17/08/27 14:05:27.45 iIK8Y/8u.net
>>100 つづき
これらの座談会や交歓会の記録は『月報』に記載されていますが、ヴェイユ以外の人たちとの座談会は雑談の域を出ず、どうもおもしろみに欠けています。というよりもヴェイユだけがやはり特別の人物で、SSSに及ぼした衝撃ということを考えてもあまりにも巨大でした。
日本数学会の機関誌『数学』の第7巻、第4号に谷山さんのエッセイ「A.Weilの印象」が掲載されています。書き出しの数行は次のとおりです。
≪冷い風と雨の吹き付ける夜の羽田からWeilの乗った日航機が飛立つたとき、これで遂にサヨナラだと思つた。実際、彼が日本にいると考えただけで、僕等は何となく落着けなくなるのだった。彼の与えた印象は、余りにも強過ぎたのである。≫
以下、摘記してみます。
・ヴェイユの数学上の活動は多方面にわたっているが、その方法も多様である。埋もれた多くのアイデアの発掘、新しい概念の構成による時の大問題への挑戦(もちろん常に成功とはいえないが)、多くの実験による新しい事実の発見ないしそれ自身の法則性をもつ関数の育成など。ひとくちに理論家といっても、その幅はきわめて広い。
・だが、ヴェイユの才とエネルギーをもってしても、数学全般に、あるいは芸術全般に精通することは不可能であろう。彼の理論がときとしてきわめて常識的、皮相的になるとしてもやむをえない。
・そもそも彼は豊富な常識の持ち主なのだ。≪この‘特異なる性格’、‘我儘で附合いにくい天才’が、人の及ばぬ高みに、深く澄んだ自由の空気を呼吸しながら掴つている氷河から離れて、忽ちにして常識円満な社会人となるのを、僕は何度か見た。≫
ヴェイユの衝撃に耐えながらヴェイユを語り続ける谷山さんの言葉が続きます。
(引用終り)
以上