10/11/02 00:40:49 Ua9P6gf6
※エロ・18禁等の作品はお絵描き・創作板、エロパロ板へお願いします。
板に関することは自治スレッドまでどうぞ。
8:創る名無しに見る名無し
10/11/03 12:40:18 INn0owsM
URLリンク(ip.tosp.co.jp)
9:創る名無しに見る名無し
10/11/03 13:00:34 x3m+3eiH
題材がいいだけに文体や描写が見合ってないのが残念。
丁寧で細かい描写をすることによってもう少し違った伝え方が出来るはず。
内容的にこのオチはそれほど陳腐には感じられなかった。
如何せん人生や友情を語るレベルに到達しているとは思えないのが最大の欠点だろうか
これは作者の経験や思考を深めることによってある程度向上できるものだから、是非頑張って欲しい。
すくなくとも現実世界とのメタファーで語られなければ、比喩は意味を成さない。
おうさまとおしろ、という位置づけを含めて幼児向け御伽の教訓話を読まされているような気分に駆られた。
一言で言うと「展開がご都合主義」
全ての作品の展開はご都合主義だが、それと悟られてはいけない
10:鳥たちは土の中で飛ぶ
10/11/03 21:37:58 BSQmsN3b
学校から帰ってきたら、庭で飼っていたニワトリが食われていたなんて話は、よくある話だ。
Ⅰ 子供たちが屠殺ごっこをした話
通学路の途中にある養鶏所。匂いがきつくてたまらない。アホみたいな顔をしたニワトリがこっちを見ている。
何考えてんだ。鳥頭だから何も考えてないか。
しかしまぁ、こんなに臭くて狭くてあっつい場所に押し込められて。
「にがしてやろうか」
「だめだよ、そんなことしちゃ。養鶏所のおじさん困っちゃうよ」
いつも、家まで迎えに来る少年Aがわたしの赤いランドセルを引っ張ってくる。
オマエが迎えに来なければわたしは学校に行かなくていいのに。残念。
「冗談に決まってんだろ」
「……よかった。もう、早く行こうよ。遅刻する」
わたしは、まぁ、とぼとぼと少年Aの後ろについて行く。乾燥した土の感触。
もう一年近くアスファルトの上を歩いてない。ここはド田舎だ。見渡す限りの水田。まばらに見える民家。
雲ひとつない青空に蝉がミンミン泣いている。死ぬのがこわいのか。
「あんさぁ、オマエ唐揚げすき?」
「好きだけど?あ、そういえば今日の給食唐揚げだよね。え、あげないよ」
「昔、学校から帰ってきたら飼ってたニワトリ爺ちゃんに食われてたんだ」
「へえ……それは残念だね」
「突然いなくなってからびっくりしたよ。まぁ、オスだったからあんま旨くなかったんだと。
オスの肉は旨くねぇから、ふつう、雛の時点でバケツの中で踏みつぶされて殺されるんだって。
まぁメスだって最終的に人間に食われて死んじゃうんだけど。オマエならどっちがいい?」
「……何でそんな気持ちの悪いこと言うの。もうボク唐揚げ食べられなくなっちゃったじゃないか」
少年Aが真っ青な顔でこっちを見つめてくる。
じゃあオマエはなんで毎回こんな気持ちのわるいことしか話してこないわたしをかまうんだ。
それが、おかしくてならないよ。
「じゃあ、わたしが食ってやるよ。よかったな」
「やっぱりとるつもりだったんじゃないか!もう!」
そんなことを言いながら、行きたくもない学校に行ったのだった。
転入してからここ一年、まともにノートをとったことが無い。正直学校に来ている意味はないと思う。
けれど、あいつは来た方がいいと言う。転入してから、しばらく来なかったわたしを毎日迎えに来るようになった。
そして、聞いてもつまらないだろうわたしの話をせがんでくる。何なんだ。
ほんとうは、家から近いくせに。なにやってんだ。
わたしはオマエのことがよくわからない。
11:鳥たちは土の中で飛ぶ
10/11/03 21:41:23 BSQmsN3b
Ⅱ 銀貨
夜、むきだしの電球一個が天井から我が家を頼りなさげに灯している。
床の間の障子は開きっぱなしにしているから、夜風が涼しい。 蝉と鈴虫がわたしのために演奏してくれている。
何の手入もしていない草がぼうぼうの庭は、彼らにとってさぞかし楽園であろう。 明日、全部刈ってやろう。 そうしよう。
「また卵かけご飯かよ」
かつて父と呼んでいた現在虫以下の肉の塊が襖を開けてやってきた。 わたしと似た顔のわたしと似たような体格の人間。もう四十がくるというのに子供のようだ。 何もしないから、きっとこの男の手の方がきれいであろう。
何もしないくせに腹だけは空くんですね。 実におもしろいです。
「働かねぇくせに文句言うなよ。これが一番栄養とれんだ」
眉間に皺が寄っている。 本当のことなのに。 無視してわたしは箸をすすめる。
口の中にねっとりとしたゾル状の物質が広がるのがわかる。 正直、食べ過ぎて味がしない。
いや、何を食べてもそんなに何も感じないけれど。 父と呼んでいたものが私の前に座って、無言で食べ始める。
泣きそうな顔すんなよ。 かわいいなあ。
「母さんから手紙が来たよ」
「……僕には関係ない」
「わたしにこっちにこないかだって。再婚して今東京にいるって。幸せなんだって」
「かってにすれば」
そう言いながら、剥げ散らかした畳をむしるその手は何なのか。
この一日中眠っている男は、わたしがいなくなったら確実に死に至るだろう。 ふあんなの?わかりやすいね。
「わたしがいなくなったらこまるくせに」
「……」
こどもみたいに。にらむなよ。 ああ、手ぇ怪我したじゃないか。 かわいそうに。
「わたしがいなくなってもいいのか?ちゃんと言わないとわからないよ」
「……」
「……」
「…… いやだ」
かすれた、ちいさな声。 ずっと声も出してないもんなあ。
「嫌なんだ?」
「……いやだ」
男はしくしく泣きはじめた。 こうして毎日毎日この男を追い詰めるのが、楽しすぎて泣けてくる。
手をひっぱって、ろくすっぽ洗ってない煎餅布団に連れて行った。
そういえば、身長があまりかわらなくなったなあと思う。女は成長期が来るのが早いらしい。
わたしも来年は中学生だ。いつまでこの男をみてあげられるのだろう。
頭をなでてあげると、気持ち良さそうにすやすや眠りについた。 わたしも早く寝なければ。
わたしにはやらなければならないことがあるのだ。いきるために。
床の間を片付けた後、ひきっぱなしの自分の布団にごろんと横になる。
何もせず死んでいく鳥と食べられる運命の鳥と考えすぎて何もできなくなってしまった大人。
だれがいちばんかわいそうだろうか。
12:鳥たちは土の中で飛ぶ
10/11/03 21:42:08 BSQmsN3b
Ⅲ 疫病
早朝、まだ真っ暗な、夜のおわりごろにわたしは自転車で新聞配達に行く。
誰もいない道を、ブレーキすらかからないほど速く、速く、抜けるのは最高だ。
いつもの通学路に差し掛かり、養鶏所の前へ。ひとの気配がした。
ひとが、こわれた螺子巻き式のおもちゃみたいに、なんども、なんども、同じ場所を歩いている。
いつも卵をわけてくれる養鶏所のおじさんだった。
「どうしたんですか?」
「― ああ、先生の家の子か。先生の病状はどうだい?」
「父は相変わらずです。でも、空気のいい自然のいっぱいあるこの村に来れてだいぶ良くなっていると思います」
「そうかい。君はえらいね。今日も卵をわけてあげたいんだけどねえ……」
「……」
「昨日ねえ、役場の人が来てねえ、この鳥たち、みんな病気でころさなきゃいけないんだって」
「……かなしいんですか」
「へんな話をしてしまってごめんね。誰かに話したくってねえ。悔しくて……惜しくて……でも涙が出なくて……実感がまだないんだよ」
「どうやってころすんですか」
「土の中に埋めるんだよ。今日は穴を掘らないといけないなあ」
そう言って、また無言で歩き始める。
養鶏所のおじさんの顔がスーパーで売られている安い鶏肉みたいに、かたく、つめたくなっていた。
朝、学校に行くと飼育小屋に黄色いテープが張られていた。『近づかないように!』と書かれたダンボールが付いている。
ニワトリたちは相変わらず、アホみたいな顔して何も考えれないみたいだった。
「なにこれ」
「ああ、病気らしいよ。近くの養鶏所の鳥と一緒にころすんだって」
さも興味が無いように少年Aは目を手元の本に戻した。
ちょっと冷たいところがあるよなコイツ。
「ふーん」
なにかをするために生まれてきたのに。
なにもしないまま死んでしまうのか。
どうでもいいけど。
13:鳥たちは土の中で飛ぶ
10/11/03 21:49:13 BSQmsN3b
Ⅳ 紅い林檎
夜、母親から電話を受け取ると、それは、ボクがいつも迎えに行っている女の子からだった。
普段めったに電話なんか掛けてこないのでうれしい。今度はどんなおもしろいことを言うのだろうか。
『いまヒマ?』「ひまだけど、なに?」
『いまから、ガムテープと懐中電灯持って学校に来い』「ええ?今から?」
『八時に集合。じゃあな』
―ガチャッ!―ツーツー……
彼女はいつも独善的で自分勝手だ。全部自分が正しいとでも思っているのだろうか。
そういうところがおもしろすぎてたまらない。さぁ、どうやって家を抜けようか。楽しくなってきた。
寝るふりをして、布団の中に服をいっぱい入れて、それを身代りに、ボクは堂々と玄関から家を出た。
玄関の前の磨りガラスの戸から両親がテレビドラマを見ているのがわかる。一時間は余裕がありそうだ。
布団の中の服を戻すのが面倒だが、これから起こるであろうこと考えると、どうでもよくなる。はやく彼女に会いたい。
彼女の家に寄らなければ、ボクの家から学校までは五分とかからないので、あっというまに校門の前へ着いた。
おおきな麻袋を持った少女が、街頭の下にぽつんと立っていた。
「手伝え」
それだけ言って、校門をよじのぼり、中へどんどん進んでいく。校門は一メートルも無いので正直意味が無い。
ボクも彼女にならってそれを越えた。夜の校舎はやたら暗くおおきく見えて、こわい。
去年村の公民館で『学校の怪談』という映画が上映されて以来、ボクは怖いものが苦手になった。
中に進むと、彼女は飼育小屋の前でじっとしゃがんでニワトリを見つめている。
「なに?どうするの」「……」
最近、彼女は養鶏所の前のニワトリを見つめていたり、どうしようもない仕方ないことを言ったり、何かあったのだろうか。
「にがしてやるんだ」
そう言って、飼育小屋の安っぽい錠前の留め具の穴に近くにあった箒の柄をつっこみ、梃子の原理で引き抜いた。
「この袋にニワトリを入れろ、全部だ」 「むっ無理!無理だよ」
「男だろ、ニワトリくらいで何びびってんだよ」 「だって、こいつら近所の赤ちゃんの目ぇ突いたってウワサ聞いたし」
「……じゃあいい、オマエはこの袋持ってろ。放すなよ」
動きまわるニワトリがこわくて、ボクは見ているだけで、結局、彼女ひとりで全部捕まえた。
もごもご動いている麻袋がこわい。くるしそうだ。でも、彼女はきっと自分が正しいと信じている。
「ねぇ、袋持ってよ。これ、動き回って気持ち悪いんだけど」
「行くぞ」
そう言うと、彼女はボクの手から袋を奪って校舎の方へどんどん進んでいく。
「ええ?校舎に入るの?良くないよ」 「ガムテープ持ってきたか?」
「持ってきたけど……」
はい、と彼女に渡すと、彼女はおもむろに窓ガラスに張り付け、箒の柄でゴン!と殴り割った。
音はそれほど響いていない。ねぇキミ、どこでそんなこと覚えてきたの。
時折見受けられる彼女の不可解な行動にボクは驚かされてばかりだ。
「これでオマエも共犯者だ。あきらめろ」 「ええー」
「うるせえなあ。早く行くぞ」
怪我しないように開けた穴に腕を突っ込み鍵をあけ、堂々と侵入成功。真っ暗で何か出そう。もう嫌だ。
でも、わくわくしている自分がいる。
「懐中電灯は?」 「あ、忘れた」
「このばか」
14:鳥たちは土の中で飛ぶ
10/11/03 21:51:38 BSQmsN3b
ぽかりと殴られた。痛い。でもキミだって麻袋しか持ってきてないじゃんか。
真っ暗な廊下を月明かりだけを頼りに、ふたりで歩いた。職員室の前まで来ると、麻袋を押しつけられる。
彼女はひとり職員室の中へ。
ボクは生き物が嫌いだ。生温かくて、気持ちが悪い。もごもご動く麻袋から生きていると実感できて吐きそうだ。
早く戻ってきてよ。
「ねぇまだー?なにやってるの?」 「うっせえなあ、静かにしろ。もう終わったよ」
手元にカギを持って彼女は戻ってきた。
「それどこのカギ?」 「屋上」
「?」 「行くぞ」
電灯の着いていない階段をボクたちは用心深くあがった。結局、麻袋はボクが持ち続けることになったのだけれど。
不思議なことにニワトリたちは騒がなかった。今からおこることにじっと待ちかまえているのだろうか。
これから何が起こるのか。そして、どうなるのか。ボクは楽しくてしかたない。彼女が屋上のカギを開け、扉の向こうへ。
村で一番月に近い場所。普通なら、ボクたち学生は一度もここには来ることができない。屋上は立ち入り禁にされている。
「うわあ、きれいだねえ。星がいっぱい!」 「流石田舎だな」
ボクが天上一面の星々にみとれているあいだに、彼女は麻袋の紐をとき、一羽のニワトリを抱えた。
彼女がさすってあげると、ニワトリは気持ちが良さそうにアタマをこすりつけていた。
柵のない屋上の端まで来ると、ばっと、ニワトリをその手から放し。
ニワトリは、
ばさばさと、
力いっぱい羽を動かし、
図画工作の教科書で見た、
木版画みたいに、
彫刻刀で削り出された荒い月と、
墨のような生温い夜に、
滲んで消えた。
ひどい惨状だった。肉と骨が潰れる音を初めて聞いた。さすがに地面をみる勇気はない。
でも、ニワトリたちは飛ぶことをやめなかった。ボクはとめなかった。彼女はそれを見ていた。
帰り道、ふと、彼女に聞いてみた。
「何であんなことしたの」
「どうせ死んじまうんなら、すきなことしたほうがいいだろ。なにかするために生まれてきたんなら」
彼女は変わらない。いつも。いつまでも。わからないけど。誰かはおかしいと言うかもしれない。
でも、彼女はそれでいいんじゃないかとボクは思う。彼女は後悔とかしないと思うから。たぶん。
そうして、ボクたちは真っ赤な地面と真っ黒な空のあいだを家路に着いたのだった。
翌朝、登校すると、校庭は血のあとひとつも見つからないくらいにきれいになっていた。
彼女が何かしら反応するのかと期待していたが、いつもの通りだった。飼育小屋には、もうニワトリはいない。
でも皆そのことに何も言わない。
それらが連れて行かれることはすでに決まっていたことだし、そもそも初めから、ニワトリはそんなに人気がない。
飼育小屋の主役はいつだって、あのふわふわでかわいいウサギだった。そうやって、忘れてしまうものなんだろうか。
なにもかも。
昼休み、彼女は教室の一番後ろの席で眠っている。
学校は寝るか、昼ごはんを食べられるところであるとしか認識してないみたい。ボクは話しかけてみた。
「ねぇ、昨日食べたもの覚えてる?」
「朝は卵かけマヨネーズご飯。昼は鯖の煮込みとご飯と大根の入りのみそ汁と林檎のサラダ。夜はお茶漬けとたくわん」
「ねぇ、その前の日は?」 「おぼえてるよ」
「ねぇ、じゃあそのずっと前の日は?」 「おぼえてる、ぜんぶおぼえてるよ」
ボクは、みんなと同じで、きっと忘れるだろうけれど。彼女は、ほんとうに全部覚えているのだろう。
彼女のそういうところがボクは気に入っている。
それにしても、あの鳥たちは飛べたのだろうか。じぶんのやりたかったことをできたのだろうか。
end
15:鳥たちは土の中で飛ぶ
10/11/03 22:03:40 BSQmsN3b
少女小説に投稿したんですが、駄目でした。
文章が読みにくいのでしょうか?批評よろしくお願いします。
16:創る名無しに見る名無し
10/11/03 23:11:13 x3m+3eiH
おそらくはあなたの中の少女小説像と、選考者のそれとがかみ合わなかった可能性があるのじゃないかなと思いますね
どのあたりが少女なのか、という説明も聞きたいところですが。
確かに文章も良く練られたものとは言いがたいですし、
守られていないお約束も目に付きます。
ただ、内容は個人的には嫌いではありません。少女はともかく。
17:創る名無しに見る名無し
10/12/15 17:37:10 8qaiU//V
【ベアトリーチェ・キャロル ①】
暗殺用の毒物の条件。
即効性遅効性、効果などなどは用途によって様々だが・・・
無色透明無味無臭。
これだけは外せない絶対条件である。
あらゆる暗殺毒に当てはまる事。
そう、あらゆる暗殺毒。
【毒姫】であっても例外ではない。
中央大陸西部、カンタレラ地方に聳えるビーシュ山脈の谷間の集落【ラパチーニ】。
堅牢なる山々に囲まれ交通の便は悪く、古代の魔法実験の影響が今も色濃く残り土地は痩せ毒を含み作物は育たない。
そんな不毛な地に住む人々は一つの産業を確立していた。
最初は揺り篭の下に毒草を・・・
次は布団の下・・・ そして衣服の中に・・・
更に乳に混ぜ赤子に与える
こうして徐々に毒に慣らされた子供は
全身が猛毒の【毒姫】となる
特別な血筋も 特別な才能も要らぬ。
毒性を残す土地に自生する様々な毒物で作成材料は賄える。
魔の力による施術も必要のないので魔法探知による判別にもかからない。
育成に10余年と期間はかかるものの、作成方法さえ確立してしまえば安定供給のできる製品なのだ。
決して安くは売りはしないが、権謀術数渦巻く王侯貴族の権力争いにおいては高いといえる額でもない。
実際に戦を起こす事に比べれば・・・
その機密性故に王家の格別の加護を受け、険しい山々より更に厳しく集落は孤立していく。
毎年の様に多くの女児の赤子が送られ、美しき毒姫となって出て行った。
毒見係として、護衛の盾として、好事家のコレクションとして、そして、【贈り物】として・・・
18:創る名無しに見る名無し
10/12/15 17:37:55 8qaiU//V
【ベアトリーチェ・キャロル ②】
ある年、ラパチーニでは一つの変事が起こっていた。
王家より一度に100人の毒姫の発注があったのだ。
納期は5年後。
新しく宮廷魔術師となった者の注文であったが、一度にこれだけの大量発注は異例中の異例。
毒姫の生産は12年で終わるものの、その用途上、寵姫としての教育期間や発育期間が必要となる。
当時の村長はそう説明したが、宮廷魔術師は教育・発育は条件とせず、【毒姫】である事のみを条件とした。
故に、12歳以上の製品は全て出荷されたのだった。
その中に、後にベアトリーチェと呼ばれる少女の姿もあった。
出荷される・・・
少女達はその意味を皆知っていた。
が・・・その意味以上に過酷な運命が待っているなどと、誰も予想できはしなかった。
狂気の魔術師、ベアトリスの儀式が待っているなどと・・・
王都から離れた小高い丘に建つ離宮。
少女は老魔術師ベアトリスの前に立っていた。
美しかった金色の髪は全て白く染まり、健康的な褐色の肌も病的な白と成り果てた。
青かった瞳も限りなく白くなり、仄暗い視線は何も映してはいない。
「良くぞ生き延びた。D-9-359。」
首輪に付けられた認証札を見ながら満足気に老魔術師ベアトリスが声をかける。
毒姫には名前を与えられない。
人間ではなく、人の形をした毒なのだから。
『贈られる』時に形式的に名前を与えられるのみ。
それまでは製品番号で呼ばれる。
「いや、今日からお前は私の娘。ベアトリーチェだ!」
厳かな宣言と共に、D-9-359の瞳に光が宿る。
ベアトリスが名前をつけたのは何も気まぐれではない。
名前、真名は人格形成上呪的に重要な役割を果たすのだから。
ここにベアトリスの禁術が完成した事を顕していた。
禁忌の術の達成と成功に喜び、笑い声は離宮全体に響き渡る。
その笑い声が終わると、一つ息を付き扉に向かい声をかける。
「遅かったではないか、我が弟子よ。そして我が命を断つ刺客よ。
見よ!私の理論は正しかった!素晴らしかろう!」
その言葉に応えるように扉から姿を現したのはレオだった。
ベアトリスは元々魔法学園の薬物学教師。
優秀な魔術理論を持つ男。
そしてレオの師匠。
禁忌の術に手を染め、魔法学園はおろか魔法界自体から追放されていた。
中央大陸西部に流れ、禁忌の術を始めている情報を受け、レオが刺客として放たれていたのだ。
レオはベアトリーチェを一目見て師匠であるベアトリスの術を見抜いた。
その成果を。その危険性を。
「・・・素晴らしい?そう言えたかも知れません・・・
地下で99人の少女の死体を見なければ!」
19:創る名無しに見る名無し
10/12/15 17:38:36 8qaiU//V
【ベアトリーチェ・キャロル ③】
一ヶ月前・・・
ベアトリスに買われた100人の毒姫たちは、離宮の地下に閉じ込められた。
そこが呪的に設計された特殊な館であり、地下である事は知る由もない。
毒姫達を前にベアトリスは残酷に言い放つ。
「殺しあえ!一人になるまで!」と。
そして地下は閉ざされた。
一欠片のパンも、一滴に水もなく・・・
本来毒姫たちは毒体質ということを除けば非力な少女となんら変りもない。
戦う術も、生き残る力もない。
地下に閉じ込められ、生き延びる方法はただ一つ。
殺す為に自分を相手に喰らわせねばならない。
生き延びる為に誰かを喰らわなければならない。
誰も彼もが人の形をした毒である中、より強い毒を持つ者が相手を殺し、喰らい生き延びた。
喰らった毒姫の毒を体内に取り入れ、より強力な毒姫となる。
それはまさに【蠱毒】なのだ。
一ヶ月の間にどのような戦いが行われ、少女達を蝕んでいったかは想像に難くない。
剥き出しになった人間性、裏切り、阻害・・・凄惨の一言を極めたであろう。
極限状態の中、100人の毒姫たちは最後の一人になるまで喰らいあった。
そこに必然などなかった。
ただたまたま強い毒をもち、より多くの毒姫を喰らったD-9-359が最後の一人になっただけ。
しかし、ベアトリスにとってはその過程などどうでもいいのだ。
蠱毒の儀式を終え、100人の毒姫の毒性を取り込んだ娘を手に入れられるのであれば。
「悲しいかな我が弟子よ。所詮は袂を別つた者か。」
悲しげにふるふると首を振るとベアトリス。
元々学者肌のベアトリスはベアトリーチェを作り上げて何をするという目的はない。
己の理論を実践し、それを証明する事自体が目的なのだから。
既に目的は果たされたのだ。
「・・・御免!」
迫りくるレオをただただ狂気の笑みを浮かべ迎え入れる・・・
#########################################
「任務は果たしました。が・・・残念ながら儀式は完了しておりました。」
「そうか・・・しかし、なぜ殺さなかった?」
魔法協議会の大会議室でレオは報告をしていた。
居並ぶ評議会員はざわめきと共に返事をする。
狂気の魔術師ベアトリスの討伐は果たされた。
しかし、その遺産の処理に戸惑っていたのだ。
狂気の蠱毒によりベアトリーチェはただの毒姫ではなくなっていた。
世界有数の毒姫。
処理を間違えれば強大な災厄となろう。
不用意に殺せばその血、その躯は大地を穢し恐るべき毒地を広げる。
それよりも何よりも、有名になりすぎた。
【暗殺】を主目的とする毒姫としての用途も果たせはしない。
砒素の沈色効果により色は抜け落ち、毒物以外を受け付けない・・・否、毒物を摂取し続けないと生きていけない身体。
それでは一般社会生活もままならない。
「僅か12歳の少女を・・・儀式の犠牲者である少女を殺す事に正義があろうか?
皆さん、彼女の処遇は私にお任せいただけまいか?」
一段高い席に鎮座する魔法評議会理事、そして魔法学園の学園長が立ち上がる。
その後議論は紛糾したが、結局のところ学園長の意見が通り、ベアトリーチェは魔法学園へと引き取られる事になった。
薬物・催眠術・封印術などあらゆる手段を持ってベアトリス教授の記憶を消す事を条件に。
20:創る名無しに見る名無し
10/12/15 17:39:24 8qaiU//V
【ベアトリーチェ・キャロル ④】
数日後、魔法学園学園長室に舞台は移る。
室内に三人の男。
「一足早いが紹介しておこう、レオ君。
この春から君の同僚になるレイド先生だ。」
部屋の隅に立つ男にレオの眉がピクリと上がった。
その男はまるで闇の具現というに相応しいオーラを発しながら立っていた。
「彼が・・・本気ですか?」
二十歳そこそこに見える若者に驚いていた。
闇の世界では知らぬ者のいない名前だ。
学園長自らが討伐に向かったと聞いていたが、何がどうなってか春から同僚になるという。
「勿論じゃとも。我が学園はあらゆる者を受け入れる!」
にんまりと笑みを浮かべ応える学園長。
それとは対照的にレオは溜息をつき、仕方がないといわんばかりに笑みを浮かべた。
「やれやれ、ベアトリス教授の遺産【蠱毒の毒姫】に【赫き闇の皇子】と言われた彼を共に受け入れるとは・・・
教頭先生の額がまた面積を広げそうですな。」
今から五年前。
レイド20歳、ベアトリーチェ12歳の春の出来事であった。
######################################
ベアトリーチェが学園に入り2年目。
ようやく毒物以外を口にできるようになった頃・・・
彼女は魔の森の奥に庭園を見つけていた。
そこは咲く花から棲まう生物、庭園を形作る石柱に至るまで全て毒を含んだ庭園。
あまりの毒素のために周囲を沼と化してしまっている。
程なくして庭園の地下に庭園と同じだけの大きさの空間があることに気付く。
考えうるあらゆる器具が、材料が備わった実験室。
なぜここに、どうしてこんなものがあるか。
そしてなぜかこの場所に安心し、親しみを感じるのかは知る事はない。
それがベアトリス教授のラボであった事など・・・
「願わくば彼女が道を誤らぬ事を・・・」
庭園に通うようになったベアトリーチェの背に学園長はそっと祈りを捧げるのであった。
毒物の研究に生涯と理性を捧げたベアトリス。
それを討った弟子レオ。
ベアトリスの遺産、ベアトリーチェ。
輪になり踊る毒の賛歌に・・・・
完了
21:創る名無しに見る名無し
10/12/18 22:58:48 WvZ3YmyW
誰か評価してくれー
どのくらいのレベルにいるか知りたいんだ
22:創る名無しに見る名無し
10/12/18 23:15:33 M1qo0fhW
評価なぁ
どういうところが聞きたいのかな?
とりあえず「・・・」はやめて「……」を使ったほうがいいかも。
文章とは直接関係ないけどやっぱりね
世界観をいうなら完成されてはいないけれどこれはこれでいいと思う。
ベアトリーチェはもちろん神曲を踏まえてるんだよね。
ストーリー性をいうなれば人間で蠱毒などいい線だけど読者を引き込むパンチってのはないね。
例えばこれからの展開の一部なりとも仄めかせればまだ目はあるが、今ここには二つ名を持つ人間が二人いますよ、だけでは力不足。
文章は大いに向上の余地がある。
たとえば、
>そしてなぜかこの場所に安心し、親しみを感じるのかは知る事はない。
なぜか、ではなく、なぜ、が適当だよね。
>名前、真名は人格形成上呪的に重要な役割を果たすのだから。
>ここにベアトリスの禁術が完成した事を顕していた。
ここはつながりが不適当だよね。二行目冒頭が「そう、それはここにベアト~」ならまだわかる。
こういう細かい違和感が積み重なってよい文章とは呼べないものになってしまっている。
そんなところかな
自分ではどこが気になってる?
23:創る名無しに見る名無し
10/12/19 22:34:21 FV0AgtAi
評価ありがとう
自分が上手いのか下手なのかすらわかっていないから、客観的な意見が知りたかった
文章の書き方の勉強しなきゃいけないね
24:創る名無しに見る名無し
11/02/12 19:54:59 IX5jN0a2
異世界ファンタジーでトリップものです。
主人公がチートで主人公至上主義な所もありますが情景描写も頑張っているつもりです。
昨日書き始めたばかりの若輩者ですが、よろしくお願い致します。
小説名 ばかなコいのうた
Nコード N7902Q
URL URLリンク(nk.syosetu.com)
25:創る名無しに見る名無し
11/02/13 01:37:27 cNR2Nr4A
テンプレ読めカス
26:創る名無しに見る名無し
11/02/13 03:39:33 y68zZKQ9
【Wikipedia】"桃尻"の定義を巡ってwiki史上最大の編集合戦が勃発 ★7
スレリンク(parksports板)
27:創る名無しに見る名無し
11/04/16 07:28:21.75 IrGj+3VG
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