07/07/22 18:54:51
灰色鳥が舞う日
プロローグ 二〇〇三年一月二十二日 学園島南部 オターキングラード戦域
「よぉおはよう。今日も冷えるな」
「いつものことだろ。いいニュースは?」
「空軍の輸送機がプレゼントをくれたぞ。肉入りのシチューだ」
「こいつはいい。ツイてるな」
泥に汚れた稲葉学園校防軍の兵士二人は、塹壕の中で、シチューを掬ったスプーンを口へと運ぶ。
「クリスマスには本校に帰れると思ってたんだがな・・・期待しただけ馬鹿だったか」
「言うなよ。ビスケット食うか?」
「ああ」
稲葉学園が東の白石学園に戦いを挑んで、もう二年になる。
一週間かそこらで終わると予想されていた戦いは長期化し、そして泥沼化していた。
「敵さんも今は冬休みなのかなぁ・・・」
「馬鹿。奴らは冬が一番元気なんだぜ?一昨年の冬を思い出せよ」
「俺は本校で補習やってましたよ。ハァ、擲弾兵なんかに志願するんじゃなかった」
年若い一等兵の愚痴に、無精髭を浮かべた伍長は苦笑を浮かべる。
「現実を受け止めてたのしくやろうぜ。それが一番だ」
「愚痴らなきゃやってられないよ」
「ん?こいつは・・・!」
伍長は乾いた音に気付いた。
嫌というほど聞き慣れた、ロケットの斉射音だ。