10/11/06 18:05:55.62 QjjRiZx20
「キョンくん、試合はじまるよー?」
「ああ」
日本シリーズが決着するかもしれない試合であるにもかかわらず、俺は未だ自分の部屋に篭っていた。
「キョン、あたしたち先に行ってるわね。あんたも早く降りてきなさいよ」
ハルヒがハルヒらしからぬ調子で、俺に参加するよう促してきた。
もしかしなくても俺を心配してくれているのだろう。自分の情けなさにますます気が重くなる。
優勝チームの決定、つまり俺の身柄を賭けた長い長いバカ騒ぎの終わりだというのに、俺は試合に興味を持てなかった。
今の俺が関心を持てるもの。それは、佐々木の手紙だけだった。
一昨日の夜に、佐々木の手によって渡されて以来、ずっと俺の心を縛っている。
デスクライトだけ灯された薄暗い自室で、再び手紙に目を落とす。
もう何百回読み返したのかわからなくなってしまったが、それでも手放せずにいる。
一万回読み返せば、その内容が変わっているかもしれない。そんな迷信に憑りつかれてしまったかのように。
だが、これから三時間ばかりは目を離そうと思う。せめて賭けの終着は見届けなければならない。
そこが佐々木の居ないリビングであろうとも―