10/12/25 01:11:06
冬ー冷たさが世界を包み込むこの季節。
私は一台の車に揺られ旅をしている。隣の運転席では一人の少年ーガロード・ランが車を動かしている。
この車は廃車寸前だったのをガロードが修理しては運転し、修理しては運転するという
ことを繰り返しているので、あちこちの塗装は剥げかけ、ヘッドライトは消えかかっている始末だ。
私たちの車が通っている道は元々戦争前にあった道でコロニー落としのせいで
道そのものがなくなっていたり、砂煙で所々見えなくなっている。道なき道といっても差し支えないような状態だ。
ガロードは車を停める。車が軋んだ音を立てて停止する。彼はダッシュボードから地図をとりだして
しばらく難しそうな顔をしていて地図とにらめっこしている。
私はぼんやりとガロードの方を見ていたが、やがてガロードも私の視線に気づいたのか
私の方を向いてにこりと微笑みかけて口を開く。
「なあ、ティファ。明日はどっかの街の宿にでも止まろうと思うんだけど、どっか希望とかある?」
「うーん、私は特に……あっ、たしかここの近くにガロードの故郷がなかった?」
「え、セントランジェのことか?あれは故郷つーか俺が最後に一人でいたとこなんだよな。そこがいいのか?」
「うん、そこがいい。」
「よし、分かった!ティファ、今から五時間くらいすっとばすから横になってな。」
ガロードはグッとアクセルを踏みこむ。エンジンが音を立て、車が動き出す。
景色が次々と流れるように変わってゆく。私はそんな風景を眺めながら瞼を閉じる。
「ティファ、もうすぐ着くぞ。おい、ティファ。」
「……うーん、着いたの?」
私はいつのまにか眠っていた体を起こし窓の外を眺める。外はもう陽が沈みかけていて月がうっすらとその姿を出していた。
目の前のその街には街灯や、たくさん家の光がきらめいていた。
その光景はAWの時代を生き抜いてきた人々の活気を表しているかのようでもあった。
その街から少し離れたところにはいくつもの白い石碑のようなものが立っている。
私はその石碑のようなものを指で指して尋ねる。
「あれは一体何かしら?ガロードは知ってる?」
「うーん、俺がいたころにはあんなのなかったなあ。しかし、ずいぶん復興したもんだな。
前いた頃はどこもがれきがあったり、掘っ立て小屋なんてザラにあったんたぜ。」
「みんな悲しい時代を乗り越えて生きていこうとしているのね……」
車は街の中に入りスピードを緩める。
街の中央には大きなもみの木が立ちたくさんの電球やモールに飾りつけされている。
「ああ、そういえばこの時期はクリスマスなのか。すっかり忘れてた。」
「そういえばそうだったわね。日付が分からないと忘れちゃうもんね。」
私たちは基本車移動の根無し草だ。テントをどこかにはって寝る生活が基本なので日付は必要なくなってしまっていた。
ガロードはノロノロと車のスピードを緩めていたが、しばらくしたら車は完全に沈黙してしまった。