11/01/18 19:27:38 1cz8epR3
>>351続き
「…ちょ、ちょっと、それ何杯目?いい加減にしないと、本当に体壊すよ」
僕が注意すると、彼女は例の潤んだジト目で僕を睨みつける。
「何よ、私が嫌いで、面倒なんでしょう?放っておけばいいじゃない」
ああ、デジャヴ。拗ねてる拗ねてる。
高校の時に同じようなことを言っていた、文学少女がいたっけ。
実は、酔った霧切さんを相手にするのは、これが初めてじゃない。
一対一で、というのはあまりなかったけれど、今でも時々行われる高校の同窓会に、僕も彼女も顔を出すから。
酔った霧切さんは、いつもより少し冷静さを失う、というか、感情的になる、というか、
わかりやすくいえば、わかりやすくなる、とでも言うべきか。
拗ねた霧切さんは、酒を飲もうとする。
僕がそれを止めようとすれば、無理やりにでも飲もうとする。
僕は立ち上がり、更に酒を煽ろうとする霧切さんの腕を掴んだ。
「心配だから言ってるんだよ」
「は、離しなさい…っ」
「ダメだよ。霧切さんの体に何かあったら、困るからね」
「……あ、あなたって人は、ホント…無自覚のくせして…」
途端に霧切さんが真っ赤になってうつむく。
具合でも悪くなったのだろうか。
そのまま彼女は少し抵抗を試みたけれど、さすがに酔っぱらった上に僕の腕を振りきるほどの力は残されておらず、
観念してコップをテーブルの上においた。
そして、彼女が再び顔を挙げて一言。
「…じゃあ、苗木君」
この一連の言動が、
「代わりに、飲みなさい」
悲劇を招いてしまうと、この時の僕はまだ知らない。