11/01/17 02:26:36 jx1yxKL2
本篇(?)は>>298で一応完結ですが、エピローグが少しだけ続きます
もう少しだけレスを貸していただきます、ご容赦ください
エピローグ
情緒不安定、という言葉を当てては失礼かもしれないけれど、それはめまぐるしい表情の変化で
きっと僕に傷を見られたのがショックで、霧切さんは初めて僕の前で怒り、泣いた。それなのに、
「ふふ、もしかして、苗木君のファーストキス、頂いちゃったのかしら」
その、キス、を終えた後の霧切さんは、いつもの霧切さんに戻っていた。
「ええっ、その、えーと…」
「ねえ、答えて苗木君。答えられないということは、初めてじゃないのかしら?」
いつもの霧切さんとはどういうことか、というと、本当にいつもの霧切さんで、
ミステリアスな笑みを浮かべ、意地悪な質問をぶつけて困る僕を見ては、それを面白がる霧切さんのことだ。
「な、なんでそうなるのさ!」
「慌てる、なんて、ますます怪しいわね。そう、私としては構わないけれど、少し残念だわ。
せっかく私の初めてのキスを捧げたのに、苗木君にとっては、このキスはそれほど貴重なものではなかったのね」
手袋を再びつけてしまったのは少し残念だけれど、こればかりはしょうがないと思う。
やはりまだ、人目に触れるには抵抗がある、と、彼女は言ったから。
「え、は、初めて…霧切、さんも…?」
「あら、意外?というか、私にキスをしようとしたモノ好きなんて、あなたが初めてよ、苗木君。
そして私も、ということは、苗木君も初めてだったのね。
でも…意外ということは、苗木君の目には、私は誰とでもキスをするような淫らな女に写っていたのね。ショックを隠せないわ」
それでも、少しずつだけど、僕の前では手袋をはずす努力をする、とも約束してくれた。
色々と気障なセリフをぶつけてしまった気もするけれど、彼女の前進に携われたこと。今は、それを誇りに思う。
「もう…アレだけ勇気を出したのに、どうして僕だけ恥ずかしい思いをするんだよ」
「…何を言っているの、苗木君」
僕たちは今、彼女のベッドの上に並んで座っている。
手袋に包まれてはいるけれど、互いの手を、しっかり握って。
霧切さんは、そこで数秒だけ口を閉じ、それからみるみる顔を赤らめた。
「わ、私だって…」
「え?」
「私だって、ちゃんと、恥ずかしかったわ…」
そういうと、彼女は顔を赤らめたまま、つ、とそっぽを向いてしまった。
ああ、ダメだ。これからも僕は、彼女のペースに振り回されっぱなしだ、と、ここで改めて確信する。
だって、そんな彼女の恥ずかしがる素ぶりに当てられて、
きっと今の僕の顔は、一段と真っ赤に染まってしまっているだろうから。