11/09/19 17:53:07.69 /Nkvt7La
「……何?」
了一は足を止め、振り向いた。
ポリポリと棒状のお菓子をかじりながらハカセは言葉を続ける。
「キミの身体、あちこちに傷があるけど、背中のが特に大きい感じだね?ボクの推測が間違ってなければ、
仲間の裏切りか……そうでなければ、背後からの攻撃・奇襲を受けたダメージが大きいんじゃないかな?」
「……………」
「それが原因で戦列が崩れたり、仲間がキミを庇って死亡……とか?まあ、推測にすぎないっかんね」
図星ではない。が、あながち外れてもいなかった。了一は戦士としてはその全てが平均的な兵士の能力を
軽く凌駕する。しかし、彼の居る戦場が常に桁外れであるため、ハカセの言ったような状況に陥ることも多かった。
─それで仲間を失う事も。
「だからといってこの装甲服を着るのとは─」
「パワーアシスト機能はついてないよ?忍びのスピードにはどんな装置もついて行けないから逆に足枷になるしね。
ちょい重いけど、装甲も極力軽量化してあるし動きの邪魔は極力しないように設計してるよん。それでも不満?」
了一の文句を遮るように言葉を被せ、ハカセは解説をいいきった。
「?! 今、何と?」
了一が絶句する。ハカセは一瞬、アレ?何か間違った事いったかな?といった表情を見せたが─
「ん?ああ……忍部隊、"剛愚溜"の生き残りが了くんだってこと?その位、調べるのは難しくないよ?」
アッサリ言い切った。そこに志乃美が釈然としないといった感じで割り込んだ。
「えっと、じゃあ、このスーツは……何の為に?」
「うん。防具と、何より情報系の補助機能と、了一くん自身のデータ収集機能が主かな。コイツの機能は」
コンコンと装甲服の胸の部分を軽く叩きながらハカセは説明を続けた。
「コホン。実はね、もう少ししたら、鬼神に対抗できる巨大ロボ、日本鬼神が完成しそうなんだけどね。
それを動かすソフトウエアがまだ未完成でさ。いや。ソフトはできているんだけど、実戦データで調整しないと
まず役に立たないからね。目下、最も激しい前線に居る君達にデータ収集の手伝いをして欲しいって理由なんだ」
「それが完成したら我ら傭兵はお払い箱か」
さっきの驚きから回復したのか、了一がいつもの平坦な声で聞き返した。
「ん~とね。そう簡単にはいかないと思うよ。鬼神は まだまだ改良が必要だろうしね。
それで君たちには、そのままパイロットになってもらうことになるだろうね。
で、この日本鬼神のプロトタイプに搭乗するのは一応、契約の範囲内だと思うんだけどどうかな?
報酬もそれなりに出るよう話もつけてあるし、生身で戦うより、危険度は下がると思うよ?」
了一は暫く黙考していた。
「ん~と、まあ、すぐに答えを欲しいって訳でもないし、何ならこのまま同じ条件で仕事を続けるのも─」
「いいだろう。話を受けよう」
ハカセの提案を遮り、了一は返事をした。
「あら。ずいぶんとアッサリ決めちゃうんだ。助かるけど」
「戦では決断の速さが生死を分かつ。だがひとつだけ言わせてくれ」
「ん?いいよ。それなりに融通は聞かせられると思うよ?大抵のご要望ならね」
「『おねーさん』はやめろ」
「……!、タハハ、バレちゃってたか。キミにはかなわないな~さっきのお返しかい?」
「えっ、えっ?!一体、何の事?」
志乃美だけが状況を飲み込めずにいた。
─この数カ月後、鬼達の間で戦慄とともに人間に味方する鬼神、日本鬼神の名が知れ渡ることになる。
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