11/04/14 23:47:01.85 FSCZK9yO
玄関の扉を開けた地獄丸は、わが目を疑った。
外は見渡す限り黄色い堆積物で覆われている。
深さは膝くらいまであるだろうか。
「な、何だこれ!困ったな 駅まで行かなきゃならないのに」
彼はその堆積物に足を取られつつ駅までの道のりを歩いた。
空全体が黄色い。地面を覆っている粒子はさらに上空から降り注いでいるようだ。
「これは一体…?」立ち止まって思わずつぶやいた地獄丸に、
「スギ花粉だよ」かたわらから返事がした。
見ると道端にヒトが倒れており、降り積もる粒子によって埋もれそうになっていた。
地獄丸はあわてつつもそのヒトを抱き起こし、その身体を覆う黄色い粒子を払う。
「しっかりして下さい!」
「兄ちゃん…ありがとよ でも俺はもうだめだ 俺は花粉症だから…こんだけ花粉が降ってくるともう駄目なんだ…」
「それにしても、なんでこんなに花粉が!」
地獄丸の問いかけに、もはやそのヒトは答えることはできなくなっていた。
「しっかり!しっかりして…! こ、こんなことって…」
あまりにも理不尽な出来事に、地獄丸は震えた。
なぜこんなことになったのか…。見るとあちこちでヒトが倒れている。
が、彼はあまり深く考えずに、駅へと急ぐことにした。
「まあいいか 俺は花粉症じゃないから関係ないし。」
そういいつつも、彼の目は充血し、鼻はなんだかムズムズしていた。
「あれ、おかしいな。なんだか身体の調子が…」
そして彼は、積もった花粉に足を取られ、道端に倒れてしまった。
そして、二度と起き上がることはなかった。
(END)