11/01/17 08:47:34 wTFyVGDQ
「苗木君、恋してる?」
窓の外に広がる景色を眺めながら、霧切さんは唐突にそう切り出した。
「こい?」
僕はただオウム返しに呟き返す。
「そう、恋愛の、恋」
今度は真っ直ぐ僕の方を見ながら再びそう問いかけた。
明日のテストが心配だったから居残っただけだったはずなのに、何だろう、この雰囲気は。
放課後の教室。
教室を出て行くみんなをよそに、霧切さんは僕の席にやってきた。
いつも通り探偵助手のお誘いだろうか。
流石にテスト前だからと断ろうとしたところで、彼女は僕の前―朝比奈さんの席に座った。
「苗木君、勉強していくの?」
「え、ああ、うん……」
帰り支度をしていなかったことから察したのか、予想外の質問にちょっと慌ててしまう。
「だから、今日は―」
「私も一緒にしても構わない?」
捜査の誘いを断ろうとしたところで、予想外の方向からパンチが飛んできた。
僕の知ってる霧切さんは、自分からそんなことを言うキャラじゃない。
でも、流石にそんなこと言えないので、とりあえず、目を白黒させてみた。
「今は何をやっているの?」
「え、古文の復習だけど……」
ちょうど良かったわ、と言いながら、霧切さんは朝比奈さんの机の向きを変え、僕の机と合わせる。
周りを見ると、既にみんなそれぞれ教室を出て行ったようだ。
「……ひとつ、良い?」
鞄からノートなどを取り出す霧切さんに問いかける。
「何でまた、霧切さんが僕なんかと勉強を?」
霧切さんは、無言で古文のノートを差し出す。
中を開いてみると―所々空いているページがあった。
「捜査の所為で何度か授業に出そびれたのよ。あなたが教えてくれないかしら?」
こうして、不思議な二人っきりの勉強会が始まった。