10/11/11 16:22:16 eDZg7rN+
流れ豚切り
ずっと片思いしている男君とは、めったに話せない、臆病者の喪山喪子。
しかし神様は見ていてくれるようで、偶然席が隣同士に!
「あ。喪山さん、同じ班になるの初めてだよね?よろしく」
と気さくに話しかけてくれるも、しょせん喪女な喪子。
どもりながら
「ああ、よ、よろしくお願いします」
と答えるので精いっぱいだった。
それからドキドキの毎日。
今日、寝癖ついちゃった……、とか、変じゃないかな、とか
いつもは猫背のくせに授業中は頑張って姿勢をよくして勘違い熱血教師に
「おお!今日はやる気があるな!」なんて言われちゃったり。
そしてある日の放課後、掃除中。
他の班メンバー全員がサボる中、ひとり黙々と教室掃除をしていると偶然教室の前を男君が通りかかった。
「悪い!掃除忘れてた…喪山、ごめんな!」
と必死に謝りながら、一緒に掃除を始めた。
さっき教室前を通ったリア子さんは「ああ……めんどいから喪子頑張れ!」なんて言って帰ってしまったのに!
男君の優しさはそれだけでなく、私を気遣う言葉や他愛もない話の数々……。
そんな中、喪子は勇気を出して男君へ言う。
「あ、あのね」
「ん?」
ずっと思っていたこと。ずっと憧れていたことを。
「あのね、苗字、呼び捨てにしてほしいの!」
自分だけさん付けは嫌だった。距離が遠く感じた。
喪女のくせに、高望みしすぎだと思い言えなかったが、今なら言える。
答えが返ってくるまでの数秒が、永遠のように長く感じる。心臓が痛い。
そして、男君の答えは……
「なれてないけど……、喪山さ……、喪山!
なんか違和感あるけど、喪山s…喪山が呼び捨てがいいなら頑張るわw」
ちょっとだけ、距離が近くなった気がした。