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728 名前: わんにゃん@名無しさん [sage] 投稿日: 2009/01/17(土) 20:22:13 ID:LlJp9vYu
「…おい。しっかりしろ」
寒い寒い風の吹く、冬の日だった。
お腹がすいて草むらにへたり込んでいた僕に
1匹の猫が声をかけて来た。
「ちいさいな…おまえ、母ちゃんやきょうだいはどうした」
「…わかんない。いつのまにかひとりになってた」
「そうか…。どこか行くあてはあるのか」
「……ううん」
「……」
「……」
「…おい、ちび。包丁はもっているか」
しばらくの沈黙のあと、その猫は僕に言った。
「?」
「もってないのか…なら、これをつかえ」
そう言って彼は、一本の小さい包丁を取り出した。
ちょっと古ぼけてはいたが、それでもきらりと光っていた。
「おれは…もう、つかえないから」
彼は、ちょっと寂しそうにそうつぶやいた。
よく見ると、彼の体はうっすらと透けているように見えた。
「いいか、これからおしえるにんげんのいえへ行け。
そしてこの包丁をだして、今からいうとおりにしゃべるんだ。
しっかりおぼえろよ。…」
僕は彼から教わったとおりに、人間の家へ行ってこう言ったんだ。
「かっ…かねをだちぇ!」