06/02/01 08:08:11 O+dfMM7h
『ガンズ・ハート』 鷹見一幸 電撃文庫
事実は小説よりも奇なり、という言葉は有名だ。誰でも一度は耳にするだろう。
では、事実に劣らぬ小説など存在しえないのか? 答えは否である。
世間一般の小説では書かれないほどの奇妙な展開こそ、究極の写実主義であると
このシリーズは教えてくれる。ガキ大将にすぎなかった少年が指揮官に出世して
大活躍する、という粗筋は一見よくあるライトノベルのようだが、そこで読むのを
やめた貴方は、ちょいと人生を楽しみそこなっている。実に勿体ない。
まず、若い娘がロクに登場しない。主人公の周囲はオッサンだらけである。
そして、特権階級は七割くらいバカである。脊髄反射で動く人物が
非常に多く登場する。幼児退行を起こしているようにしか見えない人物までいた。
また、自然災害が容赦なく国家間の軍事的バランスを左右しまくる。
どんな名将も大自然の前ではズタズタのボロボロになってしまうのだ。
ああ、なんというリアリティだろうか! 御都合主義だとか巷で言われている
奇跡的逆転も、歴史をひもといてみれば、さほど珍しい出来事ではなかろう。
この作品によってイラストレーターの前衛的な実験作が世に送り出され、
「黒星のパクリじゃん」と言っていた者が「すまん、やっぱ別物だわ」と
謝罪するほどのオリジナリティーで話題になったのも、今では良い思い出である。