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>>384のつづき
■家族国家03
family state
明治維新によって外見は西洋型近代国家に転換したにもかかわらず、
中身は敗戦まで家族国家観が政治支配の主要原理として機能し、
そのことが日本の近代化を妨げ、
日本の政治をきわめて宗教的神秘主義、封建的色彩の強いものとした。
明治政府は帝国主義列強と伍(ご)していくために国内的には富国強兵策、
対外的にはすでに列強間であらかた主要な地域の線引きは終わっていたが、
「世界分割運動」に後発ながら参加しようと海外膨張政策(帝国主義)をとった。
(このときの無理な政策展開が、宗教的神秘主義と結合した天皇制ファシズムを呼び寄せ、
太平洋戦争、敗戦へとつながったと指摘される。)
また藩閥勢力の既得権保護のため、自由主義、民権主義といった
国民の権利を押さえつけ、
国家の利益を個人の利益に優先させた。
このため、明治維新によって一度は否定された、
忠孝を柱とする、封建的な儒教道徳が明治20年代に入って復活、
国父である天皇の命令には絶対服従せよとする家族国家観が、
教育勅語や国定修身教科書などを通じて広く国民の間に植え付けられていった。
こうして、戦前の日本では、万世一系の「日本国民の宗家」としての天皇に対する絶対的忠誠という観念に、
家族における父権の絶対性を基礎にした封建的な家族制度や非近代的な村落共同体的規制を結合させて、
天皇制的支配原理が確立された。
(参考:田中 浩一橋大学名誉教授・政治学専攻)