【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】at MITEMITE
【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】 - 暇つぶし2ch33:創る名無しに見る名無し
10/11/17 19:03:28 5foSoAtP
>>32

彼女は飛ぶ。
国境を目指して猛スピードで、山々をの間を抜け谷を縫いながら、後ろに白い
飛行機雲を引きながら飛ぶ。1kmほど隣。同じように飛んでいる人が山陰から
見えたり見えなかったり。人?違う。擬人化したヒワイドリが、彼女と平行に
飛んでいた。こちらの視線に気がつくと、緊張感の無い顔で笑いかけられた。
スケベで乳の話しかしない。彼女は胸の話をされると少々困るのだ。
それでも知っている。彼が乳の話をするときは、彼女も消化しきれない、少し
イライラした時。彼が乳の話をすると何故か周りも落ち着いて、一件落着する
ことが殆どだ。

ヒワイドリが、少し体をこちらに向けて、上空を指さしている。
仰ぎ見ると、はるかに高い所に一筋の飛行機雲。多分、旅客機が飛ぶような高度
だろうから、動きが遅く見えるが自分たちよりも先行して、同じ速度で飛んでるが、
少し右寄りに進路を変更している。ヤイカガシ?
何時もパ○ツを狙っているとんでもないやつ。少し臭いのも気になるが、何故か
離れずに付きまとう。それでもこんな時は、あの大きな目だけは、頼もしいと思う。
先導してくれるのならと、彼女も同じように進路を変更。

眼下の集落を飛び去るときに気がつく。人々から憎悪が流れだし、黒い霧のように
集まり、国境へと向かっていることを。大河が一滴の水滴から始まるように、少し
ずつ集まって小川になり、支流となり、大河となって流れていく憎しみの濁流。
「人の心に棲む鬼達」
目を背けたい現実。彼女の頬に一筋の涙が零れたその時、背後邪悪な気配を感じて
身構る。胸に手が伸びて触られた・・・いつの間にかヤイカガシがすぐ隣を飛んで
おり、人差し指を立てながら追い越していく。何か言ったが聞こえない。そのまま
前に。文句の一つも言ってやろうと、口を開いた次の瞬間
「ドンッ!」
強烈な爆発音と共に、辺りは真っ白になり吹き飛ばされた。地面に叩きつけられそうに
なったが、寸前で高度を取り戻して振り返ると、ヤイカガシが猛烈な闘いに入っていた。
彼女はその場を急速に離れて先を急ぐが、苦笑いをするしかない。
「一つ借り」


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