11/01/17 01:55:38 jx1yxKL2
>>287続き
「…私がこの傷を負ったのは…そうね、まだ探偵として駆けだし中の頃、とでも言えばいいのかしら。
私が相手をしていたのはとある犯罪組織。私はいくつかの事件を解決していく過程で、その存在を知ったの」
どうせ今日で終わりなんだ。
傷の経緯くらい、幾らでも話せばいい。
「…自分の力を過信していた、というのもあるし、周囲からの評価が欲しかった…焦っていたんでしょうね。
とにかく私は、数名の仲間と一緒に、その犯罪組織の根城を探し当てた…けれど、
仲間の一人に、内通者がいたのね。私は根城に潜り込んだのだと思っていたのだけれど、実はその逆。
彼らにおびき出されたのよ。その根城の最奥まで。
逃げることは難しくなかった…けれど、人質を取られたの。その人質というのが…」
「本当は、その内通者だったんだね」
「そういうこと。よくわかったわね。探偵業が身についてきたのかしら?」
彼は私の茶化しも介せず、続けるように促した。
「…もちろんその時の私はそんなことは知らなかった。プライドを捨てて、彼を助けてくれるように頼みこんだ。
そこで彼らが出した案は、『その犯罪組織に伝わる拷問に耐えきれば、彼も私も無傷で解放する』というもの」
「拷問…」
「焼却炉の中に自ら手を入れ、30秒耐えきれば合格、というシンプルなものよ」
苗木君の顔が青ざめる。
「本来のルールでは、手枷なんかをして、無理矢理30秒耐えさせる、というのがあるらしいのだけれど…
私にはそれをさせず、その代わり耐えきれず早く手を出してしまえば、目の前で彼を殺すと言われたわ。
そして私は、裏切り者の命を救うために、自分で自分の手を焼いた…
目が覚めた時は、知らない町の病院にいたわ」