11/01/16 22:04:03 DKmh/sR9
>>260続き
いつか、言うのだ。今はそれでいい。
私は自分を納得させようと、必死でその二言を頭の中で反芻する。
いつか言うから、今は彼の笑顔や、優しさや、無垢さを、側に置かせてほしい。
「残念ね、私なんかと取り残されて」
言えば彼も、きっと私から遠ざかってしまう。
だって、彼は私のような汚れた存在と、対極の位置にいるのだから。
「そんな!残念だなんて、全然思ってないよ!」
ただ、ほんの少しだけ、淡い希望を彼に見出してもいる。
もしかしたら、この手を見ても、それでも彼はそばにいてくれるのではないか。
「そう?舞園さんと一緒の方が、よかったんじゃない?」
それが押しつけの希望だと、自覚もしている。彼にしてみれば、いい迷惑だろう。
だから、「希望」は抱くけれど、「期待」はしない。
彼がそばにいてくれる、そういう可能性もある、とだけ頭の片隅においておくだけ。
それに縋ったりはしない。
「な、なんで舞園さんがでてくるのさ…」
「ふふ、顔が赤くなってるわよ」
「う、あっ…」
彼が舞園さやかに憧れを抱いているというのは、周知の事実だ。
愛らしい笑顔、誰に対しても等しく振りまかれる優しさ、みんなを元気づける明るさ。
私なんかよりも、ずっと彼のそばにふさわしい。
それだから余計に、私が彼に期待を抱いてはいけない。
彼は優しい人だから、自分より他人を優先するお人よしだから、私が期待を抱けば、彼はそれに応えようとする。
そしてそれは確実に、彼が舞園さやかの隣へ行くことへの足枷となってしまう。
「ホントに私と残されたことが残念じゃないなら…」
いつか打ち明ける。打ち明けて、彼を私から遠ざける。
「今日は少し、付き合ってもらっても良いかしら」
だから、今だけ。今だけ、隣にいさせてほしい。
「もちろん。どうせ暇だし、それに霧切さんと一緒に過ごせるなら、有意義な休日になりそうだしね」
せめて打ち明けるまでの短い時間を、彼の優しさに、愛おしさに浸らせて…