11/09/19 17:52:05.26 /Nkvt7La
むき出しにされた了一の身体は鍛えられ、肉食獣を思わせる体?にいくつもの激戦の傷跡が縦横に走っていた。
「んーー……武器を手放さないのはともかくヘルメットを外さないのはなんでか聞きたいけど、ま、いっか」
そう言うと、ハカセは白衣と赤いドレスとフリフリを翻しながら、了一の周りをグルグル周り、身体のあちこちを
ペン型入力端末の尻でつつき始めた。了一は特に反応はしない。
「……ん~よく鍛えられているね~~でも、この体格で鬼神と対等に渡り合うのは物理的に
不可能な気がするんだけど……なんかオカルトでブーストでもしている?」
ポリポリと棒状のお菓子をかじりながら、了一のあちらこちらをつつきながら質問をする。
「……さあな。よくわからん」
「ん。そっか。お疲れ、もう服着てもいいよん」
今のでも検査だったんだろう。手元のタブレットに何回も数式やら数値を入力しながら、次の指示を続ける。
「んじゃ、お次はその武器だけど……」
「断る」
衣類と鎧を身に付けながら、了一はにべもなく答えた。
「ちょ、ちょっと!了一!相手が誰かわかって言ってるの?!」
志乃美が慌ててたしなめに入った。
「まあまあ、志乃っちは黙ってて。貸せとか、分解させてっていうんじゃないよ。
ちょっとあれをぶった切ってほしいだけだよん」
新しく開封したお菓子を口に咥え、苦笑気味にペンで示した。
その先にあったのは硬そうなキューブ状の合金の塊だった。両脇には得体の知れない機械が起立していて、その間に
鈍い光を放つ立方体の合金が台の上に鎮座していた。本来は刀なんぞで切れたりするような代物ではない。
ス コ ン
次の瞬間、間の抜けた音が響いた。
「これでいいか」
志乃美が了一を見た時には既に刀をしまう所で、例の合金はアッサリ両断されていた。
「おうおう、すっごいね~~、こんなにアッサリ切っちゃうなんて。これウチで開発した最も硬い合金なのにさ~」
まるで面白いものを見て喜ぶ子供のようにハカセは目をキラキラさせて見入っていた。
ついで、手元のタブレットに視線を落とす。
「んむんむ、質量は従来の刀に比べ5倍……硬度もケタ違いに硬い……と、一体どうやって入手した武器なのかな?」
測定機─合金の両脇に設置されていた─から送られてくる情報を分析しながら、さらに質問を続けるハカセ。
「昔、友が作ってくれた……奴ら鬼神の残骸のうち、最も頑丈な部品を削り出し、研磨して磨き上げ作ったそうだ」
「ほ~~そりゃ興味深いね~鬼神の残骸はウチのラボにも回収してあるけど、まだまだ未知数な所があるからね~」
考え事をする時のクセなのだろう。考え込みながらポリポリとお菓子をかじる。食べるペースが早くなったようだ。
情報や数式を入力しては菓子を口に運び、ドレスの胸元に落ちた食べかすを払い落としては端末を操作する。
「用が済んだなら、帰るぞ」
データに集中し、動く気配がなくなったハカセにそう声をかけ帰ろうとするが……
「ああ、ちょっちまって。了くんにはあと一つだけ用があるのよね」
情報端末タブレットから顔を上げ、ハカセは了一を引き止めた。そして、部屋の片隅につかつかと歩み寄った。
そこには何か大きなものが立てかけられてあって、大きな布で覆われている。
「これから、戦闘と戦闘訓練の時は常にこいつを装着してほしいのさ」
そう言うとバサッと布を取り払った。
「!これは……パワードスーツ?」
志乃美が驚きもあらわに呟いた。パワードスーツ。使用者の敏捷さ、パワー、スピード、耐久力を飛躍的に
向上させる機甲鎧。だが、同時に維持費、開発費も桁外れにかかる上、一兵士にしか対象にできないため、
鬼神が跳梁跋扈するようになってからは運用するのは難しいと無用になった代物だった。
それは丁度了一のサイズに合わせて大きさで、青い装甲が鈍い光を照り返していた。ヘルメットはないものの、
それは肩から下、全身を覆うプロテクターにもみえた。それが起立する状態で台に固定されていた。
だが。
「いらぬ。余計な世話だ。帰るぞ」
すげなく言い捨てると帰ろうとする。
「ん~いいのかな~?
志乃美ちゃんを死なせたくなかったら、おねーさんの言うこと、聞いた方がいいんじゃないかな~?」