11/01/17 01:51:09 jx1yxKL2
>>268の続き、ようやく書き上がりました
といっても、さすがにこんな時間じゃ見てる人はいないかな…
とにかく、書かせてもらいます
コンコン
と、しばらくして、想定していた通り、ノックの音が部屋に響いた。
その頃には私はとっくに泣きやんでおり、もちろん、幾分かは落ち着きも取り戻していた。
彼なら、きっとフォローのために部屋に来るだろう。そう予想していたから、
「…あの、霧切さん」
「いいわよ、入って」
彼が部屋の前に、オロオロとした、小動物のような顔つきで立っていても、普段通り対応できた。
「え、あの…」
「話があってきたんでしょう?それとも、やっぱり部屋に入るのは嫌かしら。それなら…」
「う、ううん!おじゃまします…」
さあ、どう出るだろうか。
どう出てきても、私は彼の弁明や慰めを、完膚なきまで拒まなければならない。
今後、彼の中に、私のそばにいるという選択肢が無くなるように。
彼に椅子を差し出し、私はベッドに腰掛ける。
それから、ただじっと、彼が話し出すのを待った。
「あの…」
「何?」
出来るだけ冷たい声で、問いかける。
「まずはこれ、返しておこうと思って…」
彼が差し出したのは、私が外された右の手袋。
そういえば、あの場に忘れてきてしまっていたのか。
「ああ、ありがとう。わざわざ持ってきてくれたのね」
私が無感情―に聞こえるように取り繕った声を響かせるたび、彼は怯えたように身をすくませる。
罪悪感が胸を突き刺す。彼は何も責められるようなことなどしていないのに。
「えっと、それで、改めて謝りたいな、と」
「謝る?何を?」
さあ、どうでる。
「…霧切さんが見られたくないものを、勝手に見てしまったから…」
なるほど、そう来たか。
「…それはこの、右手のことを言っているのね?」
彼は無言で、下を向いている。肯定ととっていいだろう。
「…そう思うということは、やはりあなたも、『私がこれを他人に見られたくないと思っている』と思ったのね」
「え…」
違うの?とでも言いたげな表情。
「私はね、別に『この傷跡を人に見せること』自体には、何の抵抗もないわ。
私は、『私のこの傷跡を見た人の反応』が見たくない、それだけなの」
「反応…?」
「みんな、同じ顔をするの。『気持ち悪い』『見なければよかった』といったような、ね。
ちなみに苗木君、さっきのあなたの表情も、例に漏れていないわ」
「そっ、そんな、こと…」