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阿倍野ターミナルタワーは近鉄衰退のシンボルだ
今週のコラムニスト:レジス・アルノー
パリにモンパルナス・タワーが完成したのは1972年。
フランスで一番高い超高層ビルとして、街の中心部に誕生した。
この建物は当時、現代化への道をひた走る「新生フランス」をリードする「新生パリ」のエスプリのシンボルして期待された。
それは「ほかの先進工業諸国に遅れを取るものか」という意思表示だった。
だがその外観はといえば、六本木ヒルズよりはややマシという程度の醜悪さ。
時とともに、モンパルナス・タワーは大きな過ちだったことが明らかになってきた。パリの景観を壊しているのだ。
パリは歴史的に「平ら」な都市だ。太陽の光はまっすぐ地面に届き、木々はすくすくと育つ。
たちの悪い旅行会社にそそのかされでもしない限り、モンパルナス・タワーを訪れる日本人観光客などいないだろう。
パリにはこんなジョークもあるくらいだ。「パリで最も美しい景色は、
モンパルナス・タワーからの眺め。なぜかって? モンパルナス・タワーが見えない唯一の場所だから!」。
だからといって、どうすることもできない。
タワーを解体するとしたら、その費用は推定10億ドルに上る。パリ市に負担できる額ではない。
どの国が世界で一番高いビルを建てられるか―モンパルナス・タワーは、国と国とが何世紀にも渡って繰り広げてきた、
そんな子供じみた競争の一例だ。
ただし最近では、この競争に参加するのはもっぱら途上国ばかりになった。
途上国はとかく裕福になると、タガが外れたようにド派手な高層ビルを建てまくる。
それはたいてい独裁者の虚栄心の現れであり、恵まれない人々をないがしろにする行為だ。
カネの使い方にまるで想像力がないことも露呈する。
中国は現在、世界のどの国よりもバカバカしく高い超高層ビルを次々建てているが、
これは自らの見栄っ張り度を世界に宣伝しているようなものだ。
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