11/01/18 19:36:59 1cz8epR3
>>356
「…そう、そうよね…途中で寝ちゃうし…お酒に弱いって、みんな言っていたもの…覚えているはずないわね」
「え?」
「こっちの話よ。…苗木君、砂糖とミルクは?」
「あ、うん。お願いします」
彼女が二人分のコーヒーを持ってきたので、僕はソファに少しずれて座る。
彼女は少し留まってから、そっと僕の隣に腰を下ろした。
「…大学では、その…上手くやっているの?」
彼女は唐突に、そんなことを尋ねてきた。
「え?あ、まあ、うん。ボチボチ」
「良い人は、出来たの?」
「ううん、全然だよ。そういう霧切さんは?」
「…内緒にさせてもらうわ」
「そっか」
「…徹夜でレポート書いていたらしいわね。根を詰めるのも良いけど、体には気をつけないと」
「うん、ありがと。霧切さんも、飲みすぎには気をつけてね」
「その件については、昨日身を以て、イヤというほど教わったわ」
「誰に?」
「っ…そ、それは、別にいいじゃない」
「あ、そうだ…」
「何?」
「昨日は、迷惑かけてごめんね」
途端に彼女は、口に含んでいたコーヒーを喉に詰まらせた。
「けほッ!!?ゴホゴホッ」
「き、霧切さん、大丈夫!?」
むせかえる霧切さんの背中を、急いでさする。
どうしたんだろう。今日の霧切さん、どこかおかしい。
「ゴホッ…あなた、やっぱり覚えて…!?」
「いや、僕きっと、迷惑かけたよね…多分、アレ飲んだ後、そのまま床に倒れるとかしちゃったのかな、なんて…」
霧切さんは数秒間、驚いたように僕の目を見ると、それから深い溜息を吐いた。
「あなたのそれは、本当は全部わざとやっているんじゃないかと、時々不安になるわ…」
「それ、って何のこと?」
「なんでもないわ」
「そう?じゃあ、僕もう行くね。あまり長く居座っても悪いし…霧切さんも、仕事あるんでしょ」
「…ええ」