆発してくれないかな
・
・
『ドガアアアアアアアアアン!!!』
518:パッチン
09/12/04 14:31:27
一瞬の沈黙を破った突じぇんの爆発音に、シンりとアタシはビクリと肩をふりゅわせた。
「使徒!?」「ち徒!?」
見事にユニゾンちた言葉と同時に立ち上がり、ベランダに走・・・りょうしたけど、アタちの方は足がもちゅれてベチャリと無様に転倒。
一方無事ベりゃンダに辿り着いたシンりは、グッと体を曲げて遠くを眺みぇりゅ。
「戦自が出動してる…間違いない!」
ピリリリリリ!
そにょシンジの言葉とほぼ同時に鳴り響きゅ携帯電話。
いまだに床でジタバタちてるアタシはテーブルに置かりぇた携帯を取れにゃい。
とことんカッコわりゅい…
「アスカやっぱり使徒らしいよ!今からミサトさんが迎えに来るらしいから、外で待とう!」
「わかってりゅわよぉ~」
アタちは返事だけは出たもにょにょ立ち上がることすら出来ず、
生まりぇたての子牛(それもかなり鈍くさいやつ)ばりにノソノソ動きゅだけしか出来にゃい…。
「ダメだ時間が無い!早く立ってよ!」
「命令すりゅな!」
「でも!」
「くみゅみゅみゅ…!」
「・・・ごめんアスカ!」
「みゅみゅ!?」
突然、プルプルと起き上がろうとちていたアタシの体と床の間に差し込まれるシンりの腕。
519:パッチン
09/12/04 14:33:03
そにょままアタちの体を抱え上げ、俗にゆう『お姫しゃま抱っこ』の形に移行すりゅシンり。
「ちょちょちょ、ちょろっと…!」
「ご、ごめんアスカ、急ぐね!」
そしてシンりは駆け出す。
アタちも最初は戸惑っていたけろ、グラグラと揺れりゅ上半身を固定すりゅため、おじゅおずとシンりの首に腕を回した。
あああ…恥ずかちい…。
などと照れていりゅアタちをよそにシンりは、玄関を飛び出しマンションの廊下を通過しエレベーちゃーに乗り込んだ。
こんにゃ状態の2人が密室に…。
などというピンきゅ色のモヤモヤがアタちの心を包みゅ。
でもチラッと上を眺めりぇば、汗を流しながら息を整えりゅシンりの顔がありゅ。
・・・なんだか純しゅいに綺麗だと思った。
「お待たせ2人共!・・・おぉお姫様抱っこ!?誕生日だからって一線超えたのアンタ達!?
お姫様も顔が異常に真っ赤だし…って、酒くさっ!!」
うりゅさいミしゃト・・・今いい所だったにょに。
何も言わないで真っ赤になりながりゃシンりは先にアタちを後部座席の奥に座りゃせてくりぇる。
そしてシンりがその隣に。
520:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/04 14:40:01
支援金
521:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/04 16:34:19
パッチンさんキター!!
酔っぱらったアスカのしゃべりが可愛いw続き待ってます!
522:パッチン
09/12/04 18:38:30
>>519続き
「と、とりあえず出発して下さいミサトさん!理由は移動しながらで!」
「そ、そうね!今は保護者としての心配より、作戦部長よ!」
そう言ったミしゃトはバタバタ忙しきゅ車に乗り込みエンジンをかけりゅ。
う・・・やっぱり揺れりゅ。
下からドドドとくりゅ揺れに多少の不安を持ちゅアタち…。
「と、とばすわよぉー2人とも!!」
とばさないれ…ミサろ…。
もちろん声にならにゃいアタちの言葉にゃど届かず、爆音を響かせにゃがらミしゃトが時速計を振り切っちぇ走りだちた。
ミしゃトのうるさい声とエンジン音に囲まれながりゃの最悪のドライブ。
隣のシンりが心配そうにアタちを見りゅけろ、ヤバいかも…。
グワングワングワングワングワングワングワン…
揺れりゅ揺れりゅ車にシェイクさりぇた脳が意識を飛ばしていく…。
「み、ミサトさん!スピード緩めて下さい!」
「無理よ!アスカにはネルフに着いたらリツコ特製の酔い覚まし薬があるから、飲ませるわ!
・・・いや、あれはこの前あたしが飲んだっけ?」
ミしゃトの訳の分かりゃない1人言は子みょり歌・・・。
揺りぇる揺れりゅ脳がゆっきゅりとアタちの意識を吹き飛ばしていっちゃ・・・う。
523:パッチン
09/12/04 18:42:22
すいません中途半端なとこで連投規制かかりました…orz
一応今回ここまでです。
仕事の休み時間中にまとめて投下したかったんですけど、規制解除の前に休み時間が終わりまして…続きがだいぶ遅くなりました。
支援してくれた方と感想くれた方ありがとうございます!
続きは明日にでも…
そして惣流さんも式波さんも宮村さんも誕生日おめでと~
524:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/04 19:17:27
待っていました。
だいすきでちゅ。
525:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/04 19:47:08
GJ!続き待ってます!
526:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/04 21:06:32
GJ、続きが楽しみ
527:パッチン
09/12/05 22:43:24
ごぼごぼっと鼓膜を直接叩く水音…
緊張と安らぎが心を浸食する独特の感覚…
いつもと同じ…
いつもと同じ感覚…
違うのは…いつもと違うのは…
匂いが違うのかな?
背もたれが妙に柔らかいのかな?
肺の中の液体が踊る…
「アスカ…」という声が聞こえる…
誰もいないはず…だよ?
この感覚が支配する瞬間は、誰にも邪魔されないアタシだけの時間…
アタシだけの…瞬間
でも、嫌いじゃないな…
誰かの心が入ってくるみたい…
気持ち悪くない…むしろいつもより気持ちいいよ…
気持ちいい気持ちいい気持ちいいよ…
気持ちいいよ…
「アスカ…」
優しい声がする…気持ちいいよ
ドキドキする…たまらなく嬉しくなる
頭が痛くて気分は最悪…でも満たされるこの感覚
心から…幸せ
嬉しくて嬉しくて、アタシは目を覚ます
ほら、ゆっくり目を開ければ…その先には
どす黒い触手を振り回す天使がいた
528:パッチン
09/12/05 22:45:09
「うわあああああああああああ!!!!」
呼びかけていた優しい声は叫びにも似た声に変わり、同時に爆音がアタシの耳をつんざく。
えっ!
ここは・・・多分弐号機のプラグ内で・・・前方には使徒。後方は…シンジ!?
「くっ!うぁ…」
「しん…じっ」
状況が今ひとつ掴めないアタシだが、彼の苦しげな声にハッとする。
とにかく後ろから覆い被さるようにレバーを握るシンジの手に、自らの手を重ねる。
「ぐぁっ…あ、アスカ!?」
「あ、くっ!!」
よし、シンクロしてるわね…。
対峙する敵はかなり前に戦った蜘蛛使徒のような形状。
違うのは足に関節が無く、それぞれがミミズのようにジタバタと動いて「うぷっ…!」
「アスカ…?」
ヤバっ…気持ち悪い…
グッと胃の奥から上がってくる熱、機体が揺れるたびに押し寄せる頭痛。
完全にまだお酒が残ってる…
使徒戦の最中なのに、全く別の物と戦い始めるアタシ。
「くそっ!この蛸お化けえええ!!」
あ、あんまり大きい声出さないで…
『ピギイイイイイ!!』
あ、頭に響く…
ガガガガガガッ!
揺れ…ダメ…
「やった!アスカ使徒せんめ…つ?」
…ダメ…
「うっ、うわあああ!?アスカあああ!!」
529:パッチン
09/12/05 22:46:44
・
・
「どおリツコ~少しは反省してる?」
「あら早かったのね。事後処理は済んだの?」
「ん~まだちょっち残ってるんだけどねぇ。可愛い妹の様子が心配で、少し抜けてきたのよんっ」
うつ伏せの状態で医務室の硬いベッドに横たわるアタシ。
上司2人の会話内容はもちろんアタシに関することであり、けして良い話ではない。
しかし耳を塞ぎたくても出来ないのは、自分の中にある大きな罪悪感と更に大きな後悔のせいであった。
本当に何なんだろうアタシは・・・そして今日という日は・・・。
「動かないわねぇバカアスカ。特性酔い覚め薬って、もう出来上がってるの?」
「とっくにね…でもこの子、飲みたがらないわ」
「はぁ…まあそんなことだろうとは思ったけどね…。こらアスカ!いつまでも寝てないで早く薬飲んで、家帰りなさい!」
「・・・飲みたくなぃ」
「アスカっ!!」
「このまま頭痛と吐き気で死にたい・・・」
喉の奥から振り絞るように出した声は、グルルと唸るような音も同時に発生しており、無駄に凄みがあった。
「まあ落ち込んでも無理ないかもねぇ。割と完璧主義者だから、他人に駄目な部分晒すの慣れてないだろうし」
530:パッチン
09/12/05 22:48:13
そう言ったミサトは溜め息一つ吐き、更に言葉を繋げる。
「まあ自業自得とはいえあそこまでのミス犯したら、流石にアスカじゃなくてもこうなるかしらね…」
言わないで・・・
「なにせ、へべれけになった状態で車乗り込んだらすぐに目回して、隣のシンジ君の股関あたりに顔埋めるように倒れて気失うし…」
言わないで・・・
「ネルフ着いたら、司令に『使えない酔いどれのポンコツ』とか言われるし…」
言わないで・・・
「挙げ句は戦闘終了とともにゲロ吐いて、それがLCLに溶け込んでプラグ内汚すわ、シンジ君に被害及ぶわで…」
「も、もう言わないでよ!!!!」
それ以上はやめてという意志が膨れ上がり、アタシは体を跳ねるように起き上がらせる。
「起きた起きた。ほら薬飲みなさい」
「あっ…」
今日初めて目を合わせたミサトは半ば呆れた様子で、ツンとした匂いを放出する謎のビンを差し出す。
色んな意味で飲むことを躊躇…。
「ドラム缶一杯のビール飲んでも、ケロッと治るリッちゃん特製の不思議な薬よ」
逆にヤバくない…?
「今日はそれ飲んで帰りなさい。送りの車は手配しとくから」
チビチビと薬品を喉に通すアタシに、リツコはそう言い残して部屋を出ていった。
531:パッチン
09/12/05 22:49:48
「さ~てと、あたしも仕事済ませちゃおっかな?多分明日は帰りお昼頃だと思うからシンちゃんに伝え…」
「ミサト」
伸びをしながら喋っていたミサトは、その中途半端な体制のままアタシの方に目を向ける。
「なんで…なんでアイツ弐号機に乗ってたの?」
ずっと気になっていた疑問。
初号機は別に凍結中でもなんでもなく、最近の使徒戦も鬼神のように暴れまわっているエース。
なのになんでアタシみたいなのと一緒に弐号機に…。
「・・・ふふっ、その事件が一番酔いつぶれを後悔するポイントかもね」
「え…?」
「かっこいいシンちゃんを見逃したってことよ♪」
初めて笑顔を見せたミサトは、おそらくポカンと口を開けてるであろうアタシにそう言った。
「シンちゃんね司令に怒ったのよ。あんたのことポンコツ呼ばわりした時、『アスカを悪く言うな!』って。
もちろん悪いのはアスカなんだけど、何故かシンちゃん相当頭にキタみたいでね。
酔って寝てるあんたを弐号機に担ぎ込んで、勝手に出撃したんだから」
「シンジがアタシを…?」
「みんなビックリして、周りの誰も止められなかったわ
アスカと一緒に使徒を倒します…だって。男の子だったわよ、あの時のシンちゃん」
532:パッチン
09/12/05 22:51:26
・
・
裏技のような薬で完璧に酔い覚めした少女は、廊下で談笑する上司2人にペコリと頭をさげ、エレベーターに乗り込んでいった。
「言っといた?シンジ君にお礼しなさいよってこと」
「言ってないわよぉ~♪多分あの雰囲気なら言われなくてもするでしょ」
「まったくシラフのこっちが頭痛くなるわね。
今回は一応形はどうあれ出撃できたから良かったけど、次にこんなことがあったら厳しい処罰をお願いしますよ作戦部長さん」
「はいはぁ~い。」
こめかみのあたりをグリグリと指でおしながら、溜め息を吐くリツコ。
「ま、若い時は雪玉みたいに転がりながら大きくなればいいのよ。次に良い結果が出ればよし!」
「少しは悲観的な考えも持ち合わせてないと、現実は暗いままよ」
「ふふっしかし、眉間にシワをよせつつも、面白いデータが取れて口元にもシワが寄る科学者さんなのでした♪」
セリフのように言ったミサトは、リツコが眺める書類を隣から覗き見る。
「ほぉ…思った以上の数字ね」
「それもアスカが目を覚ました瞬間に、爆発的に伸びてるわ。
本当に面白い2人ね。もっとかき混ぜれば更に面白い化学反応が出るかしら?」
「・・・それは保護者として引き止めるわ」
533:パッチン
09/12/05 22:52:20
今回はここまで。次回がラストです。
534:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/05 23:24:16
パッチンさん。
最高です。
乙です。
535:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/05 23:51:57
GJ!
しかしプラグ内リバースとはw…想像しただけで(( ;゚Д゚))
536:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/06 06:38:48
ゲロまみれwwwww
537:パッチン
09/12/08 19:47:39
ふぅっと見慣れた葛城という表札の前で深呼吸…。
どんな顔して→なるべく平静を装いながら
最初のセリフは→ただいま
そしてまずは→素早くプラグ内での失態を謝り、素早く一緒に弐号機に乗ってくれたことに礼を言う
そして→相手の返事を待たず素早く自室に引きこもり、今後一週間ほどは目を合わせずに過ごす
時間が癒やしてくれるのを待つ
これが帰りの車内で考えていたアタシのプラン。
我ながら逃げ腰な内容だと思うが、これしか方法が無い。
もう誕生日がどうこうなんて言ってられない…優しいアイツにこれ以上嫌われたくない…。
潤みだした視界を誤魔化すように、再び深呼吸。
いくわよアスカ…
がちゃっ
「ただいま!」
「あ!おかえりアスカ!」
台所からやってくるシンジの声と足音。そしてクリームシチューの香り…。
残念だけど今日は食べれないのよ…。
「おかえり、体調はもう大丈夫なの?」
「う、うんっ。あのシンジ…!」
言え!まずは謝るのよ!
「そっか、今日はごめんねアスカ…」
「え・・・えっ?!」
とアタシの頭が下がる前に、彼の黒い頭がスッと下がってしまった。
538:パッチン
09/12/08 19:49:09
「な、なんでアンタが謝るのよ!」
「僕のせいで誕生日が滅茶苦茶になっちゃったから…ごめん」
「あ、アンタのせいで?」
意味が分からず聞き返してしまう。プラン内容とは間違いなくズレた行動。
「車の中でアスカが倒れた時、約束したじゃないか。今日は苦しそうだしアスカの誕生日だし、僕と綾波だけで使徒と戦うって…なのに約束破って僕は…」
ナニソレ?
グッと両手を握りしめて申し訳なさそうに呟くシンジ…。
いやそんな約束、意識とんでて覚えてないんだけど…
「ち、ちなみにその約束言った時、アタシなんて言い返したのよ!」
「みゅー」
「そ、そんな寝言を了解と捉えたのアンタは…?」
唖然とするアタシを尻目に、更にシンジは続ける。
「それにその…アスカの…吐くとこ見ちゃったし…」
あ…!
「あ、あれはアタシが悪いのよ!」
「でも女の子がそんなことするなんて、他人に見られたらやっぱり嫌だろうし…
もとはといえば、僕がアスカを無理やりエヴァに乗せたからで…」
こ、ここまで内罰的だとは思わなかったわ…。
当初のプランなどどこへやら。
アタシは、どう話せば自分がシンジに謝れるかどうかについてから悩まなくてはいけないようだ。
539:パッチン
09/12/08 19:50:58
・
・
「はぁ、謝るまでの説明でこんなに時間がかかるとは思わなかったわよ…」
「ご、ごめん、一旦コーヒーでも飲む?」
「い、ら、な、い!!」
「ごめん…」
『いかに自分が悪かったか』を説明し疲れたアタシは玄関の壁にもたれ、少し息を整えた。
ったく!謝罪の気持ちだけを込めて謝りたかったのに、そんな空気じゃなくなっちゃったじゃない!
・・・でも、正直助かったかな…とも思ってる。
シンジの勘違いのお陰で、アタシも逃げずに、正面からぶつかっていけたし。
そのことは、心の中でアリガトウねシンジ…
「というわけで、これからアタシはアンタに『ごめんなさいとありがとう』を言わないといけないわ」
「も、もういいよ!十分伝わったから!」
「なに言われる側がテレてんのよ!」
「テレてるとかじゃなくて!…その、アスカが僕に謝ったりお礼言うなんて…ちょっと気持ち悪いし…」
「んな゛っ!!」
思わぬパンチに驚愕。
あ、アタシをなんだと思ってんのよコイツは!?
「どういう意味よそれは!!」
「ほ、ほらそうやってすぐ怒るから!」
「うっ…」
「そういう風にしてる方がアスカらしくていいよ。謝罪の言葉なんていらないからさ」
540:パッチン
09/12/08 19:52:24
混じりっ気無しの笑顔がアタシの心を射抜く。
あぁ…もうダメだ。そんな顔されたらダメ…。
「でもね、1つお願いごときいてくれる?」
「え…?」
謝るタイミングとパワーを完全に奪われたアタシに、シンジは1つ提案を出してきた。
「今アスカが帰ってくるまでに色々準備してたんだけど、間に合いそうになくってね」
左頬をポリポリかきながら、はにかむシンジ。
「明日なら…完璧に出来ると思うんだ。飾り付けも、料理も、ケーキも頑張って手作りしてみる。
明日ならアスカも喜ぶ顔出来ると思う…」
シン…ジ…?
「だからね、今年の誕生日は・・・12月5日にしてほしいんだ」
「っ!・・・・・」
瞬間、涙が溢れて壁に張り付いていた背中がズルズルと音をたてて下っていった。
ミサトのヒールにお尻を乗せて泣いていた。
アタシの情けない姿を見て、また謝るバカシンジ。
気付けば今日は最悪の1日だった。
大失敗の1日だった。
なのに今日初めて流した涙は暖かい涙。
シンジの優しさに包まれる今なら…確信できる。
明日は多分、笑えるよね。
おわり
541:パッチン
09/12/08 19:53:11
以上で終わりです。
一回やってみたかった2スレ同時攻撃でした。
今年はしかし良いLASがたくさん読めて良かったです。
個人的には新劇で着火され、迎え火で炎上して、猫シンジで爆発したような年でしたw
まだ読んでない作品もあるので、年末はゆっくり読みたいと思います。
最後にミサトさん誕生日おめでと~。
542:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/08 21:07:58
パッチンさんGJ!
>>537のアスカの考えたプランがすごくアスカらしい(特に最後の部分)
全体的にほのぼのしてて楽しませてもらいました!
543:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/08 21:29:22
GJです
うん、なかなかだいすきでゅ。
最高ですよ。
544:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/08 22:21:35
GJ!いいLASだ。そしてシンジ本当にいい男だ。
545:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/09 00:58:42
童貞妄想乙
546:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/09 09:38:27
2スレってもう一個どこ?
547:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/09 10:52:55
同棲スレ
548:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/14 13:13:38
冬将軍到来
549:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/19 15:42:44 oUiK/WMV
保守age
550:名無しが氏んでも代わりはいるもの
09/12/24 11:34:33
ほし
551:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/01 23:25:22
保守
552:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/10 16:16:43
クリスマス記念も正月記念もなかったなぁ
553:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/11 23:05:16
皆、個人のHPで書いて、こっちには落さないみたいだね
554:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/13 14:45:18
そもそも残ってた人まで追い出したわけだしな
555:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/13 18:07:38
潰し合いですね。
556:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/22 19:16:35
そのうち誰か書いてくれるでしょう
557:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/01/30 21:11:32
もう無理じゃね?
558:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/02/02 19:03:57 9Enp0vAn
投下あれば活気付くんだろうけど
559:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/02/03 17:07:57
ifは死んだ。それは何故か!?
560:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/02/03 23:56:39
生きてたからだ。
561:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/02/04 06:48:17
ifなんて最初から居なかったんだよ
562:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/02/08 09:29:20
嘘だ!!!
563:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/02/16 03:25:50
>>561
mktn、こんなところで何やってんのw
564:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/02/25 19:26:37
if大好き♪
565:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/04 23:39:15
過疎ってんねぇw
21もスレ重ねりゃ普通か
またりするにゃ良いけども
566:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/06 13:32:49
>>565
Qまでは、こんな感じだろ。
BD発売で少しは盛り上がるかな?
567:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/07 19:58:08
今までの投下の中で好みだったSSってある?
568:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/07 22:28:33
>>566
Qがリリースされたら、また駄作の山に埋もれるのか
569:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/10 02:49:10
駄作だと思っても黙っとけばいいんだよな。大人なんだから
FFに限らず文章って、書くのにも投下するのにも精神的な労力使うし、職人は仕事や学業の合間縫って少しずつ書いてるのを投下するんだから
ちょっと力不足だとか気に入らないからと言って「駄作投下スンナ」はちょっと違うよな
と僕は思いまーす(・∀・)
570:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/10 12:51:40
そう
その通りだ
571:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/10 23:45:15
にしてもにわか止まりじゃなく継続してくれたら応援するのにな。。
572:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/10 23:55:30
>>569
投稿は書き手の自由、評価は読み手の自由。
そんだけ。
あと、俺の場合は「駄作投下スンナ」じゃなくて「ツマンネ」だな。
573:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/11 12:00:21
学生とかニートならいいかもしんないけど、仕事しながら物書きってのもきついものがあるしなぁ(兼業作家とか居る事は居るけど)
しかも、本業の作家じゃなくて“二次創作"の作家な訳だし、たまには駄作でもしょうがないっていうか
だから「ツマンネ」だとか「うまくなってからこい」とかキツイ一言で片付けないで、“やんわり"とアドバイスしながら、GJもしていかないと酷かも
つまんないとか言われる書き手だって、つまんないFF書きたくて書いてる訳じゃないし
574:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/11 20:56:43
褒められたいわけではないけど素人が少なからず労力を割きスレで楽しんでもらえればと投下したのに
プロとか有名どころのFF作者と比べてキツイ一言で切り捨ててるんだもんな。
やる気がなくなるのも当然かと(それでもめげない!見たいな気合入ってる人は自分のHPでやるし)
やはり感想や批評を「付けるなら」ちゃんと良い点、悪い点を指摘するべきだろう。
ただ「ツマンネ」というよりどこがどう駄目か指摘するだけでも違うし。
「GJ」とか「乙」ですまされるよりどこの部分が好みとかコメント欲しいだろうし。
言葉の足りないコミニケーションでグダグダに沈んでくのはエヴァの特徴だけどさw
575:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/12 01:09:37
(創作)作品に対して受ける印象・感動ってのはある意味新鮮さが大事。
どっかで見たような話なら、細部が上手くても評価は落ちるな。
投稿者には初めてでも、読者は散々似たような物読んで来てるから評価は辛くなりがち。
職人さんのコンテストじゃないから仕方ない。
LASは散々やり尽くされてるんだから、余程の出来じゃないと高評価はされない。
ニワカ作者がボロクソに言われるのは、むしろ必然w
576:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/12 21:09:15
でも素人の料理教室に乗り込んでケチつけてるだけの自称グルメに見えるんだよなw
577:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/12 22:28:12
タダで、読んで置いて読んでやっただもんな。そんな風なら、書きたい人は
ここに投下しないで自分のHP作って書く罠
578:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/12 22:57:00
というか、こんなところに投下してないで、自分のHP作って書くようになって欲しい。
どうしてもここに書きたいのなら止めはしないが。
579:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/12 23:44:28
盛り上がってまいりました。
580:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/12 23:46:44
投下スレなのに
>というか、こんなところに投下してないで、自分のHP作って書くようになって欲しい。
とかバカじゃねーの?
どこまで上から目線だよ
581:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/12 23:53:53
>>577
>タダで、読んで置いて読んでやっただもんな。
金を払ってまで、オナニー作品を読みたくねぇよw
582:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/13 00:02:23
賞賛派と批評派と言う構図に簡略化して考えると、ケチを付けてるレスって絶対数的には減ってる。
以前の半分くらい。
GJ付けて褒めてるレスが以前の1/3~1/5に減ってるから、相対的に目立つだけ。
スレの衰退をとやかく言うなら、褒める奴が減ったか褒めるレベルの作品が減ったことに、より問題がある。
批評・批判レスが嫌ならそういうスレを立てるとか、テンプレに入れておくべき。
583:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/13 00:04:02
>>581
2chの投下作に金払う価値がないなんて当たり前のこと言ってどうするよ?
普通はタダだからって道端の糞の匂いをわざわざ嗅ぎに行ってクセーと騒いで喜んでる消房みたいなことしねぇよw
584:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/13 00:09:04
>>582
褒める貶す以前の問題だと思うよ
楽しむためにスレ見てる奴がいなくなってケチつけるために粗探しする奴だけ残った感じ
>>578
読む方も2chなんて見てないで自分の気に入った作品のあるHPだけ読んでりゃいいのに
585:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/13 00:15:04
どうでもいいがこんな過疎スレを見てる奴が結構いたことに一番驚いているw
586:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/13 00:28:26
>>582
>>196みたいな批評は別にいいんじゃね? 投稿者にも参考になるだろうし
ただツマンネとかなんの参考にもならないような批判はそれこそチラシの裏だな
587:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/13 00:31:07
>>586
単なるGJもチラ裏
588:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/13 00:36:04
>>586
一言ツマンネと一言GJなら、後者の方が遥かに多い。
批判的な奴の方があれこれ述べてるよな。
589:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/13 07:16:12
>>584
>楽しむためにスレ見てる奴がいなくなってケチつけるために粗探しする奴だけ残った感じ
というよりも、つまらないものをスルーしないで素直な感想を言う人が残ったんでは。
面白い作品が集まってれば、それを楽しむ人が自然と集まってくる。
そうでもない作品が集まってるなら、それでも楽しめる人でないと残れないよね。
590:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/13 10:58:38
>>587-588
GJは作品の出来云々だけでなく、作品を書き上げてそれを投下したという行為そのものに
対してという意味合いも込められてるからチラ裏じゃないだろ.。所謂お疲れ様みたいなもんだ
それと職人にとってはGJだけでも無反応よりは遥かにマシだろうが、ただの煽りレスだと
無反応のほうがマシって思う人の方が多かろう。よって同列に扱うのはおかしい
591:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/13 18:55:57
作品を読んで無反応なのは寂しいですね。
感想を書いてくれればいいのですが。
たとえボロクソでもね。
自分の作品を投下して感想を待つ間は、心臓がバクバクするんです。
それが無反応だったら「あれ、どうして?」みたいになるから感想は必要ですねん
どないだ、兄やん達。
592:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/13 19:39:03
いいぞもっとやれやれ
593:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/13 20:25:35
まだ毎夜のように投下があった頃に混じって何本か投下したけど
褒められても貶されてもワイワイやってて楽しかった
でも今は楽しくない
それだけ
594:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/23 02:05:26
でも 作品を待ってるヤツも居るんだけど
淋しいね
595:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/24 00:36:27
でも、面白かったら褒めるけど、ツマラなかったら叩いちゃうな、やっぱり。
596:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/24 21:50:17
それで良いんですよ
盛り上がるのなら
597:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/25 00:40:51
「ばっかじゃないの?…下らない」
鳩が不恰好に舞う公園で犇めくカップルに触発されたのか、好きだ、なんて柄にもなく甘い吐息を吐くシンジを横目で睨め付け、ふんと鼻で嘲笑うだけで一蹴したあたしは腰に手を当てて堂々と言い放ってやった。
「あたしなんか、あんたのこと愛してんだから!」
これでどうよ、みるみるうちにシンジの頬が朱に染まっていくのを見て、満足気に口端を吊り上げたあたしの顔さえ熱をもったのも、夕陽に照らし出されただけじゃないってことくらい識ってる。
鳩よりも不恰好に愛の言葉を紡いだのはあたしの方だった。
598:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/25 01:37:44
だれか褒めてやれよw
599:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/25 02:07:00
GJ
600:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/25 02:17:39
GJ
又 降りて来たら頼む
601:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/25 02:26:12
あまりに既視感バリバリのLASだなぁ
602:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/25 02:32:45
ベタだけど和む。また書いてくれ。
603:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/25 02:33:13
>>601
じゃ 新しいヤツ頼むよ 期待してる♡
604:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/25 20:57:56
でも、良いんじゃ無いの?ただ、アスカのセリフに一捻り欲しいね
605:597
10/03/26 08:53:07
なけなしの狭いベランダに植木鉢を置いた。上の階に住んでる小学生に友情の証、などと種を渡されてちょっとだけ嬉しくなった。
口許を緩めながら土に埋める種がどんな花を咲かせるかなんてシンジは判っていたけれど一から育てるのは小学生以来かもしれない、そんなことを思っていたらアスカが部屋の明かりを点す。
「何よ、これ。」
「あ、お帰り。」
お楽しみ、くすくすと笑うシンジを小突きながらアスカは首を傾げた。結局、日本人なら知ってるというヒントだけ頂戴し、どうしても答え合わせをしたいアスカはリビングの椅子に跨がって足をぶらぶらとさせてミサトの帰りを待った。
生憎、解答とする答えは持ち合わせていないけれども窓の外でシンジが愛でている花がどんな女かくらい知っても良いじゃない、
頬を剥くれたように膨らませてもまるで気づかないシンジの背に馬鹿、とだけ投げ付け、日が落ちてカーテンが橙に染まり次第に涼しくなってゆく柔らかい風が玉のような汗を攫った。
「たっだいまぁ」
疲弊したように気の抜けたような声が玄関から響く。弾かれたようにアスカが迎え入れると珍しいわね、なんてミサトは屈託のない笑みを浮かべた。ベランダを指して問うてみれば、
「さあ…アサガオじゃない?」
部屋に篭って植物図鑑からアサガオの名を探す。
ごはんだよ、と呼ぶシンジの声を尻目に花言葉が目に入り込み、思わず頬が火を噴くような心地になった。あの花が咲いたら気持ちを伝えてみようか、とりあえず今は夕飯へと駆けて行くだけ。
頬が赤いよ、なんて覗き込んでくるシンジの眼をアスカは見ることが出来なかった。季節はまた終わらない夏へと向かう。
606:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/26 23:45:10
誰か褒めてやれってww
607:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/27 01:41:23
>>606
じゃあ、まずお前がほめてやれよ。
>>605
今見たよ。
GJ!
朝顔とかなつかしいな。
608:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/28 23:23:28
>>605
連作なら連作らしいタイトルを、
単発(シチュ・経験を引き継がない)なら単発らしいタイトルを付けた方が良いぞ。
609:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/29 00:56:41 to0pfoyp
>>608
確かにそうですね。ありがとうございます。
610:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/03/29 00:58:52
sage忘れましたorz
611:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/04/01 19:56:16
,、‐ ''"  ̄ ``'' ‐- 、
/イハ/レ:::/V\∧ド\
/::^'´::::::::::::i、::::::::::::::::::::::::::::\
‐'7::::::::::::::::::::::::ハ:ハ::|ヽ:::;、::::::::::::丶
/::::::::::::::/!i::/|/ ! ヾ リハ:|;!、:::::::l
/´7::::::::::〃|!/_,,、 ''"゛ ^`''`‐ly:::ト
/|;ィ:::::N,、‐'゛ .{ ゚ } !;K
! |ハト〈 .{ ゚ } リイ)|
`y't /¨`ヽ //
! ぃ、 トェェェイ 〃 綾波が死ねばよかったんだ
`'' へ、 `ー'′ .イ
`i;、 / l
612:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/04/10 02:18:17
保守
613:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/04/23 18:11:20
保守
614:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/05/07 00:05:33
職人降臨町興し
615:保守のための習作
10/05/09 03:30:30
「そんなのわっかるわけないじゃん」
巨大なクモを打ち倒し、町に明かりが灯った後も
開放感と安堵を分かち合うチルドレン3人の会話は続いていた。
ところが・・
「なにそれシンジ」
さっきまで体を楽に崩していたシンジが、ひざを内股にこすり、肩をいからせている。
「えっ!・・あのっその~」
いつものように強張った八の字眉毛と、その下にある不安定な上目使いに、
いつものようにアスカの胸の奥は痒くなる。
「なにモジモジしてんのよ!バカシn」「排尿したいのね」
アスカのいら立ちを帯びつつ明るい声の下から、抑揚のない美しい声が滑り込んだ。
八の字眉毛の角度がさらにきつくなり、顔を真っ赤にしながら、シンジは情けなく腰を引きながら立ち上がる
「ゴメン!ちょっちょっと行ってくるね」
「アンタってほんっっと~にデリカシーってもんがないわねえ」
シンジつられるように少し頬を染めた自分に気づかず、アスカはそそくさと離れるシンジを見送ると
「アンタもさ~ちょっとはやわらかい表現ができないの?ファースト」
今日まで嫌悪を感じていた機械的な印象を呆れるように指摘しながらレイに体を向ける。
ふと、レイのいまだシンジを見送る微笑に見入ってしまった。
星の光に映える、それと同じ色の髪と白磁のようになめらかな肌はやわらかく形を変えていて、
”人形のように冷たい”はずのその顔からは、優しいあたたかさを覚えた。
その美しさに、母性に慣れ親しみのないアスカは心の底までをとらえられてしまった。
「コイツってこんなにキレイだったんだ・・」
振り向いたレイの赤い瞳に、アスカは動揺を隠し、とぼけるように視線を外した。
呼びかけに対して答えられないまま、レイも優しく開けられた口元を閉じた。
ふいに沈黙がお互いの間に置かれ、二人はプラグスーツで完璧にコントロールされているはずの体温が、
なぜか下がり始めてきたように錯覚する。
薄れていく和やかさへの、焦りとも、恐怖とも似た何かに背中を押され、
「あの~さ、」
アスカはつい言ってしまう。
「バッバカシンジのどういうとこが好きなの?!」
616:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/05/09 04:10:02
をを!?
何やらいい感じの保守が・・・
続きアゲキボン!
617:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/05/09 09:14:08
ヒー破ー
お待ちしておりました。
618:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/05/27 03:43:15
保守
619:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/06 02:02:51
誕生日おめでとう
620:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/06 04:58:25
ほしゅ
621:パッチン
10/06/06 20:40:34
非常用手動レバーで扉を開き、使徒戦を終えたアスカとシンジは軽くバテた様子で溜め息を吐いた。
「ふぅ、ったく!どっかのバカがムチャクチャに暴れるから、家まで真っ暗じゃない」
「しょうがないだろ。まさか地下の電線が切れるなんて思わなかったし…」
「はぁ~あ。家に帰ったらテレビゲームしようと思ってた計画がパァじゃない」
エレベーターではなく階段で帰宅した2人は、軽いダルさを訴える足を慎重に動かしながらリビングにそろそろと移動する。
ミサト達職員は事後処理に忙しく、冷房のきいたネルフでお仕事。
レイはこの日の戦闘ではシンクロ率が思いのほか伸びず、冷房のきいたネルフで居残り訓練。
第三新東京市の住人達も、街から使徒の残骸が回収されるまでは当分冷房のきいたシェルターで待機。
そして今現在、世界の平和を守った少年少女2人しかいない要塞都市は、光を完全に失っている。
戦闘中の不運な事故による停電である。
「あーもう!クーラー使えないから暑いわね!」
「締め切ってたからだよ。すぐ窓開けるね」
暗闇の中、足に神経を集中させながらベランダの方に移動し、カラカラと窓を開けるシンジ。
「うわぁ、外の方が明るいよアスカ」
「ん?・・・あぁ今日は満月なのね」
622:パッチン
10/06/06 20:42:54
『満月の下で』
懐中電灯を探そうかと思っていたけど、なんだかせっかく照らしてくれてるお月様に悪いかな…と、シンジは思う。
ベランダの柵に2人手をついて、しばらくぼんやり月を眺めてみる。
「ねぇ、アンタなんかアタシに言うことない?」
「え?」
「アンタなんかアタシに隠してることあるでしょ?」
満月を見上げながら、アスカはシンジを見ずに少し不機嫌そうにそう言った。
急になんだろ?とキョトンとしながらシンジは思案する。
使徒戦の間、アスカのお株を奪うようなことはしてないはずだ。トドメは彼女のジャンピングニーだった。
ん?ん?と頭を捻る彼に軽く溜め息を吐きながら、アスカは呆れたように言った。
「今日アンタ誕生日だったんでしょ…」
「えっ!?・・・し、知ってたの?」
「天才少女をなめないでよね」
シンジは思いもよらぬことに、顔が少し赤くなる。
そんな彼の隣で、ふんっと鼻を鳴らしてアスカはスッと満月から目を離し、隣の赤い頬を軽く睨む。
623:パッチン
10/06/06 20:45:06
「なんで自分から言わなかったのよ」
「だ、だって言ったところで僕の誕生日なんて…」
「アンタばか?そんのアンタが決めることじゃないでしょ」
「ご、ごめん」
まさか自分の誕生日のことなんて気にしてる人がいるなどと…今まで思ったこともなかったシンジに、くすぐったいような照れが襲う。
また、それが普段彼のことなど気にとめたような様子を見せたことのないアスカという人間だったことも重なる。
どうしていいか分からず、軽い謝罪をすると再び月を見上げようとするシンジ。
そんな彼の予想通りのリアクションに心の中で小さく笑いながら、アスカはベランダからスタスタと室内に移動していく。
「アスカ?」
無言で真っ暗な部屋に入ってしまった彼女の方を見れば、携帯電話の明かりを頼りに何かキッチンにむかってる様子。
しばらくすると暗闇からバタム、カチカチっ、という冷蔵庫を閉める音と、100円ライターを擦る音。
624:パッチン
10/06/06 20:47:32
その音が何を意味するか察し、ドキっと胸が鳴るのがシンジ自身にもわかった。
キッチンにぼんやりと自然な光が灯り…。
クルリと振り向いたアスカの両手には丸いケーキとそこに立つロウソク。
アスカ…と呟きそうになって、喉の奥で言葉が詰まる。
オレンジ色の光に照らされた彼女の白い肌と金色の髪…何より小さく微笑む彼女があまりに綺麗だったから。
「HappyBirthdayToYou♪
HappyBirthdayToYou♪
HappyBirthdayDearばかシンジ♪
HappyBirthdayToYou♪」
歌いながらベランダに歩み寄っていく彼女は、歌い終わりと同時に彼にスッとケーキを差し出した。とびきりの笑顔と一緒に。
「あ、ありがとうアスカっ」
「バカ、先にロウソク消しなさいよ」
「…あ、そうか。ごめん」
えへへと笑いながら、フッと自分と彼女の間を照らす炎を吹き消す。
再び2人と月明かりのだけの世界になった。
625:パッチン
10/06/06 20:49:27
「嬉しかった?」
「うん、もちろん」
「当たり前でしょ!アタシがここまでしたんだから!」
「そうだよね…うん、本当に…ありがと」
「ば、バカ!なに泣いてんのよ!」
「ご、ごめん!だって勝手に出てきたんだもん!」
「ば、バカじゃないの!?誕生日祝われたくらいで泣くなんてさ!・・・も、もうサッサとケーキ食べるわよ!」
「うん、そうだね」
「じゃ、切り分けちゃうわよ!」
「・・・ねぇアスカ?」
「なによ?」
「ちょっと変な匂いしない?」
「え…?」
すんすんすん…
「う゛っ…」
「あ゛っ…」
「・・・あ、あはは。停電だもんね…そりゃ冷蔵庫も、ね?」
「もおおおおお!!何なのよそれええええ!!」
おわり
626:パッチン
10/06/06 20:51:24
お久しぶりに短編を失礼しました。
もう一本誕生日記念書いてますが、エロパロに失礼します。
最後にシンジ誕生日おめでとう!
627:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/06 21:28:44
おお…なんという乙女と乙女…
…いや、漢女と乙女?
そしてナイス誕生日
628:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/06 21:34:19
パッチンさん乙です。
エロパロ見ました!…よかった。
シンジくん(さん)誕生日おめでとう
ヒー破ー
629:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/07 03:49:22
パッチン氏乙カレー!
いやはや最早ベテランの域ですなー
630:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/07 17:43:27
>>625
乙乙
631:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/09 00:24:26
>>10あたりのmaTsuさんの作品が好きなんだが、また投下してくれないかのぅ
632:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/06/20 04:55:26
マダー?
633:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/07/01 03:23:35
(´Д`)
634:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/07/06 00:07:37
駄スレ乱立保守
635:パッチン
10/07/07 22:33:01
「七夕なのでグラウンドに笹をたてました。昼休みにみんなで願い事を吊しにいきましょう」
昼休み。今朝言われた老教師のふがふがしたセリフを思い出しつつ。
グラウンドに3本立てられたら笹を窓からボーっと眺めながら溜め息を吐くアスカ。
(あんなもんで願いが叶えば苦労しないっつーの)
心の中で不機嫌そうに呟いた言葉。
しかしそれとは裏腹に、先ほど願いを書いた赤い短冊は宝物のように優しく彼女の両手に握られている。
外側には裏側を見せ、願いの書かれた部分は彼女の熱い想いを宿した胸に押し付けられるカタチとなっている。
そんな短冊を大事そうに抱きしめる彼女に駆け寄る、おさげ髪の親友ヒカリ。
「あ、ねーねーアスカ。もう願い事書いた?」
「もっちろん!こんなの悩むことじゃないしね」
「ホントに?みんなけっこう考えてるみたいだけど、早いのね。ね、ね、何書いたの?」
「言わなーい♪他人(ひと)に言ったら叶わなくなっちゃうもの」
「んぅ~。アスカって意外と保守的なのね」
「ふふんっ♪ヒカリも早くしなさいよ!」
楽しげに会話するアスカだが、ヒカリは彼女の頬が小さく桃色に染まっているのを見逃さなかった。
おそらく、願いを書く際真っ赤になったのが未だ引かないのだろう。
(碇くん関係ね…分かりやすいんだからホント)
ヒカリ嬢、ご名答。
『シンジの恋人になりたい』
赤い短冊には、勝ち気な彼女からは想像も出来ないほど小さく弱々しい文字が綴られていた。
636:パッチン
10/07/07 22:34:41
要は笹に吊してしまえばこっちのモノ。
こっそり枝に結びつけ、周りに自分が書いたと気付かれないうちにその場を離れてしまえばいいのだ。
あとは…勝手に待ってればお星様が叶えてくれるんでしょ?
神頼みとは、何とも情けない行動だとアスカ自身も思うが…
もし、もし、もし、もし、万が一!!シンジが自分以外の女に奪われたら…と考えると、やっぱり怖い。
あの七夕の日に吊しておけば…。と後々後悔するのは嫌だ。
やれることは全部やりたい。
己の目標のために、最大限のベストを尽くしたいのだ。
・・・ベストを尽くすのなら、サッサと自ら彼に一歩あゆみよるべきなのだが。
それにアスカも女の子同士の会話で、シンジがクラスの女子に人気があるのも知っている。
なので、たとえこの短冊が誰かに見つかっても、彼女の名前が書かれているわけではないし、特別書いた人物が特定される願い事でもないのだ。
「はい、じゃあ二年生のみなさんは準備が出来たら校庭に飾られた真ん中の笹に短冊を吊してね~」
きた!
遅れをとっても早すぎても目立ってしまう。
アスカはなるべくクラスメートが一斉に向かうタイミングを狙って、動き始めた。
637:パッチン
10/07/07 22:36:20
校庭にて
・・・・・・・・・・・・・無い。
笹の前でアスカは空っぽになった両手を、グッパグッパと開いて閉じてさせる。
ガヤガヤと周りを生徒達が囲む中、完全に頭が真っ白になり無音状態に陥る。
どこ?え?どこで無くした?え?無くした?
何を?短冊よね?あの恥ずかしいこと書いた?あの短冊を?
落とした?どこかに落とした?え?え?え?
「アスカ?」
かけられた優しい声にアスカはハッとする。
遠い目をして枝を握っている親友を心配したヒカリだ。
「あれ、アスカ短冊は?もう結んだの?」
「・・・あ、あの…ヒカリ」
「ん?」
「短冊・・・無くしたみたい」
「あらら」
もぉ~短冊無くすなんて、アスカって本当にドジねぇ。と笑うヒカリの声も、アスカには再び遠く聞こえる。
親友の彼女も最初は笑っていたが、やがて気付き、アスカと同じようにハッと顔を引き締めた。
そうだ…アスカの短冊には碇くんのこと…
「なんやてぇ~!!惣流が短冊無くしたやてぇ~!!」
笹の葉と色とりどりの短冊が揺れる緩やかな校庭に響きわたる、ドデカい関西弁。
ヒカリは頭を抱えたくなった。
638:パッチン
10/07/07 22:37:45
「あっほやな~それやったら願い事叶わへんやんけ!」
「ちょっと鈴原!」
ケタケタ笑いながら小躍りするように、ひょこひょこ寄ってくるトウジ。
そんな彼のデリカシー0の行動に、ヒカリもアスカの代わりに前に出る。
「あーあ。これで惣流の願い事はもう叶わへんわけやな!どんな願いか知らんけど、切ないのぉ」
「いい加減にしなさいよ鈴原!まだ短冊は残ってるんだから、その一枚使って書き直せばいいのよ!」
「いーや、それじゃアカンねん。お星様は見てるわけや、大事な短冊無くすような人間には何枚書き直しても願い事は叶わんようになっとんねん」
トウジとしてみれば、そろそろブチ切れたアスカが登場して、委員長も含めたトリオ漫才に移行したいのだが、アスカはただ俯いてフルフル震えるだけ。
(なんや今日はノリ悪いのぉ)
最初は、軽くつつけばすぐ食いついて怒り出すと思っていたアスカが動かない。
流石に最初はギャラリーだった周りも、心配そうにアスカの近くに寄ってくる。
「どうしたの惣流さん?そんなに大事な願いだったの?」
「・・・・・」
「何なら一緒にみんなで短冊探すよ?」
「・・・・・」
「そうだよなぁ。まだ休み時間もあるし、みんなで探してもいいんじゃね?」
「・・・・・」
「ねぇ惣流さん、どんな短冊なの?なんて書いてあるか分かれば、みんなで探すよ」
639:パッチン
10/07/07 22:39:07
「・・・・・なりたい…」
押し黙っていたアスカの口が小さく動き、周りが一斉に彼女に注目する。
「シンジの・・・なりたい」
声が小く、聞こえないので、更に周りは彼女の声に耳をグイッと傾ける。
恥ずかしさがピークを迎えて真っ赤になったアスカだが、トウジの言葉により先ほど頭に描かれた最悪の未来を思い出す。
大好きな人が背を向けて・・・別の人のとこに歩いていく。
「シンジの恋人になりたいって書いた短冊よ!!!!!!
お願いだから、お願いだからみんなで探して!!!!!!」
全身から振り絞って叫んだ言葉は、周りに衝撃波のように響きわたる。
その衝撃波はどこまで飛んでいったのか・・・校庭を遥かに超えたのかもしれない。
大気圏も超えたのかもしれない。
お星様に届いたのかもしれない。
彼女の叫びを受けて、クラスメート全員が視線を移した先には、笹に短冊を結ぶ途中だったシンジの姿。
「・・・・・あ///」
まるで「アスカに周りの注目がいってる今がチャンス!」と言わんばかりのタイミングで結ばれていた短冊。
書かれた文字に全員の視線が固まった。
『アスカの恋人になりたい』
640:パッチン
10/07/07 22:41:41
「アスカ。僕の短冊の裏に、アスカのさっきの願い事書きなよ。それなら…問題ないでしょ?」
ヒューヒューヒュー
「じゃ、じゃあそうさせてもらうわ。ところでシンジ!職員室から脚立借りてきなさい!」
ヒューヒューヒュー
「脚立?なんで?」
ヒューヒューヒュー
「アンタばかぁ?アタシとアンタの願い事、お星様に一番近い特等席に吊すためよ!」
ヒューヒューヒュー
「あ、うん。わかった!じゃあ借りてくるね」
ヒューヒューヒュー
「本当にもぅ…バカなんだから」
ヒューヒューヒュー
「もぉぉ!!さっきからみんなヒューヒューうるさいのよぉぉ!!」
「良かったわねぇ。アスカも碇くんも」
「うーん。なんか納得いかんねんなぁ」
「なんで?」
「だってもう叶ってるお願いされても、お星様も困るやろ」
「ま、まあね…」
おわり
641:パッチン
10/07/07 22:43:15
七夕記念に短いやつを一本失礼しました。
お星様にアスカとシンジのラブラブを願っています…。
642:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/07/07 23:11:28
大好きやー
乙です
643:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/07/07 23:12:15
キタ━(゚∀゚)━!
乙であります!
644:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/07/13 04:36:19
久しぶりに来たらパッチンさんだ~
トウジのキャラが良い味出しててgood!です
645:名無しが氏んでも代わりはいるもの
10/07/22 01:05:08
>>641
乙です
大気圏を超えるアスカの想いに少々吹きましたw