10/04/02 18:54:02
“富士康科技集団(フォクスコム)”<以下「富士康」>という名前を聞いたことが
あるだろうか。米アップル社の下請けとしてiPad(アイパッド)の組立を行っている
企業と言えばお分かりいただけると思う。富士康は1974年に台湾で郭台銘という創業者
によって設立された“鴻海精密集団”が中国大陸に設立した、EMS(Electronics Manu
-facturing Service :電子製品受託製造サービス)と電子関連部品製造に特化した
企業集団である。
富士康は1988年に台湾から広東省深セン市に進出して工場を建設したのを契機として
飛躍的発展をとげ、中国各地に工場を建設して成功を収めている。今では世界中の
名立たるIT関連メーカーを顧客とする世界最大のEMS企業であり、従業員総数は世界中で
60万人以上、米誌「フォーチュン」の『2009年世界トップ企業500』の109位にランク
されている。
■朝4時過ぎ、応募者は2000人を超えた
2010年3月16日夜9時、その富士康の深セン市にある拠点工場である“龍華富士康”の
南門前には数百人の群衆が集まっていた。彼らは“龍華富士康” の従業員募集に応募
するために集まった、翌日17日6時から始まる応募受付を待つ人々であった。
富士康は2月の春節で故郷に戻った従業員が復帰しない人数を2~3万人と想定していたが、
最終的には従業員の欠員が5万人に膨らむことが判明し、春節開けの2月下旬から欠員を
補充するための大量求人に踏み切ったのであった。この募集に対して連日数千人が応募
していることから、応募者は前夜から南門に集まり、一夜を野外で過ごして朝6時の
応募受付を待つのが常態化しているのである。
3月18日付の広州紙「南方都市報」が報じたところによれば、3月16日夜から“龍華
富士康”南門に集まった応募者の群は、17日の朝4時過ぎには 2000人を超え、身動きの
取れない状況になっていたと言う。
ある応募者は「春節で故郷へ戻る列車の切符を買うために駅で並ぶ時よりも惨めだ。
駅ならば雨風を凌(しの)ぐ屋根がついた切符売り場があるが、ここにはそんなものは
ないから露天で立っていなければならない」と述べた。中国南部の広東省とはいえ、
冬の2~3月は夜12時を過ぎると寒さは募(つの)るが、応募者の数は増える一方で、
身体が触れ合い、人々の熱気で汗ばむほどであるという。
■「押すな、助けてくれ」罵声が飛び交う騒ぎに
3月17日朝5時2分、少しでも前に出ようと応募者が後から押しかけたことで、工場側が
応募者の待機場所を区切るために設置した鉄柵が傾き始め、10分後には遂に鉄柵が倒れ、
前列にいた応募者が将棋倒しとなった。「押すな、助けてくれ」といった罵声が飛び交う
騒ぎとなったが、応募者のほとんどが若者であり、負傷者は出なかった。5時30分頃に
なって、漸く工場の警備員が出てきて応募者を誘導して隊列を組ませたことで、数千人の
応募者たちは漸く秩序を取り戻し、男は東側に、女は西側に整列して、工場内に入場した
のだった。
記事によれば、こうした応募者を相手とする飲料水売りやボールペン売りが商売を展開
しており、ボールペン売りは1本1元(約13.5円)のボールペンを最高で1日に361本も
販売したという。ボールペンの用途は当然ながら応募用紙に記入するためである。
※続く
◎ソース URLリンク(business.nikkeibp.co.jp)