12/10/10 00:36:04.76
>>1の続き
バブルが崩壊してから、衣料品は以前ほど売れなくなった。そしてユニクロの大ブレイクもあって、
衣料品の平均販売価格は大きく下がった。衣料品の販売価格が下がれば、必然的に使用されている
生地や付属品(ボタンやファスナーなど)なども低価格品に置き換えられるし、縫製工賃も下げ
られてしまう。繊研新聞の記事によると、廃業のきっかけとなったのは「“1メートルあたり2000円も
する生地は使えませんから”という、長い付き合いのアパレルメーカーの若い担当者からの連絡だった」
とある。これで心の糸が切れたのだろうか。
■徹底したブランディングか、量産品も手がけるか
通常のジャケットやパンツで、1着当たりの要尺が2~2.5メートルだと言われている。2.5メートルが
必要なアイテムだと仮定すると1着当たりの生地料金は5000円ということになる。そこに芯地代や
付属品代が乗っかり、パターン(型紙)代、縫製代、仕上げ代が乗っかると、製造費だけで最低でも
8000円前後になるだろう。これを店頭で販売すると価格は少なくとも3万円台後半にはなってしまう。
ジャケットやコート、防寒具などの重衣料ならこの価格でも売れるだろうが、中軽衣料でこの価格
だとなかなか売れにくい。先ほどのアパレルメーカーの主張もわからないではない。
国内産地の生地を見せてもらうことが年に何度かあるが、1メートルあたり2000円という生地を
けっこう見かける。もちろんもっと安い生地もあるが、それでも500円以上はするだろう。
2000円以上する生地もいくつもある。アジア産の生地が1メートルあたり100円や200円で転がって
いるのと比べると「高い」という評価を受ける。
悔しいことだが「いい物」だけを追求していると国内製造業は存続できないようだ。いくつかの
方策があると思うので自分なりに考えてみる。
(1)「いい物」を作るのと同じくらいの労力を販促に投入すること(高く売れるように
PRを絡めてブランディングを行う)。
(2)「いい物」は作りつつも大量生産可能な廉価品を手がけること。
(3)「いい物」は見せ球にして、ダウングレードした中価格品を販売すること。
優れた方ならもっと数多くのことを考えられるかと思う。しかし、生き残っている国内の繊維製造業は、
たいがいこの3つのうちのどれかを行っているように見える。
(1)を実践しているのは山形県の佐藤繊維だろう。(2)カーシートやシートベルト、液晶研磨布
などの工業資材も同時に製造している生地工場である。最高級の生地は開発しつつ、ナショナル
ブランドにも量産品を卸しているデニム生地工場は(3)に当てはまるだろうか。(※続く)