11/03/14 22:40:43.31 iTG5v3V/
苗木「やだなぁ、霧切さんが僕みたいな冴えない男の事、好きなわけないじゃないか」
351:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/14 22:48:19.58 GEpJ3Sm1
>>350
希望捨てんな
352:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/14 22:57:32.59 Av+ODtQj
あそこまで言っておいてその後別行動だったらそっちの方が驚きですよ
353:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/14 22:57:55.99 a5OGMv4R
>>351
苗木「希望を捨てないで色んな女の子にアプローチをかけることにしたよ!」
霧切「………」
354:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/14 23:14:09.47 MVodr8bZ
霧切さん一人では最後の最後で黒幕をぶちのめせなかったのと同様に
霧切さんが黒幕との直接対決の道筋を作らなければ苗木君の希望も無力だった
どっちが欠けても駄目なんだ
もうラブラブとなることは天の思し召しと言っても過言ではあるまい
355:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/15 03:48:50.18 Ti7UEQvI
なんか主人公が最後に残すのが希望だったり、ラスメンがバカ・脳筋・cv石田・恋に夢見る美少女兼信頼できる相方だったりして
いつ「霧切涼子は私が創作し、演じさせたキャラクターだ。お前を絶望させるためのな。」とか言い出さないか心配てたがそんな事無くて良かったぜ
356:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/15 03:56:15.77 lIqFwre2
なんでもかんでも予想外の展開にすりゃ良いってものじゃない
相棒は必要だった
357:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/15 05:40:13.23 VAXdOJOy
>>355
Σ論破≡ (゚Д゚ )。oO(それは違うよ!
苗木「霧切さんの本名って、たしか……霧切『響子』……だよね?」
358:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/15 06:25:54.20 Guzsqcze
>>355
スパイラル乙
359:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/15 07:09:44.96 f8M6Opl9
まさか個人スレで名前を間違えるとは…
>>355一緒に補習受けに行こうぜ
360:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/15 16:57:21.98 AmWk5x+V
>>354
探偵は2人で1人!
361:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/15 17:23:20.73 0ouRMirb
ドカァン! ドカァン! ~ 補習 ウケルヤツ ココ ~ ドカァァン! ドカァァン! ~ヨヤクシャ 355 359 ~ ドカァァァン! グシャァァァ
362:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/15 20:23:59.57 ScgAh9Tg
霧切さんのジャケットって、前の学校の制服だよな
校章付いてるし
私服の趣味はどんなだろうか
363:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/15 21:45:02.37 Ti7UEQvI
いくら深夜だったとは名前を間違えるなんてなんという不覚
364:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/15 22:08:42.19 cTTRXxtt
>>362
ブーツや手袋の趣味からすると、たぶん私服もゲーム中の服装と同じような感じではないか
意外に女の子女の子した私服だったりしてもそれはそれで
365:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/15 22:24:40.32 aoW3bbyC
>>360
そんな君に
つガイアメモリ
366:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/16 03:20:08.67 qjKv2GbW
IDかわっちゃったけど気にせず書き込むぜ。
それにしても地震起こる前以上に盛況だな。俺のできることってこれしかないから、まあ楽しんでいただければ。
っつーわけで、
こちら苗木誠探偵事務所(連作短編)(←未定)
367:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/16 03:20:17.27 qjKv2GbW
「本当にありがとう! いやぁ、なんとお礼を言ったらいいか……」
「そんな、お礼なんていいですよ」
「いや、そういう訳には。是非お礼がしたい。させてくれ!」
「本当に、大丈夫ですから。僕らも好きでやってることですし」
「そうか……なら、せめてこれを受け取ってくれ。食堂で使える―」
「―それなら」
「うん?」
「……それなら。二枚、頂けないかしら。その食券」
苗木誠探偵事務所は、基本的にボランティアだ。
そもそもからして部活動で金銭のやりとり、というのがありえない。活動資金は部費で十分にまかなえるし、霧切さんも僕もお金が目的で探偵事務所をやっているわけじ
ゃない。
じゃあなんで探偵事務所なんかやっているのかと尋ねられれば……それは、僕にもわからないけど。霧切さんは未だに理由を教えてくれない。
閑話休題。とにかく僕らは金銭を受け取らない。けれども霧切さんは優秀な探偵で、望外の依頼遂行にお礼をと、何かを取り出す人は後を絶たず。
そんな時に、霧切さんは。消費できるものなら、ふたつ。もしくは二の倍数で、報酬を要求するのだった。
「霧切さんは、何食べるの?」
「そうね。今日は……せっかくだから定食にしようかしら。苗木君は?」
「じゃあぼくはラーメ……」「………」「ぼ、僕もなにか定食にしようかな……」
今回の報酬は食券二枚。一度きりで好きなものが食べられるスグレモノで、文化祭など学内イベントでの景品でよく見かけるものだ。
というわけで、僕と霧切さんは翌日の昼食を学食でとることにした。
結局僕はとり南蛮、霧切さんは焼き魚定食を選び、空いている席に向い合せで腰かけた。なんだか事務所にいるみたいだ。
「……? なにがおかしいの、苗木君」
「ううん、なんでもないよ。いただきまーす」「……いただきます」
二人で合掌。味噌汁をすすって、ほう、と息をつく。
「ねえ、霧切さんはラーメン嫌いなの?」
「どうして?」
「いや、さっき……」「なんのことを言ってるのか、わからないわ」「……そう」
首を傾げつつ、ご飯を口にする。暖かい食事が食べられるのが、お弁当にはない利点だと僕は思う。自炊もあんまり、得意じゃない。
「(霧切さんは……料理、得意なのかな)」
ほんのりとした酸味のある鶏肉を口に運びながら、ちらりと霧切さんを伺う。
ちまちま、ちまちまと。霧切さんが器用にサンマの身と骨を分けていく様子は、なんだか可愛らしくさえ思えた。
そう言えば以前、海外生活が長かったというような話を聞いた覚えがある。それにしては随分箸の扱いが上手い。
「…………何よ?」
―と、目が合う。その瞳は無感情にも見えるし、なんとなく僕を責めているようにも見える。
「あまり人の食べるところをジロジロと見るものではないわ」
「ご、ごめん」
慌てて自分の食事に戻る。思い出したように鶏肉を一口。このタルタルソースは絶品だ。鶏肉もしっかり揚げてあって言うことない。ついでに未だ湯気を上げているご飯を
ぱくり。
「うん、美味しい」
「……ねえ、苗木君」
「どうしたの?」
「その、とり南蛮? って、美味しいのかしら」「美味しいよ。食べたことない?」「ええ。初めて見る料理だったから」「だったら、ほら」
とり南蛮の味を知らないなんてもったいない。僕はひょいと食べやすそうなサイズの鶏肉を箸で摘みあげて、霧切さんに差し出した。
「ほら、霧切さん。ぱくっ、と……―」
―僕は。一体、何を。
霧切さんの口許に突き出した僕の箸。今更それを引っ込めるようなことはできなくて。というか気づくのが遅いよ僕。
「………ぁ」ぱくり。もぐ、もぐ。もぐ、……ごくん。
その、白くて細い喉が上下するのさえ、僕は凝視してしまって。
「ええと、」「……」「……美味しかった、かな」「味なんて、分かる訳、無いでしょう」「ご、ごめん。……それじゃ、もうひとつ」「―ッ!?」「うぁ、ええと、違くて、その、」
その一瞬だけ、僕らは今いる場所がどこか完璧に忘れて。
「……また、食べに来ようか、霧切さん」「……ええ」
僕らは互いに顔を伏せ。見知ったクラスメイトが通りかかって話しかけるまで、そうしていた。
368:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/16 03:48:05.38 vkk/Bc9P
いいよいいよ~甘甘だねえ
369:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/16 05:19:36.70 SshR8Ljd
>>367前からあなたの作品大好きです GJ
よくこんな面白く書けるよなぁ
370:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/16 07:59:44.29 P9Oq3AtN
>>367
GJ!
さあ次は霧切さんが苗木君に「あーん」する番だ
371:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/16 13:46:07.08 3A/7DIXn
霧切さんってデザイン上だと、魔性の女って感じがする。
372:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/16 15:19:34.81 HB582qHi
魔性の女かどうかは分からんが、露出度を控えつつそこはかとない色気を感じさせるデザインだとは思う。
373:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/16 18:46:02.51 P9Oq3AtN
殺人事件を引き寄せる死神体質だし、ある意味魔性の女には違いないw
374:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/16 19:02:18.48 lW413QT9
>>372
手袋に依るところが大きいと思うんだ。
あぁ火傷跡も個性的で素敵だけどね。舐めたい。
375:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/16 21:19:54.93 SOB95hdV
霧切さんと素手同士で恋人繋ぎとな?
376:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/16 21:20:17.16 k+VOeIMY
ていうか、正直言うと霧切さんも残念さん同様、
昔はフェンリルに所属していたのかと思ってた
それが父親にばれないように手を焼いてまで隠ぺいしてるんだとばかり・・・
だって「襲ってきたら返り討ちにする」とかあっさり言う人なんだもん(´・ω・`)
377:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/16 22:45:21.99 qjKv2GbW
なーんか微妙に納得できない出来だけどそれは次回の課題にするとして、もう一度場所お借りします。
今回は糖分低め。書いてて一番イライラしたのは俺なんだぜ。あと段落の頭下げないと見にくいのか見やすいのかそんな実験も。
っつーわけで、
こちら苗木誠探偵事務所(連作短編)(←推定)
378:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/16 23:03:16.46 qjKv2GbW
「おーい苗木っち! 今度のテストなんだけどさぁ」
「苗木ー! 霧切ちゃーん! ドーナツが上手く焼けないのー!」
「我より強い戦士を……探している」
「え、ええっとー。あはは」
「…………頭が痛いわ」
苗木誠探偵事務所は、ただの何でも屋になりつつある。
―にゃー。
最初はそれこそ迷い猫捜しに恋人の浮気調査にと、まるで小説に出てくる売れない探偵のような依頼が多かったのに。それがいつからか、
―多分、テストのヤマはりを請け負った時からだろう―、僕らの事務所には妙な依頼が増えたのだ。
テニスの試合のピンチヒッター。アルバイト先の新メニューの考案。そして、
「―にゃあ」
「ああはいはい。ごめんよ、きょうちゃん」
「っ、………」
太ももにのせられた顎をちょいちょいと撫でる。サテンのようになめらかな感触。黒蜜のようにとろりとした深い黒の毛皮。
『猫を預かって欲しい』―探偵事務所のドアが控えめにノックされたのは、今日の朝10時のことだった。
土日であっても僕らの都合さえあえば事務所は開けてあるけど、大抵の場合、開店休業だ。正午になったら二人で昼食をとり、どちらかに用事があればそこで事務所は店じまい。最近はそのまま一日過ごすことが多かったけど、今日は珍しく依頼人がやってきた。
検査入院で二日ほど家を空けるから飼い猫を預かってほしい、と僕らに告げたのは見覚えのない上級生だった。
『かきょうちゃんっていうの。大人しいコだし、悪さはしないから』
イエスともノーとも言わない霧切さんと困り顔の依頼人に挟まれ、仕方なしに僕は猫入りのケージを受け取って。ケージの中からおっかなびっくり出てきた黒猫は、
「ううん、そろそろ降りてくれないかなあ……?」
―なぅ?
僕の膝の上から降りなくなった。この猫、初対面なのにえらい人懐っこい。
耳の後ろをさわさわと撫でる。気持ちよさそうに眼を細めるその様子を見るに、今のところ機嫌は損ねていないようだ。
「図々しいわね……猫のくせに」
「なにか言った? 霧切さん」
「なんでもないわ」
「そう? ……あ、ひょっとして霧切さん、猫嫌いだった? きょうちゃんを預かる時もなんにも言わなかったし」
「……そんなことないわ。……それよりも、苗木君」なぅ?
僕の代わりに返事をするように、何故か一鳴き。それを聞いた霧切さんの視線が一際冷たくなった―ような気がした。
「貴方は呼んでないわよ」ふにー。「何よ。文句でもあるの?」ふかー。
「ま、まあまあ。霧切さんもきょうちゃんも喧嘩しないで」
「……それよ」「え、どれ」「……その、呼び方。どうにかならないのかしら」
霧切さんが不可思議なことを言い出した。
「呼び方って、きょうちゃんのこと? だってかきょうってなんか言い辛いし」「前々から思ってたけどわかっててやってるでしょう貴方」
どういうことだろうか。猫に限らず、生き物の預かりなんて初めての依頼だけど。
「きょうちゃんが事務所に来たのは今朝のことだよ」「そういうことじゃなくて、この前も貴方食堂で―」「?」
「……なんでもない」
ぷいと体ごと背けてしまう。霧切さんの椅子は音もなく90度回転し、そうして霧切さんは無実の人間でも自白させてしまいそうな視線を本棚に向けた。怖い。
僕は何か失言してしまっただろうかとさっきまでの会話を反芻し、わからないなりに何か言おうと口を開いて、
「―にゃー」
「うん? どうしたのきょうちゃん」なぅ。「んー、お腹すいたかな?」にゃにゃ。「多分そうだよね。たしか、飼い主さんからもらったカリカリが―」
ばんっ!「へぁっ!?」
情けない声が出た。驚いて霧切さんの方を見ると彼女は何故か立ち上がっていた。今のはどうやら机を叩いた音らしい。きょうちゃんも目を見開いて固まっている。
「えっと………」「………コーヒー」「へ?」「コーヒー買ってくるわ」「え。インスタントならそこに」「私は、」
「……缶コーヒー。そう、缶コーヒーが飲みたいのよ」
そう言って霧切さんは足音荒く僕の横を通り過ぎ、
「………ふん。一人でペットショップ苗木でもやればいいのよ」「え、今なんか」「ナン・デモ・ナイ」
最後にきょうちゃんを一睨みして事務所を出ていった。静かに閉まったドアが異様に恐ろしい。
「僕、なにかしたかなあ……帰ってきたら霧切さんに謝らないと」
ふか、と、膝の上の黒猫が呆れたようにあくびを一つ。僕の顔をひょいと見上げて、気だるそうに後ろ足で耳を掻き、今までが嘘のように膝の上から飛び降りた。
ちなみに霧切さんが帰ってきたのはこの後二時間ほど経ってからだった。
379:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/16 23:11:08.81 P9Oq3AtN
GJ!
「きょうちゃん」呼びか…新しいな
そしてスネギリさんはやはり良い
380:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/16 23:13:56.84 qjKv2GbW
やっぱ見にくいわ。一字下げします。
あと文字制限に引っ掛かって100字ほど削ったり。投稿時間にラグがあるのはそのせいです。すんません。
1950字くらいでひっかかって、1847字で投稿できました。あと横の行は72,3字程度でヘンな改行が入ります。
1レスに無理やり収めようとするのは自分ぐらいだと思うけど、小説書かれる方は参考までに。
381:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/17 10:07:38.19 ZxYGDzgD
>>376
苗木「がおー(棒読)」
霧切「ば、バカ、そっちの襲うじゃな・・・むー!
やぁん、舐めたらダメ・・・くひぃんっ!」
382:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/17 15:11:05.95 fo7G8320
昨日クリアしたがお仕置きの時の段々取り乱さずに青ざめていく表情で俺の中の何かが目覚めたわ
383:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/17 19:13:25.59 NttGPQuZ
>>382
ようこそ
あのムービーには道を踏み外させるだけの何かがある
384:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/17 19:52:15.04 IiUBnXmp
あれで霧切さんに転んだ、という人はいるのだろうか
385:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/17 20:42:16.87 Rlz0LbFm
>>384 呼んだ?
386:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/17 20:53:42.62 KwXw5HZZ
キリギリさんになんて、舞園さんが殺された現場の中腰ポーズの段階で転んだぜ
387:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/17 21:07:49.38 OU7AyiJe
>>386
お前が居る…
388:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/17 21:08:23.84 ZR6YcZXY
わたくし、恥ずかしながら霧切さんのおかげで手袋フェチに…
389:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/17 22:03:35.05 mdrX5vun
>>382
霧切さんのあのシーンは、やばいぐらいエロい
390:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/17 22:08:51.45 WoQvuZG9
まともに議論をしようとしてくれたから霧切さんが好きになった俺は少数派かな?
一章は馬鹿のバーゲンセールなのかあ!?って所での唯一の光明に見えた
一章ではセレスも十神も仕事する気ねーし
391:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/17 23:18:43.29 ZR6YcZXY
少数派ってこたあないだろう
裁判での霧切さんの凛々しい姿に惹かれた奴は俺含め少なからずいると思うぜ
「私は最初から大和田君を狙い撃ちにするつもりだった!」とか、もう惚れるしかない
392:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/17 23:56:43.94 fA+bgglx
>>391 激しく同意
393:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 01:23:22.22 MxhOqH+8
そろそろしつこいけど、もうちょっとやらせてください……ウザかったらやめるんで、せめてこれだけは。
掌編にしようと思ったけど長くなりました。二つほどお借りします。
こちら苗木誠探偵事務所(連作短編)
(↑否定)
394:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 01:23:43.19 MxhOqH+8
「えーと……霧切さん」
「なに」
「その、えっと、ごめん」
苗木誠探偵事務所は、開設以来最大の危機に……ってそんなこと言ってる場合じゃない。
居心地が悪かった。
「どうして謝るの。何か悪いことでもしたのかしら」
「いや、それはその」
「していないのかしら。ならどうして謝るの。謝るのが趣味なの? 面白いわね。面白くもなんともないけど」
「……」
いつもの探偵事務所。いつもの椅子にいつもの二人。いつものように窓から差す夕日が今日はひどく眩しくて、僕は顔を伏せた。
週明けの探偵事務所の仕事は、預かっていた猫を返すことから始まった。申し訳なさそうに、しかし嬉しそうな様子でかきょう(黒猫。メス)を受け取る依頼人には半ば追
い返すような形でお帰り願った。
依頼人の学園生がいる間から霧切さんは一言も喋らずに黙々と文庫本を読んでいて、沈黙に耐えきれなくなった僕が口を開いて今に至る。
霧切さんの機嫌が悪い理由―猫と僕だ。昨日おとといと二日考えて何となくは原因に辿り着いている。
「(……きょうちゃん、か)」
僕がおととい黒猫につけたあだ名。そして不機嫌そうに僕の向かいで読書している女の子は、……霧切、響子さん。
まったくもって迂闊すぎた。
「(自分の名前を猫に付けられたのが気に入らなかった? まさか)」
何か違う。着眼点がズレている気がする。それに、きっと原因はそれだけじゃない。
件の黒猫を思い出す。初対面なのに懐いてきて、僕の膝の上から降りなくて。なのに霧切さんが事務所を飛び出していったらつまらなそうに飛び降りた。
それまでは当て付けのように、
「(……誰に対する、当て付けだ?)」
霧切さんしかいない。いや待て苗木誠。お前は何の行動を指針にして推理を組み立ててるんだ。どうして猫の行動なんかに意味を求めてる?
「(けれどあんな意味ありげな行動、霧切さんがいなくなった途端意味がなくなったように―)」
違う違うそうじゃない。猫の行動に意味なんか求められない。そっちじゃない、逆に考えるんだ。猫の行動に意味があるんじゃない、霧切さんには意味があるように見えた
んだ。
「(僕が猫をきょうちゃんって呼んだ。猫が膝の上から離れなかった)」
言葉にすればただそれだけのことだ。けれど霧切さんはそうは思わなかった。ならどう思った? 僕には当て付けに見えた。それで、僕らの週末はどうなった?
「(……事務所、は。苗木誠探偵事務所は、土日は)」
用事がなければ、僕らはそこで日がな一日。それは気まずい時間? ―いいや。
「(そう、か。僕らは、……霧切さんは、毎週、楽しみに)」
「霧切さん」
「なに」
先程と全く同じ反応。続く僕の言葉もそう変わらなくて。けれど僕は決意を込めて。
「ごめん。ごめん、霧切さん。せっかくの週末、台無しにしちゃって。……僕が猫にばっかり構うから、霧切さんを怒らせて―、」
決意を込めて―盛大に失敗した。
395:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 01:24:56.08 MxhOqH+8
>>394続き
これは……ない。この言い方はない。これじゃあまるで、霧切さんが。
「―へえ」
「ひっ?」
地の底から響いてくるような声。ゆらりと霧切さんが立ち上がる。
「それでは貴方はこう云いたい訳ね。私が貴方に、か、構ってもらえなかったから怒って事務所を飛び出したと。そう。そうなの」
「いや、その」「黙りなさい」「はいッ!」
つかつかと僕に歩み寄ってくる。その顔は真っ赤で目元は引きつっていて、それでも何とか無表情に努めようとしているのが何よりも怖かった。
立ち上がろうとして失敗した。そうこうしている間に霧切さんは目前に迫っていて、僕は目をつぶって次に来るであろう衝撃に備えた。
「苗木君―」「ご、ごめんなさいっ!」
―ぽすん。
「……へ?」
覚悟していた衝撃はいつまでたっても来ない。その代わり、膝の上になにか圧迫感。
恐る恐る目を開けると―眼前いっぱいに、銀色が飛び込んできた。
「……正解よ」
「せ……なに?」
「だから、正解。……拗ねてたのよ。あの畜生に貴方を取られた気になって。貴方がアレの名前を呼ぶ度に憎々しいわ苛々するわで。
挙句の果てに事務所を飛び出して、気まずくて戻るに戻れないし、そのせいで次の日も話なんかできないし」
「……」
霧切さんの表情をうかがうことはできない。彼女の背中が夕日を遮って、けれども僕はまだ目を細めて。
「苗木君……ごめんなさい」
「私が謝らないといけないのに、……本当にごめんなさい」
「ううん、僕の方こそ」
「いいえ、貴方は悪くないわ。……だけど苗木君、お願いがあるの。この事務所の所長である貴方に」
「何かな。僕にできることだったら何でもするよ」
「……最後まで話も聞かずに。そういう言い方、身を滅ぼすわよ。無茶なことだったらどうするの」
今以上の無茶なんてないよとは、勿論言わない。
「まあいいわ。これはお願いだけど、拒否なんてさせないから。あのね、苗木君―」
そう言って、霧切さんは静かに振り返り―
苗木誠探偵事務所は部室棟二階、階段を上がって左側の奥から二つ目にある。
扉には事務所の名前が入った銀色のプレートが掛けられているだけだったが、最近そこに一枚の張り紙が増えた。
そこにはマジックペンで「生き物、預かりません」と無愛想に書かれている。
ついでに言ってしまうと、部屋の中にも二つほど備品が増えた。一つ目は窓を覆うブラインド。そもそもなんで無かったのかわからない、とは霧切さんの弁だ。
そしてもう一つは、椅子。革張りの立派なもので、長時間座っても疲れない高級品。僕らの椅子……というか、僕の椅子だ。以前山田君たちに
もらった回転椅子は部屋の隅に追いやられている。
『苗木誠探偵事務所は貴方が所長なのよ? これぐらいでないと格好がつかないわ』と言ったのはやっぱり霧切さんだけど、それがただの建前であることは、
二人とも知っている。僕は相変わらず、扉に背を向けるようにして座っているしね。
それで、霧切さんは時々、奇妙な行動をとるようになった。文庫本を読んでいたかと思うと急に立ちあがり、ブラインドを全部おろして。
扉の前まで歩いて行って、内側からカギをそっと掛けて。電気まで消して。
そうすると―そうすると、うん。僕は、……本が読めなくなるんだ。
396:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 01:37:17.57 MxhOqH+8
終わりです。スネギリさん救済。これだけはさせてほしかった。
右端の折り返しとか全く前回の活かせてないっすね…
お邪魔しました
397:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 01:38:13.65 LhE0gyBD
キャラスレ初めて覗いたがいいもの読めたよ
ありがとう
398:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 02:34:33.21 m8jZlDXT
>>396
乙ですー
さあ続きを書くんだ
399:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 03:23:06.73 1OG6RypD
おっつ
SSに邪魔なんてないさ
400:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 11:00:36.07 qXrvLHMK
これは素晴らしい…
スネギリさんかわい過ぎる
401:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 11:59:33.35 cERYJZ/I
ここでおわりだなんてとんでもない!
402:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 14:54:59.28 QU747B4y
>>396
君はこのスレに必要な人だよ。
きっと十人に聞いたら十五人そういうんじゃないかな
403:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 20:48:45.00 jYLIY7Sr
>>396
さあ、早く次の物語の執筆に取り掛かるんだ
404:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 21:26:44.90 MxhOqH+8
前スレでも誰かが言ってたけど、他の個人スレに比べて圧倒的に進行が早いよな
出所はゲーム単体、ファンブックも言うほどネタが増えなくてよくこれだけ伸びるもんだ
霧切さん可愛いよ霧切さん。でも久しぶりにゲーム起動したらマジ眼光鋭かったよ霧切さん
405:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 22:57:41.98 d+Q2WmpG
つまり他のどの女の子よりも霧切さんが可愛いってことだな
そんな霧切さんに好かれる苗木君うらやま
406:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 23:29:38.18 45/PvbQ6
>>404
それ多分俺だw
まぁ今の流行もあると思うけどな
最近は霧切さんタイプのキャラは基本的に人気高いしその上メインヒロインだからな
407:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 23:39:27.40 CsSBGQO0
まどかマギカのほむらちゃんとイメージかぶるな。
味方側で一番冷静で一番真理に近い位置にいるように見えて、
主人公を困惑させながらも、実際は主人公のために一番良い行動をとってくれてる。
まどか何話か見てからこのゲームやり始めたから、
キリギリさんがいつ「それには及ばないわ」とか言い出すのかドキドキしてた。
408:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 23:39:44.19 arQyIZsC
クールビューティーか
409:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/18 23:50:51.88 LqJxNat6
霧切さんはクーデレと言われていたが
4章を見る限り、むしろ霧切さんはクールなツンデレではなかろうか?
410:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/19 00:07:42.24 qiZAFXwj
てかダンガンロンパの女性声優ってクールビューティー系演じるの得意な人多いよね
日笠に沢城に豊口
411:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/19 00:32:54.88 1nr5yN8J
大好物ですとも
412:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/19 00:40:15.81 4BhTOaOi
全然ハナシ変わるんだけどさ、胸囲1センチ差ってデカいの?
どっから霧切さん貧乳説が出てきたんだっけ
413:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/19 00:59:31.70 sOeWfiKq
霧切さんが貧困な乳というより1センチ差なのに舞園さんが豊満な乳だからな
ダブルヒロインだからツーショットが多いんで印象深い
414:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/19 09:49:17.81 ILsw0CZE
>>409
4章のあれはツンデレとはまた違うんじゃないか
ツンデレに詳しくないからよくわからないけど
霧切さんは一見テンプレ的なキャラ立てに見えるけど、実際は割と独特なキャラだと思う
415:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/19 14:55:11.46 6paNN14H
俺も霧切さんツンデレは違うだろ派
416:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/19 15:20:46.34 9m3ZROMF
まあツンツンはしてないなw
ただゲームの序盤は、話しかけてもほとんど生返事だったし
それからあの終盤に向かうのかと思うと、やっぱデレの部分はあると思うのよ
417:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/19 16:00:46.49 iQo3Ibk8
どっちの霧切さんも可愛いよ
クーデレでもツンデレでもデレがあることは確かなんだからそれでよし
418:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/19 18:41:35.24 p1Av/AWe
霧切さんは可愛いけど…僕はそれに負けないくらい霧切さんはエロいと思うんだ
ほら、資料集を見てよ、霧切さんの表情集があるページなんだけど…
頬を染めた霧切さんの表情が二つあるでしょ?
この二つの表情…これらって、とってもエロいと思わない?
特に笑ってる方、Mの人にはたまらないと思うんだ
もちろん、普通に照れてる方もエロいと僕は思うんだ
それに霧切さんの肌ってとっても白くて綺麗でしょ?
そう言う娘が頬を染める…どう考えてもエロくならないとおかしいんだよ
霧切さんは可愛いと思うし、かっこいいとも思う…
でも…それに負けないくらいエロいと思うんだ、僕は…
これって…見過ごしちゃいけない…とっても大事な事だと思うんだ!
霧切「苗木君、ちょっとこっちに来なさい」
苗木「ダメだよ!みんなに霧切さんはエロかっこ可愛い事を証明しないと…」
霧切「い、いいからやめなさい!」
苗木「それだよ、今の霧切さんの表情!とってもエロ可愛いよ!」
霧切「……お、お願い、苗木君。お願いだからやめてちょうだい…」
419:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/19 20:33:18.40 OgsOmm38
うむ
霧切さんのエロかわいさは世界の希望だ
420:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/19 22:48:43.62 r0YAqu8+
エロかっこ可愛いか。
霧切さん以外、当てはまりそうにないもんな。
421:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/20 00:48:34.35 n4XKQMag
霧切さんの寝巻きは
・パジャマ
・ネグリジェ
・下着のみ
・シャネルの5番
さあどれだ
お前達の意見を聞きだい
422:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/20 00:53:12.57 oGMeGpt6
ぶかぶかパーカー付きパジャマだな
423:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/20 01:47:57.93 /mtfq3BD
プレーンなパジャマもけっこうオツなもんだぜ?
424:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/20 07:32:14.32 PvdY5aYL
いや、霧切さんは探偵たる者いついかなる時でも飛び出していけるよう最低限ジャージ。でもたまには可愛い格好もしたくて着ぐるみパジャマとかフリフリパジャマとかを着た日に限って事件が起こる!
425:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/20 13:26:12.58 Be4vB2Yk
だけど見れるのは苗木君だけ!
つまりそういうことだろ?
426:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/20 19:08:12.33 n4XKQMag
なるほど、パジャマ派が大勢か
そうか…下着にワイシャツ派は俺だけか…
427:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/20 19:10:35.88 ZM6haa6L
霧切さんに結構子供っぽい趣味があっても私は一向に構わん
428:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/20 19:33:01.60 G+ppGBfa
俺はジャージ派
429:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/20 20:12:51.21 y6PqiWfm
>>426
それは違うよ!
430:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/20 22:13:32.29 14yRMSMn
ジャージ派の俺が通りますよ
ジャージ良いじゃないか
例えば寮で夜に女子や苗木くんの部屋に遊びに行ってそのまま寝られるし
ジャージから伝わる女の子の柔らかさは数年経っても覚えてるほどに素晴らしいし
431:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/21 00:28:03.69 mcXrmon7
霧切さんは苗木君の寝込みに何度も部屋に侵入しているんだ
逆に苗木君が霧切さんの就寝中に部屋に忍び込んでも何ら問題ないよね
432:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/21 00:50:11.94 ieaQK5Dr
今日こそ来るかしらと思いつつ寝てるにちがいない
433:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/21 03:38:54.12 SP848yU+
流れをぶった切ってというか、流れに乗ってSSを投下します
書いてる内に詰め込みすぎて長くなりそうなので、とりあえず前編です
某スレの、もしチャプター5の初日に苗木君が霧切さんを部屋に泊めていたら、に天啓を受けました
あと、このスレの素敵な流れにも乗ってみました
434:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/21 03:41:29.59 SP848yU+
タイトル:超高校級の夫婦【前編】
ジャンル:苗霧ラブ
ネタバレ:本編(特にチャプター5)に関する一部ネタバレを含みます
時間軸:主にチャプター5の最初の夜
435:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/21 03:43:30.92 SP848yU+
「誠君、こんなとき、夫婦だったらどうするのかしら?」
静かな宵闇に響いた霧切さんの声はどこか緊張した声色だった。
硬い床に敷かれたシーツの上で、一枚の毛布に年頃の男女が同衾しているという状況。健全な男子であるボクも彼女と同じくらい緊張していて。
「そんな、結婚なんてしたことないから分からないよ、き、響子さん」
そう言ってからすぐに、自分の答えが大きく的を外しているのだということは分かっていた。それでも上手い言い訳など思いつかない。
また呆れらてからかわれるかと思ったけれど、どうやら彼女もそれどころではないようで。
「私だって、したことないわ……」
暗闇に慣れた目で見えたのは、向かい合うように横になる霧切さんの不安げな表情と着崩れた男物の白いワイシャツ。
細かい思惑まで伺うことはできなかったけれど、それはいつもボクをからかっているときのものとは明らかに違う。
ただただ純粋に彼女は知りたいのだろう。
もしもボクらが夫婦だったら、こんなときにどうすれば良いのか。
ボクらはまだ高校生だ。結婚するどころか、結婚を考えるのだって些か早い気がする。
きっと正解はボクらには分からない。
そもそも正解なんてないのかもしれない。
それでも何か喋らなければと思ったのは、霧切さんにこれ以上不安を抱いて欲しくなかったから。
「もしもボクらが、夫婦だったら―」
まるで熱に浮かされるような場の空気。
それに当てられたかのように、ボクの口から零れ落ちた言葉は―。
436:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/21 03:46:19.75 SP848yU+
ことの始まりは数時間前に遡る。
「霧切さん!」
息を切らせながら名前を呼ぶと、霧切響子さんは微かに驚いた表情を浮かべて振り返った。
彼女の歩みが止まったのを確認し、急いで走り寄る。静かな寄宿舎の廊下に乾いた足音が反響していく。
「苗木、君?」
傍らに着くと訝しげに霧切さんはボク―苗木誠の名前を呼んだ。顔には明らかな困惑の色が浮かんでいる。
だけど、その声に答えることができない。久々の全力疾走に身体の方がついていかず、完全に息が上がっていた。こんなに急いで走ったのはいつかの体育の時間以来だろう。
肩で息をするボクを見つめる彼女の視線が、困惑したものからだんだん呆れたものに変わっていく。最後には軽く溜息まで吐いていた。
「霧切さんって、歩くの速いんだね……」
「別に、これぐらい普通よ」
苗木君とは鍛え方が違うからと霧切さんは呟く。それはいつも通り、ボクにちょっとだけ意地悪なことを言う彼女の姿だった。
あんなことがあったのでもしかしたら凹んでいるかもしれないと思っていたけれど、話してみるといつも通り見える。
「凹んだ私も見てみたかった?」
「ええっ! そんなことないよ!」
「あら、そう顔に書いてあるわよ」
そう言って、霧切さんはくすりと微笑む。いつの間にか完全にからかわれてしまっていた。
「そ、そんなことより、部屋の鍵はどうするのさ? 今ならまだ、十神くんも返してくれると思うけど……」
十神くんやみんなに疑われ、霧切さんは部屋の鍵を失った。
彼女の正体―超高校級の???について、彼女は記憶喪失だから答えられないと言う。
そのことを疑う十神くんに自ら部屋の鍵を差し出し、彼女は食堂を飛び出した。
十神くんも頑固だけど、霧切さんも同じくらい頑固だ。きっとどちらも自分から折れることがないのは傍目から見て明らかだ。
気が付けば、ボクは弾かれるように霧切さんを追い掛けていた。
彼女を説得できる気はしなかったが、それでも追い掛けずにはいられなかったのだ。
ボクが霧切さんに追い付いたのは寄宿舎の隅で、あまり人目に付かない場所だった。彼女が何をしようとしていたのかは分からないが、すぐに追いかけていなければきっと見失っていたような気がする。
「……別に、必要ないわ」
まるで他人ごとだとでも言わんばかりに、霧切さんは澄ました顔で言い放つ。まさに取り付く島もないその様子に、早々と説得は諦めた。
彼女の自信は一体どこからくるんだろうか。
例え彼女がボクの知らないリソースを持っているのだとしても、それがどの程度安全なものかは分からない。少なくとも今まで通りに自分の部屋を使うよりは危険なはずだ。
「もうすぐ夜時間だよ? 寝るときはどうするのさ……?」
「あなた達には迷惑をかけないようにするから大丈夫よ」
ボクの心配をよそに、霧切さんはあくまで秘密主義を貫くようだ。いつもの彼女を知っているのでそれも予想の範囲内である。
それでもここは引けない。男として、彼女をこのまま放っておくなんてできない。
「……霧切さん」
「何?」
何故ならあのとき、入り口の近くに立っていたボクだけは、キミの見せた寂しそうな表情に気付いてしまったのだから。
「今夜、ボクの部屋に来ない?」
ボクは自分でも驚くことを口走っていた。
437:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/21 03:48:21.56 SP848yU+
「ど、どうぞ」
「お邪魔するわ」
ボクがドアを開けて促すと、霧切さんはまるで自分の部屋に帰ってきたかのようにボクの部屋へと踏み込んだ。その様子があまりにも普通だったので、ここは本当にボクの部屋なのかと不安にすらなる。
でも、ここは間違いなくボクの部屋だ。
廊下で誰かに見られていないことを確認して、どこか緊張しながら彼女の後に続く。
できるだけ静かにドアを閉めて鍵を掛けたのは、確実に霧切さんのことを意識してだ。あまり二人きりの密室ということを意識させたくはなかったけれど、彼女の鋭さからしたらそれも無駄なことだろう。
軽く部屋の中を一瞥し、相変わらずねと彼女は言った。そう言えば最初の事件のときに散々調べられたんだっけ。
「買い物に行く機会もないからね」
「それもそうね」
ひとまず霧切さんにはベッドに腰を下ろして貰い、ボクはベッド脇の引き出しから毛布やシーツを取り出す。各部屋に換えの寝具一式が用意されていることを、ちょっとだけモノクマに感謝した。
「あ、そうだ」
ついでに引き出しの中に預かったナイフを置く。ずしりとした重量感には頼もしさよりも恐ろしさの方が大きく感じる。
正直な話、ボクには過ぎた物だ。
ボクみたいな普通の人間にこれを預かる責任は重い。背中を嫌な汗が伝う。
「……大丈夫よ」
ボクの顔色を見かねたのか、霧切さんの掛けてくれた声は優しかった。
それはまるで不安な子供を寝かしつける母親のようで。
「……うん」
短いやり取りだったけれどボクの心を安心させるには十分だった。
ゆっくりと慎重に引き出しをしまう。こんな物が二度と使われることがないように祈りながら。
「―さて、と」
一拍置いて霧切さんの方に向き直る。ベッドに座っている彼女はいつもと変わらぬ落ち着いた様子だ。
ボクの部屋に泊まらないかと提案したときもそうだった。
ボクにとっては地獄のような間は少しだけあったものの、霧切さんは短く、そうねと言っただけ。
いつも通りのポーカーフェイス。その裏に何を思っているのか分からずに、ボクの方がただただ焦ってしまう。
「そろそろ寝る、よね?」
「ええ」
時計を見ると既に夜の10時を30分程過ぎている。
今日はいつにも増して色々なことがあった。大神さんが亡くなり、学級裁判が開かれ、アルターエゴが壊されて……。
どれも碌な出来事じゃない。早く眠ってしまいたい気分だったのは、きっとボクも霧切さんも一緒だろう。
「苗木君、図々しいお願いなのだけど……」
ボクが溜め息混じりに上着を脱いでいると、彼女は少し困ったように言う。
声の方に向き直ると、ジャケットとブーツを脱いだ霧切さんがベッドの上にちょこんと座っていた。普段は見ることができない綺麗な白い足に思わず心臓が高鳴る。
それでもなるべくその動揺を押し殺して言葉を返す。こんなことで一々どきどきしていたら、ボクの理性は今夜一晩持たないだろうから。
「う、うん? どうかした?」
「申し訳ないのだけれど、寝間着を貸してもらえないかしら?」
―ああ、そりゃそうか。
霧切さんは不測の事態で部屋に入れなくなってしまった。当然、外で泊まる準備なんてしているはずもない。
彼女が普段着ている服もボクと同じく前の高校の制服だ。それを普段着にしてる以上、流石に制服で眠るのは避けたいところだろう。
そうは言っても、この部屋に霧切さんの服があるはずもなく。霧切さんによれば、今ランドリーで洗濯している服もないらしい。
「えっと、何かあったかな……」
ごそごそと服を探してみるが、特に寝間着になりそうな服はない。
ボクが寝間着にしているティーシャツと短パンも一つずつしかないので、残念ながら貸す訳にもいかない。部屋の隅にうず高く積まれた洗濯物を見て、自分の不精っぷりを嘆く。
438:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/21 03:50:23.25 SP848yU+
「……一番下の右奥」
「え?」
「一番下の右奥にワイシャツがあったでしょ?」
霧切さんに言われて見てみると、確かにそこにはワイシャツがあった。なるほど、これはモノクマが用意したであろう希望ヶ峰学園の制服一式だ。広げてみると新品ではないようだったが特に汚れてはいない。
どうして知っているのか訊いてみると、どうやらこれも捜査のときに見つけたらしい。最早ボクよりも霧切さんの方がボクの部屋に詳しそうだ。
「でも、これワイシャツだよ?」
ワイシャツを着て寝るなんてあんまり聞いたことがない。そりゃ、他に選択肢もないのだけれど。
それに実を言えば、そういうシチュエーションは嫌いじゃない。
「背に腹は代えられないわ。それとも、苗木君は嫌かしら? その……」
霧切さんは少し恥ずかしそうに視線を伏せると―。
「そういうジャンルの本も、それなりに持っているみたいだから……」
結構大きな地雷を踏んでくれた。
先程の嫌いじゃないを訂正させて頂く。実はそういうシチュエーションは大好きだ。
それこそ、そういう大人の本を持っている程に。
「え? ちょ、ええっ!」
迂闊だった。彼女の観察眼にしてみればボクの隠蔽工作など隠していないと同義だ。
つまり、あそこに隠してあるボクの本は―。
「見た……の?」
霧切さんがこくりと頷くのを見て、ボクは膝から崩れ落ちた。
特にアブノーマルな趣味を持っている訳ではないけれど、同い年の女の子に見られたと思うと辛い。
ワイシャツを着た女の子が好きだとか、髪は長いほうが好きだとか、ツリ目がちな女の子が好きだとか、胸よりお尻派だとか。引かれる程ものはないと思いたい。濡れたワイシャツが好きなのはギリギリセーフであって欲しい。
「健全な男の子なら当然よ。でも、その……エロスは程々にしておいた方が良いと思うわ」
霧切さんの言葉がボクの心に突き刺さる。彼女にしてみたら慰めているつもりなのかもしれないけれど、逆効果だと言わざるを得ない。
それでも引かれてはいないようなので、前向きに安堵することにした。
明日になったら隠し場所を変えることを心に誓って。
「そうするよ……。はい、これ」
なるべく平静を保ちながら霧切さんにワイシャツを渡し、自分も着替えることにする。
できるだけ彼女を見ないように、背を向けていそいそと着替えを済ませた。流石に下着を変える勇気はなかったので、不本意ながら下着はそのままだ。
ボクがひと通り着替えを済ませると、くいっとティーシャツの裾が引っ張られた。
「どうかした? 霧切さ―」
振り返ると、そこには恥ずかしそうに頬を染めるあられもない格好の霧切さんがいた。
先程と違い、彼女はスカートと自分のワイシャツを脱いでボクのワイシャツを着ている。問題はそのワイシャツのボタンが一つも留まっていないことだ。
黒い上下セットの下着と彼女のほんのりと上気した肌、そして白いワイシャツのコントラストはまるで天使のように見えた。
いや、完全に天使だった。
439:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/21 03:52:30.28 SP848yU+
「どどどどうかした?」
ボクは激しく狼狽える。
頭では視線を逸らそうとしているが、身体がそれを拒否していた。その結果、完全にガン見していた訳だけど。
そして、霧切さんは次なる銃弾をボクに撃ち込む。
「悪いのだけれど、……ぼ、ボタンを留めてもらえるかしら?」
「へぁっ!」
驚きのあまり、ボクは変な声を出していた。
とても言葉にできる状態ではなかったので、震える指でワイシャツのボタンを差してから自分を指差す。
―それはボクに言っているのですか?
すると霧切さんは目を閉じ、真っ赤になって頷いた。
―はい、そうです。
「その、手袋をしているから細かい作業は苦手で……。それに、男物のワイシャツって女物と逆だから……」
霧切さんの言い訳じみた言葉はきっと本当なのだろう。上の方のボタンがぐしゃっと皺になっている。
だからといって、彼女がその手袋に並々ならぬ決意を込めていることも知っているので外せとも言えない。
後から思えば、着替えが終わるまで部屋の外にいれば良かっただけのことだったけれど、羞恥と緊張で何処かおかしくなっていたボクらにはそれに気付くことなどできなくて。
「う、うん」
ボクはベッドに座る霧切さんの目の前で中腰になり、なるべくボタンだけを見るようにして手を伸ばす。
手がワイシャツ越しに彼女に触れと、ボクは思わず喉を鳴らした。洗剤の匂いと女の子のいい匂いにくらくらする。
上から三番目ボタンをそっと摘み、どうにか留めようと手を動かす。
ボクにも中々留めることができなかったのは、そもそも男物のワイシャツを誰かに着せたことなんてなかった所為と、霧切さんの吐息がボクの手に掛かってこそばゆかった所為だ。
少し手を動かすと、彼女は深く溜息を吐く。それがどうにも色っぽく感じて、ボクは冷静になれなかった。
「あ、焦らなくて良いわ。ゆっくり、ね?」
霧切さんはそう言うけれど、客観的に見ればこれはまるで―。
「……まるで事前に脱がしてるみたいだね」
頭で思ったことをそのまま言葉にしてからまずいと思った。
ゆっくりと顔を上げて彼女の表情を確認すると、驚いた表情のまま固まっている霧切さんが見える。きっとボクも同じような表情をしていただろう。
見つめ合ったまま、どちらも言葉を発さなかった。正しく言えば何も発せなかった。
もし何か言ったら、二人の中の羞恥心が何かの限度を超えてしまいそうで。
ボクはゆっくり視線を下ろし、ボタンとの格闘を再開する。霧切さんはまだ固まっていたけれど、それを気遣う余裕はない。
結局、全てのボタンを留め終わったのは五分後だった。
それはまさに永遠に続くかのような五分間だったけれど、それでもまだこの日の夜は始まったばかりで。
些細なことで一々どきどきしてしまうボクの理性は、とても今夜一晩持たないような気がしたのだった。
【続】
440:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/21 03:58:46.35 SP848yU+
以上、前編になります
自分の中の苗霧はきっとよそ様の三倍くらいアホです
ワイシャツしかなかったらしょうがないよね(棒読み)
441:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/21 04:52:56.13 2IlnIo0I
たまんねえな!GJ!夢にまで見たシチュエーション…
そして学園にエロ本持ってきてる苗木ww
442:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/21 08:48:16.45 +eeXb1Ny
すげぇニヤニヤしたw
続き楽しみにしてるw
443:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/21 08:55:52.31 LbhuR047
舞園さんが殺されたときの捜査だけで
こんなにも苗木の部屋を熟知している霧切さんが凄い
続き期待。『超期待。』
444:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/21 11:17:58.80 mcXrmon7
なんてこった…これは全裸待機するしかねぇ…
GJ!
445:霧切「ユメハイール・・・?」
11/03/21 14:47:45.75 rfo4MeRW
すばらしかったです。GJ! あとSSを今日か明日に投下します。内容は霧切さんメインのあの夜の裏側です。PSPからなのでちょくちょく切れますが、よろしくお願いします。
446:霧切「ユメハイール・・・?」
11/03/21 14:51:59.48 rfo4MeRW
すばらしかったです。GJ! あとSSを今日か明日に投下します。内容は霧切さんメインのあの夜の裏側です。PSPからなのでちょくちょく切れますが、よろしくお願いします。
447:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/22 11:47:40.93 btDwLxOe
霧切さんが苗木君にからかわれた時に
自由時間のように一枚上手に返してくる方が萌えるのか
スネギリさんを発動させる方が萌えるのか
それとも「勘弁してよ」と素直にリアクションする方が萌えるのか
それが問題だ。
448:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/22 12:03:23.95 HZXmaXiy
>>447
スネギリさん推奨
でもどれでも可愛いよ、可愛いよ。
449:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/22 12:31:31.88 v6mzH07T
霧切さんの笑顔とってもかわいいよ!→本編のようなクールなカウンター(ただし内心では本気で照れていると俺によし)
霧切さんの胸とってもかわいいよ!→スネギリ降臨
霧切さん、愛してるよ→素直に照れる
うむ、どれか一つを選べというのは酷な話だべ
450:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/22 22:29:23.52 SMq/HNsk
希望ヶ峰時代を舞台にしたキャルゲーとか出してほしいなぁと思ったけど
最近爆死したアイマスの貴音がダブってなんか怖くなった
451:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/22 23:20:24.20 lwREyKGu
つくれば いいじゃない!
452:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/22 23:33:22.81 btDwLxOe
>>450えっ アイマスって爆死すんの そんなバイオレンスなアレなの
もっとほのぼのってるかと思ってた…
>>449
「霧切さんの笑顔、とても可愛(ry」
「酷い、騙しt(ry」
「霧切さんの胸、とっても可愛いよ」
「苗木君の苗木君も、とても可愛いわよ」
「酷いや!」
「霧切さん、愛してるよ」
「わ、私も、あ、あい、愛…」
453:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/23 00:37:42.93 8jCCzTSu
やたら貧扱いされる霧切響子殿ですが、女性陣の中では中堅どころですぞ
454:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/23 00:45:18.59 p22R0yh2
たしかにいい感じの大きさだった
455:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/23 07:56:51.59 P2lo6Qu0
だが待ってほしい
実際はそんなに小さいわけでもないのに、本人は自分は貧なんじゃないかと気にしている
というのもアリではないだろうか
456:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/23 09:23:12.59 W1PF5d1N
このスレ完全にカプスレ
457:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/23 10:16:06.06 uBxXTRGD
なにをいまさら
458:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/23 14:20:18.65 R4E/H5V2
>>446 はまだだべか
459:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/23 14:42:58.04 7Ihcz/Jn
申し訳ない、ユメハイールを書いているとPSPの電池きれて、全てパーになってしまったので、まだまだかかりそうです。もうしばらくお待ちください。葉隠さん、ありがとう!
460:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/23 21:25:47.03 tjIBlSBL
改めてやり直してみると、1章前半の霧切さんは本気で素っ気ないというか完全に苗木に興味ないな
やはり1章裁判がターニングポイントか
461:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/23 21:29:39.08 v0uVI36W
一章では完璧に他人だしな
二章ではだいぶ親しげ
一章ラストの苗木の台詞にキュンとしたんだべな
カッコ良かったもんな
462:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/23 22:42:10.67 P2lo6Qu0
体育館に模擬刀を取りに行く前の食堂での会話が素っ気なさすぎて泣けるぜ
463:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/23 23:00:16.01 VYj0YUBa
四章の霧切さん、苗木君の隠し事の内容が推測できてるのに、
自分からは仲直りしようとしないんだよな。
不器用な霧切さんペロペロ(^ω^)
464:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/24 00:30:39.14 HzfLH1F4
スネギリさんがかわいいことはもはや論を待たないが
苗木君がスネてしまって狼狽える霧切さんというのも見てみたい
465:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/24 00:35:05.77 8ciM14uH
一章最後の苗木くんの言葉に驚いてポカンとしている霧切さん可愛い
466:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/24 03:05:59.27 6Je0P/FZ
頭の形が尻みたいな尻切さん可愛い
467:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/24 06:19:33.33 ogN8JMF5
それ霧切さんじゃなくてニコチャン大王だわ
468:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/24 12:25:07.23 H0okOpem
>>465
あの胸に手を当てて目を見開いている驚き顔かわいいよね
手で口をおさえている方の驚き顔もいい
しかし一番はVFBの表情イメージにあった困惑顔(大)だな
あれは本編にも採用してほしかった
469:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/24 17:29:12.94 ogN8JMF5
本命:拗ねながら照れ顔
対抗馬:困惑顔(大)
大穴:旧設定ビジュアル
470:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/24 21:07:03.31 HzfLH1F4
普段感情表現を抑えているからこそ、そこに綻びが生じた瞬間が引き立つわけですよ
こう、人目を憚らず泣いている霧切さんとか見たいね
「一人にして欲しいの…」の後に寄宿舎2階の隠し部屋を覗き見したかったね
471:433
11/03/25 01:51:11.22 3jJ0XlbP
お久しぶりです
流れをぶった斬りますが、後編ができたので投下します
前編は>>434-439です
タイトル:超高校級の夫婦【後編】
ジャンル:苗霧ラブ
ネタバレ:本編(特にチャプター5)に関する一部ネタバレを含みます
時間軸:主にチャプター5の最初の夜
472:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/25 01:53:12.37 3jJ0XlbP
ボタンを留め終わってから数分後、ボクらの理性もある程度回復していた。まだ二人ともギクシャクはしていたけれど、どうにか目を見て話せている。
それと同時に直面したのは次なる問題。
「やっぱり、それはできないよ」
「苗木君にはその権利があるわ。私に気を使わないで」
「そ、そんな……だってボク、男だし……」
先程から何回このやり取りを繰り返しているだろうか。
頑固者の霧切さんは頑なに主張を譲らないし、ボクも男としてこればっかりは譲れない。
「泊めてもらった私が床で寝るから、部屋の主である苗木君がベッドで寝るべきよ」
「女の子を床で寝かせて、ボクだけベッドで寝る訳にはいかないよ。男のボクが床で寝るからさ」
問題とは、どっちが一つしかないベッドを使って寝るかということである。
当然女の子である霧切さんに使ってもらうつもりだったのだが、それはできないと彼女は頑なに拒否した。
曰く、自分は床で寝るのも慣れているし、ベッドは部屋の主が使うべきだと。
何故慣れているのか気になったけれど、それよりもこの問題を解決するのが先だった。
「霧切さん、分かってよ。ボクなら一晩くらい平気だから」
「それはできない相談ね。苗木君は床で寝ることを甘く見ているわ」
そう言って、霧切さんはベッドに座ったままびしっと右手の人差し指でボクを差した。
いつもだったら凛々しく感じるその仕草も、黒い手袋、すらりと伸びる綺麗な足、更に白いワイシャツから微かに見える黒い下着まで追加されて何とも艶かしかった。何か新しい癖に目覚めてしまいそうである。
「う、ぐ……」
お互いに全ての弾丸を撃ち尽くしてみても、主張は全くもって平行線。このまま話していても決着がつくとは思えなかった。本当にお互いは意地っ張りだと思う。
そこでボクは強攻策に出ることにした。ベッドと壁に挟まれた布団一枚分よりも狭いスペースの床に、無言でシーツを敷いて毛布を広げる。流石に枕はないがこの際文句なんて言ってられない。
「苗木君?」
霧切さんが訝しげに僕の名前を呼んだけれど、ここは敢えて男らしく無視させて頂く。明日になったら何度でも謝るので今だけは許して欲しい。
そしてボクは素早く部屋の電気を消して、そのまま毛布の中に潜り込んだ。厚い鉄板に塞がれた窓から明かりが入ってくる訳もなく、部屋の中は真っ暗になる。
「ちょ、ちょっと、苗木君!」
「おやすみ、霧切さん!」
有無を言わせずに寝てしまう。これがボクの強攻策だ。きっと話し合いではいつまで経っても解決しないだろうから。
それでも顔を合わせるのが少しだけ怖かったので、ボクはベッドと逆の壁を向いて横になった。これできっと、霧切さんも諦めてくれるだろう。
「……そう、そういうことなら私にも考えがあるわ」
暗闇に響く何処か冷たい声。よく考えれば分かったことだが、あの霧切さんがの程度で諦めてくれるはずもない訳で。
彼女は静かにボクの包まる毛布を捲った。力ずくで毛布を剥がそうとしているのかと思い、しっかりと端を握り締める。
すると霧切さんはそのまま毛布の中に入り込み、ボクの隣りで横になった。
もう一度確認するが、ここはベッドと壁に挟まれた布団一枚分よりも狭いスペースだ。
当然、二人の人間が余裕を持って横になるのは無理がある。つまり、どうやっても二人の身体が触れ合ってしまう。
ボクの背中に感じる温もりは、きっと彼女の背中の温もりだ。
「きっ、霧切さん! 何で―」
「あなたが強攻策をとったから、私も強攻策をとることにしたのよ。嫌ならベッドを使うことね」
―それは違うよ! 男がこんな状況で嫌な訳ないじゃないか!
流石にそんなことを大声で主張できる筈もなく、曖昧に笑って誤魔化す。
文字通り背中合わせで横になるのは変な緊張感があった。
今更ベッドに移動するなんてことはできなくて。きっと彼女もそう思っていて。
つまるところ、それは今夜一晩このままの状態で過ごすことを意味している。
この奇妙な距離感に高鳴り始めてしまったボクの胸は、中々落ち着いてくれなかった。
473:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/25 01:55:13.65 3jJ0XlbP
そのまま五分、十分、三十分が経っただろうか。お互いに背を向けているために、彼女が眠ってしまったのかも分からない。
このまま眠ってしまうのが少しだけ惜しくも感じていたけど、それは杞憂に終わった。
「苗木君―」
静寂に響く霧切さんの声。先程までの少し怒った声とは違う、いつも通りの穏やかなものだ。
「何? 霧切さん」
それに合わせて言葉を返す。まだ起きていることを知らせるように。
「一つ訊きたいことがあるのだけれど?」
どうやらベッド云々の話は彼女の中でも一区切りついたようなので安堵する。
ボクが相槌を打って先を促すと、恐る恐るといった感じで言葉を続けた。
「どうして、私を泊めるだなんて言ってくれたの?」
どうして、私のためにみんなを裏切るようなまねをしたの?
それはボクからしても最もな問い。まるで気にしていないように振舞っていても、やっぱり気になっていたのだろう。
「私は自分の身分も明かせないし、その理由を証明することもできない。十神君達の言うことは最もだと思うわ」
それなのに何故と彼女は不思議そうに呟く。
十神くんの質問に、霧切さんの答えは殆ど答えになっていなかった。確かにいくらお人好しなボクでも、そんな人をほいほい信じることはできないだろう。
「うーん……」
ボクは慎重に言葉を選ぶ。何故なら、ボク自身まだその理由を明確な言葉にできていなかったから。
あのときは思わず口を衝いてたわけだけど、その答えはきっと―。
「……嬉しかったから、かな?」
「嬉しかった?」
ボクの言葉はきっと霧切さんの想定から大きく外れたものだったのだろう。暗闇に彼女の驚いた声が響いた。
「ああ、部屋の鍵のことじゃなくて、霧切さんがボクを信頼してくれたことが」
今、この部屋の引き出しに閉まってあるサバイバルナイフ。腐川さんが見つけたそれを、なし崩し的にボクが預かることになったとき。
「あのとき、ナイフはボクが預かればって最初に言ってくれたのは、霧切さんだったから」
「―そう、だったかしら?」
惚けてもダメだよ、霧切さん。そんなに動揺した声だったら、流石のボクでも気づいてしまう。
「十神くんも言ってたように、これをボクが持つことになったのはきっとみんなの信頼の表れで」
十神くん、腐川さん、葉隠くん、朝日奈さん、そして―。
「その中でも霧切さんが、一番ボクのことを信頼してくれているんだと思ったから。だからボクも、一番キミのことを信頼しようと思ったんだ」
例え他のみんなを裏切ることになったとしても、キミを信じたいと思ったんだ。
背中越しに霧切さんが息を飲んだ気がした。
もしかしたら、それは違うと否定されるかもしれないと思っていたけれど、そんなこともなく。
つまりボクの言葉には矛盾なんてなくて―。
「そう……。ありがとう、苗木君」
どうやら彼女の心を貫く弾丸になったようだった。
474:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/25 01:57:16.91 3jJ0XlbP
「う、うん」
そう言いながら、ボクは寝返りを打った。本音とは言え、流石に歯の浮くような台詞が少し恥ずかしかったから。
壁の方を向いていた体勢を変えて天井を見上げる。やはり硬い床で寝るのは慣れなくて、下にしていた右半身が微かに痛い。
再び場を支配し始めた沈黙に耐え切れず、ちらりと霧切さんの方に視線を向ける。すると彼女もボクと同じように天井を見上げる体勢になっていた。
微かに暗闇に慣れた視界で見えたのは、少し物憂げに何かを考えているような表情。
その表情がいつもより感じ易いと思ったのはきっと間違いじゃない。流石に暗闇の中だと得意のポーカーフェイスが緩まってしまうのだろう。
「何を考えているの?」
「……大神さんと、アルターエゴのこと」
霧切さんは視線を動かさずに呟いた。それはつまり、今日一日のことを思い出しているという意味だろう。ボクも同じように天井を見上げて思い返す。
自ら死を選んだ大神さんと、モノクマにおしおきされたアルターエゴ。
二人は悩み、覚悟を決め、行動し、そして死んだ。
辛い現実ではあったけれど、ボクはその想いを―。
「―引きずっていく」
「え?」
思考を言葉にされ、ボクはびっくりして霧切さんの方を見た。それはまるで自分をエスパーだと言っていた舞園さんのようで。
彼女も顔を倒し、ボクの方を見ていた。暗闇の中、静かに見つめ合う。
「苗木君、前に言ったわよね? 死んだみんなの想いを乗り越えたりせずに、引きずったまま前に進んでいく、って」
「あ、ああ、うん」
どうやら先程の言葉はボクの思考を読んだものではなかったようだ。それに安堵のような溜息が漏れる。
それは初めての学級裁判が終わったとき、霧切さんの言葉に対するボクの答え。
―仲間の死を乗り越えることなく、その想いを引きずっていく。
それはボクの中では固い決意だったけれど、まさか霧切があのときの言葉を憶えていたとは思わなかった。
「私もそうすることにしたわ。大神さんの形見で、絶対に黒幕を追い詰める」
そう言って彼女は眼を細める。その仕草がまるで泣きそうなのを我慢しているように見えて、ボクの心がじんわりと痛んだ。
「……大神さんの形見って?」
霧切さんの呟いた言葉が気になったので訊いてみる。すると少しだけ考えるような間の後に、誤魔化すように彼女は言った。
「この決意ってことよ」
それは苦しい言い訳ではあったけど、この場で話せないのにはきっと理由があるんだろう。
きっと必要なときには話してくれる。ボクは霧切さんを信じて、そのときを待つことに決めた。
「そっか……。そうだね」
既に見慣れてしまった天井を見上げながら静かに言う。ボクもできる限り霧切さんに協力しようという決意を込めて。
例えその末にどんな結末を迎えようとしても、男であるボクが彼女を守らないと。人工知能であるアルターエゴだって、勇気を持って黒幕に立ち向かったのだから。
アルターエゴ、だって……。
「……ごめんね、霧切さん」
「どうして謝るの?」
思わず口から漏れた謝罪の言葉を彼女は訝しげに返した。
自分でも唐突過ぎると感じたので誤魔化そうかとも思ったけれど、この気持ちに嘘はつきたくない。
「アルターエゴの、こと……」
ボクがアルターエゴの背中を押さなければ、こんなことにはならなかったかもしれない。もしかしたら、ボクの所為でアルターエゴはおしおきされてしまったのかもしれない。そう思うと謝らずにはいられなかった。
霧切さんはアルターエゴと反芻するように呟く。そしてボクを宥めるように優しく言った。
「あの子は、自分のやるべきことをやって、そして自分の意志であの場所へ行った―」
それはきっと、少しでもボクらを助けたいという強い想い。
「だから、あなたが誰かに謝る必要なんてないわ」
謝ったてしまったら、あの子に、あの子の想いに失礼だから。
「……うん」
その落ち着いた声に、ボクは目頭が熱くなるのを感じた。固く眼を瞑り、涙が溢れるのを我慢する。
涙はアルターエゴの想いを叶えたそのときまでとっておこうと思ったから。
だから今は、ボクらのことを見守っていて欲しい。
心の中でそんなことを祈りながら深く息を吐く。どうやら涙は収まってくれたようだ。
475:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/25 01:59:41.12 3jJ0XlbP
「どうして、私に謝ったの?」
不意に、霧切さんが口を開く。視線を感じたので顔を倒すと、再び彼女と目が合った。
暗闇の中でも鋭い視線。ボクの全てを見通すように。
一方のボクは困った表情をしていただろう。本当に思ったことを話したら、彼女がどんな反応をするのか分からなかったから。
「それは―」
「それは?」
言うのを躊躇していると、問い詰めるように先を促す。
そこまで大それたことでもないのにと苦笑しながら、ボクはその理由を素直に話すことにした。
「霧切さんが、アルターエゴのお母さんみたいだったから」
「……えっ?」
「だから、ボクにはアルターエゴに接する霧切さんがお母さんみたいだなって感じたんだよ。一番アルターエゴの面倒を見てたし、一番心配してたから」
そして一番、アルターエゴも霧切さんを慕っていたから。
アルターエゴに対する彼女の気持ちは、山田くんや石丸くんとはまた違った愛を感じた。
色々考えてみたけれど、ボクにはそれが母性という言葉でしか表現できない。霧切さんがアルターエゴを見つめる瞳は、ボクの母親がボクや妹を見ていた眼差しに似ている気がしたから。
「私が、お母さん……」
見ると、霧切さんは驚いた表情で固まっていた。暗いから顔色までは分からないけれど、何となく真っ赤になっているような気がする。
「突然、何を言うのかしら、苗木君は……」
「き、霧切さんが訊いたんじゃないか!」
霧切さんの何処か照れた表情に当てられて、ボクの方まで気恥ずかしくなってきた。自分の顔に血液が集まっていくのを感じる。
よりにもよって同い年の女の子にお母さんみたいはないだろう。
すると、霧切さんは少し意地悪な微笑を浮かべた。
「私は、アルターエゴにとって苗木君が父親代わりだったと思うわ」
「ええっ?」
「アルターエゴの決意を後押ししたのは苗木君でしょ? 私にはよく分からなかったけど、男の世界って言うのを感じたわ。ああいうとき、女には結局、見守るしかできないのね」
ちょっぴり芝居がかった口調。これは彼女なりの反撃のつもりなのだろうか。
少し恥ずかしそうな様子から察するに、思ってもいない言葉という訳ではなさそうだけど。
確かにボクはアルターエゴの気持ちを後押しした。それはボクの父親が、この学園に入るのを悩んでいたボクを後押ししてくれたのに近いのかもしれない。そういう意味で、いつの間にかボクはアルターエゴを自分の子供のように思っていたのかもしれない。
「そうかも、しれないね」
「ええ、きっとそうよ」
―いや、待て。
「それじゃあ、まるで―」
ボクを見つめる表情から察するに、霧切さんは気付いていないのだろう。自分の作ってしまった爆弾に。
自分の顔がより赤くなるのを感じたが、一度零れ落ちた言葉は止まらない。
「―ボク達、夫婦みたい、だね」
476:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/25 02:01:42.30 3jJ0XlbP
アルターエゴの母親が霧切さんで、父親がボク。つまりボクと霧切さんは、子供を見守る夫婦のような立ち位置で。
「ふう、ふ……」
余程吃驚したようで、霧切さんは口元に手をやって絶句していた。
当たり前だ。言うに事欠いて、いきなり夫婦だなんて。
「ご、ごめん。ちょっと変なこと言っちゃって」
ボクが焦って訂正しようとすると、霧切さんはいいえと小さく呟く。
いつの間にはボクらはお互いを向き合うような体勢になっていた。
正面に横たわる霧切さんは恥ずかしそうに視線を逸らしている。少しはだけた襟元から見える鎖骨がたまらなく艶やかだった。
「別に、変ではないと思うわ」
「でも、ボク達まだ高校生だよ……?」
―ああ、ボクは一体何を言っているのだろうか。
自分が焦っているのか、逆に落ち着いているのかも分からない。
ひとつだけ確かなのは、だんだんこの熱っぽい場の空気に飲まれていっているということ。互いの吐息が耳障りなほどに荒い。
「ここは希望ヶ峰学園。集められいるのは超高校級の生徒ばかり―」
それはきっと、霧切さんも同じ。
「一緒にあの子を見守った私達は……」
霧切さんはきっと聞いたら赤面してしまうような、凄く恥ずかしい言葉を言おうとしている。
それを聞いたら、ボクの五月蝿いくらいに高鳴っている心臓はどうなってしまうのだろうか。
「そしてこれからも一緒にあの子の想いを引きずっていく私達は……」
霧切さんもそれに気づいたようで、だんだんと声が小さくなっていく。
それでも、彼女の口から聞きたいと思った。そうしないと、きっとボクらは先に進めない。
ボクの思考など知るよしもなく、霧切さんは目を逸らしたまま息を飲んだ。
「な、苗木君、【ここまで言えば―】」
「分からないよ、霧切さん」
ボクは霧切さんの殺し文句を殺した。
「キミの口から教えて欲しいんだ」
キミの思っている、ボクらの関係を。
彼女は一瞬だけ驚いた表情を浮かべると拗ねたように生意気と呟く。そして凄く恥ずかしそうに言葉を続けた。
「その―ちょ、超高校級の夫婦……そう呼べるんじゃ、ないかしら……?」
477:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/25 02:03:54.93 3jJ0XlbP
ちょうこうこうきゅうのふうふ―超高校級の夫婦。
意味は分からなかったけれど、きっとそれはボクらの現状の関係に一番近くて。
「超高校級の夫婦……。うん、何か……しっくりくる気がするよ」
「―そう」
ボク達は毛布の中で見つめ合った。潤った彼女の瞳、毛布の中に漂う熱気、何処か甘い匂い。
自分の鼓動の音が五月蝿いくらいに聞こえたけれど、それはきっと霧切さんも同じで。
「霧切さん」
その音を聞きたいと思った。最早、二人の間にある十数センチの距離ですらもどかしい。
「手を、繋いでもいい?」
ボクが恐る恐る訊くと、彼女は優しく微笑んで頷く。
そしてゆっくりと、彼女の両手がボクの右手を包んだ
「ええ、だって―夫婦なのだから」
―ああ、これはまずいぞ。
「……苗木君、あれをして欲しいのだけど」
「あれって?」
霧切さんははにかむように視線を逸らす。光のない暗闇の中でも、彼女の一挙一動が伝わってくる。
「うで、まくら……」
してもらったことがないからと、彼女は熱っぽく言う。
―このネジ曲がった雰囲気の中。
「うん、もちろん。……夫婦だもんね」
―夫婦という弾丸が、全ての言葉を撃ち抜いてしまう。
ボクが左腕を霧切さんの頭の下に伸ばすと、それにゆっくり頭を乗せる。
いつもの霧切さんからは想像もできないような柔らかな微笑みを見て、ボクにも笑みが零れていた。こんなに可愛い霧切さんを見れるのが、この世界でボクだけだと思うとたまらない気分になる。
ボクは彼女の頭を抱き寄せるように左手の肘を曲げた。
「な、苗木君……」
「違うよ、ボクたちはその……ふ、夫婦なんだから―」
夫婦は、お互いを苗字で呼び合ったりしないから。
「―響子、さん」
「そうね、ま……誠君」
霧切さんはボクの胸に顔を埋めながら言う。その声が幸せそうに聞こえたのは、きっとボクの気の所為ではないはずだ。
「誠君、こんなとき、夫婦だったらどうするのかしら?」
「そんな、結婚なんてしたことないから分からないよ、き、響子さん」
「私だって、したことないわ……」
「もしもボクらが、夫婦だったら―」
まるで熱に浮かされるような場の空気。
それに当てられたかのように、ボクの口から零れ落ちた言葉は―。
「キスを、するんじゃないかな?」
「……うん、夫婦だものね」
彼女もその答えを待っていたのだろう。優しい表情で素直に頷く。
理性が痺れてしまうほど甘い雰囲気の中で、ボクらはゆっくりと口唇を重ねた。
478:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/25 02:05:56.77 3jJ0XlbP
翌朝ボクが目を覚ますと、既に霧切さんはいなかった。時計を見るとまだ七時前で、モノクマの校内放送もまだ流れていない。
横になったまま手探りで毛布の中をまさぐると、まだ仄かに霧切さんの温もりが残っているような気がした。
「……ん?」
指先に何かが触れたので引っ張ってみると、それは霧切さんが寝間着に使ったワイシャツだった。そこに彼女の字が書かれたメモが貼り付けてある。
『ありがとう、誠君』
―ボクの方こそお礼を言いたいよ、響子さん。
キミに貰ったこの勇気と希望が、ボクを奮い立たせてくれるから。絶対に黒幕にも、超高校級の絶望にも負けやしない。
ボクは、ボクらは独りじゃない。共に戦うキミとボクがいる。
みんなの想いと共に、いつかこの学園を出よう。
そうしたら、ボクはキミに言いたい言葉ができたんだ。
―超高校級の夫婦が、ただの夫婦になれるその日を願って。
【了】
479:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/25 02:12:51.40 3jJ0XlbP
以上、「超高校級の夫婦」でした
このタイトルのSSはまだないと思ったのですが、被ってたら申し訳ない
一番最初に苗霧を「超高校級の夫婦」って言った人には、国民栄誉賞とグッドデザイン賞とモンドセレクション金賞を与えるべき
後半の夫婦プレイは放っておいたらいつまでも続きそうだったので省略
紳士君、>>477と>>478のレス間が見えるわね?(キリギリッ)
前編に「GJ!」等温かいレスをくださった皆様、ありがとうございました!
480:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/25 02:30:52.86 Z0KX0NFP
おつかれさまです
これは可愛い。夫婦可愛い
481:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/25 07:56:47.58 k/HhLIM5
今さっき終わった
正体は俺の嫁とかまじか
482:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/25 08:06:31.50 u6FllXx/
>>479
待ってました
これはGJすぎる…!
483:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/25 12:26:55.67 +5FLHxK6
>>479
GJ!
たまらんなあ
このスレで出た細かいネタまで拾っているのがまたすごい
484:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/25 18:17:59.98 GBo/q76q
>>479
やばいやばい、すごい2828した
あなたみたいな書き手がいるからこのスレが活性化するのだと
信じているぜ GJ!
485:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/25 22:15:03.41 VUMu0RLs
なんでここのスレのSSは外れがないどころか傑作ばかりなんだ・・・
486:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/25 23:11:48.45 u6FllXx/
霧切さんはほんと優良書き手に恵まれてるよなあ
ありがたやありがたや
487:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/26 00:13:03.52 dqhgnLiS
気付けば台本形式がえらい少ないというな。
本編での描写が少ないからスレが盛り上がるほど書きやすいのだぜ
488:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/26 01:27:58.52 9gqZT3Y9
どれか一つと言われたら、どれを選ぶね?
・霧切さんに膝枕してもらう
・霧切さんをおんぶする
・霧切さんをお姫様だっこする
・むしろ霧切さんにお姫様だっこしてもらう
489:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/26 02:57:44.51 w8gyfQmH
>>488
膝枕でお願いします
そして>>479 GJ
490:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/26 07:23:29.85 wCGS6XFK
膝枕
491:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/26 11:30:19.88 27VprIRl
膝枕・・・頭で霧切さんの太腿の感触を味わえる。コマンド追加入力で耳掃除に派生可能。
おんぶ・・・背中で霧切さんの胸の感触を楽しめる。耳元で霧切さんの声を聞ける点も見逃せない。
お姫様だっこ・・・手で霧切さんの背中と太腿に触れることができる。至近距離で見つめ合えるのが最大の売りか。
ううむ、やはり耳掃除への派生が期待できる膝枕か。
492:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/26 12:57:58.59 Kn3QFGU1
それは苗木くんがされる前提なのか?それとも自分がされる前提なのか?
と身長180㎝体重80㎏の俺が聞いてみる
493:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/26 13:46:31.05 9gqZT3Y9
どちらでもよし
逆に聞いてみたいところだな
自分がされたいか、苗木がされているのを見たいか
494:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/26 15:43:50.54 MQBbOXpC
>>479
遅レスになってしまったけれど、GJ!夫婦にニヤニヤさせて貰ったぜ……。
495:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/26 16:30:36.88 wCGS6XFK
苗木が舞園さんをお姫様だっこ
それを見て霧切さんはどうするのか
496:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/26 16:55:49.92 H1YfZbUM
3段お姫様だっこあるでこれは…
497:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/26 18:58:40.82 27VprIRl
学園を出る直前、生物室にあるみんなの死体を植物庭園に埋葬することに
舞園さんの死体を抱いて悲しげな表情になる苗木君
それを見て内心ちょっとだけ嫉妬してしまう霧切さん
そんな妄想
498:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/26 19:26:48.43 oqv0QA8k
>>497嫉妬というか、複雑な感情に呑まれそうだな
苗木君がまだ舞園さんを思っていることに切なさを感じ
悲劇の中に亡くなった舞園さんに嫉妬してしまっている自分の醜さを嫌悪し
うはぁ 俺得
499:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/26 21:55:36.18 Qk92c8/7
最後まで苗木は舞園さんのこと特別に思ってたっぽい描写があったね
500:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/26 22:05:28.17 G0hBK1BZ
死んで美化されちゃってるからなぁ
霧切さんこれからが大変だ
501:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/26 22:14:06.44 H1xoUpe4
あそこで死んでしまって美化はないんじゃない
むしろ彼女に対する解釈に「霧切の良さ」が出るわけで
502:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/26 22:37:08.16 hC6YNhWK
>>499
やったの大分前だからあんま覚えてないんだが1章以外でそんな描写あった?
503:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/26 22:51:42.55 Kn3QFGU1
>>502
六章で舞園さんの部屋を調べると…?
苗木くんの舞園さんへの思いは恋心未満だとは思うけどね
霧切さんへの恋心はまるでないからあまりフォローにならんが
あんだけ助けてもらって霧切さんハァハァとならない苗木くんはなんなんだ
504:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 00:53:48.99 j/B8dyjB
げい
505:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 01:45:18.14 oY/qjDcy
苗木と霧切さんはゴミ捨て場から戻ってきた後、そのまま風呂に入る暇も無く最後の捜査と裁判に臨んだ。
つまり苗木は洗ってない犬の匂いをさせたまま「希望を捨てちゃだめだ!」と言っていたわけだが、それはまあいいとする。
ともかく、二人が学園を出る前にゴミ捨て場の匂いを落とすとすれば、裁判終了~玄関ホールに集合する間しかないのだ。
しかし6章捜査パートでは、メッセージウィンドウが青色になっている。つまり、夜間帯だ。
裁判が終了した頃には既に夜時間に入っている可能性が高い。
となると、個室のシャワールームは使用できないことになる。
そう、二人がゴミ捨て場の匂いを落とせる場所は浴場しかないのだ。
…さて、ここまで言えばわかるわね?
506:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 01:48:05.22 Dy9NlFBU
>>505
朝日奈「霧切ちゃんからも洗ってない犬の匂いがする!」
507:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 03:55:01.04 1YzuiG1k
まあゲーム開始時はだれも死んでないからたとえ監禁状態でも舞園さんのアプローチを意識する程度の余裕があったが、
舞園さんをはじめご覧の有様になっちゃったからとても色恋沙汰に気持ち向ける暇ないでしょ。と思ってたけど
苗木君、君風呂を覗くほどの気概を持っちゃってるね。論破失敗
508:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 04:31:20.68 P+wMN4/u
風呂と色恋沙汰は別だ…
509:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 10:14:34.92 i1ivj9NK
あの一枚絵は苗木の視点
つまり苗木は霧切さんの美尻を凝視していた
510:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 11:33:11.97 uSPPKI0D
まぁ本編中ではっきり恋愛感情持ってるのがわかるのは腐川→十神くらいだからな
まぁ推理アクションだから恋愛描写があまりないのはしょうがない
511:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 11:38:05.49 LYwcnMZs
苗木の補習を先に見たから、
霧切ちゃんも大丈夫だろチョコンと座ってる霧切ちゃんカワユスと気を抜いていた
そしたら
512:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 13:46:29.67 8HK5fFbr
ヒロインポジだったから死なないだろうと甘く見てたら
みごとに潰れてうわあぁぁぁぁ!!ってびびったのは俺だけでいい
完全に不意打ち状態でした
513:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 14:03:44.11 LYwcnMZs
いやーな音したよね
まだ未クリアなんでスレは見ないようにしてたんだけど
ショックで来てしまいました
514:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 15:01:46.94 ZG4iP8tG
最初見た時は度肝抜かれる
そのうち怖いもの見たさでもう一度見る
次第にだんだん興奮してくる
ここまでくるともうアウト
515:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 15:23:11.45 lYL17KoN
最初から興奮してた俺はどうすれば…
516:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 17:20:57.49 n1+2Qx67
>>515
よう兄弟
恐怖を必死に押し殺そうとする様が背徳感も相まってこう、ね・・・
あの○○を表に出すまいと必死で努める霧切さんというシチュはいろんな状況に応用がきくと思うんだ
517:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 20:30:27.98 Dy9NlFBU
苗木(鍵の事を口にしたら多分霧切さんオシオキされちゃうよな……)
苗木(霧切さんのオシオキ…フヒッ)
というような感じだったウチの苗木くん
518:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 23:30:21.67 i1ivj9NK
あのムービー以来、俺の中で霧切さんは根っこがMというのが定説になっているんだが
何か異論はあるかね
519:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 23:33:06.51 RFC/qKMg
苗木くんに踏まれてハァハァな霧切さん
ありだと思います
520:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 23:49:20.31 eUJRKjnk
某所でドMな犬切さんSSを見てからそうとしか思えない
521:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/27 23:49:42.96 ZG4iP8tG
ナエギリのSMだと、どうしても
霧切「苗木君、踏みなさい」
苗木「え、うん…」
霧切「苗木君、縛りなさい」
苗木「あ、えっと…こう?痛くない?」
って感じのを想像してしまう
522:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 00:06:26.52 CzzDYW+I
苗木君に嘘を論破されて感じてしまう霧切さん言葉攻めSSが見たい
「そんな言葉攻めみたいなことは止めなさい」
「でも、霧切さんってこういうの好きだよね?」
「べ、別に【好きじゃないわ】……」
「それは違うよ。だってここをこんなにしてるじゃないか」
「な、苗木君のクセに……」
523:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 00:16:37.94 CzzDYW+I
ごめん、猛り過ぎたのでエロパロスレでおしおきされてくる
524:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 00:34:50.88 QQGfb15W
>>523君は悪くないよ!
悪いのは全部・・・霧切さんなんだ!
霧切さんがエロかっこかわいいのがいけないんだ!
そうだよね、霧切さん?
525:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 00:36:49.09 FU4Ld4wD
>>522
チャプター5で追求したらうろたえるのかなあと思って進めたのは俺だけじゃないはず
526:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 08:02:32.11 QQGfb15W
動揺はしていたと思うよ
追求した時の「そこまで言うなら…根拠はあるんでしょうね?」という台詞の時、少しだけど声が震えている
527:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 12:05:13.82 QRhrNj7d
一番霧切さんが動揺したのって
アルターエゴから学園長の事を聞いたときだよな
え? 補習のとき?
528:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 12:50:00.98 G0DfTzWA
感情が表に出ていたという意味なら、「学園長が!?」の時だろうね。
あと「ひ、酷い!」が素だったとしたら、あそこも。
529:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 19:41:25.21 QQGfb15W
霧切さんをうろたえさせるには・・・
「霧切さん、今まで黙ってたけど・・・僕本当は女なんだ」
「霧切さん、もう僕に話しかけないでくれるかな」
「霧切さん、結婚しよう」
さあどれだ
530:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 20:21:12.85 AehZ2epj
>>529
「本当は女なんだ」→パンツ脱がされて論破
「話しかけないで」→無表情を貫き通すが内心動揺
「結婚しよう」→自由時間のテレギリさん発動、一番動揺
しかし個人的に一番見たいのは「話しかけないで」の反応だな
531:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 20:37:19.78 ASkOtmGe
エイプリルフールネタにもってこいだな
532:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 21:02:47.63 QQGfb15W
苗木君に冷たくされて泣きそうな顔になる霧切さん
あると思います
533:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 21:45:13.83 BpXJX8+V
ラストシーンで
霧切「あなたと一緒なら…」
苗木「霧切さん」
霧切「何かしら?」
苗木「話しかけないでくれないかな」
霧切「……えっ?」
胸が熱くなるな
534:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 21:57:41.05 7nL4l5/X
やめろw
そこに舞園を
535:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 22:30:02.97 PGY3Fz9R
つまり
苗木「え、 同じ学校だった? ごめん覚えてないよ。舞園さんの勘違いなんじゃない?」
舞園「……」
536:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 22:33:12.04 G0DfTzWA
こう、周りに人のいるところでは平静を装うんだけれど、一人きりになった途端ぼろぼろ泣き出す霧切さんとか見てみたい。
なんだろうな、霧切さんは雰囲気はSっぽいけど被虐心より加虐心をそそられる。
これって正常だよな?な?
537:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 22:38:37.53 C7ceSh8x
>>535
君は今すぐチャプター1をやり直しなさい
538:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 23:41:00.84 AehZ2epj
>>536残念ながら異常だ。そして俺も異常だ。
539:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/28 23:54:44.13 dv7l1Jqb
お前らだけにいい格好はさせないぜ!!
でも、あそこまで信頼してる苗木君に(冗談とはいえ)裏切られたら、
今度こそ立ち直れなくなりそうだな
540:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 07:59:48.75 kgJA7xDk
火傷の件の時は何があったんだろうな
541:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 12:19:34.22 memtHEZ1
火傷の時の「他人に深入りしたがゆえの失敗」が深く信頼していた相手に裏切られたことだと仮定して、だ
取り留めのない会話をしていた時に、ふと苗木が口にした言葉が、かつて裏切られた相手から言われたことと一字一句同じ言葉だったりするんだ
もちろん苗木はそんなことは知らないんだけど、乗り越えたはずの過去を呼び起こされた霧切さんは突然怯えたような顔になって、
「お願い…お願いだからあなたは私から離れないで…」と縋りついてくるんだ
そんな展開があってもいいと思います
542:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 17:11:39.93 MrziAjMQ
無表情になろうと努めるけどボロボロ泣いてしまう霧切さん
543:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 18:17:27.46 bq0+22GW
ふぅ・・・
544:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 19:46:01.20 42ZjckwW
やっぱり寄宿舎二階の学園長の部屋で
独りきりになった霧切さんをそっと覗きたかった
545:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 21:07:39.42 kgJA7xDk
霧切さんにも何かしら分かりやすい弱点がないものか
こう、怪談が苦手だとか毛虫を見ると卒倒するとか
546:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 21:27:34.46 Vi+5VXOY
>>545
高所恐怖症だったり
暗所恐怖症だったりとか
547:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 21:48:28.36 qANuO9S7
ご歓談中失礼します。ちょっと多めにスレお借りします。
中途半端にシリーズ化なんかしてましたが、このへんで一区切りつけようかと思います。
わりとネタバレあるので注意してね!
っつーわけで、
こちら苗木誠探偵事務所(連作)
548:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 21:49:07.72 qANuO9S7
「―はい。……はい。……それでは、失礼します」
「…………霧切さん」
「……苗木君。待っていてくれたのね」
「うん。……えっと、」
「とりあえず、事務所に戻りましょうか」
「そう、だね」
苗木誠探偵事務所は、いや、希望ヶ峰学園は……、えっと、どこから話せばいいかな。
「ただいま……あ」
「苗木君の家は、ここなのかしら?」
「ちょっと間違えただけだよ」
「それが一回や二回なら、私も貴方の言葉を信用したのにね。……ふふ」
「勘弁してよ、もう」
霧切さんがうっすらと微笑む。重く沈んでいた空気が、ほんの少しだけ軽くなったような気がした。
勝手知ったるボクらの探偵事務所。目を瞑ったってボクは自分の椅子まで辿り着けるだろうし、霧切さんならきっとコーヒーまで淹れて見せる。
それほどまでに慣れ親しんだ事務所にいるのに、ちっとも落ち着かなかった。
「このブラインドも、外さないといけないかな」
「必要無いと思うわ。どうせ全部覆ってしまうのでしょう?」
「そうだね。……良かった」
「一つづつ外していたらキリがないものね」
「そういうことじゃなくてさ。………あはは。やっぱいいや、恥ずかしい」
「? ………、…………………ばか」
興味なさげにそっぽを向く霧切さん。その仕草が照れ隠しであることと、顔がほんのりと朱に染まっていることにボクは気付いている。
それがわからないほどボクらの付き合いはそんなに短くないし、わざわざ指摘するほどに間抜けでもない。
軽く目を閉じて、開く。いつも通りの会話にまた少し事務所の空気が軽くなった。……さて、
気は進まないけど、そろそろ話さなければいけないだろう。
世界が終わった日、そしてボクらの探偵事務所が閉鎖した日のことを。
549:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 21:49:19.94 cMB9/Giz
苦手なものなんて無かった、弱点なんて無かった
探偵としてそんなものはあってはならなかったから
なのに…、苗木くんの馬鹿
みたいなのが萌えるんだろ!?
550:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 21:49:57.16 qANuO9S7
―世界は、終わる。
伝統ある希望ヶ峰学園の学園長がそう切りだしたのは、今日の朝九時ジャスト、たった十六人を前にした全校集会のことだった。
不二咲君は何故か昔みたいに女子の制服を着て、十神君は憔悴しきった表情であちこちに電話をかけていて。
石丸君はボタンを掛け違えていたし、珍しいことに腐川さんは”眠って”いて、代わりに翔が興味なさそうに愛用のハサミをいじっていた。
大体皆似たような状態だった。
学園長は落ち着かないボクらを意に介さず、言葉を続けた。
―しかし。キミ達がいれば。
超高校級のキミ達がいれば、世界は何度だってやり直せる。その才能はただの才能じゃない。この広い世界の中で、たったひとつ残った希望の原石。
それがキミ達、希望ヶ峰学園78期生だ―そう、学園長は締めくくった。今までで一番短いスピーチだったべと葉隠君が呟いた。誰も笑わなかった。
それから、ボクらは一人ずつ学園長と面接をした。世界に希望が取り戻せるその時まで、生涯をこの学園で過ごすことに同意した。
この巨大な学園でたった十七人。たった十七人の共同生活が始まったのだった。
「まことに勝手ではありますが、本日をもちまして苗木誠探偵事務所は、営業を、終了いたしました、っと」
「……何を書いてるのよ」
「事務所の閉鎖のお知らせを、ちょっと。もう誰も来ないだろうけど、いちおうね」
「これ以上張り紙を増やしてどうするというの、貴方」
「突っ込みどころはそこなんだ?」
学校を完全に封鎖してしまう手前、のんびりと部活動というわけにもいかなくなる。
朝日奈さんや大神さんなんかは個人的にトレーニングは欠かさないようにするみたいだけど、ボクらにはさして続ける理由もない。
なにより依頼人が見知った顔だけというのも張り合いがないし、ボクらは一応の閉鎖を決めていた。
「荷物とか、全部置きっぱなしでいいよね?」
「いつも使ってるものだけ持っていきましょうか。明日からは寄宿舎が生活の中心になるでしょうけど、二度と来ないというわけでもないのだし」
霧切さんが文庫本片手にボクを見やる。どうやらどの推理小説を持って戻るか悩んでいるようで、しかしどれもお気に召さなかったのか全て棚に戻していた。
「一冊も持っていかないの? レーンとか、霧切さん読みかけじゃなかった?」
「何度か読んでるもの、いいわ。苗木君こそ何かないの? いくつかあったら部屋で退屈せずに済むでしょう」
「この椅子とか持っていきたいんだけどなあ。かさばるよね」
「そろそろ私も怒るわよ」
「ごめんね。からかってるつもりはないんだけどさ」
余計に性質が悪いわと霧切さんが呟く。ボクは上手い返答が思いつかなくて黙り込んだ。
空虚な会話。放っておいてもいつもと同じやりとりが口をついて出てくるのだけど、ボクらはどこか上の空で。
しばらくこの部屋に入ることもなくなるのだと思うと、寂しさがこみ上げてくる。
「あのさ、霧切さん」
「何かしら」
「………寂しいね」
「……そうね」
なんとなく見つめ合う。霧切さんとこうしている時は大抵謝るか照れるかしていたボクだけど、今日ばかりはそんなことにはならなかった。
ふたり向かい合って腰掛けて。そうしていると、今まで過ごした日々が蘇ってくるようだった。霧切さんもボクを通して過去を振り返っているように見えた。
551:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 21:52:49.99 qANuO9S7
>>550続き
「……苗木君」
「……え。あ、うん。なに?」
霧切さんは何か言いたげに口を開いて―閉じた。何事もなかったかのようにボクをぼうっと見つめている。
「苗木、苗木誠……苗木所長」
「また、珍しい呼び方をするね」
首を傾げる霧切さんである。その拍子に銀色が揺れて、夕日にきらめいた。
「おかしいことは何もないわ。貴方が所長だもの」
「そういうことになってたね……。それで、どうしたの?」
「あのね、苗木所長、……ええ、折角だから」
そう言って霧切さんは立ち上がり、ブラインドのストッパーに手をかけた。するするとおろされるブラインドが夕日を遮る。
「―言葉を、貰えないかしら?」
ブラインドがかたん、と窓枠にぶつかった。
「……言葉、を?」
そう言葉、と霧切さんは繰り返した。
「訓辞、挨拶、終わりの言葉。呼び方はなんでも良いわ。ままごとみたいな探偵事務所だったけど、最後ぐらいはきちんと幕を下ろしたい。
……なんて、少し感傷的かしら」
「そんなことないよ。多分、ボクも同じ気持ちだから」
突然学園がその機能を停止して、ボクらもそれに引きずられる形になった。
学園への残留も事務所の閉鎖も自分たちで選んだこととはいえ、気持ちの整理なんてつける時間も余裕もなかった。冷静なようで内心混乱していたのだ。
だからボクらは、なにかひとつ区切りが欲しかったのだろう。自分たちの手でおろすことのできる幕が欲しかったのだろう。
「わかったよ、霧切さん。話すのはあんまり得意じゃないけど。それでも良いなら、なにか言葉を贈るよ」
「ええ、是非」
いつまでも座っていたくなる誘惑を振り払って、ボクは霧切さんの傍へと歩み寄る。
二人の間に障害物はなくなって、咳払いを一つ。それだけでごっこ遊びの延長みたいな探偵事務所が、なにか神聖な場所になったように思えた。
552:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 21:54:11.69 qANuO9S7
>>551続き
「えー、……そうだね。ボクら二人、ずっとこの事務所にいたよね。あるかもわからない依頼を待ち続けて、一日ボーッとしていたこともあったっけ」
部活動という名目で始まった探偵事務所は物珍しさこそあったものの、依頼を受けるまでには至らず。
探偵小説やコーヒーメーカーを事務所に置き始めたのもこの頃だったと思う。とにかく退屈だったのだ。
「そしたら、クラスの皆がなんとなく気にかけてくれるようになって。ちょっとずつ依頼が増えて。霧切さんが持ってきた小説に出てくる売れない探偵事務所みたいに
なったよね、ウチ」
苗木誠探偵事務所の得意分野は迷い猫捜し。しかし霧切さんはどんな些細なことにも手を抜かない人で、その姿勢が後々の依頼にもつながったのだろう。
「いつも二人で行動して、依頼が入ったら事務所を閉めて。ちょっと不便かな? と思うこともあったけど、その態勢にもすぐに慣れた。
そもそもそんなに依頼は多くなかったし、それに、」
「……それに?」
「……霧切さんと二人でする”探偵ごっこ”は、すごく楽しかったんだ。キミは超高校級の探偵で、ボクはそのサポートで。名前だけの所長だったけど、
ワトソン役はだれにも渡したくなかった。最初は不思議で仕方なかった”苗木誠探偵事務所”の看板が、……最近は嬉しかった」
今思えば、ボクは本当に幸運だった。こんなに素敵なホームズは、本棚の中のどこを探したっていないだろう。
「苗木君、ちょっと」
「ねえ、霧切さん。楽しかった苗木誠探偵事務所はこれでおしまい。それは仕方ないよ。でもボクには一つ心残りがあるんだ。
一つだけ、どうしても諦められないことが」
「ずっと、……ずっとキミの傍にいたいんだ。―大好きだよ、霧切さん」
とす、と。ボクの肩に何かがぶつかった。
「………………………ばか」
「ごめん。色々思い出してたら止まらなくなって」
「誰が告白しろと言ったのよ、ばか。………ばか」
そうっと霧切さんの背中に手を回す。一瞬肩が震えたけど、それ以上の抵抗もなくボクの腕の中におさまった。
肩口がひどく熱い。霧切さんは何かぶつぶつと言っているようだったけど、声が小さすぎて何一つ聞き取れなかった。
こういう時に必要以上の仕事をする心臓は驚くほどに穏やかで、心は静かに凪いでいる。
霧切さんは思っていた以上に華奢だとか、土足禁止にしておいて良かったとか、そんなことを考える余裕さえボクにはあった。
「良かったら、返事をきかせてほしいな」
「……喋るのは貴方の役目じゃない。どうして私が、そんなこと」
「ボクだって言葉が欲しいよ。ねえ、ダメかな、霧切さん」
「し、仕方ないわね……あの、苗木君。それなら、せめて、」
恥ずかしいから、このままで。……顔を見ていられないの。
霧切さんがボクのシャツをぎゅっと掴む。耳元で息を吸い込む音がして、ボクの心臓がどきりと跳ねた。
553:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 21:55:28.06 qANuO9S7
>>552続き
「―苗木君。苗木君?」
「…………え? あ、霧切さん。どうしたの?」
「どうしたのじゃないわ。ほら、扉を開けるわよ」
前方にはボクらを威圧するように鉄の扉。学園の出口だ。そう、ボクらは”卒業”するのだ。
どうやら少しぼうっとしていたらしい。頭を振って、ぱちりと顔を叩いて……うん。もう大丈夫。
「おい、何をやってる。何があるかわからんのだぞ」
「ほんと、苗木って結構図太いよねえ。学級裁判でもずっとリーダーみたいだったしー」
「だべ。もしかすっと、クラス委員長とかやってたかもしんねえな!」
「そ、そんなことどうでもいいわよ………アンタが白夜様を待たせてんのよ、グズグズしてるんじゃないわよ」
「ご、ごめん、みんな」
葉隠君と朝日奈さんがしょうがないなあ、という風に笑う。十神君と腐川さんはフンと鼻を鳴らした。
「……何か、思い出したの?」
「ううん。なんにも。でも、……うーん?」
「随分と煮え切らないのね」
霧切さんが肩を竦める。実際に忘れているのだから仕方ないと思う。彼女はまだボクの方を見ていて、何か思い出そうとしているようだった。
他の皆はやれ外に出たら占ってやるだのなんだのと言っていて、ボクらの様子には気付いていないようだ。
視線を合わせる。ボクの方が背が低いから、少し見上げるような形になって。
―ふと、ここが土足禁止だったらよかったのにと、意味のわからないことが脳裏を掠めた。
「…………」
相変わらず何も思い出せないけれど、確かにボクらはこの学園で、大切な日々を過ごしたのだろう。
たった十五人のクラスメイト。きっと授業も賑やかだったろう。昼休みは誰かと机を寄せ合って、時々は学食に行ったりして。
放課後には部活動とかして。朝日奈さんは当然水泳部で、腐川さんや十神君はそんなのくだらないって言ったかもしれない。
葉隠君はオカルトは嫌いなんだっけ。それで、霧切さん、は。……ボクは。
「苗木君、開けましょう」
「うん。……あのさ、霧切さん」
扉の上部に取り付けられた物騒な銃が天井へ納まる。派手な音が鳴り響き、二度と開くことはないように思えた扉が少しずつ動いている。
「なに? 十神君じゃないけれど、何があるかわからないわよ」
もう霧切さんはボクを見ておらず。扉の向こうにあるものに目を向けていた。
ボクもそれに倣う。
「霧切さんは、ここを出たら何を……いや、」
激しい音と光の奔流。扉はもう半分開いている。ボクは前方を見据えたまま、半ば叫ぶようにして残りの言葉を吐きだした。
「―ボクと二人で、探偵事務所、やらない?」
554:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 21:59:29.01 qANuO9S7
ちょっと中途半端かもですが……ここでおしまいです。
最後の方は(というかずっと)粗さが目立ってしまってので、次はもっと良いものをお見せできるようにしたいです。
それではひとまずこれにて。
555:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 22:28:47.22 Zidjbf6u
あなたが超高校級のナエギリ作者か……!
556:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 22:57:38.97 KX02aAB6
あなたの話はずっと好きで読んでいました
ひとまずお疲れ様でした
別の作品を書く機会があれば、ぜひともお目にかかりたいです GJ!
557:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/29 23:26:16.98 memtHEZ1
これだからこのスレはやめられねぇ…GJ!
第一回から本当に楽しませてもらいました
558:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/30 00:19:20.30 ELf9EVdy
>>554
GJすぎる・・・!
あなた様がNo.1だ
559:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/30 01:20:41.87 pFmzN/N4
>>554
いい最終回だった…GJ!
あなたとは是非またこのスレでお会いしたい
560:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/30 02:24:34.80 34eqWJBP
>>554
乙?
で、次はどんなナエギリ書くんだ?
実はもうだいたいできてるんだろ?
予告っちゃえよ?
561:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/30 10:20:51.90 Txnxg+t+
>>560
なぜばれたし
原点回帰ってわけじゃないけど、もともと読みやすい掌編をぽんぽん投げていく予定だったから、
適当にテーマを決めてギャグ要素強めのやつを探偵事務所の番外編として作っていく予定です。
こんなかんじで
こちら苗木誠探偵事務所(番外編)
ナエギリ春夏秋冬
第一話『春に着ていく服がない。』
562:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/30 10:21:39.72 Txnxg+t+
霧切さんは時々、ほんとうに言ってはならないことを言うと思う。
「苗木君、貴方の私服なのだけど………フルジップのパーカーってちょっとないと思うわ」
「………………………………は?」
季節は春。長かった冬がようやく終わり、桜の蕾も膨らんできたある休日のこと。
私服で登校してきたボクに対して、彼女は大真面目な顔でそうのたまったのだった。
「大体ソレ、いつ全部閉じるのよ? 昔から自分が見えないところにまで気を遣うのが粋だとか言うらしいけど、自分が見えなくなるのは果たして粋なのかしら。
目立ちたいのか目立ちたくないのか、ちっともわからないわ」
「いや、目立ちたいとは思ってないけど……」
むしろ目立とうと思っても目立たないのがボクのボクたる所以である。最近は”超高校級の平凡”だなんていう人がいるのだけど、正直ボクも”幸運”なんかより
ずっとそっちの方が相応しいと思っている。
ちなみに言い出したのは江ノ島さんである。
「じゃあその、フードにプリントされてる模様は永久に真っ二つのままなの? 理解できないわ……そういう意匠ならまだしも、明らかに原型は円じゃない」
「えーとえーと、……えーと」
涙目である。半泣きである。正直勘弁してほしいけど霧切さん本人にはからかう気など全くなく、むしろ興味津津のようだから手に負えない。厄介だ。
「模様はひとまず置いておきましょう。苗木君、貴方それジッパーを全部あげて街を歩ける? 危ないわよね。外では無理、と。なら、家の中で活用するかしら。
ご飯も食べられない、本も読めない。……困ったわ。使いどころが無いのよ、苗木君」
「ああ、そう………」
もう好きに言えば良いと思う。ボクもどうしてこの服を買ったのかなんて覚えていない。ただボクが選んだということは、これが極めて無難で、平凡で、普通で、
よくあるものだということと同義だ。
「大体こんなの、ドコで売ってるのよ。こんな……苗木君、ちょっとコレ全部閉じてみてもいい?」
「うわ、ちょっとやめてよ」
今まさに平凡の定義が危機に陥っていた。ていうか痛い。前髪挟んでるよ霧切さん。
なんか霧切さんの瞳がキラッキラしている。新しい遊び道具を買ってもらった猫のようだ。補足すると猫は小さい時から遊んでやらないと、大人になって急には
おもちゃでは遊ばない。現実逃避終わり。
「ちょ、ちょっと霧切さん、やめ」
「抵抗しないの。少しだけだから」
「フルジップに少しもないでふが」
結局ジッパーを全部上げられてしまった。何も見えない。音も小さく聞こえるし、声もくぐもってしまう。ホントに何のためにあるんだ、この機能。
「謎だわ……一体誰が、何のためにこんなものを」
オーパーツを初めて見た時みたいな反応を止めてほしい。何も見えないことも相まって、なんだか切なくなってきた。
「………あ」
―わかったよ、霧切さん。これ、人前で泣けない時に閉じるんだよ。
そこまで思い至ったボクの目から一粒、涙がこぼれ落ちた。布地に吸われてすぐに消えた。
「それにしても。…………滑稽ね」
「うわーん!」
563:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/30 10:36:20.36 Txnxg+t+
こんなかんじのを作れたらなーと思います
564:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/30 10:59:50.89 3PJoMVih
>>563
うおおおおおおお
是非ともシリーズ化して欲しい
ありがとう、ありがとうGJ
565:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/30 11:08:40.56 ycnYdFd8
>>563
もう君がこのスレの代表だ
566:名無しさん@お腹いっぱい。
11/03/30 11:26:15.48 B1DOfNTX
>>563
GJ! 二人のやり取りが凄くツボだ
>>565
兄弟、気持ちは分かるが他の職人さんだって素晴らしいと思うぞ
我々は誰でもWelcome!