10/11/16 00:34:06 /SjT2U5z
正面100m向こう、道の上に虎の一体。
そのままの動きで一気に三速にシフトアップ、フルスロットル!
轟音と共に加速する車体、目前に迫る虎。
「おらああああっ!!」
一気に虎を撥ね飛ばす!
フロントのアニマルバーが曲がったか、それなりの衝撃が伝わる。
虎はもんどりうって左斜め後ろに飛んでいった。
「どうだっっっっ!」
正面に迫ったオニコをパイロンに見立て、サイドターンで車を止める。
車から飛び降りる。幼女は俺の背中にしがみ付いてる様だ。
「……!!」
何ごとか叫んでるオニコの向こう、残った虎が撥ね飛ばした方の虎に向かう。
そして二体は重なり合い……合体した!
先ほどより一回り大きくなり、細部もよりヤバい形になっていった。
「そんなんアリかよ」
呆れつつ、倒れている人間を見る。
全員気を失ってるだけで命に別状は無い様だ。それどころか何やら幸せそうな表情で。
まあ此方は良いか、と思ったところで軽トラから新たな光が!
「なんだ!?」
またも巨大な生物が。今度は、鷲、か!?
翼長10mになんなんとする巨大なハクトウワシ。羽ばたいてオニコの上空に向かう!
「……! ……!」
背中の幼女が軽トラの運転席を指差す。
ああ、分かった。これ以上お客さんにご登場願うワケにはいかんからな。
軽トラに取り付く。
開けっ放しのドアの外から、案の定有ったノートPCのケーブルを引き抜く。
その最中、幼女が背中から降り、俺のPCを座席に置いた。
ケーブルを繋げという様なそぶりを見せる。必死な顔で。
「大丈夫なのか?」
外ではオニコたちが三すくみの状態だったが、他二体はオニコを最初の標的に決めたよう
だ。間合いと動きが変わっていく。
「……どうなっても知らんぞ」
先程抜いたケーブルを俺のPCに繋ぐ。と同時に幼女がそれに光を与え始めた。
オニコを見る。地上と空中との間合いを計りかねているのか、防戦一方だ。
爪や牙・嘴の攻撃に、長い黒髪は乱れ着物の裾は破れ始めた。
「待ってろ!」
車に戻ろうとした、その時!
「!!!」
丸い光りに包まれた。これは幼女が纏っていたもの、それが膨らんだのか。
桃色、いやそれより更に淡く儚い桜色。
その大きな光の玉が軽トラの運転席と俺を包み、そこから数々のオニコが飛び出していく。
そしてそれがオニコに吸い込まれて行くのと同時に、俺の胸のペンダントが銀色の光を車
に向かって放った。
轟音を上げるエンジン、それは恰も獣の咆哮の様な。
吸い込んだオニコは、角が延び、目の回りに隈取が浮かび、全身に強烈な殺気を纏った。
同時に、轟音を上げ光り輝く車からは、純白の獣が飛び出した!
その体長3m程の獣(いやこれは狗だ)の背中には翼が生え、地上・空中を構わず走りま
わり、他の二体を牽制する。
「くっ、くはっ」
何故だろう、ペンダントから光が放たれると同時に、今まで有った勇気の類が一気に無く
なった様な気分になった。