【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】at MITEMITE
【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】 - 暇つぶし2ch2:創る名無しに見る名無し
10/11/16 00:17:17 yp3ylUd7
>>1
乙です!

3:創る名無しに見る名無し
10/11/16 00:21:31 JlXg11Y6
長編じゃないといけないのですか?

4:国防省 ◆Oppai.FF16
10/11/16 00:23:42 /SjT2U5z
即死防止+景気付けの為に7回連続の長編を投下します。
宜しいでしょうか?

5:創る名無しに見る名無し
10/11/16 00:28:41 iKyjeht0
>>3短いのなら本スレでもこちらでも大丈夫だと思います!

>>4ぜひお願いします!

6:創る名無しに見る名無し
10/11/16 00:28:56 6uOSTp+f
>>1
乙です

>>3
千里の道も一歩から

>>4
支援なしでいいんですよね?

7:国防省 ◆Oppai.FF16
10/11/16 00:30:41 /SjT2U5z
>>4
7回ならオケかと。それでは失礼致します。

<前回までのあらすじ>

 2010年 秋
某国国防省は、アジアの或る国からサイバーテロの攻撃を受けた。
その内勤であるケンとその上司のボスは、ネットから出現した電脳の“虎”が、同じく
ネットから現れた謎の電脳少女(鬼子)に殲滅される様を見る。
その後、アジアの出張から戻った同僚から純銀の銃弾を受け取ったケンは、C■Aからの
スパイの存在や局間の確執等から、ネット世界の激動を予感した。

 そして、ケンの学生時代の友人である山都武士は、仕事で赴いた日本の山奥の廃村で二
人の妖(鬼子と小日本)に出会い、弔った犬が着けていた銀の銃弾のペンダントからUSB
メモリを手にする。役場の人間に胡散臭いものを感じた武士は、彼らが来る前にメモリの
中身を確認しようとするが果たせず、ケンに衛星電話で相談を持ちかけるのだが―

 というワケで、以下その続きです。


 ヒューウヒュルル ヒュルルルヒュウウウー……
 ブツッ
「……well」
「ハ、ハロウ、ディスイズタケシ・ヤマトスピーキン、メイアイ……」
「タケ! マジか!? 久しぶりだナ!」
「おおう、朝早くにスマンな、ケン!」
「No! ちょうど起きる時間さ、気にスンナ!」
「そうか? それかなりウソだろ、無理すんな!」
「……何故分かるwhy? まさか読心術でも始めたのかイ?」
「実はな、我が国は先日、世界に先駆けて“時差の再発見”に成功したんだよ」
「ワァオ! そいつは凄いなボブ!」
「誰がボブか」
「それで車輪の再発見はいつヨ?」
「逆行してどうする!」
寝起きだろうに、あっさり主導権を握られる。やはり肉が主食の国には敵わないのか?
「で、最近調子はどうよ? 転職したんだっけな、確か、えーっト」
「ハウスキーパーだ」
「そそ、そのメイドさん。ミニスカで脛毛まる出しで『おかえりなさいませご主人様~』
つって土下座するオシゴト!」
「ちげーよ! 別荘とかの管理人!」
「え~っ、その後ご主人様を押し倒して顔をピンヒールで踏むとかじゃないノ?」
「おい、趣向が変わってるぞ。……まあそれは兎も角」
 もうそろそろ目が覚めただろう。
「実は緊急で相談に乗って欲しい事があるんだが、いいか?」
「よし、いいぞ」
相変わらず切り替えが早い。電話を通じて空気が張る。
「とは言っても長い話になるので、書いておいたメールを送る。だからPCを」
「だと思って既にボタンは押してある。OSは……今立ち上げ完了した」
やはり流石だ、これなら相談しても。……って何か横の方が明るく?
「すまんな、衛星電話のバッテリーが心許なくって……」
横を見ると、LANケーブルを玩んでいる妖(あやかし)の幼女が光っていた。
いや、光っていると言うか、丸い光に包まれている。服も先程のものから変わっている。
気になって見た蝋燭は、放つ光を幼女の丸い光が吸い込んでおり、蝋燭の残量も残り1セ
ンチほどに急減していた。

8:国防省 ◆Oppai.FF16
10/11/16 00:31:37 /SjT2U5z
そしてその所為なのか、電話機のバッテリーは全回復していた。……ノートPCも。
「残量はどの位だ?」
気遣わしげなケンの声。しかしこれなら。
「あ、いや、問題無い。メールも今送信した」
「そうか、って、もう来たぞメール」
早いな。それに電話の時差も?
「それと電話の感度も良くなった様だな。本当に時差の再確認を?」
「バカな。いや、幼女の方の妖が光ってて、それで」
幼女は相変わらず丸い光の中で、3mのLANケーブルを、触らずに空中で様々な形にし
て遊んでいた。
「あやかし? ようじょ?」
「あーすまん、先ずはメールを読んでくれ」
頭が変になりそうだ。物には干渉出来ないんじゃなかったのか?
「ああ、そうする。……では電話はこのまま?」
「繋ぎっぱなしでいてくれ」
ネット関連に強い妖なんだろうか。やはり副業で怪しい事とかやってるんだろうか?
と思ったところで、門の外で虚空を凝視していた少女の方の妖が縁側に戻ってきた。
少し急いでる感じだ。
昔の時代劇のように、蝋燭の火に顔と片手を近づけ、吹き消そうとする。
しかし火はピクリとも揺らがない。少しムッとした表情になる。
熱いのを我慢して芯の根元を摘んでやる。消えかける火。反対に明るくなる表情。
指を離す。再び点く火。驚いた表情。
肩を竦めて見せると、さっきより更にふくれっ面になる。
その百面相に思わず笑ってしまった。
からかう人はキライです、という感じで他所を向く少女。その視線の先には幼女とPC。
「ああ、すまんすまん、ほら消したから」
一気に吹き消した。
それでも月明かりと幼女の光で、周囲は何とか見渡せた。
「誕生日パーティーでもやってるのか?」
しまった、電話機を握りっぱなしなのを忘れていた。
「いやスマン、少女の方の妖が戻って来てな」
見ると、少女は幼女と向かい合わせでLANケーブルを掴んでいた。
ケーブルから光が溢れ、彼女らの体に流れ込んでいく。
「もしかして、その妖の大きい方は、16歳から18歳くらいの日本女性か?」
「いや、俺の見たところでは14歳くらい……」
そして、少女の体と着物が少しだけ大きくなった。加えて僅かに光も帯びた。
「ああ、いや、17歳前後になった、今」
「今、なった? やっぱり誕生日……いや、角が有って着物は赤い紅葉柄ではないか?」
「ん? よく分かるな、その通りだ」
「なっ、なんということだ……」
「おいケン、なに一人で納得してるんだ!? 俺にも分かる様に……」
「地球の裏側に居る親愛なる友よ、いますぐ其処から離れるんだ!」
口調が急に切羽詰ったものになった。
「だから車は使えないし、役場の人間は山の麓で待ってるだろうし」
「裏山があるだろう、そこに逃げ込め!」
「何を焦ってるんだ? 明日の朝になれば役場の人間が来るだろうから適当に……」
「いや、多分そろそろ来るだろう。そしてそれは、タケが考えてるのよりもずっと怖い
人間の筈だ」
「何故そう思うんだ?」
「その大きい方の妖は、恐らくヒノモトオニコだからだ」
ヒノモト? 何処かで聞いたことがある様な……

9:国防省 ◆Oppai.FF16
10/11/16 00:32:27 /SjT2U5z
「彼女は虎の天敵だ。その彼女が居るという事は、其処へ来る人間も虎と同じ目的を持っ
ている筈だからだ」
「虎? 何の話な、んだっ!?」
俺の前に立った少女(いや、ケンが言うところのオニコか)から紅い光が溢れ出す。
そして、両手を胸の上で重ねて目を閉じ、軽く俯いた。
(先ずは狗の埋葬のお礼を申し上げます)
な、なんだこの声? 直接頭の中に響いてくる様な!
(間もなく狗を追っていた者達が来ます。危険ですから貴方はここから動かないで下さい)
「おい、キミは何を!?」
「Hey!!」
「~~~……!!」
ケンの怒鳴り声で左の鼓膜が破れそうだった。あ、という事は。
「ケンにも聞こえたのか? 今の」
「ああ、オニコは綺麗な英語をしゃべるんだな、驚いたよ!」
英語? 完璧な日本語じゃねーか、と言おうとしたところで。
「!……本当にお出でなすったようだ」
山から集落の入り口辺りに出てくる車のヘッドライト。エンジン音も微かに聞こえる。
無粋な、という表情で門の方を見るオニコ。
(これより散らして参ります)
言い残して、滑る様に門の外へ走り去った。
「よし、俺も……」
そう言って立ち上がろうとしたところで、幼女にブルゾンの端を掴まれる。
よく見ると、涙目になって首を左右に振っていた。行くなと言うのか?
「門からは出ないよ」

PCと電話を持ち、衛星アンテナを動かさないように注意しながら門まで移動する。
「…………」
幼女が何か言ってるようだったが、面倒なので一緒に抱えた。ほとんど重量を感じない。
庭先に置いてある衛星アンテナから門までは、ケーブルがぎりぎり届いた。
間に雑草が無ければ余裕だったろうが。
「おい、タケ」
門の横にしゃがみ込む。何故か門扉は無くなっていた。
「あいよ」
リュックサックから暗視ゴーグルを取り出し装着する。まさかこんな事に使うとは。
「何が見える?」
追っ手は車三台だ。
「あれは軽トラが三台だな。いま150m前で止まって降りてきた。全部で六人だ」
別の家の庭に止まった。そして荷台から何やら下ろし始めた。
「そいつらは武装してるか?」
ゴーグルをズームアップする。あれは……猟銃?
「ああ、少なくとも三丁の猟銃を持ってる」
更に、荷台の上で、天井に付けた何かを調整し始めた。あれはパラボラアンテナか?
「いきなり突っ込んでこないところを見ると、そいつらはある程度軍事的な訓練を受けて
る様な気がする。危険だな」
荷台の上の奴以外の五人が、その家の玄関辺りを叩き始める。
「離れたところにある家に突入するようだ」
「先ずは拠点の確保か」
「いや、なんか様子が変だ」
まるでその家が目標であるかの様な動きに見え……あっ!
「オニコが接触!」

10:国防省 ◆Oppai.FF16
10/11/16 00:33:14 /SjT2U5z
五人の前に立つオニコ。何かを両腕で抱えているような姿勢だ。何も無いが。
五人は……何やらにこやかにオニコの両手の上から取り上げてる。何も無いが。
そして、美味しそうにそれを食べ始めた? いや、何も無いんだが。
「おいタケ、接触してどうなった?」
小脇に抱えていた幼女が、身をよじって此方を見上げる。問題無いという風な笑顔で。
「ああ、奴ら何か食ってる」
「そして腹ごしらえか。これは本格的に軍事の……」
そして五人が次々に倒れた。
それを見て、荷台に残ってた一人が猟銃をオニコに向けた。何やら叫んでいるようだ。
そして撃った。二発!
「おい、タケ!?」
オニコにはまるで効いてないようだった。
そして虚空から長物を取り出し、その男を薙ぎ払った。
距離的には届かない筈だが、その一撃で最後の一人も倒れた。
あの長物は薙刀か? もしそうだとしても、頭に“異形の”を付けねばならんだろう。
「……!!」
小脇の幼女が急にむずがりだした。降ろしてやる。
「今のは銃声じゃないのか!?」
「あっ!!」
パラボラアンテナが付いている軽トラの運転席あたりが光り、その中から金色の大きなも
のが飛び出してきた。あれは……虎? それも俺の車と同じ位の大きさの。
後ろに飛び退き距離を置くオニコ。彼女にとってもこれはヤバい相手のようだ。
間合いを計る動きになったところで、同じ場所からもう一体虎が出て来た。
「くっ、卑怯な! ……って?」
幼女がブルゾンの端を引っ張っていた。オニコのところへ連れて行け、という風に。
「む……よし、行くか」
詳しい事情は不明だが、今は役場の人間よりも、謎の巨大な虎よりも、この妖二人を助け
なければならない様な気がした。
それは焦燥感にも似た、矜持に根ざした使命感。
「おいタケ、行くって何処へだ? 現状を報告しろ!!」
「ケン、すまんが電話を切るぞ」
ゴーグルを外し、リュックに仕舞う。
「ちょっと待てタケ! それはお前が行かなきゃならない事なのか!?」
義を見てせざるは勇無き也。俺はオニコに“義”を感じたのだ。
「命があったらまた会おう!」
「タケ! おい……」
電話を切った。ケーブルも外した。
「行くぞ」
大事そうにノートPCを抱えた幼女を抱き上げ、車に走り寄る。
ドアを開錠し、幼女と共に乗り込む。
門扉の有無、庭の雑草の有無、此処へ来た時の屋敷の中の料理、今の男たちの振る舞い。
オニコには、人に幻影を見させる能力があるに違いない。だから車のエンジンも。
キーをポケットに入れたまま、スタートボタンが有る辺りを押す。
(見えているのは、以前乗っていた車のダッシュボードのそれだ。今乗っている車は、
スタートボタン方式だからな。俺は幻影を見せられてるだけなんだ)
すると、ボタンに指が触れるか触れないかのあたりで、エンジンがかかる。それは待たせ
過ぎだと言わんばかりのタイミングと轟音で。
それと同時に、ダッシュボードが今のワンボックスのそれに戻る。
幼女はセンターコンソールの上でシートにしがみ付いて、こちらを見上げてる。
準備良しと見て、ギアを一速に入れ車をスピンターンさせる。
エンジンの轟音、デフがロックした金属音、小石がフェンダーの内側を叩く音、舵戻し。

11:国防省 ◆Oppai.FF16
10/11/16 00:34:06 /SjT2U5z
正面100m向こう、道の上に虎の一体。
そのままの動きで一気に三速にシフトアップ、フルスロットル!
轟音と共に加速する車体、目前に迫る虎。
「おらああああっ!!」
一気に虎を撥ね飛ばす!
フロントのアニマルバーが曲がったか、それなりの衝撃が伝わる。
虎はもんどりうって左斜め後ろに飛んでいった。
「どうだっっっっ!」
正面に迫ったオニコをパイロンに見立て、サイドターンで車を止める。
車から飛び降りる。幼女は俺の背中にしがみ付いてる様だ。
「……!!」
何ごとか叫んでるオニコの向こう、残った虎が撥ね飛ばした方の虎に向かう。
そして二体は重なり合い……合体した!
先ほどより一回り大きくなり、細部もよりヤバい形になっていった。
「そんなんアリかよ」
呆れつつ、倒れている人間を見る。
全員気を失ってるだけで命に別状は無い様だ。それどころか何やら幸せそうな表情で。
まあ此方は良いか、と思ったところで軽トラから新たな光が!
「なんだ!?」
またも巨大な生物が。今度は、鷲、か!?
翼長10mになんなんとする巨大なハクトウワシ。羽ばたいてオニコの上空に向かう!
「……! ……!」
背中の幼女が軽トラの運転席を指差す。
ああ、分かった。これ以上お客さんにご登場願うワケにはいかんからな。
軽トラに取り付く。
開けっ放しのドアの外から、案の定有ったノートPCのケーブルを引き抜く。
その最中、幼女が背中から降り、俺のPCを座席に置いた。
ケーブルを繋げという様なそぶりを見せる。必死な顔で。
「大丈夫なのか?」
外ではオニコたちが三すくみの状態だったが、他二体はオニコを最初の標的に決めたよう
だ。間合いと動きが変わっていく。
「……どうなっても知らんぞ」
先程抜いたケーブルを俺のPCに繋ぐ。と同時に幼女がそれに光を与え始めた。
オニコを見る。地上と空中との間合いを計りかねているのか、防戦一方だ。
爪や牙・嘴の攻撃に、長い黒髪は乱れ着物の裾は破れ始めた。
「待ってろ!」
車に戻ろうとした、その時!
「!!!」
丸い光りに包まれた。これは幼女が纏っていたもの、それが膨らんだのか。
桃色、いやそれより更に淡く儚い桜色。
その大きな光の玉が軽トラの運転席と俺を包み、そこから数々のオニコが飛び出していく。
そしてそれがオニコに吸い込まれて行くのと同時に、俺の胸のペンダントが銀色の光を車
に向かって放った。
轟音を上げるエンジン、それは恰も獣の咆哮の様な。
吸い込んだオニコは、角が延び、目の回りに隈取が浮かび、全身に強烈な殺気を纏った。
同時に、轟音を上げ光り輝く車からは、純白の獣が飛び出した!
その体長3m程の獣(いやこれは狗だ)の背中には翼が生え、地上・空中を構わず走りま
わり、他の二体を牽制する。
「くっ、くはっ」
何故だろう、ペンダントから光が放たれると同時に、今まで有った勇気の類が一気に無く
なった様な気分になった。

12:国防省 ◆Oppai.FF16
10/11/16 00:35:07 /SjT2U5z
そんな俺の弱気と対照的に、オニコは空中の狗に飛び乗り、他の二体に対して絶好の位置
をとった。そして―
  一閃!!
着物から舞い散るモミジの葉。オニコが放った一薙ぎで、虎も鷲も十字に断たれた。
その断面が光の粒になり、周囲に舞い散って消えていく。
そして最後には、その体全てが月夜の中に霧散した。
(一振りなのに何故十字の剣戟になるんだ? それも二体に対して同時に)
3m程の高さで停止する狗。
オニコも、まるで其処が地面であるかのような動きで狗から降り立つ。
(それじゃあまるで、時間を操ってるみたいじゃないか!)
不意に周囲が暗くなる。体を包んでいた桜色の光が離れたのだ。
ハッとして軽トラを見る。
そこに居た筈の幼女は、オニコの方にユラユラと飛んでいくところだった。
「あ……終わった、のか?」
桜色の光が無くなると、弱気も勇ましさも無い、普段の自分に戻った。
とりあえず車に近寄る。エンジンは止まっていた。
前部のアニマルバーも大した歪みではなかった。これなら走行に支障は無いだろう。
ホッとして、タイヤを背に座り込んでしまう。
「とりあえず一件落着、で良いのかな?」
中空に集まった二人と一匹(狗は翼を仕舞い、幼女を背に乗せていた)を見上げる。
幼女の放つ桜色の光が、それらを包み込んでいる。
元の姿に戻ったオニコが、先程の様に胸の前で手を重ねて目を閉じた。
(私たちは、同属のこの狗を迎えに来ていたのです)
(しかし、狗の現世の体は謀のモトを持っていました)
(この度は、その諍いに巻き込んでしまい、誠に申し訳ありませんでした。そして)
幼女がオニコの腰にしがみ付く。狗も先程までの険が消え、優しい表情だ。
そして、オニコは目を開け、現実の物に干渉しようとする時の表情になって口を開いた。
それは心のではなく、現実に空気を震わせる本来の意味での声で。

 「ありがとう」

その一言で、辛うじて残っていた気が抜けた。
遠ざかり、月夜の中に消えていく二人と一匹。
それは俺の意識にも似て。
…………
……

「……い、……きな」
んん……
「おい、……な兄ちゃん」
う、なんだ、よ
「って?」
目が覚めた。地べたの上で横になっていた。
上を見上げると、見知らぬおっさんがしゃがみ込んでこちらを見ていた。
長靴にツナギっぽい服、その上にベスト、野球帽。
「おおい課長さーん、兄ちゃんが目ぇ覚ましたよー」
夜が明けていた。5時半頃かな。まだ暗い青空。結構寒い。
腹の上にいつのまにか俺のノートPCが。
それを横に置き、半身を起こす。背中からパラパラと小石が落ちる。
普通、こんなところで寝たら風邪引きは確実だが、何かに包まれていたかの様に、体には
何の問題も無かった。

13:国防省 ◆Oppai.FF16
10/11/16 00:36:42 /SjT2U5z
「お、お早うござい……!」
おっさんが右手に持ってる袋、それって猟銃用のじゃないか!?
「ちょ……!!」
一気に夕べの記憶が蘇る。まさか俺、撃たれる!?
いや、でも、袋に入ってるという事は?
「ああ、すまんすまん。起き抜けに銃突きつけられたら、おっかないわなぁ」
そう言って、近くの軽トラの荷台に銃を置きに行く。
そのおっさんと入れ替わりに、スーツ姿の中年男性がやって来た。
「お早うございます。と言いましても、私どもも今しがた起きたばかりなんですがね」
照れ笑いする中年男性。ズレかけた黒縁のメガネを人差し指で直す。
ピンと来た、こいつは昨日の胡散臭い役場の上司だ。
立ち上がり、とりあえず返礼する。
「お早うございます。どうしてこんなところへ?」
「それはこちらのセリフですよ。昨日こんなところに泊まると聞いたものですから」
「ああ、そうですか」
「ここは嘗て人が住んでいたとは言え、怖いところなんですよ? 今では山犬やイノシシ
それに熊も出たりしますので」
それよりも遥かに怖いものが出たけどな。
「日が暮れても山から下りてこないようなら、迎えに行こう、という事になったのです」
そしてそれは、いま俺の目の前に立っているのだが。
「それはお手数をお掛けして、誠に申し訳ありません」
深く頭を下げる。
「でも何故皆で寝てたのでしょう?」
「さて、それが全く」
犬の事を聞いてこない。それ以前に昨日の胡散臭さが微塵も無い。
「俺たち全員、キツネにでも莫迦されましたかね?」
そうかもしれません、と苦笑いする課長さん。虎たちに操られなければ良い人なんだな。
引き上げる準備をしましょう、お疲れ様です、とお互いに言い合って別れる。
奥の屋敷、思った通り廃墟然としたものに変わっていた。
いや、これが本来の姿なのか。
其処へ向かおうとしたところで、猟師たちの会話が漏れ聞こえる。
「いやほんとだって、本当に鬼が」
「まったまたぁ」
「だから、お前らが鬼に喰われそうになってたから、ぶっ放したんだよ、二発!」
薬莢を取り上げてみせる。
「でもお前も寝てたんじゃないかよ」
「いやそれは」
「ああ、そういやあウチのじさまが言ってたなあ」
「緋ノ元の鬼子(おにご)は時間を喰らう、ってな」
はははと明るく笑う猟師たちにお辞儀をする。彼らも明るく手を振ってくれた。
「あ、そう言えば、ケンに電話しとかなきゃ」
そこへ場違いなプロペラ音が空の向こうから聞こえてきた。
「あれは……V22オスプレー?」
その音は、電話が既に手遅れである事の証だった。
「やべ、在日米軍まで動かしちまったか!」
焦って奥の屋敷へ走った。
衛星電話一式を回収しに。
そして、俺を此処へ来させた奴の手がかりを探す為に。



以上です。乱筆乱文にて大変失礼しました!

14:代理の人 ◆VTtoTsLiVg
10/11/16 00:49:41 uLa0On2D
乙!
次も楽しみにしてます。

15:創る名無しに見る名無し
10/11/16 00:50:34 uLa0On2D
やってもーた

16:国防省 ◆Oppai.FF16
10/11/16 01:09:43 /SjT2U5z
>>14
ありがとうございます。
そして、前スレで励まして下さった皆さん、そしてなにより私の駄文を読んでくださった方
その皆様に前スレでの愚行をお詫び致します。

すみませんでした。そして、ありがとうございました。

17:GoGo! ひのもとさん
10/11/16 01:29:46 iKyjeht0
>>16乙です。
前スレをヒワ×ヤイネタで締めくくった私に較べれば国防省さんはまともな人だと思います。
これはいかんと一念発起したかいがありました。何よりまた国防省さんの作品が読めて嬉しいです。

18:創る名無しに見る名無し
10/11/16 01:31:45 KqbKW4Wo
・・・・あ!そういえば、本スレに貼るリンクテンプレどうしよう?避難所に案があったとおもったんだけど…

19:創る名無しに見る名無し
10/11/16 07:57:48 JlXg11Y6
わわっ迫力のバトルでした
>>11
狗の登場シーンには鳥肌
鬼子さんはやっぱりカッコイイです

20:創る名無しに見る名無し
10/11/16 08:02:22 JlXg11Y6
自分も小話になりますが、挑戦してみました
初めてのSSです.4回投下させてください(最初の一つは設定)

21:小日本のお仕事 設定
10/11/16 08:03:56 JlXg11Y6
鬼子さん魅了されてしまい
SSを書いたことなどなかったのですが、挑戦させていただきました
練習の意味も込めまして、ふと浮かんだ「お話のプロローグ」を投下させていただきます

<おおまかな設定(今回の話には関係ないことも…)>

・日本鬼子
代表設定を自分なりに解釈.いつも丁寧語で話すイメージ

・倭寇犬(やまと こうけん)
鬼子の使い魔であり、育ての親でもある
性別は不明で人間の女性にも男性にも化けられる
だが今は鬼子の使い魔であり必要がないのでめったに化けない
鬼子の使い魔になった経緯はいろいろある
みんなから「寇犬様(こうけんさま)」と呼ばれている

・小日本
とりあえず公式設定は準拠
たいそう鬼子を慕っている.得意な事は家事・雑用全般
とっても真面目な「男の娘」である

・日本猪(ひのもと しし)
小日本の使い魔.運動は苦手な小日本だが彼を乗りこなしている
小日本からは「シシさん」と呼ばれている

・ヒワイドリ
とりあえず公式設定は準拠.すぐに乳の話をしたがる
一方で子供には男女問わずにジェントルマン
小日本からは「ヒワイさん」と呼ばれている

・ヤイカガシ
とりあえず公式設定は準拠
小日本からは「ヤイカさん」と呼ばれている
(今回はでてくるだけ)

・日本鬼人(ひのもと おにひと)←おまけ…自分の妄想の産物です
謎の存在として登場するが種明かしをすると、実は鬼子の生き別れの兄
鬼子が「紅葉」で秋、こにぽんが「桜」で春ならば、鬼人は「紫陽花」で夏のイメージ
武器は日本刀.ビジュアルイメージは『Fate』の佐々木小次郎.でも寡黙な性格
たまに鬼子が危機に陥ると、颯爽と助けに来る
実をいうと鬼子には『月姫』のアルクェイドのような設定を妄想してるんだ
(鬼人さんは今回でてきません.ちょっと妄想垂れ流したかっただけですw)

22:小日本のお仕事 プロローグ1/3
10/11/16 08:17:59 JlXg11Y6
>>21の本編
「秋ですね・・・」
箒で落ち葉を集めながら縁側へ目を向ける.そこには倭寇犬が日向ぼっこをしており、手前には日本猪と遊ぶ小日本の姿があった.
日本猪に跨った小日本は元気に駆け回っている.よく見ると日本猪の尻尾にヤイカガシがくっついており、目を回している
「こにぽん あんなにはしゃいで…」
いつもなら境内の掃除は小日本がやってくれているのだが、最近は悪霊退治で忙しく、神社のことは小日本に任せきりにしてしまった.
遊んでくれればよいものを「鬼子さまがお仕事をなされているのに、わたしだけが遊ぶわけにはまいりません」などと言って、三日ぶりに帰ってきたときには、神社はピカピカに磨かれていた
「寇犬様しあわせそう…」
倭寇犬は目を細めて小日本たちを眺めている.彼からすれば孫たちを見守っている気分なのだろう.ゆっくりと大きな白い尾がゆれている
そよ風が吹いては紅葉をひらひらと踊らせて、朝の木漏れ日はやさしく包むように彼らを照らす
――心から美しいと思った
このようなときは短歌の一つでも歌いたくなる
「紅葉舞う 日が差す子らは うららかに 「ちちのはなしを しようじゃないか」――・・・・・」
素晴らしい…朝だったのだ――この卑猥な鳥さえいなければっ!
「ヒワイドリ・・・あなたは乳の話以外にすることがないのですか?」
「ないな」
即答である
「あるでしょう!あの光景を見てなんとも思わないのですか?」
小日本たちを指さす.とても楽しそうにはしゃいでいる.倭寇犬も嬉しそうだ
「ふむ、こにぽんに乳はないしな.寇犬様が女性に化けてくれr――」
箒で殴ろうとしたが避けられた.素早さだけは一人前である
「こにぽんに手を出そうとしたら退治しますよ!」
純粋な子を卑猥な目つきで見るのは冗談でも止めてほしい・・・でも確かに女性化した倭寇犬の乳は完璧だった
「安心なされよ.我は鬼子さん一筋だ」
今度は箒で斬りつける.おのれ、すばしっこい奴め!
「しかし鬼子さん、着物に下着をつけるのはどうかと思うぞ」
・・・――ハッと気付く. ヒラヒラと靡く白い衣
ヒワイドリの手には、私の下着が握られていた. いつの間に――!?
「いくら人の子の贈り物とはいえ、鬼子さんの乳にこのようなものは不要だ」
手にした下着に頬を擦りつけたり、においを嗅いだりしている
あの変態めっ! 沸々と怒りが込み上げてきた.
「全く…鬼子さんの乳に装飾など、鬼子さんの乳の品を落とすものでしかないというのに」
清々しい朝だったのだ.連日の戦いが終わり、ようやく手に入れた幸福の一時だったのだ.
それを汚すなんて許せない.そろそろ堪忍袋の緒も限界だ
「そんなに飾りが欲しいのならば我を鬼子さんの乳にぃ――!?」
手を伸ばし薙刀を取り出す.妖力によって着物がはためき、集めた落ち葉が舞い上がる
「フフッ・・・あなたには少し徹底的なお仕置きが必要なようですね」
ヒワイドリにニッコリと絶望的な笑みを返す.今日はゆっくり平凡な一日を過ごそうと思っていたが仕方ない.
さて、どうしてくれようか.去勢するのもいいかもしれない
「ま、待て!待つのだ鬼子さん! 我はただ乳の話がしたかっただけd―デバァ!」
****************************************
<あとがき>
鬼子さんの下着は、前に頭巾で角を隠して人里へ降りたときに、助けた女の子に買ってもらったものです.ちなみに一枚しかないので、洗濯中は着けてません

23:小日本のお仕事 プロローグ2/3
10/11/16 08:23:30 JlXg11Y6
>>22の続き

ついつい遊び呆けてしまいました.シシさんとヤイカさんはとっても疲れたみたいで、寇犬様と一緒に眠っています.
鬼子さまは好物のわんこそばを買いに人里へ行かれました.わたしはお留守番です.
その間に家事をしようと思ったのですが、鬼子さまが全てやってしまわれていました.
困りました.これではわたしの立つ瀬がありません.
わたしも鬼子さまの買い物にお付き合いすればよかった・・・ん?
"あれは・・・ヒワイさん?"
神社の屋根いるのはヒワイさんではないでしょうか?
なにやらお顔が変形なされているご様子ですが、あれはヒワイさんで間違いないと思います.わたし目はいいんです.
「ヒワイさーん! そんなところでどうされたのですかー?」
わたしに気付いたヒワイさんはゆっくりこちらに目を向けます.
「こにぽんか・・・すまない…少し、一人にしてくれないか」
わわっ、どうされたのでしょう?
一人にしてくれと言われましても…友人としてそのようなことはできません.
ヒワイさんのお悩みを聞いて差し上げなければっ!
神社の屋根に上がるには、裏手の木から登らないといけません
あまり木のぼりは得意ではないのですが・・・ヒワイさんのためです!
「ヒワイさん、あの…わたしでよろしければ、ご相談にのります」
自然に問いかけようと思ったのですが、少し息がきれてしまいました.ヒワイさんは体育座りで深刻なお顔をされています...
「こにぽん・・・いや、大したことではないのだ」
そのような表情で大したことないといわれましても、信じられません.
「わたしには、話してくださらないのですか?」
わたしなどではお役に立てないのでしょうか?
そういうとヒワイさんは、悲しそうな顔をされました
「こにぽん・・・そんな、泣かないでくれ.だだ少し、鬼子さん(の乳)への想いが届かなかっただけなのだ…」
なっなんと!?それは愛の告白でございますか!?
「三日間、鬼子さんいなかったろう.我も鬼子さん(の乳)を見れなくて寂しかったのだ.
だから今日は少し、思い切って…な」
そして・・・フラれてしまったのでございますか… 鬼子さまはとても、お美しいですから けれど・・・
――なぜでしょう?胸が痛みます
…泣き腫らされたのでしょうか、ヒワイさんのお顔は脹らんでいます...
「だから大したことではない・・・いつものことだ」
大したことない、いつものこと・・・そんな、そんな――!
「鬼子さまへの想いを、そんな言葉で片付けないでください!」
「え?」
だったらなぜ、そんな真剣なお顔をなさっているのですか?わたしは人を想う気持ちは、何よりも美しいと思っています.それはヒワイさんの鬼子さまへの恋心も例外ではありません.
「ひとつ、お聞かせください.ヒワイさんの鬼子さまへの想いは、本物ですか?」
尋ねる必要などありませんでした.けれど・・・そう訊かずには、いられなかったのです.
まっすぐに、ヒワイさんの眼を見つめます.
「こにぽん・・・ああ、我の鬼子さん(の乳)への想いは本物だ(キリッ」
そしてわたし以上にまっすぐに、見つめ返してくれました.
"こ、これほど真摯な眼差しは今まで感じたことがございません!"
わたしの中のドロドロとした想いが、打ち解けていくのを感じました.
なぜだか少し悲しいですが・・・ヒワイさんの想いは、伝わってきました.
でしたらこれは、私の役目です!
「ヒワイさん、あなた様の想いに、私は深く共感致しました」
「なっ!?さすがはこにぽん! お主も所詮男子だったのd「ですからその願い『こひのもと』として成就を願います!」ちょ、いや、こにぽん何を――!?」

~あさきゆめみしこひのもと いろは萌え咲け恋の華!~

「のわぁあああーーー!!」
****************************************
<あとがき>
ヒワイドリは子供の前ではジェントルマンなので、こにぽんの前で「乳」という言葉を使うのを自重していたのですが
それが思わぬ誤解を生むことに・・・  むろん、顔が腫れてるのは鬼子さんに殴られたからです^^

24:小日本のお仕事 プロローグ3/3
10/11/16 08:28:50 JlXg11Y6
>>23の続き

買い物から帰ってきて、最初に目にした光景は、昼寝をしている倭寇犬と、それに寄り添うように眠る日本猪とヤイカガシだった.
自然と笑みがこぼれてくる.起こさないようにそっとしておくことにしよう
少し探してみたが小日本は見当たらなかった.もしかしたらどこかへ出かけたのかもしれない.
せっかくみんなの分のわんこそばを買ってきたのだが、どうやらお茶は一人でするしかないようだ.
「静かですね・・・」
わんこそばを味わいながら
ズズズッっとお茶を啜り
またわんこそばをいただく
たまに和菓子を嗜みつつ
またわんこそばを口にする

これがいつものお茶の時間.他に誰もいないのは寂しいが、しみじみとしてそれもいい.至福のひとときだと思う.
――心から癒される
このようなときは短歌の一つでも歌いたくなる

「わんこそば 食するときは しめやかに 「ちちのはなしを しようじゃないか」――・・・・・」

・・・朝の光景がよみがえる.どうしても私の至福の時間を奪いたいらしい

「またですか…いい加減にしなさいっ ヒワイドりぃいいいい!!?!?」

そこにいたのは――
白髪に赤い髪がトレードマークの、絶世の美青年だった

****************************************
<あとがき>
以上で自分が思いついたプロローグ終了です.読んでくださった方、本当にありがとうございます(´▽`)
最初改行が多すぎて、投下に手間取ってしまいました.初心者ですみません...
こにぽん誕生前祝いのつもりで書こうと思ったのですが、なんだかヒワイドリが主役のようになっちゃった
授業中にふと「こにぽんが鬼子さんとヒワイドリの恋結びしたらどうなるかなー」と妄想して、pixivの擬人化されたヒワイドリを思い浮かべたらつい・・・
でもどうしても続きが思いつきません...遅筆で書く時間もとれそうにないので、これで終わりにします
また続きが思いついたらブログにでも書きとめようと思います

25:歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg
10/11/16 16:03:14 JIbvnC/y
暇だったので書いていたものを投下。内容は少し硬め。
完結したやつではありませんが、まあ宜しくお願いします。
ひとまず二つレス使います。


 フグには毒がある。でも、フグ自身はその毒に気付くことはない。無意識に、その武器を備えていて、無意識のうちに自分の身を守っているんだ。
 ……幸いにしてか、不幸にしてか、僕は自分に毒があることを知っている。でも、僕はフグでもヘビでもない。
 ヤイカガシという、守り神だ。
 神さまと言っても、きっと誰からも崇められない、身分の低い神さまだ。神さまに身分があるのも変かもしれないけど、疫病神というものもいるくらいだし、この国にはありとあらゆる神さまがいる。だから自然と身分が出来てしまうのだ。
 カイカガシ一族は、このボヨボヨした皮膜から強烈な臭いを発し、その疫病神を追い払うことだけを生きるサダメとして、千歳の時を渡ってきた。何代も何代も、ただ疫病神を払うために。
 月読サマや天照サマのように手を振るだけで世界に色を付けるような、そんな素晴らしい力はないけれど、何か湧き出る魔法のようなもので疫病神を撃退しているのだと、ずっと信じて疑わなかった。
 友人のヒワイドリ君が言うには、確かに僕たちの一族には特別な魔法を備えていた。
「お前さ、言うの我慢してたんだが、ぶっちゃけ、マジでくせえ」
 滲み出る粘液からの悪臭。これが、僕の魔法だった。疫病神だけでなく、ありとあらゆるものを退ける、疫病神より厄介な魔法だった。
 急に、ヒワイドリ君のことが怖くなった。
 随分と長い間親しくしていたけど、その間この体臭に耐え続けていたのかと思うと、何か、申し訳ないような、球体の上からするりと滑り落ちるような、そんな感覚が肝だか胸だかを一気に冷却し、川底に突き落とされた気分だった。
 ヒワイドリ君としては何気ない一言だったのかもしれない。
 でも、本当は僕のことを嫌っていて、昔馴染みのよしみで嫌々共に行動をしていたのかもしれない。
 きっとこれは疑心暗鬼だ。ヒワイドリ君はそんなこと思っていない。そう心に言いきかすも、行動は真実を知る前とは明らかに違っていたのは言うまでもないことかもしれない。
 とにかく、もうヒワイドリ君とは面と向かって話せなくなっていた。
 フグには毒がある。その毒を恐れて、誰も近寄らずにフグは孤独を生き、孤独のままその身を海原の糧となるまでを日暮らすのだ。毒が消えるのは、転生を終えたあとなのだ。
 そうして途方に暮れていると、いつも間にか日は山を掠め、空を赤く染めていた。今まで見たことのないほどの赤だったけれど、僕はその情景に心を動かされることはなかった。
 小川に紅葉が浮いていた。赤く染まったそれは、焼け果てる寸前の祀り火のようでもあった。
 紅葉なんて嫌いだ。その命を全うしてもなお、人々を癒し続けるのだから。生けるときはもっての外だ。
 対する僕は一体何者なのだろう? そもそも疫病神を祓う存在でありながら、人々には感謝されやしない。そんな人たちのために、厄を払う必要なんてあるのだろうか?
 昔はそんなことなかった。こんな僕でさえ感謝されていたはずだ。でも、神が形骸化された今となっては、もう僕の存在価値なんて皆無と言っていいのだろう。
 沢の葉は、次第に数を増していき、河のほとりの巌(イワオ)に宿る―ここが彼らの死に場所なのだろう。
 僕も、どうせなら……そう思った矢先だった。
 川上から、静かな歌声が聞こえたのは。
   もみぢ葉の 流れてとまる みなとには 紅(クレナヰ)深き 浪やたつらむ
 その、清静とした旋法を久しく耳にしていなかった。むしろこんなにも短くて歌が成立してしまうのかと驚いてしまったくらいだった。
 懐かしい歌だ。これは確か、古今和歌集の一首で、ちょうど河口に溜まった紅葉を詠ったものだった。

26:歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg
10/11/16 16:04:53 JIbvnC/y
 すぐ上流に、少女がいた。今どき珍しい着物は、朱色をしていて、あの憎たらしい紅葉を服従させ、そのまま服として従わせているようだった。膝を折り曲げて畔にちょこんと座り、白い手はせせらぎにそっと触れ、形の変わる水晶を掬っていた。
 夕陽は零れ落ちた珠玉に集光し、それから美しい魔法に変換されて、僕のアイリスを刺激させる。
 少女は鬼だった。その頭から生える二本の角を見れば瞭然のことだ。元は国ツ神と呼ばれた守り神だったけど、間もなく転落し、人や神を卑しめる存在となってしまった。
 その鬼が、目前にいる。
 本能的な危機を感じ、冷や汗が滲み出てくる。僕たちにとって鬼は天敵だ。疫病神は祓えても、鬼は祓えない。その程度の紙級の神なんだ。
「どうしたのかしら? 浮かない顔したヤイカガシさん」
 その声に肺が小さくなる。
 知らぬ間に僕の天敵はすぐ側にまで近付いていた。もう足はすくんでしまって動けない。いや、鬼を見たときから、とっくに足はすくんでいたのだ。
「く、喰らうなら、早く喰らえ!」
 精一杯強がることしか出来ない。噂では、鬼は嬲りに嬲ってから舐めまわすように口の中で四肢をかき混ぜながら喰らうのだという。死ぬのなら、せめて一瞬で死にたい。
「むぅ、なによ。私そんなにあなたのこと取って食べちゃいそうな顔してるかな?」
「と、当ぜ……」
 言い掛けて、鬼の姿をまじまじと見返す。小さな僕と背を合わせようとしているのか、先程畔にいたときのように屈みこんで、それから小首を傾げて微笑んでいる。
 冷静な第三者から見れば、どう見ても獣のそれではなかった。獣は僕の方だ、僕の中のヒワイドリがこの少女に喰らいつきそうになる。
 少女は角があることを除けば、ごくごく普通の女の子であった。
 ……いや、それは違う。こんなに美しい人は、根気良く探り歩かなくては巡り会うことはないだろう。それも、都会ではなく山奥の村のような田舎で。
 電気も通っていない世界に一つ佇む大屋敷。その中で静かに暮らしている箱入り娘……。そう、この長く真っ直ぐに伸びた黒髪なんてまさに和のお嬢様だ。
「それで、お前みたいなやつがどうしてこんな所にいるんだ」
 話題を変える。これ以上沈黙を続けると何か抗えないものに屈してしまうような気がした。
「私は……ヒマつぶしだね!」
 そんな偉そうに言われると反応に困る。
「ヒマなら適当に人でも襲えばいいんじゃないの?」
「そんな毎度毎度やってたら疲れちゃうよ」
 殺ってる? 平然と残酷なことを言う女だった。
「それに、今だって……」
 少女は言い掛けた言葉を呑み、僕の背後の見た。振り返ると、下流の方から小さな影がこちらへ向かってきているのが見えた。


もし続かせて頂けるのであれば、にこぽん投票が終わったときにでも。

27:歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg
10/11/16 23:32:16 JIbvnC/y
あ、>>25>>26の補足を。
私なりの鬼子、およびその他のキャラ、ストーリーを編んでいますが、どうも「HAKUMEI」の流れを含んだ作品になってしまってます。
というよりも、あの曲を聴いたのちに作品を書くとなると、どうしてもこうなってしまう……。
創作力に乏しいのです、はい……。お許し下さいませ。

28:たこら
10/11/16 23:53:11 dIlmuuWo
 中国でトラブル起こして日本に逃げてきた巨乳美人の女道士を鬼子のライバルにしたら面白いんじゃないか。当然、日本人が嫌いで金が大好きな高飛車キャラ。
 あと、バチカンから派遣された金髪美青年のエクソシスト神父も出して、鬼子と女道士と三角関係になったりして。
 そして、ラスボスは中国四千年の戦乱と虐殺と圧政の歴史を影から操り、人間の憎悪と怨恨の負のエネルギーを喰らって生きてきた魔神女禍にしたら、アニメの一期日本編の次に二期アジア編も作れたりして。
 

29:歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg
10/11/17 00:23:59 Z9OMh3DB
>>28
さの話 必ず世の人 萌えんずと 思へば書くべし あらねば書きそ
(その話で必ず世界中の人を萌えられるだろうと思うなら書くべきだ、そうじゃないなら書かないで欲しい)

30:創る名無しに見る名無し
10/11/17 18:49:59 5foSoAtP
彼女は何処にでも、何時でもそこにいる。
今日は何処かの地方都市の、その郊外の小さな公園のブランコにいる。近くの砂場では4-5人の子供達が砂遊びに夢中で、ママたちも他愛のない井戸端会議に花を咲かせる。
秋晴れの空は蒼く透き通り、秋風が時々に落ち葉を舞わせる。そんな何処にでもある、日常の平和な風景。

彼女は鬼だ。人の心に棲みつく鬼達と闘う。
時々、自問する。何故?自分はどうして鬼に生まれたのだろう?
優しいけれど無頓着な旦那さんに文句を言い、元気で騒々しい子供に手を焼きながら、公園のママ達のように集う。なんでもないけれど、そんな暮らしが出来ない。少し手を伸ばせば届きそうなのに、僅かな違いなのに。
彼女が闘う相手はなんだろう?人の心に棲みつく鬼達とは?何度か問いかけたが、誰も答えてくれない、虚しく響いた問いかけ。

砂場で子供の鳴き声が響いた。他愛のない、おもちゃの取り合い。ママたちも全く気がつかない程度の、何時もの公園の一コマ。秋風が公園に舞い込んで着物の袖を揺らし、立て掛けてあった薙刀の柄に少し触れた。フワッとそのまま流れ落ち、彼女の腕の下に戻った。
その時に子供の泣き声に気がついたママが、近寄ってきて子供を少しだけ叱った「お友達のお人形さんを勝手に取っては駄目でしょう。それはお空を飛ぶ鳥さんなの。あなたみたいに砂に埋めたらモグラさんになってしまうわよ」
叱られた子供は少しだけ不満顔だったが、向のお友達にお人形を突き返した。顔をクシャクシャにして泣いていた子供は、涙目になりながらニッコリと頷いた。

夕日が木漏れ日となって公園を照らし始めた。
三々五々、帰宅する人々の流れが早足で通り過ぎて、もう少しでこの公園も閑散とするだろう、何時もの平和で変化の無い日常。ふと気がつけば遠くでカラスが鳴いている。そろそろ帰ろうと思う。
彼女は強い。少し泣き虫だけれど。
「純真な子供」なんて言葉は彼女の前では空虚だ。彼女が闘う鬼達は誰の心にも棲みついている。いくら闘っても無くすことは出来ないけれど。

こんどあの病院に行ってみよう。ずいぶんと入院している少年の元へ。

31:創る名無しに見る名無し
10/11/17 18:54:30 5foSoAtP
>>30
彼女は何処にでも、何時でもそこにいる。
今日は大きな病院の、小児科の病室にいる。
大きく開け放たれた窓では、秋風がレースのカーテンを揺らしている。

彼女は随分と長く入院している少年のそば、窓際に置かれたベッドの片隅に
腰掛けている。
2人で小さな公園を見下ろして、遊んでい子供たちを眺めていた。

その時、ノック音と共にドアが空いて、あの医院長(少年は鬼瓦と渾名を付
けた)が入ってきた。この病院を支配する独裁的な男。少年の大好きな若い
研修医を、影で虐めているのを知っている。昨夜も廊下の片隅で怒られていた。
誰も何も言えないことをいい事に、カルテで頭をコヅキながら
「そんなことも知らなくて責任を取れるのか!?今週中にあの医学書を読んでこい!」
医院長は意地悪く一週間後に聴く。
「あの件はどうなった?」
しどろもどろのの研修医に向かって
「第3章の第2項、150ページに書いてあるだろう?お前は読んだのか?」
また怒られる。その夜は部屋の片隅で涙ぐんていたのを知っている。

鬼瓦はギョロっとした目で睨みながら、
「今日はちゃんと食事を取ったのか?夜は時間を守って寝ないと駄目だぞ」
いつも子供扱いをして、命令口調でしか話さない。だから、病院中がコイツを嫌って
いて、お医者さんも、看護師さんも、お手伝いさんも皆で、コイツがいなくなれば
良いと願っているんだ。それが僕の担当医だなんて!

少年の嘆きとは裏腹に、この病院は地方での一番人気と、治療実績を誇っていた。
実力のある医者が集まり、患者に対する治療とケアで、他の追従を全く許さない。
少年の両親も、最後の望みを託して、無理に転院させたのだ。医院長は独裁的な
男だったが、目的はシンプルで、たった一つだけである。
「患者さんに最善の治療を施す」
その為であれば全てが二の次となる。医院長は自分が院内で嫌われていることを
知っていた。昔からの慣習や当たり前の常識を、抗議の声にも関わらず全て無視
した。それでも従わない古参の人間も、強権を発動させて辞めさせたが心が傷んだ
誰にも理解されない男。
深夜遅くに帰宅すると、少年の病気に関する論文を、片っ端から読みあさる。
何か新しい治療方法は無いのか?研究は進んでいないのか?
自分でなくても良い、どこかに優秀な専門医がいれば、招聘することも厭わない。

少年はあらゆる事を憎んでいた。眼下に公園が見える病院に転院させた両親。
鬼瓦のような医院長。そして不自由な体に生まれた自分自身。
午後の風が少し強く吹き込んで、彼女の長い黒髪が舞い上がり、立て掛けてあった
薙刀にさらりと触れた。そのまま流れ落ちて、何事もなかったように元へ。
ふと少年は気がついた。そう言えば少しだけ元気になったかも知れない。一日
に一度だけれど、公園を散歩して外の空気を吸えるようになったこと。泣きだった
両親の顔が、心の底から嬉しそうな顔をしたこと。研修医が同期会に行ったら、
他を圧倒する実力が付いていたと喜んでいたこと。

こんどはあの小学校へ行ってみよう。一人暮らしのおばあちゃんの元へ

32:創る名無しに見る名無し
10/11/17 18:59:08 5foSoAtP
>>31
おばあちゃんは急いでいた。
只ひたすらに走る。他から見れば小走りしているとしか見えないが、一言を
伝えるため彼女の元へ全力で急いでいた。
「助けておくれ!」

出会ったのは、田舎の小さな学校だった。おばあちゃんの散歩コースで、何時も
座って一休みするベンチに、先日から先客さんがいるのだ。
「こんな寂しい所で、娘さんが何をなさっているね?」そんなことから会話が
始まった。それから毎日出会って少しだけ会話をすることが、おばあちゃんの
楽しみになっていった。
「それで娘さんは何をなさっているのかね?」
「鬼なんです。私・・・」
「鬼さんなのかね、それはまあご苦労なこってぇ」
別れ際に振り返ると小さな手を振ってくれる。
こんど自宅で、わんこそばでも振舞ってあげるかねぇ。おばあちゃんの小さな日常。

そんな日々が急速に悪化していた。
僅かな誤解が、小さな無理解が、ありえない不運が重なって、人々の憎悪が
炎のように燃え広がる。まるで枯れた山肌を蹂躙するように焼き尽くす。
おばあちゃんは知っていた。同じことの繰り返しであることを。夫を失い、
息子を失い、隣人を失った、あの日が目前に迫っていることに。

鬼さんは約束してくれた。
「何か困ったことがあったら、いつでも相談してくださいね」
他に頼むなんて出来なかった。自分は無力だと思う。それどころか、誰にも出来ない
ことを、あの娘にお願いすることに心が傷んだ。彼女が解決出来る保証など何処にも
ないが、おばあちゃんは一つだけ確信している。
彼女は強い。
巨大な力を持っているとか、そんな次元の話ではなくて、多くの悲しみを知っているが
故の強さ。

息が切れて転んだ。視界が地面まで落ちたが、そのことにしばらく気がつかな
かった。少し体が痛いけれど、路端の草を掴んで立ち上がる。片足を引きずりながら
急ぐが、殆ど歩いているのと変わらない。やっとベンチに座っている彼女が見えて
きた。おばあちゃんの只ならぬ様子で、彼女は全てを悟って立ち上がると、その姿が
全く変わっていた。
目が赤く染まり、着物の袖が乱舞する。それまでの優しい、穏やかな表情で
はない。普通の人であれば恐怖の余り、気絶をしているかも知れない。

「ドン!」
轟音を残して飛び去る。おばあちゃんは、その小さくなる背中に願う。
「人の心に棲む鬼達を退治しておくれ!」


33:創る名無しに見る名無し
10/11/17 19:03:28 5foSoAtP
>>32

彼女は飛ぶ。
国境を目指して猛スピードで、山々をの間を抜け谷を縫いながら、後ろに白い
飛行機雲を引きながら飛ぶ。1kmほど隣。同じように飛んでいる人が山陰から
見えたり見えなかったり。人?違う。擬人化したヒワイドリが、彼女と平行に
飛んでいた。こちらの視線に気がつくと、緊張感の無い顔で笑いかけられた。
スケベで乳の話しかしない。彼女は胸の話をされると少々困るのだ。
それでも知っている。彼が乳の話をするときは、彼女も消化しきれない、少し
イライラした時。彼が乳の話をすると何故か周りも落ち着いて、一件落着する
ことが殆どだ。

ヒワイドリが、少し体をこちらに向けて、上空を指さしている。
仰ぎ見ると、はるかに高い所に一筋の飛行機雲。多分、旅客機が飛ぶような高度
だろうから、動きが遅く見えるが自分たちよりも先行して、同じ速度で飛んでるが、
少し右寄りに進路を変更している。ヤイカガシ?
何時もパ○ツを狙っているとんでもないやつ。少し臭いのも気になるが、何故か
離れずに付きまとう。それでもこんな時は、あの大きな目だけは、頼もしいと思う。
先導してくれるのならと、彼女も同じように進路を変更。

眼下の集落を飛び去るときに気がつく。人々から憎悪が流れだし、黒い霧のように
集まり、国境へと向かっていることを。大河が一滴の水滴から始まるように、少し
ずつ集まって小川になり、支流となり、大河となって流れていく憎しみの濁流。
「人の心に棲む鬼達」
目を背けたい現実。彼女の頬に一筋の涙が零れたその時、背後邪悪な気配を感じて
身構る。胸に手が伸びて触られた・・・いつの間にかヤイカガシがすぐ隣を飛んで
おり、人差し指を立てながら追い越していく。何か言ったが聞こえない。そのまま
前に。文句の一つも言ってやろうと、口を開いた次の瞬間
「ドンッ!」
強烈な爆発音と共に、辺りは真っ白になり吹き飛ばされた。地面に叩きつけられそうに
なったが、寸前で高度を取り戻して振り返ると、ヤイカガシが猛烈な闘いに入っていた。
彼女はその場を急速に離れて先を急ぐが、苦笑いをするしかない。
「一つ借り」

34:歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg
10/11/17 23:42:21 Z9OMh3DB
「こにぽんしゅぎ! 雅」
一、
編む編むよ 恋ひの生糸を 紡ぎたり あむあむ柿を 口に頬張り
日が昇り すずめ鳴くなる つとめての いづれか遊ばん 鳥と魚とを

「請ひて言ふ 焼くことなかれ 小日本 乳の話を しようじゃないか」
「我もまた 話をせんと 思いたし 乞いて願わば 嗅がん妹髪(イモガミ)」

「鳥魚や 御無沙汰なりと 言い侍らん 乳なる話 莫斯科(モスクワ)に言へ
嗅ぎしがと 思えば花の 都なる 巴里(パリ)へ飛ばさん 我が愛刀」

いづれから ほのかに香る 時過ぐる 無常のつねも けしうはあらず
粗茶を飲み 渋柿食べて 鐘が鳴る 渡る烏(カラス)の やまびこ聞きつつ

二、
御祓い 助け終わりつ 我が袖は ふらねど散る散る たまむすぶ雨
ねびし身の ねねとも劣らぬ さまなれど わらべごころに 湯に入らまほし

「駆けつけり 湯浴みをすなる 音を聞き 大なり小なり これ褒美なり」
「こはあらず 悟り開けよ ヤイカガシ 唯一無二の 胸の道行け」

「鳥魚(トリウオ)や 御無沙汰なりと 言い侍らん 欧州旅行 逝くは宿世か
選ぶとき 刹那のときを 授くべし 閻魔惰天使 共に許さじ」

縁結び恋ひの素して手を合はし 今日も明日も 幸せの素
我がありか いふもさらなり 膝のうへ さるべき場所よ そなた失すまで

35:歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg
10/11/17 23:43:04 Z9OMh3DB
「こにぽんしゅぎ! 今時」
1.
恋の生糸を編む編む お庭の柿もあむあむ
今日はどっちで遊ぼかな? 鳥さんと魚さん

「おいおい頼むぜ小日本 俺は乳の話だけでいい」
「僕は鬼子たんと話したいだけ あわよくばクンカクンカ髪の毛」

「あらあら二人とも御無沙汰 乳の話はモスクワで
何かを嗅ぐならパリの街 連れてってあげるわ 薙刀で」

いづれからまったりサイクル いつもの日々を暮らしてる
お茶飲んで、柿食べて 遠くのカラス啼く夕暮れ

2.
お仕事終わって疲れた いっぱい汗かいちゃったね
お風呂入ろうねぇねぇと ちょっとだけあまえたい

「風呂と聞いてきますた(ガラッ!) うはwこれまじでご褒美だろwおいw」
「まだまだ悟(ワ)かっとらんなヤイカガシ 乳は数じゃねえデカさなんだ!」

「あらあら二人とも御無沙汰 欧州旅行逝き足りない?
閻魔かサタンに会いたいの? 選ぶ時間一秒あげるわ」

縁結び恋ひ結ぶ合掌 今日も幸せ訪れて
ねねと一緒、膝の上 ここが一番好きな場所

36:創る名無しに見る名無し
10/11/18 00:13:33 E3O3TJWi
>>34>>35
歌麻呂さん最高です。
自分は以下を書きましたが、小日本を書くときはモチーフにさせて下さい。
スレリンク(mitemite板:30-33番)

ノシ

37:創る名無しに見る名無し
10/11/18 00:55:00 hzEAQS6L
生まれて初めて同人SSを読んでみた(>>25->>33
正直同人SSなんてのは「絵の練習するのはメンドクサイ、音楽なんて意味がわからん、造形なんてもってのほか」と、
自らの才能を開花させようとひとかけらの努力すらしない、ズボラで無能な「自称クリエイター共」の逃げ場だと思ってた。

しかしいざ読んでみると意外や意外、>>25-26は気になる点がいくつかあるものの、割と読める文章だった。
いくつかの表現がもったいない点、韻を踏まない書き方で損をしてる気がするけど(たぶん推敲の際に「文章」ではなく「言葉」単位で修正したんじゃないかな?)
その中でも 「その声に肺が小さくなる。」 って表現が一番気になった。
普通に考えると、肺が小さくなる>息を吐き出す>安堵している表現?って感じでしっくりこない
「息を飲む」は美しい物を見た際や驚いた様子を表すけど、この場合(声だけに反応して、しかも逃げようのない恐怖が間際に存在する状態だよね?)は
普通に「呼吸が止まった」とかチープだけど「心臓を鷲掴みにされた」でいいんじゃない?
文章の視点がハッキリしてるから、後は多くの人に読んでもらってリテイクしていけばいい物書きさんになりそうで楽しみ。

それに比べて>>30-33はラノベ世代なのかな?物書きってのを完全に舐めた、いかにも「自称クリエイター」な文章と感じた。
>>25-26に比べて「文章」の体をなしてなく、おそらく推敲すらまともにしてないと思われる(しててコレなら文才ないよ・・・)
誰視点での文章なのか(これが一番問題)、基本的に「主語」がない、所々で使われるムダに小難しい表現、「文章」としてではなくて「言葉と言葉」を無理に繋げた書き方、
一切の韻を否定した文章と(これは些細なことだけど)半端な位置での改行
小説なんかでは「最初の三行で読者を惹き付けなきゃダメ」って言われるけど(ラノベみたいなのはしらん。普通の文学小説とかの話)、
最初の一行目でいきなり韻をハズして損をしてる。
>>30:ムダな改行がないのに必要な「台詞行」の改行がされてないのが謎。描写で同じ行にいきなり違う物の描写が入ってるのも謎
>>31:ベッドに腰掛けて外の公園を見下ろせる構造の建物が謎。致命的に視点がコロコロ変わるのも謎。「誰が」が抜けてる所為で文章がイミフ
>>32:いきなり口語体スタート。唐突に老婆が凄惨な過去を背負った予知能力者になってのが謎。鬼子もテレパシストすぎて謎
>>33:国境ってどこの国の設定?飛行機じゃないのに飛行機雲?コミカルにしたいのかシリアルにしたいのか大迷走
とはいえ、脳内での設定を文章に起こせる程度にはなってるんだし、あとは読書量を増やして表現手法や文体を覚えて行けば・・・なんとかなるかもしれない?

条件反射でアンチだ上から目線だのと言わずに、冷静になって指摘した点を見直して欲しい
ただ「叩いてる」のではなく、具体例を出して指摘している意味を理解してもらえれば幸い
>>30-33は正確に理解するために何度も読み直すハメになった分、誰よりも俺は読んでると思うわw

38:歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg
10/11/18 01:17:08 Yfiar7H5
感涙。

>>36
ありがとうございます。
そちらの文章は詩的な文章ですね。いいなぁ。
あとは、もう少し読者のことを考えながら、
バランスのいい描写を心がけるともっともっとよくなるんじゃないかなあ……?

>>37
まさか、こんな場所で真正面から批評を頂くとは……!
なるほど「韻」ですか。今までほとんど意識せずに書いてました。
推敲もかなり狭い視点で、かつ手を抜いた状態のまま上げてしまったと思います。
とても参考になる意見、ありがとうございました。

39:創る名無しに見る名無し
10/11/18 01:18:51 E3O3TJWi
>>37
>>30-33を書いた者だが、真剣な批評をありがとう。
正直に言って、SSスレを舐めていたとしか思えなかっただろうが、サラサラと2時間程度で書いたので、
その通りですと言うしか無いw
続きは批評を胸に描写をするので、その時は遠慮無く論評をヨロ。

40:創る名無しに見る名無し
10/11/18 01:35:33 E3O3TJWi
>>37>>38
>>30-33を書き直したい。
ちょっと忙しくて時間は取れないから、時間は掛かるけれど覗いて欲しい。
これだけ真面目な批評家が居るのだからチャンス。


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