20/08/30 16:00:18.54 oR3g+efa.net
つづき
加群の理論のおおくは、ベクトル空間のもつ好ましい性質が、単項イデアル環のような「素性のよい」(well-behaved) 環上の加群の領域でどれだけたくさん存在するかというような議論からなるが、しかしながら環上の加群はベクトル空間に比べてかなり複雑である。たとえばどんな加群でも基底を持つわけではないし、基底を持つ(自由加群と呼ばれる)加群であっても基礎環(係数環)が不変基底数条件を満足しないならば階数も一意ではない。これはベクトル空間が(選択公理を仮定すれば)常に基底を持ち、基底の濃度が常に一定となることと対照的である。
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Invariant basis number
数学、具体的には環論において、環が invariant basis number (IBN) property を持つとは、R 上のすべての有限生成自由左加群が well-defined な階数(ランク)を持つことをいう。体の場合には、IBN property は有限次元ベクトル空間は一意的な次元を持つという主張になる。
定義
環 R が invariant basis number (IBN) を持つとは、どんな正の整数 m と n に対しても、Rm が Rn に(左 R-加群として)同型ならば m = n であることをいう。
同じことだが、これは相異なる正整数 m, n であって Rm が Rn に同型となるようなものが存在しないということである。
行列の言葉で invariant basis number の定義を言い換えると、A が R 上の m × n 行列で B が R 上の n × m 行列で、AB = I および BA = I であれば、必ず m = n となるということである。この形にすれば定義が左右対称なことがわかり、IBN を左加群で定義しても右加群で定義しても同じになる。
定義の同型は環としての同型ではなく加群としての同型であることに注意する。
議論
invariant basis number の条件の主たる目的は、IBN 環上の自由加群はベクトル空間に対する次元定理(英語版)の類似を満たすことである。すなわち、IBN 環上の自由加群の 2 つの基底は同じ濃度を持つ。(選択公理よりも真に弱い)ultrafilter lemma(英語版) を仮定すると、この結果は実は上で与えた定義と同値であり、これを別の定義とすることができる。
つづく