08/12/03 02:08:10
韻文は散文の3倍くらい難しい
いまボルヘスの「戦士と囚われの女の物語」という短編を読んでたんだが、
そのなかで、ラヴェンナを守るために仲間をうらぎったロンゴバルド族の戦士
ドロクトゥルフト(Droctulft)の墓碑銘の一節が引用されていた:
Contempsit caros, dum nos amat ille, parentes
これを白水社版の訳者は、「彼死の眠りを侮れり、されど彼われを愛す、遠つ祖よ」と
誤訳している。
おそらく訳者は近代詩しか読んだことがなくて、まさか caros ... parentes で「尊き父祖を」と読めるとは
思わなかったのだろう。
しかも、この一節が〈長長|長長|長長|長短短|長短短|長長〉の六脚韻になっていることに
気づかなかったために、cārōs(尊い) と cărŏs (死の眠り)を読み違えるという致命的な
ミスまで犯している。
本当に韻文は難しいと思う