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★安保法制審議では日本の安全保障を議論せよ
[2015.08.04]
■国際政治学者が参議院各派に異例の要望書
日本を代表する国際政治学者12人が8月3日、参議院の各会派に対し、現在行われている
安全保障関連法案審議において、日本の安全保障そのものについての議論を深めるよう
求める要望書を連名で提出した。要望書を出したのは、「安全保障法制を考える有志の会」
(世話人=白石隆・政策研究大学院大学学長)。国会での安全保障関連法案の審議が、
違憲・合憲議論に終始し、本来の目的である日本を取り巻く安全保障環境の変化への
対応の議論が等閑に付されていることに危機感を表明したもので、こうした要望は異例だ。
■要望書の内容
現在、国会では、21世紀における日本の安全保障政策の根幹に関わる議論が行われております。
この議論が最終的にどう落ち着くか、これは日本の安全保障についてはもちろん、
アジア太平洋、さらには太平洋からインド洋に至る広大な地域の平和と安定、繁栄にとっても、
大きな意義をもつと考えます。しかるに、安全保障法制をめぐる国会での与野党の議論は
きわめて狭い観点から行われているといわざるをえません。立憲主義を守ることはもちろん
のことです。しかし、同時に、安全保障について真剣に議論することもきわめて重要です。
それは次のような点を考えれば、明らかと思います。
第一に、国会での議論は、安全保障法制の合憲性に関する議論にあまりに集中している観が
あります。しかし、戦後70年にわたって日本が享受してきた平和と繁栄は、ただ憲法9条
だけによるものでしょうか。本来、国会で議論さるべきは、国民の生命財産、日本の独立と
自由をいかにして守るかということではないでしょうか。
第二に、二度と悲惨な戦争を経験したくない、危険なことにはとにかく関わりたくないという
意識によって、われわれがアジア太平洋/インド・太平洋の平和と安定のためにはなにを
なすべきか、その議論をないがしろにしているのではないでしょうか。
第三に、日本の領土、領海、領空を守るために、日々活動している自衛隊員のリスクをゼロに
できないのは、海上保安官、警察官などと同様、任務の性格上、避けられないことと考えます。
しかし、現在、行われている議論では、リスクが増える可能性ばかりが強調され、それをヘッジ
する(保険をかける)ために、国としてなにをなすべきか、その議論がもっとなされるべきでは
ないでしょうか。また、国土と国民を守るため、自衛隊員が冒さざるをえないリスクをどこまで
許容し、万が一にも隊員の命が失われたときに国としてどう対応し顕彰するかについての議論も、
もっとなされるべきではないでしょうか。
第四に、21世紀に入り、世界的にも、アジア太平洋においても、力のバランスは急速に変って
おります。世界的には新興国が台頭し、アジア太平洋では中国が台頭しているためです。
1980-2000年には世界経済に占めるG7(日本、米国、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、カナダ)
のGDPシェアは65-66パーセントでした。それが2020年には45パーセントを切ると予想されております。
新興国の台頭のためです。1990-2000年、日本経済は、東アジアの日本以外のすべての経済を合わせた
規模の2倍以上ありました。2020年には、中国経済は、日本もふくめ東アジアの中国以外の経済を
すべて合わせた規模の2倍以上になります。それほど大規模に力のバランスが変化しています。
また、中国が近年、東シナ海、南シナ海で、力の行使によって、現状変更を試みていることも
よく知られています。安全保障法制の議論において、こうした力のバランスの変化、中国の行動を
どのように抑制していくかなどについて幅広い議論がされるべきではないでしょうか。
そもそも安全保障の議論は、日本にとって守るべきものを特定した上で、どのような脅威が存在し、
それに対し日本としてどの程度対応する準備ができているかという点から、組み立てられるべき
ではないでしょうか。
>>2へ続く
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