創作大会しようぜ! 景品も出るよ!at MITEMITE
創作大会しようぜ! 景品も出るよ! - 暇つぶし2ch2:創る名無しに見る名無し
10/09/14 21:40:59 9oxSirxt
おつ

3:創る名無しに見る名無し
10/09/14 21:57:11 EBKwyDo7
ほうほう

4:創る名無しに見る名無し
10/09/14 22:00:32 YBmOYp5L
とりあえず決めなきゃいけないのは、どういう作品を募集するかと、投票方法か
賞品の中身とか受け渡し方法なんかは後からでいいよね?

5:創る名無しに見る名無し
10/09/14 22:08:57 6PHdAB8h
進行役がいないようなので、できる人はどんどん話を進めていってしまえばいい

6:創る名無しに見る名無し
10/09/14 22:14:02 YBmOYp5L
じゃあ、とりあえず俺が進行役やろうか?

7:創る名無しに見る名無し
10/09/14 22:23:59 EBKwyDo7
>>6
どうぞどうぞ

8:創る名無しに見る名無し
10/09/14 22:32:50 j025uid1
苦しゅうないぞ
話を進めるがよい

9: ◆u0s.0cF8SE
10/09/14 22:34:35 YBmOYp5L
じゃあ、まずは募集作品について

・ジャンル分けはするか
・お題、テーマを設けるか、完全に自由にするか
・量に制約は設けるか

この辺決めようか

10:創る名無しに見る名無し
10/09/14 22:36:43 /mBUuIa8
評価のしやすさから言うと全部あったほうがいいかな

11:創る名無しに見る名無し
10/09/14 22:51:43 aTVQGsXn
最低限のジャンルわけは必須

文章ものはあんまり長さがばらばらだと評価順位つけにくいから
ある程度の長さでグループ分けするか制限かけるかするべき

お題とかテーマはなくてもいいと思う

12:創る名無しに見る名無し
10/09/14 22:55:28 6PHdAB8h
テーマ無しにした場合は、以前に作った物でも出展OKになるのかな

13: ◆u0s.0cF8SE
10/09/14 23:03:36 YBmOYp5L
ジャンル分け、長さの制限はあった方がいいっていう意見が多いかな
雑にはノンジャンルの方が一体感があっていいっていう意見もあったけど、そこら辺はどう?

14:創る名無しに見る名無し
10/09/14 23:07:48 j025uid1
お祭り騒ぎということなら制限や区別はないほうがいい
しかしそれだと評価するのは難しくなる
最終的に順位付けして商品を出すのならばなおのこと
あまりごちゃ混ぜでやって一部ジャンルのみが評価されれば
それに不満を持つ人間も出る可能性もある

15:創る名無しに見る名無し
10/09/14 23:14:58 6PHdAB8h
雑談スレでは景品はモリタポか狐ぽなので、以下を雛形にしようって感じだった
元は1000モリタポを景品にしようって話だったが
他にも10000モリタポ寄付してくれるって人もいたので
上手く行けば↓の10倍ほど出ることになる模様



優勝者…500モリタポ
準優勝…250モリタポ
3位…100モリタポ
審査員特別賞(複数)…50モリタポ

16:創る名無しに見る名無し
10/09/14 23:27:39 aTVQGsXn
評価形式にもよると思う

例えば総合の順位付けをノンジャンルで
自由参加の人気投票形式にして
それとは別に各ジャンルごとに優秀賞みたいのを
審査員が決めて出すとかするのなら
一体感ぽい盛り上がりも期待できるし
>>14のいうような不満も出にくくなると思う

17:創る名無しに見る名無し
10/09/15 00:59:01 732PL2hm
賞品のモリタポとかキツネポの使い道が分からない人も居ると思うんだ
俺も知らんし
だから、もし入賞しても賞品の受領は辞退可とか、
賞品が要らない人も参加しても良いよ的な説明が欲しい

18: ◆u0s.0cF8SE
10/09/15 01:00:43 5zydgB7h
あまり時間かけ過ぎるのもあれだから、あと一日くらい様子見たら>>9と過去作ありかどうかだけ決めてしまおう
>>16で出たような変則的な方法も含めて色々検討して、ちゃちゃっとまとめちゃおう
とりあえず勢いあるうちに話を進めて、問題が出たら二回目以降で変えていく感じで

俺の意見としては、せっかく大会開いて盛り上がろうとするなら、作品は新規に作ってもらう方がいいかな

19:創る名無しに見る名無し
10/09/15 07:37:48 MMgGixsW
お前ら創発が過疎だってこと忘れてるだろ。
余り細かいジャンル分けすると人が集まらんかもしらんぞ。

あとコテトリは必須だよね?

20: ◆u0s.0cF8SE
10/09/16 01:29:30 +gjD/uB6
思ったより反応なかったから、もう一日だけ様子見てみよう
何も意見でなかったら>>9は全部ありありで行く

酉は必須でいいんじゃね?
後で本人確認の必要もあるし

21:創る名無しに見る名無し
10/09/16 01:53:47 luBysuIj
あれ?議論後退してる?
てっきり>>16みたいな形でやる流れかと思ってた
>>19をスルーして>>9全部ありありというのは
過疎なんか問題じゃなく人が集まる自信があるということ?

>>16みたいな形ならある程度応募数が期待をはずしても対応しやすいんじゃないの?
まあ部門賞みたいなのは応募ひとつしかないから受賞みたいなの出るかもしれんけど
逆にそれも応募する原動力になると前向きに考えればありかもしれんし

22: ◆u0s.0cF8SE
10/09/16 02:08:34 +gjD/uB6
自信っていうか、ほとんど反応ないから、とりあえず一番多かった意見を採用しといただけ
賛成なら賛成で何かしらレスしてってくれないと、良さそうな案でも俺が勝手に選ぶわけにはいかないからさ

23:創る名無しに見る名無し
10/09/16 02:09:50 4G7eeZ1y
いや、単に平日だから人が少ないだけだ
せめて議論は週末まで待っておくれ

24: ◆u0s.0cF8SE
10/09/16 02:16:00 +gjD/uB6
じゃあ週末まで待つ?
他にも結構決めることあるから毎回週末まで待ってたら、実際に企画始まるまでかなり時間かかることになるぜ?

25:創る名無しに見る名無し
10/09/16 02:22:24 4G7eeZ1y
週末までまったり議論しながら、週末にまとめる感じでいいんじゃね

26: ◆u0s.0cF8SE
10/09/16 02:25:58 +gjD/uB6
それでいっか
人いないことにはどうしようもないし、のんびりやろう

27:創る名無しに見る名無し
10/09/16 10:08:33 k33QV+t0
こういうのは、ageて耳目を集めるのさ
何でも、というよりはひとつテーマ決めたほうが評価しやすいじゃなかろうか
トリップは必須だと思う

28:創る名無しに見る名無し
10/09/16 11:07:16 DsFp5UBN
むしろ動きが性急すぎるくらいだと思うぜ。


29:創る名無しに見る名無し
10/09/16 20:06:49 YZfvz4bs
トリップは必須だと思います
評価の事を考えるのならテーマや分量の規定はあった方がいいと思う

30:創る名無しに見る名無し
10/09/16 20:13:24 +A/suXG5
大丈夫

三日もすればみんな飽きるさ。



31:創る名無しに見る名無し
10/09/16 20:21:36 DsFp5UBN
急ぐとホントに三日で飽きると思う。
やるならまずじっくり時間をかけて宣伝等しないと。

人気投票がいい例。いろいろ言われたけど時間かけた結果いろんな人来て結果発表はお祭りだったじゃないか。

32:創る名無しに見る名無し
10/09/16 22:09:40 NyCx2oFr
>ジャンル分けはするか
絵と文ぐらいは分けた方が良い

>お題、テーマを設けるか、完全に自由にするか
テーマにそった方が評価しやすいと思う

>量に制約は設けるか
制約は必要、あまり長い読んでくれない場合も有る

定期じゃなくて突発的企画なら、じっくり話し合った方がいいぜ
>>1の意気込みは買うが見切り発車はよくない
せめて評価形式と開催期間くらいは決めようぜ
俺的には一月ぐらいもうけて、11/25に結果発表といきたいね


33: ◆u0s.0cF8SE
10/09/16 22:14:42 +gjD/uB6
あ、そうか
そもそも定期的にやるのか一回限りなのかがはっきりしてなかったのか
普通に定期開催のつもりでいたわ

34:創る名無しに見る名無し
10/09/16 22:20:56 NyCx2oFr
毎回の資金誰が出すんだよw

35: ◆u0s.0cF8SE
10/09/16 22:27:48 +gjD/uB6
一回ごとの賞品を少額にして、小分けにしながら何回かやるみたいなことを誰かがが言ってたから、それでいくのかと

36:創る名無しに見る名無し
10/09/16 22:33:52 NyCx2oFr
そこら辺は出資者の意向が汲まれるんじゃない
俺は>>15で、使い切りだと思っていた

37: ◆u0s.0cF8SE
10/09/16 22:48:18 +gjD/uB6
じゃあ、複数回やるか一回限りかも、日曜日までに一緒に決めちゃうか
賞品出してくれる人は、どのくらい出せるか書いてって欲しい
俺は狐ぽで20万くらい出せるよ

38:創る名無しに見る名無し
10/09/16 23:24:10 Bg8mORe/
一回やってみて、盛況で次もやりたい寄付もある、ってなったら、その時考えればイインジャネーノ

39:創る名無しに見る名無し
10/09/17 03:04:40 MwFDTErq
うむ

40:106
10/09/17 03:20:21 xd7UDy/u
自分はモリタポで1000です
イベントの進行とかは苦手なので、あんまり口うるさくない出資者という
理想のポジションのまま進めておいてください

41:創る名無しに見る名無し
10/09/17 16:42:31 A4jEdEax
三ヶ月に一回くらいの定期開催でいいんじゃない?
月一だと多分人が来な(ry

正直モリタポやらに魅力を感じない人も多い。ぶっちゃけ物より感想が欲しい人がわんさか居ると思う。


42:創る名無しに見る名無し
10/09/17 20:39:31 3putoZ3X
今回は突発企画だから、定期になるかどうかは大会後に考えればいいんじゃね
あと、自分はモリタポでもなんでもいいから賞品出ると嬉しい
特に使い道はないけど、形として残るとなんか偉くなった気がするので

43:創る名無しに見る名無し
10/09/17 21:06:56 x++YIVHE
優勝作品には“あの”絵師さんがサイン付きで描いてくれるぞ!(嘘)

44:青森さん ◆wHsYL8cZCc
10/09/17 21:12:58 X0C/+huQ
描いちゃだったらフルパワー出す。

45:創る名無しに見る名無し
10/09/17 21:15:17 8WyLNlrm
あの人ならなんか何もなくても描いてくれそうな気がするんは俺だけか

46:創る名無しに見る名無し
10/09/17 21:18:26 X0C/+huQ
確かにw
でも明らかに描いてくれますよってんなら尋常ななく気合い入るw

モリタポ? いらんいらんそんなモン。

47:創る名無しに見る名無し
10/09/17 21:20:24 3putoZ3X
まぁ、賞品いらん人は優勝後に

「いえ、僕にはみなさんの賞賛の声以外何も必要ありませんよ」

って言ってモリタポ辞退すればいいだけ

48:創る名無しに見る名無し
10/09/17 22:05:57 AAhHkkyM
辞退者には次の回に審査員特別賞を選ぶ権利を与えればいいじゃん

49:創る名無しに見る名無し
10/09/18 01:41:10 WSn4RPkP
| ∧         ∧
|/ ヽ        ./ .∧
|   `、     /   ∧
|      ̄ ̄ ̄    ヽ
| ̄ ̄ ̄土曜日 ̄ ̄ ̄)
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.\
|ヽ-=・=-′ ヽ-=・=-  /   やあ
|::    \___/    /
|:::::::    \/     /

50:創る名無しに見る名無し
10/09/18 12:52:41 mHq1u7tx
お待ちかねの週末ですがスレ的には終末ですか?

51:創る名無しに見る名無し
10/09/18 13:00:17 91tIzcl2
>>50
【審議中】
    ∧,,∧  ∧,,∧
 ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
| U (  ´・) (・`  ) と ノ
 u-u (l    ) (   ノu-u
     `u-u'. `u-u'

52:創る名無しに見る名無し
10/09/18 18:53:30 oAFncX0I
今週だけで決めてしまうと性急すぎるので、
今月いっぱいかけて詳しいこと決めて
開催日は1ヶ月後くらいにして宣伝すれば人いっぱい来るんじゃないかな

53:創る名無しに見る名無し
10/09/18 21:56:18 MWL5TNtp
そもそも創作で参加できるようにしない限りなかなか人は集まらないんじゃね
見切り発車で始めた企画の方がこの板じゃ上手くいくみたいだし

54:創る名無しに見る名無し
10/09/18 22:02:09 l6HHDQew
初心者な質問で申し訳ないんだが
こういう企画を立ち上げて実際に開催された実績ってあるの?

55:創る名無しに見る名無し
10/09/18 22:09:42 FqEklNNd
>>53
それは同意

誰しもが企画の計画運営側に回りたいわけじゃないし、創作での参加に興味がある人はそれだけ待たされることになるしね
こういうのは期間を置くと熱が冷めていく一方

勢いでどんどんやっちゃった方が、いい方向に転がると思うよ

56:創る名無しに見る名無し
10/09/18 22:15:37 lhIMydmj
創発では一人がゴリゴリ進めてくほうがうまく行くんだよな。

>>54
結構あるような気がする。
創発用語集の企画も止まってるし

57:創る名無しに見る名無し
10/09/18 23:33:10 6Wx9kF+3
最初のS-1立てた人が通りますよ…

58: ◆u0s.0cF8SE
10/09/19 23:55:00 6yesbAS6
とりあえず一回やってみて、様子見てから二回目以降やるか決めるっていう意見が多かったから、それでいこう
他はほとんど動きがなかったからありありのままで
ジャンルわけに関してだけ、>>16案の方がいいって言う人が今後多く出てくるようだったらそっちに変える

次に決めることは
・ジャンルをどう分けるか
・投票方法(場所)をどうするか
・文章量の制限は具体的に何Kb以内にするか(文章以外も制限するならどういう風に制限するか)
これを一週間で決めよう

59:創る名無しに見る名無し
10/09/20 00:13:35 A/xV5T5Y
ジャンルほ

(お題SS)
フリーSS
(お題絵)
フリー絵
その他創作

とか?
初めはフリー部門だけでいい気もするが。

投票は、一応投票時間間隔の設定できるwikiが今のところいいんじゃないか。人気投票のテンプレ使いまわすよ
ここだと規制あったりするし。避難所でもいいけど。
投票はIP自演が気になると言えば気になる。ルータ再起動しても多重投稿出来ないようなシステムないのかな……

文章量は個人的に自由でいいのではないかと。


初めにあまり細かく区切りすぎて、作品が規定数集まらないというような事態は避けたい。

60:創る名無しに見る名無し
10/09/20 00:16:31 R2ZWHFTT
作るほうも作るほうで御代あったほうがいい気がするなぁ

61:創る名無しに見る名無し
10/09/20 00:16:57 bm6HimOA
・文章部門(小説・SS等)
・イラスト部門(漫画でも可)
・その他(写真や音楽、料理・動画までなんでもおk)


この3つでいいんじゃね
「その他」は、応募がもしあればってことでひとまとめ

62:創る名無しに見る名無し
10/09/20 00:20:09 A/xV5T5Y
お題も欲しかったけど第一回に相応しいような題が見つからんw

63:創る名無しに見る名無し
10/09/20 00:32:41 289RCKJE
>>62
お題「初めての」

64:創る名無しに見る名無し
10/09/20 00:36:01 bm6HimOA
お題を3つくらい出して、その中から好きなの選んでもらうってのでもいいんじゃね

65:創る名無しに見る名無し
10/09/20 01:13:40 5gMmRPjX
エロ部門をつくるべきだな

66:創る名無しに見る名無し
10/09/20 13:04:05 1J8hYSqZ
むしろ意表を突いて
景品ありの大会無しでいってみたら……

67:創る名無しに見る名無し
10/09/20 13:35:36 ZDN1UR91
破綻しとるがなw

68:創る名無しに見る名無し
10/09/22 18:45:19 JQX/0L0y
結局どうする

69:創る名無しに見る名無し
10/09/22 19:54:36 opt94xJm
今月かけてゆっくり決めようぜ

70:創る名無しに見る名無し
10/09/23 23:44:19 tfSV3mPY
来月から本気出そうぜ

71:106
10/09/25 05:34:29 fyjP/oj9
週末使って決まりそうに無い場合は、
自分が独断と偏見で頑張って進行役のお手伝いしてみます

72: ◆u0s.0cF8SE
10/09/27 00:59:53 wpVZ6NEU
ジャンル分けは、文章、絵(漫画)、その他の三つって感じかな
他の二つはちょっとまとまってないな

とりあえず、また日曜日を期限にして、下の三つを決めよう
平行して、お題とか、他に決めた方がいいと思うことがあったらそれもどんどん話しちゃって
あと、賞品出してくれる人は、雑談スレで言ってくれた人ももう一回このスレで名乗りあげてくれると助かる

・前回決まらなかった二つ
・賞品の管理、受け渡し方法

また一週間待っても決まらなかったりするとまずいから、俺が最初にたたき台の案を出しとく

・投票方法
二周年記念キャラ人気投票と同じ、wikiを使ったやり方
・文章量の制限
10レス以内
・賞品の管理受け渡し
管理用の垢を作って、投下時の酉で本人確認をして渡す

>>71
ありがとう!
だいぶ勢いなくなって来ちゃってるから助かる

73: ◆EROIxc6GrA
10/09/27 01:07:45 6IypA4fu
投票方法は、スレだと集計が面倒なのでwiki賛成。決まったら編集はやります。
スレとwiki以外で方法あるならそっちの方がいいかも

文量10レスは短くないか?もうちょっと長いか、無制限か
無制限だとどういう問題が起こってくるんだっけ?

管理垢は賛成。◆u0s.0cF8SEさんがするなら(誰か管理する人がいるなら)だけど

74:創る名無しに見る名無し
10/09/27 19:43:31 TAuJeleL
無制限にすると長文レスと短文の問題が起こってくる
例えば、100レスを越える長文とわずか数レスの作品を同列におけるか?という事
10レスという区切りをつければ、1.2レス変わってもそんなに気にならないしね

10レスてのは規制を考えての事だろうね
10レス以上に伸ばすとしたら、支援レスが確実に必要になるよ


75:創る名無しに見る名無し
10/09/27 23:14:39 NsiF+8jq
マラソン渡辺至 34商会343434

76:創る名無しに見る名無し
10/09/27 23:32:58 JwOwlM1p
10レスだとちょうど一話の単発レベルなんで俺もそれでいいと思う。

というよりそれ以上だと連載レベルになってしまうし、企画の性質上合わないと思う。

77:106
10/10/04 00:00:13 PTaDjYiv
ちょっと数日だけ待っていただければ

78:創る名無しに見る名無し
10/10/04 00:05:51 1neB8K3a
数日後の>>106に期待

79: ◆u0s.0cF8SE
10/10/04 23:33:01 RiamdwGG
上の案三つはこれで良さそうだな
垢の管理はやってくれる人が名乗り出てくれたら任せて、いなければ俺がやる感じかな

あと決めることは賞品の配分と募集期間くらいか
賞品は狐ぽ30万とモリタポ1000を分けるってことで
ちょっと準備に時間かけ過ぎちゃったけど、これを日曜日までに決めたら実際に大会を始めていこう
他に決めた方がいいことあったらどんどん言って、それもちゃちゃっと決めちゃおう

今回も案を出しておくと、
・配分
文と絵は大賞300モリタポと狐ぽ8万、次点100モリタポと狐ぽ4万
その他ジャンルは大賞200モリタポと狐ぽ6万
・期間
10月16日から11月23日まで

80:創る名無しに見る名無し
10/10/05 03:23:52 BII/L3ue
SSの場合、最低何レスとかいう縛りは無し?
ぶっちゃけ長いのはアレだけど、単発物なら一レスでも十レスでもほぼ関係ないとは思うんだけど。

81:創る名無しに見る名無し
10/10/05 16:08:07 lf6FrI38
10レス以上になる場合はテキストでうぷろだにあげてつかぁさい(10レス以下にまとめろという暗示)
みたいな形にしてはどうか

82:創る名無しに見る名無し
10/10/07 03:51:09 33AQHPKd
結局お題というか、出題ジャンルはなくなったの?

あと一人の作者がいくつも作品出すのはあり?

83: ◆u0s.0cF8SE
10/10/08 23:54:05 CSxFUyVl
そうだそうだ忘れてた
お題、テーマも一緒に決めちゃって
複数作品を禁止するって話は今のところ出てないよ

84:創る名無しに見る名無し
10/10/16 12:00:38 gFuD6aNP
募集開始だけど誰もいないねage

85: ◆91wbDksrrE
10/10/17 00:47:21 UKm13Ps9
様子見中。

誰かが動かせば、わらわらと人は来るんじゃないかな。
今の所、誰も動かしてないからなぁ・・・。

開始宣言とか、レギュレーションの確認とか、
お題出したりとかその他もろもろ、何かしらの動きが
無いと、乗りづらいと思う。

86:創る名無しに見る名無し
10/10/17 00:50:49 AJxy8MOF
こうなったらもう諦めようぜ!

87:創る名無しに見る名無し
10/10/17 19:06:03 wV1M+p7M
「ちにゃっ!?書き手だらけの創発大会」

88:創る名無しに見る名無し
10/10/17 19:24:16 gbqe5GHV
起きた事をありのまま話すぜ!

「知らない内に募集が始まっていた」

89:創る名無しに見る名無し
10/10/17 19:37:59 AJxy8MOF
起きる事をありのまま話すぜ!

「知らない内に募集が終わっていた」







……まあそれはともかくとして、
結局のところどこで何をするのかよくわからんのだが?

90:創る名無しに見る名無し
10/10/18 00:58:03 9bsOmfTk
今の状態じゃ路上の喧嘩よりレギュレーションがないから何すればいいか解らないんだぜ。

91:創る名無しに見る名無し
10/10/18 18:30:07 GfPtocXi
なぁS-1スレ復活させていいか
ここと重複するから止めてあるんだが、どうにもこれでは…

92:創る名無しに見る名無し
10/10/18 19:46:18 /HvAcLZL
立ててしまえ

93:創る名無しに見る名無し
10/10/18 20:01:52 Q4Dm/bj1
復活させたらさせたで、そっちも過疎ったりしてなw

94:創る名無しに見る名無し
10/10/18 20:39:53 iJ4F16Aq
たしかあそこ月に一つは投下あったくらいだっけか?

95:創る名無しに見る名無し
10/10/18 21:10:28 z41iSmA7
無理に立てなくても、こっちで別企画進めるとかでいいんじゃない?
>>93も言ってるが、S-1自体、夕鶴クライシス前から、そんなに
投下なかったし。

まあ、でも、難しい所だね。
S-1というフォーマットを復活させたい、というのはわからんでもないし・・・。

何にせよ、何らかのリアクションが欲しいんだけどなぁ・・・。

96: ◆u0s.0cF8SE
10/10/18 21:48:59 1IvtWSh2
長らく放置してしまって申し訳ない

上の案だともう募集開始してることになるけど、お題が決まってなかったり投票手段が確保できてなかったりするから、
今週の土曜からに一旦延ばして、準備を済ませてしまおう
スレでは、取り急ぎお題だけ決めよう

106さんとエロい人はいらっしゃったら、お返事いただきたいです

97: ◆u0s.0cF8SE
10/10/18 21:51:10 1IvtWSh2
あと、S1については別に重複ってわけじゃないから、立てたい人がいるなら立てちゃっていいと思うよ

98:創る名無しに見る名無し
10/10/19 00:17:23 ZxP9fPgN
お題は例えば、「カッコいいダンディなおじ様選手権」みたいなのでもいいのか?

誰得?俺得

99:創る名無しに見る名無し
10/10/19 03:46:14 wXwg4dGV
通りがかっておもしろそうに思ったがどこで何すりゃいいのかぜんぜんわかんねw

100:創る名無しに見る名無し
10/10/19 16:15:32 e4uyoI/v
もっとルール厳しいほうがかえって楽かもしれん。
やること明白になるから。

101:創る名無しに見る名無し
10/10/20 03:54:04 ksUm7NdI
投票手段はそれこそS1でのやり方でいいと思う。申し訳ないけど書き手以外はあんまり集まらないと思うからw
創発を巻き込むような大イベントならWikiの投票使えばいいと思う。

で、お題だなんだ以前に宣伝が全然足りないと思うんだ。もっと他スレで「こんなんやるぜ! 腕自慢はきやがれ!」くらいの宣伝していいと思う。
それぞれのスレに引きこもってる人も多いから。
景品出るとなれば規制に苦しむ人は代理投下で参戦するかもよ?

お題に関しては、最悪無くてもいいんじゃないか。
それよりSSなのか絵なのか。セリフ系はどうなのかという括りで行ったほうがいいと思う。
SSなら「単発モノで、○レス以上○レス以内」とか。多分10レス以内かな?

そして何より、主催者がもっと意見だしてオラオラ進めてくれ。
結構それだけでも違うから。
そしてもっとアレコレ会議すべき。

102: ◆u0s.0cF8SE
10/10/20 04:16:49 CWqDy8h+
そこら辺の詳しいことは上の方で決まってるから見てもらえば分かるよ
ジャンルは文章と絵とその他の三部門募集で、文章は10レス以内
始まる直前くらいには要項をわかりやすくまとめるつもり

あと、俺は進行役引き受けただけだから別に主催者じゃないよ

103:創る名無しに見る名無し
10/10/20 07:19:30 Ra8UNIO7
主催者じゃなくてもガンガンやっちゃっていいんだぜ?

104:創る名無しに見る名無し
10/10/20 23:06:08 8bxkvZVX
支援

105: ◆u0s.0cF8SE
10/10/22 01:08:17 aUDtWedb
自分でやっちゃおうかとも思ったけど、wiki編集よくわからん
投票用ページの作成誰か頼むます

106:創る名無しに見る名無し
10/10/22 02:56:56 gHBQzLhq
まぁ落ち着けw
とりあえず、まず作品を募集してからでも遅くはないだろう。締め切り後にゆっくり作ればいい。
絵はともかくSSとなれば読むのも時間かかるし。投票するなら全部目を通しておかないとならない。
それに募集期間も長くとったほうがいいと思うの。

107:創る名無しに見る名無し
10/10/22 08:49:23 mG3Nv3+o
え? なに?
結局>>79はキャンセル?


108:創る名無しに見る名無し
10/10/22 09:34:24 pBFYm9N3
>>105
おちけつw
Wiki編集は俺がやるから、あんたはまず決めないといけない事をパパっと決めちゃってくれ
お題が出ないんだったらとりあえず第一回はフリーファイトでもいいんじゃないか?超個人的には>>98を推すがw
募集期間とか投票期間とか、あんたが決めちゃってもいいような気がする。誰もやいやい言うような奴いなさそうだし。
始まったらきっとROMってる奴らも来るだろう。

109:創る名無しに見る名無し
10/10/22 16:30:51 0Rr2+HR9
募集は開始しているのかね?

テンプレ的なものがほすぃ

110: ◆u0s.0cF8SE
10/10/22 21:50:27 aUDtWedb
よく考えたら、どうせ作品が揃わないと投票開始できないのか
じゃあ、とりあえず投票ページは後に回そう

お題は、他に意見も出ないし、これといった反対意見もないから、「カッコいいダンディなおじ様選手権」で
その他ジャンルでちょっとやりづらくなるのが出そうだけど、そこは創意工夫でなんとかするってことでw

募集開始は今日の24時から
開始が遅れたから締め切りも延ばして11月いっぱいにしちゃおう

あと、賞品に関してだけど、106さんと連絡とれなくて、受け渡しが可能になるかが不透明なんで、
申し訳ないけど、とりあえず賞品は狐ぽの方のみってことにしよう
今後、スレで生存報告とかあったら、改めて当初の賞品に戻すってことで
もし、今からでも賞品提供してくれるって人がいるなら、募集期間中でも構わず賞品増やしちゃうんで、お願いします

テンプレはちょっと待って

111: ◆u0s.0cF8SE
10/10/23 00:06:58 obDKb1RY
お題「カッコいいダンディなおじ様選手権」

文章(10レス以内)、絵(漫画等含む)、その他の三つのジャンルを募集
募集期間10月23日から11月末日まで

募集終了後に創発wiki内で投票、上位者には賞品を進呈


文章部門 優勝 8万狐ぽ
       準優勝 4万狐ぽ

絵部門 優勝 8万狐ぽ
      準優勝 4万狐ぽ

その他部門 優勝 6万狐ぽ

112: ◆u0s.0cF8SE
10/10/23 00:08:01 obDKb1RY
ということで募集開始

テンプレに足りない情報ある?

113:創る名無しに見る名無し
10/10/23 00:47:02 goKsPFus
まさかのテーマww

良いとおもふ。
あと、酉必須とか?まぁ兎に角乙!圧倒的乙!

厳しいけど投稿してみるよ。
一ヶ月ありゃあ何か出来るべ。

114: ◆u0s.0cF8SE
10/10/23 00:55:34 obDKb1RY
ああ、そうだ
投下時には酉必須で

俺も参加者側で混ざりたいから、終わるまでは必要があるとき以外は酉外してレスするわw
じゃあ、みんな頑張れ

115:携帯 ◆4c4pP9RpKE
10/10/23 02:45:34 cz/62HgU
ダンディに仕上がったよ!
URLリンク(a.pic.to)

116:創る名無しに見る名無し
10/10/23 03:08:54 5TThWwv5
投票用サイトの作成は任せてもらえないか?

117:創る名無しに見る名無し
10/10/23 03:12:00 5TThWwv5
てか、早急に決めて早急に募集するよりじっくり決めて
時間おいて募集する方が無難だと思うんだが

118:創る名無しに見る名無し
10/10/23 03:30:31 LpZhX+AB
結局、「お題の作品」の大会なの?

119:創る名無しに見る名無し
10/10/23 07:25:32 xJQOiT/n
とりあえず動き始めたのは分かったよー。
こういうのはパッパ動き出すほうがいいかも。締め切りは来月一杯までだし。

120:創る名無しに見る名無し
10/10/23 11:46:15 5TThWwv5
そうやって勢いに任せて煮詰めずに動いた結果
だれも付いて来ずに消えて行った企画が2ちゃんにはどれだけあるか・・・

このタイミングで創作大会って企画を通すより、年末年始に向けて
企画を熟考して、年末年始頃に板をあげての大きな企画として動かした方が
盛り上がると思わないかね?

121:創る名無しに見る名無し
10/10/23 13:25:47 RV5RLtMy
もう十分待った!
あとは動くだけだぜ

122:お題「お題」(文章部門・1/1) ◆Toc0Hb3aUA
10/10/23 17:35:52 NcZZ/tEl

ひそかにROMりつつ、待ちに待った創作大会。
その驚愕のお題を目にした俺は、思わず頭を抱えた。

”カッコいいダンディなおじさま選手権”
無理だ。こんなお題で文章が書けるわけがない。
そもそもカッコよさもダンディさも俺は持ち合わせていないし、理解していない。
これでは書きようがないではないか。

沈痛な面持ちの俺に、喫茶店のマスターはささやいた。
「そうでもないだろ?カッコよさもダンディさもないからこそ、
 お前さんはそういったものに憧れる気持ちは人一倍強い。
 頭のなかにある願望を形にすればいいんじゃないのか?」

余計なお世話だ。だが、それも一理あるな。 よし…やってみるか。
どのような話を書いたらいいだろうか…

「おいおい、せっかく書いたそれ、投下しないのか?」
マスターの言葉に俺は面食らった。
それって…今書いてる、これ?
だってこれは、文章と呼べるシロモノじゃない。

「下手な鉄砲もなんとやらって言うだろ?失敗を恐れるな。結果なんか問題じゃない。」
マスターの言葉には、妙な説得力がある。
それもそうか。まずはこれを投下してみよう。

そのあとは成り行きにまかせる。なに、時間ならあるさ。

END

123:創る名無しに見る名無し
10/10/23 20:10:16 cz/62HgU
リアルに何書いていいか迷った感がw
このお題くせものやわぁ

124:創る名無しに見る名無し
10/10/23 20:25:27 NReg1Zgu
このマスター、実はダンディーなんじゃね?w
文章一番手お疲れ様でした~

しかし、お題むずかしいなw

125:>>111文章部門応募作品 ◆sfjAAvy1mEyU
10/10/27 19:05:35 a26GUYkE
当たり前の話だが、初めて入る他人の家というのは緊張する。
「お邪魔しまーす……」
傘を畳みながら、四カ月近く付き合っている彼女がこちらを振り向く。
「何怖がってんですか先輩。誰もいないんだから、萎縮しないで下さい」
乱雑に靴を脱ぎながらフローリングの薄暗い廊下を奥に進んでいくあの彼女、かなり口が悪い。一学年下だから一応敬語を使ってくれてはいるが、敬意は欠片も感じられない。
濡れた傘を傘立てに入れ、学校指定の革靴を脱いだ後に揃えてから彼女に続く。萎縮するなと言う方が無理だろう。こんな場所に連れて来られるとは思ってなかった。
最近出来たばかりの、駅から徒歩4分の場所に建つ高層マンション。庶民に縁のない住居だというのは容易に想像がつく。お嬢様だなんて聞いてない。
きょろきょろしていたら、突然温かみのあるオレンジ色の照明が灯る。ぎょっとして前方を見ると、雨で濡れそぼった彼女が冷ややかな目でこちらを見ていた。
「玄関脇のそれで、電気点くのに」
彼女の視線は、玄関のすぐ横にあるスイッチに投げかけられていた。
「そっちで点けて欲しかったよ……」
「別に私は真っ暗でも平気だし」
こういう自己中心的なところがあるのは、バイトをしているコンビニで彼女と同じシフトになってからすぐに気づいた。
左手の扉を指して彼女は言った。
「そこ、私の部屋です」
「はあ」
「ちょっと洗面所使うんで、勝手にリビング上がってて下さい」
文句なしに整った容姿をしているのに彼氏がいなかったのは、性格的な問題に起因しているのだろう。右手のドアの向こうへ姿を消す彼女を見送ってから、廊下を直進する。
突き当たりのドアの前で足を止める。恐らくこの中がリビングだろう。扉に耳を当ててみようかと一瞬思ったが、すぐに却下した。それはさすがに神経質だ。肩の力を抜こう。
深みのある色をした木製のドアを開ける。
そして神経質にならなかったことを後悔した。リビングには明かりが点いており、室内には人がいた。奥のベランダに通じている硝子戸の向こうには、雨に煙る街がある。
「……どちら様かな?」
明かりの点いた、広々としたリビング。硝子テーブルに沿ってL字型に置かれた、黒革張りのソファに腰掛けていた男性と、正面から視線がぶつかった。かなりの男前だった。
若くはない。が、中年と呼ぶのも微妙な気がする。あまり目立たないが顔には皺があるし、髪にも白い物が混じっているのだが、高く見積もってもせいぜい三十代半ばだろう。
切れ長の目には、理知的でありながらもどこか冷たい輝きが宿っていた。引き結ばれた薄い唇には、品の良さと意思の強さを感じる。暗に人を非難するような表情だ。

126:>>111文章部門応募作品 ◆sfjAAvy1mEyU
10/10/27 19:06:33 a26GUYkE
「―あ」
思考していた停止が活動を再開するまで、たっぷり数秒要した。黒いスラックスに、同じく黒いセーター。部屋着だろうか。にしてはひどく様になっている。
「ええと、お邪魔してます。俺、いや僕は―」
どうでもいいことを考えながら自己紹介と、彼女との関係、またそれに至るまでの経緯について語った。
突然雨が降って来なければ、あるいは彼女が傘を持っていれば、ここに来ることもなかった。見知らぬ男に高校生のありふれた恋愛をかいつまんで説明するようなことも。
「学校帰りにデートですか。どちらの高校に?」
「僕が通っているのは―」
近隣でも指折りの進学校なので、こういう時胸を張って名前を出せる。受験勉強に励んで良かったと思う、数少ない場面だ。
「なるほど。秀才ですね。それにイケメンだ。―じゃなきゃあいつも付き合わないか」
「恐れ入ります。ところで……あなたは?」
この人物が居直り強盗だったりしたら、笑い話にもならない。思えば彼の黒づくめの服装、いかにも盗人っぽく見える。マンションの十二階までどうやって登ってきたのかは謎だが。
「ああ失礼。私は……そうだな。君の彼女の父親、ということになりますね」
「やっぱり……」
小さく声に出してしまった。全体の雰囲気が彼女と似ている。それを聞いた彼女パパは、唇の端を小さく持ち上げた。
「苦労してるようですね。どうもあの娘は、私の悪い部分ばかりを受け継いでしまったようで、妻にはいつも詰られています」
「い、いえ。のびのびした、いいお嬢さんだと思います」
「お気遣いどうも」
またも男は苦笑する。と、後ろのドアが突然開いて、背中に重いきりぶつかった。
「痛いって……」
「邪魔ですよ。何で出入り口の前でぼけっと突っ立ってるんですか―って」
制服から私服に着替えた彼女は、父親の姿を認めて言葉を一度切った。
「なんで親父がいんのよ」
親父。彼女を良く知らない人間がその単語を聞いたら、耳を疑うだろう。何と見た目にそぐわない言葉使いだろう。
「仕事は? 放棄?」
「有給を使った。ほら」
と言った彼女パパが、顎で薄暗い寝室へ繋がっている扉を示した。
「ああ、母さん風邪なんだっけ。しかし親父にまともな看病ができるとも思えないわねー。っていうかそこの戸閉めてあげなさいよ。気が利かないわね」

127:>>111文章部門応募作品 ◆sfjAAvy1mEyU
10/10/27 19:08:16 a26GUYkE
「お前は自分の父親を何だと思ってるんだ」
などと言いながらも、彼女パパは腰を上げて夫人が寝ていると思われる部屋へのドアを閉めた。意外と上背がある。
「陰険な若づくりのおっさんだと思ってる」
「若づくりしなくても若々しいんだよ、俺は。―そうだ、せっかくお客様がいらしたんだから、お茶くらい出さないとな。ゆっくりしていって下さい」
こちらを見つめた彼は、微笑を浮かべながら奥のキッチンに向かってしまった。鞄をソファのそばに置き、浅く掛ける。
さっさとこの家を出たいが、断れそうな雰囲気でもない。一種の嫌がらせだろうか。だとしたらやはり陰険だ。隣に座ってきた彼女に小さく言った。
「とりあえず俺、この場を退散したいんだけど」
「私はお茶飲みたい。雨の中歩いたせいで、身体冷えてるの」
こんな時でも彼女は他人の気持ちを斟酌しない。どこまでもマイペースだ。
目の前のガラステーブルに視線を落とす。ビジネス文書と思しき書類の束が、無造作に置かれていた。少し興味が湧いたが、勝手に閲覧してはまずいだろう。
「お父さん、どんな仕事をしてるの」
「どっかの会社の工学部門って言ってたけど」
アバウトな回答だ。とりあえず書類の雰囲気からして、研究職だろうか。食器の場所を把握していないらしく、父親は病人のいる寝室まで見に行ってしまった。
「緑茶でいいかな?」
キッチンのすぐそばの食器棚に気づき、ぱっと表情の晴れた父親が、明るい声で言った。きっと彼女の母親は、今日も自分で昼食を作ったのだろう。あの父親に家事は無理だ。
「っていうか私それしか飲まないし」
急須と湯呑みを出しながら彼女の父は返す。
「お前に訊いてない。彼氏さんに尋ねたんだ」
俺か。
「何でも構いませんよ」
まず頼んだ物が出てくるのかどうかも定かではないが。
「助かった。これしか淹れられないんですよ、私」
あまりじろじろ見るのも失礼なので、彼女と会話をすることにした。
「こんなにいい家に住んでるんだから、お小遣いとかもらえるんじゃないの?」
彼女は顔をしかめる。
「それが全然。自分で稼がないと金銭感覚が養えないからって。まあそう言ったのはあの親父じゃなくて母さんの方だけど」
その教育方針がなければ、彼女と会うこともなかっただろう。
「そういえば、あのお父さんって何歳なの。かなり若く見えるけど……」

128:>>111文章部門応募作品 ◆sfjAAvy1mEyU
10/10/27 19:09:33 a26GUYkE
「もう四十一ですよ、あれ」
「十歳サバを読んでもいけそうだけど」
二十代後半と言っても通用しそうだ。
「精神年齢が低いから、見た目も成長しないんですよ、きっと。この前だって、会社の受付嬢にデート誘われたって自慢するような男だから」
「女にまるで相手にされないような冴えない父親よりはいいだろう」
盆の上に湯呑みと煎餅の入っている皿を乗せた父親が戻ってきた。書類の束を肘でテーブルから落としながら、彼は続ける。
「そこの彼氏だって、相当女子に人気ありそうだけどな」
こちらを見た彼女の視線が、すっと絞られる。こういう時は危ない。下手なことを言うと、しばらく口を聞いてもらえなくなるのだ。
「そんなことはありませんよ」
「どうだか。この前ゲーセンで声掛けてきた女と、ずいぶん楽しそうに喋ってましたけど」
「何回も言ってるけど、あの人はただの同級生だって」
何も今蒸し返すこともないだろうに。親父殿の不用意な発言で、彼女は一気に不機嫌になってしまった。余計なことをしてくれる。
「粗茶ですが」
こちらの苛立ちなどどこ吹く風といった表情で、彼は湯呑みを並べていく。
「あんまおいしくないわね」
「単なる先入観だ。誰が淹れたって茶の味なんて大して変わらないはずだ」
申し訳程度に緑茶に口をつける。熱すぎるので猫舌にはきつい。それにかなり薄い。急須に淹れて即座に湯呑みに注いだのかもしれない。
「ところで親父、何で当然のような顔してソファに座ってんの?」
「いや、初めて娘が連れてきた彼氏がどういう人物なのか、少し興味があってね」
「母さんのそばにいてあげなさいよ」
「うつるからあまり入ってこないでって言うんだ。隣室で待機するしかないだろう」
彼女は茶を呷り、ぐったりと上体をソファの背もたれに預けた。
「じゃあ二人で喋ってなさいよ」
「言われなくてもそのつもりだ」
そう言った父親と、とりとめもない会話が始まった。中学時代のこと、現在の学校生活のこと、来年受検する予定の大学についてのこと、などなど。
「結構遠いね。その大学に受かったら、家を出るのかい?」
「いえ。自宅から通学するつもりです」
「往復で結構かかるでしょう。遊ぶ時間が減るから、あまりお勧めしない」
「遊びに大学に行くつもりではないので」
「真面目だね。娘にも見習ってもらいたい」
二十分近くそんな話を続けて、ふと思う。何でこんなことになってるんだ、俺?

129:>>111文章部門応募作品 ◆sfjAAvy1mEyU
10/10/27 19:10:47 a26GUYkE
無言のままの彼女に助け船を求めようとした。
が、彼女は規則的にトレーナーの胸を上下させて、既に安らかな寝息を立てていた。長い睫毛に縁取られた瞼は、ぴたりと閉じている。
疲れてたのか。そういえば今日は、いつも以上に声に張りがなかった気がする。
「可愛いでしょう」
父親に言われ、彼女の寝顔から視線を引き剥がす。
「昔は私によく懐いてたんですけどね。中学に上がる前後には、もうこんな感じになってしまいました」
「はあ」
「ところで今日は、どうしてこの家に?」
まだ話していなかったか。
「授業が終わって彼女と落ち合ったんですけど、突然雨が降ってきてしまって。彼女、早くどこか屋根のあるところに行きたいと言い出し始めて。僕の傘に入りたがらないし」
ゲームセンターもレストランも気分ではない、というのが彼女の主張だった。まさか家に来いと言われるとは思わなかったが。
「せっかくの機会だ。相合傘でもすればいいのに」
「そういうべたべたした感じの付き合いが嫌いみたいなんですよ、この人」
「へえ」
興味深そうに話を聞いている。娘の恋愛事情など聞くのは初めてなのかもしれない。
「その割に家に招待するあたり、こいつらしい気もするな」
そこまで言った父親は、娘からこちらに視線を移し、目を細めた。
「で、下心を胸に秘めながら、無人と信じていた我が家の敷居を跨いだわけだ」
それを聞いて思う。本当に良く似た親子だ。不機嫌な時、彼女は良くあんな表情になる。
「そんな短絡的じゃないですよ」
それこそこちらの気分ではない。
「気分じゃない、か。中々大人びてるね。いや、若さがないというより、単に遊び慣れしてる印象を受ける」
口調はこれまでと同じなのに、明らかに不快そうにしている雰囲気が伝わってくる。湯呑みを空にすると、溜息を吐いて父親は言った。
「全く、カルチャーショックもいいところだ。一気に三、四歳老けた気がする。こんな状況に直面するのは、もう少し先だと思ってた」
「後半に関しては同感です。立場は違いますけど」
窓の外を一瞬、稲光が塗りつぶした。十秒近く経ってから、小さな落雷の音。落ちたのはかなり遠くだろう。
「率直に言うと、君が憎たらしい」
父親は低い声を発した。

130:>>111文章部門応募作品 ◆sfjAAvy1mEyU
10/10/27 19:11:52 a26GUYkE
「これでも父親だ。一人娘のことは目に入れても痛くないと思ってる。ここが法治国家じゃなかったら、君をたこ殴りにして、そこのベランダから放り捨てている」
冗談に聞こえない。
「君から交際を申し込んだそうだね」
彼は、こちらがさっき言ったことを憶えていた。
「ええ」
「娘のどこが気に入ったんだ」
「難しい質問ですね」
「答えてもらうよ。君には説明する義務がある。『何となく』で娘にちょっかいを出されているのだとしたら、親としては辛抱ならない」
リビングに沈黙が訪れる。ワイドテレビやDVDデッキ、硝子テーブル、続き部屋のキッチン、冷蔵庫、食事用テーブル、そこに収まった四脚の椅子。あちこち視線が彷徨う。
ただ一人、父親だけを避けて。
この感情を言葉に変換しようと思ったことがない。そもそも変換できる気がしない。仮に向こうが納得しても、それは誤解だと、俺自身が訂正しそうな気がする。
「……すいません。どれだけ考えても、他人にこの気持ちは伝達できそうにありません」
呟きが消えると、また無言の時間がやってきた。父親はこちらから一瞬たりとも目を逸らさない。まだ俺が何か言うのを待っているのか。
突如、部屋に白光が差し込んだ。さっきと比較にならない光量。一秒と経たずに、轟音が耳に到達した。
「……ん?」
隣で眠っていた彼女が目を覚ます。こちらと父親を見比べた彼女は、どちらともなく尋ねた。
「喧嘩してんの?」
お前を巡ってな、という言葉はどうにか飲み込む。
「まさか」
腹立たしいまでにおどけた調子で、父親が否定した。
「男同士、色々と語り合ってたところだ。ね」
「ええ、まあ……」
「すごい雨だけど、先輩、帰りはどうします。うちの車で送ってあげてもいいけど」
どうせ運転手はこの親父さんだろう。車中で何を言われるか判ったものではない。
「歩いて帰るよ。傘ならあるし、ここからなら駅も近いし。じゃあ、そういうことで」
足元の鞄を持って腰を上げると、彼女は意外そうな顔をした。
「もう帰るんですか?」
「うん。そっちもなんか疲れてるみたいだし」
「なら私が送ろう」

131:>>111文章部門応募作品 ◆sfjAAvy1mEyU
10/10/27 19:15:13 a26GUYkE
父親が言った。慌てて辞退を申し入れる。
「いえ、お気遣いなく」
「遠慮するな。君が風邪でも引いたら、俺が娘に嫌味を言われちまうんだ」
無言で寝室に入って行った父親は、車のキーを片手にすぐ戻ってきた。
「なんかすいません、先輩。今度埋め合わせしますから」
珍しく頭を下げている彼女に言う。
「いや、いい勉強になったよ。お父さんが話相手になってくれたおかげで、興味深い話が聞けた」
「嬉しいこと言ってくれるね。娘の彼氏と話すのなんて初めてだから、少し不安だったよ」
鍵を掌で弄びながら、父親が言った。
「それじゃあ行こうか。未来の息子よ」
彼は玄関のドアを開けて、こちらを待っている。傘を片手に外へ出ると、父親は囁いた。
「あんなんじゃ納得できないな」
廊下のエレベーターに向かって歩を進めながら返す。
「はい?」
「娘に惹かれた理由だ。当人同士でだけ満足してもらっても困る。あくまで親としての意見だが」
「なら爽やかな弁舌で彼女への愛を語りつくせば、納得しましたか」
「そんな安っぽく自分たちの恋愛を語るような奴は無言で張り倒す」
「それじゃあどうしようもありませんね」
「そう―どうしようもないんだ」
上がってきたケージに一緒に乗り込む。地下駐車場のあるB1ボタンを押した父親は、短く独白した。
「結局のところ、誰が来たって俺は認めないんだろうな」
自分の倍以上の人生を送っている、その一児の父親に掛けるべき言葉を何も思いつけないまま、エレベーターの扉が開いた。
「……とまあ、人間幾つになっても悩みは尽きないわけだ」
薄暗い地下駐車場に、二人分の靴音が響く。
「大いに悩んでくれ。何の因果か今日はこんなことになったが、できれば君とは二度と会いたくないもんだ」
「こっちはまた会うつもりですよ」
前方を歩いていた男の足がぴたりと止まったが、気にせず続ける。
「喧嘩腰の父親なんて気にならないくらいには、彼女のこと好きですから。俺」
「……なるほど」
左ハンドルの赤い車に乗り込んだ男が、窓から顔を出す。
「そのふてぶてしさは嫌いじゃない。次に君が家に来るまでに、ムエタイでも習っておこう」
「楽しみです」
助手席に座り込みドアを閉めた途端、一児の父が運転する車は急発進した。

132:創る名無しに見る名無し
10/10/27 19:16:58 a26GUYkE
おわりです

133:創る名無しに見る名無し
10/10/27 21:39:07 EOChHwR7
>>115
確かにダンディだけどw
格好良くは(ry

>>122
お題を扱いかねたのはよく分かったw

>>125-131
パパなかなか茶目っ気があってナイスだなw

134:創る名無しに見る名無し
10/10/28 02:39:56 Pl2bkJm0
圧倒的乙!
この調子で投下増えれば良いんだが…

135:「ある秋の夜に」1/7 ◆LV2BMtMVK6
10/10/31 19:08:54 R3zqHXpc
彼と出会ったのはもう一年以上は前になるだろう。

 それは雨の降りしきる寒い秋の日のことで、私は通りに面した本屋に佇んでいた。
たまたま外出せざるを得なかったのだが、用を済ませてみれば特に目的もなく、
買う当てもなく本屋の軒先をくぐったのである。
季節はいかにも侘しく、畳んだ傘の先からは水滴が、いかにも所在なさげな風情で落ちていく。
青白い蛍光灯の明るさがなんだか暖かく感じられたのは、外の重く垂れ込めた寒々しい空気のせいに相違なかった。
私は窓際へ寄って立ち読みをするような素振りでいたが、開かれたページには大して注意を払っていなかった。
その本は現代科学では考えられないような―つまり怪奇的な―趣向が随所に見られるような本で、
確かに幾分の好奇心をくすぐるべくして書かれていたようだったが、特に興味を惹かれたというのでもない。
偶然開いているスペースに陳列されていたに過ぎず、言葉は悪いが期待して手に取ったわけでもなかった。
折りしも店へ客が入ってきて、顔を上げる。
本屋の中には雨宿りの客がちらほら見えたが、活気はなかった。
それはひとえに気候のせいであったかもしれない。
帰れば暗く寒い部屋が待っている。
そしてこの雨―!
ともかく私は本へ目を戻そうとした。
錬金術を扱ったページを繰る手が、ふと止まった。

136:「ある秋の夜に」2/7 ◆LV2BMtMVK6
10/10/31 19:09:43 R3zqHXpc

もちろん、本の内容に目を留めた、というのではない。
私の視線は、店先に滴り落ちる雨だれの先、一つのシルエットに注がれていた。
その男の姿に、私は確かに見覚えがあった。
しかし、どこで会ったのだったか。
仕事で?違う。
生活に関わる人々を思いうかべるが、答えは見つからなかった。
しかし、私の内奥の何かが反応していたのだ。
あるいは親戚か何かであろう、行く先を見れば思い出すに違いない。
その思いつきは、こんな本を眺めているよりずっと強く心を揺さぶった。
早々にオカルト本を戻し、店を出る。
「ありがとうございました―」
追いかけてきた声は空しく響くと雨だれに絡んで落ち、側溝へと流れていった。


137:「ある秋の夜に」3/7 ◆LV2BMtMVK6
10/10/31 19:10:34 R3zqHXpc
十数分の後、私は悄然として帰途についた。
見失ったのだ。
人ごみにまぎれたわけでもなく、路地が入り組んでいたのでもない。
既に街灯には灯りが点り、靴の下では水分を十分に含んだ芝がぴちゃりぴちゃりと音を立てた。
釈然としなかったが、これ以上好き好んで戸外にいる必要はなかった。
しかし、あれは誰であろう。
外出の疲れもあり、そろそろ空腹を覚え始めていた。
つい先ほど閉じたページに同じ人物の肖像があったことなど、思い出す由もなかった…………。
「こんばんは」
声に思わずびくりとする。
私は背後へ振り返った。

それが彼―名は無数にあるのだが―錬金術師との出会いだった。

138:「ある秋の夜に」4/7 ◆LV2BMtMVK6
10/10/31 19:11:27 R3zqHXpc
私は混乱していた。
彼を前にして、なおその名を思い出せなかったからである。
彼が口を開いた。
「失礼だが、何か御用がおありかな?」
答える術はなかった。
声は続けた。
「失礼、我輩は身辺と幼女には気を使っているのでね。先ほどから尾行しておられたように思ったが」
シンペン、ビコウ、ヨウジョと聞きなれない言葉の意味を考える間はなかった。
「よろしければ、お力をお借りできないだろうか」
その言葉に我に返る。
簡単に説明できることだ。
私たちは近くにあるファミリーレストランへ入った。


139:「ある秋の夜に」5/7 ◆LV2BMtMVK6
10/10/31 19:12:22 R3zqHXpc
暖かい明かりの中に見る彼の服装は、少し古風な、しかしセンスはよいものだった。
私は説明に移った。
「……というわけなのです。どこかでお会いしたことがあるのかな、と」
「我輩にはついぞ見えた記憶などないが……しかし、代は移り代は変わる」
片めがねの縁がじわりと反射する。
意味深長な笑みの意味は測りかねた。
そんなことよりハンバーグセットのほうが先だ。和食セット大盛りだ。
「ところで、力を貸してくれ、と申した件だが」
彼の丁寧な言葉遣いによれば、この国を訪れたばかりらしい。
旧来の因縁の宿敵のあとを追っている、という出来の悪いファンタジーのような説明を聞いて反応に困る。
今は21世紀なのだ。
なんでも敵は少女の姿をしていて、非常な長寿を誇るらしい。
空樹スカイツリーが建つ時代にそんなことがあってたまるものだろうか。
おまけに彼は錬金術師なのだという。
それを聞いて私は先刻の見覚えが腑に落ちたが、このご時勢に、錬金術師。
妄想に駆られてどこかの病院から逃げてきたのではないだろうか。
しかし、彼の服装がその考えを押しとどめた。
19世紀の洒落人と言われても通るようなその姿には、幾分の説得力が確かにあった。
「……滞在先に難儀している」
しまった、話を聞いていなかった。滞在先に……つまり無宿人なのか。
「ついてはご厚情にすがりたく」
要するに泊めてくれ、ということか。


140:「ある秋の夜に」5/7 ◆LV2BMtMVK6
10/10/31 19:13:15 R3zqHXpc
狭い部屋に、二人の男の姿がある。
「貴殿を認めた我輩の目に狂いはなかった」
彼は向こうを向いて何か言っている。
手元には私の本棚から引き出した雑誌と思しきものが何冊かあって、
「える、おー、とな……」
どういう内容のものかは想像がついた。
錬金術師、という職業(それが21世紀の職業であるのならば、だが……)に携わっている人間とも見えないが、
彼の目的は賢者の石を持て幼女を不老不死化、及びその美の固定化を図ることにあり、
既に二百年以上遡った過去、それに成功しているのだ。
真偽のほどはともかく。
最初の被験者が彼の言うところの「宿敵」らしい。
狭いとはいえ人を泊められないこともないし、つまらない日々、
ちょっと変わったことがあっても良かろう。
こうして奇妙な合宿は始まったのだった。


141:「ある秋の夜に」7/7 ◆LV2BMtMVK6
10/10/31 19:15:09 R3zqHXpc
しかし、しばらくして私は後悔することになる。
彼が「索敵」に出て戻らなかったある日の朝のこと、地方新聞の面に目をやった私は文字通り仰天した。
そこには見覚えのあるあの姿があった。
見出しが躍っている。

「最近増加の声かけ事案解決へ!」
「女子児童に不審者の手、通報は主婦」
詳しく記事を読む気には……ならなかった。
確かに彼は紳士だったのだ。




:. .:::::。:::........ . .:::::::
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. ∧∧ .... .... .. .:.... ........ .... .. .
 (   )ゝ無茶しやがって… ..........
  i⌒ / .. ..... ................... .. . ...
  三 |  ... ............. ........... . .....
 ∪ ∪ ............. ............. .. ........ ...
  三三
 三三 


142: ◆LV2BMtMVK6
10/10/31 19:16:16 R3zqHXpc
以上、終了です。

143:創る名無しに見る名無し
10/11/01 01:23:23 HtYyYnIS
表表紙より裏表紙の方が恥ずかしい雑誌ですか。

144:創る名無しに見る名無し
10/11/01 06:49:02 moaXVPY9
6/7投下してくれ~

145:創る名無しに見る名無し
10/11/01 06:51:23 moaXVPY9
すまん、勘違いしたんず。
面白かったよ投下お疲れ様~

146:わんこ ◆TC02kfS2Q2
10/11/06 21:08:52 hr86F1BY
「カッコいい」おじさま。とは自分の中ではこーらしい。
これでいいのかな。

147:電車 ◆TC02kfS2Q2
10/11/06 21:10:47 hr86F1BY
「父は、いません」
幼さの残る来訪者に雪子は困惑していた。
制服を着ているというより、着させられている印象が強い来訪者。カーディガンの袖から指先だけが見える。
細い脚でここまでやって来た。彼女は訪問先で雪子から同じ言葉を繰り返し聞くことには、既に慣れっこになっている。
「梢さんの心遣いは有り難いのですが」
「きょうで最後にしますから。それから、穂坂さんって呼んで下さい。苗字で」
深くお辞儀をする姿を見た雪子は梢に我が家の敷居を跨ぐことを許し得るしかなかった。

年の離れた妹のように使うことのない気を使いながら、雪子は梢を応接間へと案内する。
ぎしぎしと廊下が軋み、まるで梢の訪問を拒むかのよう。しかし、梢はそれを受け止める気配がまったくない。
「どうぞ」と慣れた口調で梢を応接間に案内すると、梢はメガネのつるを摘んでかけ直す。
水屋にはグラスが並び、本棚には昭和をにおわせる蔵書が幅を利かせる。数々のトロフィは光沢を失わず、部屋の壁紙の趣味も品が良い。
「何度目でしたっけ」と、雪子の声を聞きながら梢は既に見慣れた応接間を見渡していた。
「失礼します」
深々と慇懃にお辞儀する梢の姿が雪子の淡い瞳に焼きつく。梢につられて雪子も腰を掛けた。
やや遠慮がちに梢はチェックのスカートを押さえてソファーに座り、ガラスのテーブル越しに梢の揃った白い脚が雪子の目に飛び込む。
膝小僧がまだ、初々しい。

「この部屋のものは、お父さまのものですか」
「はい」
沈黙が合間を挟んだ。
「梢さん、お茶でも入れましょうか」
「はい」
その場から立ち去る言い訳のように、雪子は応接間の戸を開ける。梢は雪子を目線で追いかけていた。
一人、梢だけが応接間に取り残される。応接間にひしめく数々のものと共に。

本棚を見れば人となりが見えるという。この言葉を裏切ることない部屋を梢はゆっくりと見渡した。
自分の思い描いていた通り。言葉は梢を裏切ることはなかった。そのうち、雪子がお盆に湯飲みを乗せて
梢が一人で待つ応接間へと戻ってきた。癖なのか、梢は再びメガネのつるを掴んでいた。
そして、雪子に敬意を払うと同時に部屋の持ち主の印象を述べはじめる。あくまでも、梢目線なのだが。素直で率直で捻くれも無く。

「雪子さんのお父さまは立派な方です」
「父も喜ぶでしょうね。こんなお嬢さんに立派だなんて声をかけられたら」
「わたしは度々、雪子さんのお父さまにお会いしていたのです。ええ、もちろん不健全な出会いではなく」
自信に満ちた梢の瞳に吸い込まれるのではないかと、雪子は背筋を凍らす。
雪子と梢の間には、凍てつく川のように流れがなかった。固まって、そして冷たくて。
氷を削るように話し出す、梢が湯飲みを両手に納めながら。
「通学途中の電車の中でよくお目にかかっていたのです」
「父と、ですか」
「ええ」

148:電車 ◆TC02kfS2Q2
10/11/06 21:12:56 hr86F1BY
見えない鎖で体が締め付けられている。雪子はこの場から逃げ去りたいと思っていたが、そんなことは許されない。
縛られた雪子が纏う衣の袖を弓矢で射抜くが如く、梢の言葉が彼女の動きを封じ込めた。無理に逃げると、今度は矢で傷つけられるかも。
「一瞬の出来事でした、あれは。でも、雪子さんはご存知ですよね」
緑茶を口に付けると、梢の二の句が続く。
「恐ろしい出来事は、どんなに短くても長く感じることを」
梢に習って、雪子も緑茶に口を付ける。こうして、自分の心情をごまかせばよい。
だが、梢の言葉は誰よりも冷徹で慈悲がなかった。再び二つ目の矢が雪子の袖を狙って飛んでくる。
「わたしは雪子さんほど長く生きていませんが、あのときは雪子さんが感じた恐ろしい出来事よりもはるかに恐ろしいと感じた自信があります」

あの日以来、梢と雪子の父・宗太郎との関係が、ただの乗客から違う意味の関係になってしまった。
いつもの朝の、いつもの車両。梢は車内扉のそばの握り棒により掛かり、宗太郎は遠くのつり革に掴まっていた。
ローカル私鉄だからか、そんなに乗客は多くない。余裕で新聞を読む広さもあるが、誰もそれをしなかった。
宗太郎の頭は他の客より一つ抜き出て、つり革を持つ手もやや困っている様子でもある。
梢は梢で毎日見るこの紳士の声を想像する。思い描いていた声ならば、それとも違ったものか。確かめる術はないが、梢の密かな楽しみだった。
電車はホームにゆっくりと滑り込み、扉を一斉に開ける。ぱらぱらと電車に乗る客、そそくさと降りる客。
その風景を梢はメガネのつるをつかみながら眺める日々を送っていた。ハトがホームから電線へと飛び移る。

149:電車 ◆TC02kfS2Q2
10/11/06 21:14:10 hr86F1BY
「駆け込み乗車はお止めください」
事務的なアナウンスが響く中、ホームから駆け込んでくる青年の影。
電車が走りだす素振りを見せないのに、青年の顔は鬼のようだった。
袈裟懸けにしたバッグを揺らしながら、梢のいる入り口目掛けて走りだす。
バッグから青白く光るもの。鈍く、妖しく、美しく。梢は反射的にそれを見てしゃがみこんだ。
傷付けるためだけの研がれたナイフ。青年に握られて、梢の喉元を目掛けて風を切る。

「あぶないっ」
梢の目の前を遮る。その姿、梢に見覚えあり。青年は顔を曇らせる。
何故なら青年が強く握り締めていたナイフが、梢の前に飛び出した者の胸を深く傷つけていたからだ。
ワイシャツにバラの花を差している訳ではないのに紅くぽつんと。じわじわと白い生地に広がる血痕。
そして宗太郎の口からどす黒い血が。肺が痛む。思ったよりも傷が深い。青年の顔が更に曇る。
車内にしゃがみ込んだままの梢のスカートが捲れても気にはしない。それどころではないから。
何も出来ないホームの青年の方へと宗太郎は降りる予定ではなかった駅で、崩れるように降りて倒れた。
青白い刃物は赤く染まり、紳士を嘲笑うかのように血を滴らせる。つんと血腥い匂いが人の群れを退ける。

ざわつく駅構内。
逃げるハト。
目を伏せる少女。
携帯電話を操る少年。
乱れる人を仕切りだす中年男性。
跪く若い女性。
誰もがそれぞれの行為で、その事件の反応を示す事実。
決してそれは、不自然ではなく、当たり前で。
「きゃああああ!」
梢の乾いた叫び声もまたしかり。

初めて梢が宗太郎の声を耳にした日でもあり、宗太郎の姿を見るのが最後の日でもあった。
青年は死神に魂を奪われたように、その場に固まり生きる証拠を見せようとはしなかった。
「ですよね。だって、目の前で人が死んじゃうんだから」
「梢さん」
「穂坂さんって呼んでください。苗字で」
忘れたくない出来事ほど、梢の脳裏に刻み込まれ、嫌というほど傷に塩を塗られる。
これで、終わりにするんだ。終わりなんだ。と、梢は反芻していた。

150:電車 ◆TC02kfS2Q2
10/11/06 21:18:12 hr86F1BY
実行犯の青年の供述では「とにかく、いちばん狙い易そうなヤツにしようと思った。真っ先に目に入ったのが女の子だった」と語る。
この国は法治国家。法律の裁きが全て。とやかく人から言われる筋合いはないと、六法全書が知ったかな口を利く。
裁判長は神。判例は神話。人が神になることを国が認めるなんて、おかしい話ではないのだろうか。梢は悩む。
「いまごろ、犯人は天から、人からの裁きを受けてしかるべき償いをしているんでしょうね。この国が確かなら」
「ええ」
「ただ、それではあまりにもわたしたちが報われないんじゃないでしょうか」
湯のみの音が応接間に響く。梢が湯のみをテーブルに置いたのだ。
今だに収まらぬ梢の湯のみの緑茶の波は、雪子の鼓動と共鳴していた。

「あんな立派な人が刺されてしまうなんて、わたしには理解が出来ないんですよ」
「そう申されても、困ります」
「ですよねえ。でも、わたしはあなたにわたしの話を聞いていただけるだけで救われるのです。
だから、わたしがここに来るのをきょうでおしまいにしたいのです。ねえ、お分かりですか」
梢はメガネのつるをつまんで、声のトーンを落としていた。
雪子は雪子で、自宅で無い居心地に心もとない不安を感じずにいられなかった。

あの日以来、梢と雪子の父・宗太郎との関係が、ただの乗客から違う意味の関係になってしまった。
誰のせい。
誰のせい。
誰かのせいにしなければ、梢は気持ちを整理できない。
わたし。紳士。青年。それとも。

一番簡単なのは、自分のせいにすることだ。
「わたしが刺されればよかったのです」
これ以上にない感情を忘れた声で梢は続けた。
「あなたの弟さんに」


おしまい。

151:わんこ ◆TC02kfS2Q2
10/11/06 21:19:18 hr86F1BY
これでいいのかな。おじさま。
投下終了。

152:創る名無しに見る名無し
10/11/06 23:48:12 2LO5oPt5
>>135-141
ダンディっていってこいつを出してくるかwww
こいつ……正しい!

>>147-150
梢さん怖いです
法廷の判決は復讐の感情を満たしてはくれんわな

153:創る名無しに見る名無し
10/11/10 18:48:17 nbpk82SM
まだまだ「カッコいいダンディなおじさま」作品募集age

154:創る名無しに見る名無し
10/11/14 03:50:52 FnbXGmhK
ラジオ聞いてて思ったんだけど>>115の絵はなかったことにしてくだされ
あれはほんの出来心やったんや、ただ投下一番のりしたかっただけで……
あんなもんで投票どうしようとか悩まれると心が痛いw

155:創る名無しに見る名無し
10/11/14 03:55:57 HT2JJxEE
なおさら>>115に入れたくなったぜ……ヒャッハァー!

156:開催!KDO選手権 ◆91wbDksrrE
10/11/14 19:35:58 JmvBrD64
 誰かが言った。男はダンディでなければならぬ、と。 
 誰かが問うた。では、ダンディとは何ぞや、と。
 誰かが答えた。その問いの答えは、男の中の男を決めれば自ずとわかる、と。
 そうして"闘い"は、馬鹿馬鹿しくも真剣で、愚かしくも輝かしい"闘い"は始まった―
 カッコいい、ダンディーなおじさま選手権試合。通称、KDO選手権。
 ダンディとは、即ち強さである。故に、最強である事こそがダンディである事の証左となる。
 なれば、最強の者が体現する生き様こそ、ダンディと定義するに足る物である。
 これは、その第三十一回大会における、一人の参加者の物語―

        ★      ★

「せぁっ!」

 気合の声と共に放たれる攻撃を、男はもろに食らった。
 それまでしっかりと前を、つまりは声の主を見据えていたはずの瞳が、くるりと
白く剥かれ、ヒゲをたくわえたダンディと言えなくも無い顔は驚きと衝撃に歪み、
その大きな身体はドスン、と音を立てて倒れ伏した。
 そして、倒れ伏した男の向こうに、その一撃を放った小さな影がみえた。
 その影は、端的に言って小さかった。
 倒れ伏した男の向こうに見えたその童顔も含め、誰もが、まるで少女のようだと、
そう思っただろう。
 そして実際その通りだった。
 短く整えた髪を二つに結び、勝気な瞳をした、背丈の小さい男の子。そう言えば、
確かにそうとも見えたかもしれないが、さにあらず、彼女は歴とした女の子であり、
道着の胸元のわずかな膨らみが、その事実を観客にも理解させていた。
 彼女の名は、天玄院小花(てんげんいん しょうか)。
 このKDO選手権始まって以来初の、女性参加者であった。

「……ったく、こんなムサイ大会、ちゃんと女は出られねえって決めとけよなぁ……」

 言葉遣いは男のようだったが、その声音の高さも含めて、やはり彼女は女であると、
そう観客が理解した頃には、既に彼女は踵を返していた。
 汗一つかかずに、彼女は控え室へともどっていく。
 対戦相手を一撃で蹴倒したのだから、それも当然だった。

「だいたい、これオレが出る必要あんのか? 師匠でもいいんじゃねえの……?」

 KDO選手権は、その名に反して大会規定に性別の条件は無い。ダンディとは
何ぞやを問うにあたって、もしかしたら女性こそがその真髄を知るやも知れぬ、との
事で門戸は開かれていたのだという。
 だが、その名もあってか、あるいは女性たちがムサ苦しい男たちと戦う事に嫌悪感を
覚えてか、理由は定かではないが、第三十一回大会に至る今回まで、女性参加者は
存在しなかった。
 では、そんな大会になぜ彼女が、小花が出場しているのかと言えば―

「まあ、でも……師匠弱ええからなぁ……オレがやんなきゃ、優勝賞金もゲットできねえか」

 ―それは、大会の優勝賞金、一千万円を獲得する為だった。
 第三十回を記念して、昨年の大会から副賞としてつけられるようになった賞金。
 よくある話ではあるが、小花の所属する道場―先祖代々の道場で、その名も彼女の
苗字と同じ、天玄院流徒手空拳術道場という―は、かねてからの少子化の煽りを
受け―と彼女の師匠は言っていたが、実際には彼女の師匠がよわっちいからだと、
小花は思っている―経営難に直面していた。今や道場には、直系の直弟子である
小花しか生徒はおらず、道場を差し押さえられてしまうまであと僅か、といった具合であった。
 それ故に、彼女はこの大会に出場しているのだった。
 ……正確に言えば、出場させられているのだが。

「つええ奴と戦えんなら、出る意味もあるってもんだけど……なぁ」

 一回戦の相手は、図体がでかいだけだった。そう小花は思っていた。

157:開催!KDO選手権 ◆91wbDksrrE
10/11/14 19:37:42 JmvBrD64
 彼女が様子見に、得意技である後ろ飛び上段回し蹴りを放ったら、それを呆気無く
喰らって、一撃で失神するような素人だったと。
 だが、実際には小花の一回戦の相手は、プロのキックボクサーであり、地上波放送
をやっている某団体にも出場した事のある、有名な選手だった。尚、小花はテレビなどを
ほとんど見ないタイプなので、その選手の事は全く知らなかったのだが。
 そんな一流選手相手に、どうして小花の一撃は決まり、尚且つその一撃で相手が
失神するような事になったのか。まずはそれを説明せねばなるまいが、紙面の都合上
『天玄院流とは、そういうものである』という事でここは一つ納得いただきたい。
あとはまあ……『男は皆ロリコンだから、油断してた』的な感じで。え? 異論が
ある? 知るかそんなもん!
 そうして控え室への帰り道を、のんびりと歩いていく小花だったが、そんな彼女の
身に、一つの異変が起こりつつあった。

「しっかし……なんかさっきから、体中がピリピリしやがるな……」

 まるで、小さな小さな、爪楊枝よりも小さな針で、全身をちまちまと突っつかれて
いるような感触を、彼女は全身に感じていた。
 彼女は知らない。それが、会場から、あるいはカメラを通して自らに注がれる、
日本中からの視線である事を。突如現れた小さなスターに、日本中が注目し始めた事を。

        ★      ★

 KDO選手権は、一週間かけて、決勝までの全五回戦を消化していく。
 七日間の間に、決勝まで、シード以外の選手は最大で五試合を戦わなくてはならない
という事になる。当然、小花も決勝に残る為には四試合に勝たなくてはいけないわけ
だが―端的に言って、小花は楽々とその三試合目までを勝ち上がった。
 そして迎えた四試合目―準決勝で、路上の闘いでは無敵と称された喧嘩屋と向き合った
時には、彼女は既に日本中でその名を知られる存在となっていた。
 決して大きくは無い―というか、ぶっちゃけ小さい―体躯。吊目がちだが、どこかの
子役かと思う程に整った容貌。そんな姿であるにも関わらず、頭二つ三つは大きな男を、
時には拳で、時には足で薙ぎ倒していく、その強さ。
 試合時間が二分を経過した時だった。
 男の繰り出す、ラフな攻撃をかいくぐり、小花は足払いを繰り出す。
 攻撃を放ったばかりの男は、その足払いを避けきれず、態勢を崩した。
 だが、身を沈めて足払いを放ったが故に、同じく態勢を崩していたはずの小花は、
既にその身を起こしていた。小さな体躯と、その身体の中に詰まったバネを利し、
まるで身を沈める時の動きを逆再生でもしたかのように、片手だけで身体を直立の
態勢にまで立て直したのだ。
 それを視界の端で確認した喧嘩屋の男は、その表情を驚愕に歪めた。
 本来、闘いとは……特に喧嘩とは、有利な態勢の取り合いであると言っていい。
リーチに差があるならば、相手の届かない距離からパンチを、蹴りを打ち込む事が
できる。逆にこちらのリーチが短いならば、相手の懐に潜り込めば、相手の距離を
つぶし、近距離で打ち合う事ができる。そうなれば、支点と力点の関係上、リーチ
の短さを逆に活かす事ができる。
 あるいは、どちらであっても、相手の背を地につけ固定し、馬乗りになって殴る
事ができるなら、一方的な攻撃ができる。
 有利な態勢。間合いと言ってもいいだろう。その奪い合いこそが、闘いの肝だ。
 だが、その奪い合いには、当然ながら相応のリスクが伴う。相手の態勢を崩す
為の行動は、同じく自分の態勢を崩す事にも繋がりかねない。例えば、先ほど
小花が放った足払いがそうだ。身を沈め、相手の足を払う攻撃は、不意をつかれれば
かわす事は難しい。だが、その為には自らの身を沈める―自ら態勢を崩す必要が
あるのだ。もしもかわされれば、一方的に不利になるし、仮にかわされずとも、
自らの態勢も崩れているが故に、そこまでの利を得る事は叶わない。
 本来ならば。

「なん……だと……」

 呟いた男の声は、果たして声になっただろうか。
 男が路上最強と謳われたその理由は、間合いを制する事が得意だったからだ。
時には背を向けての戦略的撤退をする事すら厭わずに、相手の間合いを把握し、

158:開催!KDO選手権 ◆91wbDksrrE
10/11/14 19:38:46 JmvBrD64
それを制する嗅覚に長けていたからだ。そして、一時的に相手に奪われた間合いを
回復する事にも。
 だから、態勢を崩された所で、すぐに踏みとどまり、相手と同時に、あるいは
相手よりも早く態勢を立て直す自信はあった。これまでの喧嘩では、そうやって
勝ってきたのだから。
 だが、踏みとどまるよりも先に放たれる攻撃を、どうやって避ければいいと
言うのか。男の経験に、そんな状況はありえなかった。
 三十年という年月を、そうやって喧嘩に明け暮れてきた男の、最早それしか
存在していないとも言える自尊心は、少女の小さな足で木っ端微塵に砕かれる事になる。

「…………!?」

 苦悶の声は出せなかった。
 直立した態勢から、腰を回して放つ直蹴りと回し蹴りの中間蹴撃。いわゆる三日月蹴り
が、男の無防備な脇腹に突き刺さる。
 まるで自分よりも大きな男にレバーブローを食らったときのような衝撃。

「……っ」

 そこに加えられる、さらなる攻撃。無呼吸のまま連続で放たれた後ろ回し蹴りが、
男の首筋を刈る。それは、同時に男の意識をも刈り取っていた。
 その動きもまた、本来の格闘技にはありえない、小花の小さな身体とその柔軟性を
活かした、彼女にしかできない動きだった。
 どう、と音を立てて男の身体がリングに崩れ落ちる。
 同時に鳴り響く、準決勝戦の終了を告げるゴング。

「……よし」

 小さな身体に見合った小さなガッツポーズを見せるその姿に、会場が割れんばかり
の声援が注がれる。
 こうして、天玄院小花はKDO選手権の決勝へと進出したのだった。

        ★      ★

 彼女の強さの秘密とは、一体何なのだろうか。
 どのような不意をつく攻撃、相手が無防備な所に放てる攻撃、本来有り得ない連撃を
放つ事が出来たとしても、彼女のような軽量で放った所でたかが知れているのが、本来の
格闘技―物理の法則というものだ。
 しかし、そんな彼女特有の動きに、天玄院流の"技術"が合わさった時、彼女はその
小さな身体に見合わない、大男すら打ち倒せるだけの力を発揮する。
 故に、彼女は強いのだ。
 では、その天玄院流の"技術"とは、一体なんなのだろうか。

「……まるで魔法だな」

 一人の男が、小さなガッツポーズをしただけで、笑顔も見せずにリングを後にする
少女の姿を見ながら呟いた。
 彼は知らない。自らのその呟きが、実は正鵠を射ているという事を。
 知る由も無い。そんな力が、現実にこの世に存在しているという事など。
 だが、男は知っていた。この少女が、自らの前に立ちはだかる事を。

「ふふ……面白い」

 口元を見ればわかる。男が不敵な、まさしくダンディと言うに相応しい
笑みを浮かべている事が。
 だが、口元以外の表情は、その顔を覆う布に包まれて判別できなかった。
 顔を覆う布―マスク。
 そう、男はマスクマンだった。
 そして、その表情を覆い隠すマスクの形は―パンツ。

159:開催!KDO選手権 ◆91wbDksrrE
10/11/14 19:39:21 JmvBrD64
『SSP! SSP!』

 モニターから、次の少女の対戦相手へのコールが聞こえてくる。
 それはつまり、彼の名を呼ぶ声だ。
 スーパーストロングパンツマシーン。略してSSP。
 それが、彼の名―

「……二代目として、初代を超える踏み台にさせてもらうぞ、天玄院小花」

 これまでの相手は、小花の体躯故に、心の奥底のどこかに遠慮にも似た
気持ちがあったのかもしれない。だが、この男にはそれは一切無かった。
 天玄院小花と、二代目SSPことSSPⅡ。
 会場内で交錯する声援が、そのまま二人の闘いへの期待を示していた―

        ★      ★

 決勝は、これまでと会場を変え、某スーパーアリーナのスタジアムモードで行われる事になった。
 当初はこれまでと同じ会場でという事だったが、"無敵の妖精"(インビンシブル・フェアリー)
天玄院小花と、"二枚目のパンツ"(ザ・セカンドパンツ)SSPⅡの人気が異常なまでに膨れ上がり、
収容人員を増やさなければ入りきらないという事で、急遽会場が変わったのだった。
 そんなこんなで、決勝は予定よりずいぶん遅れて開催される事になった。

「……師匠」
「なんやー」
「師匠はどうして似非関西弁でお喋りになるのですか?」
「そのほーがキャラが立つやん」
「立ててどうするんですか」

 その間に、小花は一旦道場の方に戻っていた。試合の間は、選手用の宿泊施設に泊まっていたのだが、
しばらく決勝まで時間があるとの事で、一旦気の休まる場所に戻ってきたというわけだ。
 そして、何日かぶりに師と再会していたのだが―

「って、そんな事を聞きたいんじゃないですよ」
「んじゃ聞くなや! ビシッ!」
「決勝戦の相手、ご覧になりましたか?」

 普段の男勝りな口調が嘘のような丁寧な口調で小花は師に問いかける。
 当然、師の後ろ手ツッコミ擬音付きはスルーだ。
 師は、その事に軽くムッとしながらも、その大柄な身体を道場の壁に預け、口を開いた。

「ああ、あのけったいなマスク被ったやっちゃろ?」
「あの男……強いですね」
「ああ、わかったか。あいつみたいなんがまだおったとはなー」

 決勝戦での小花の対戦相手、SSPⅡ。彼の決勝までの試合は、率直に言って無茶苦茶だった。
 プロレスラーであっても、格闘技の試合でプロレス技を出す事は難しい。何故ならば、プロレスの
技という物は、相手の受け、つまりは技をあえて受けるという意識が無ければ、基本的にはかからない
物だからだ。これは、見栄えのいい技をかけて見せる事で、試合を派手に演出するエンターテインメント
である所のプロレスが持つ、構造的な欠陥であり、長所でもある。相手の協力が必要であるという
短所故に、危険な技であっても覚悟を持って食らう事ができる為、怪我などをしにくいのだ。
 だから、プロレスラー同士以外が戦った場合、プロレスの技、例えば背後に回って投げ捨てる
スープレックスなどの投げ技、足四の字固めやサソリ固めなどの複雑な固め技、ラリアットなどのプロレス
特有の打撃技などなどは、ほとんど実効を発揮しない。
 だが、SSPⅡは、これらのプロレス技で勝負をも決め続けてきている。
 一回戦は足四の字固めでギブアップを奪い、二回戦は投げっぱなしドラゴンスープレックス
でKO、三回戦はロメロスペシャルでギブアップを奪い、準決勝は垂直落下式ブレーンバスター
二連発でKO勝利と、ありえない度合いでは小花とどっこいの戦績だ。尚、技がどんなものか
わからない人は画像検索でぐぐろう。

「怪力、言うたら手っ取り早いけど、あんなん普通ならありえへんわな……普通なら」

160:開催!KDO選手権 ◆91wbDksrrE
10/11/14 19:39:58 JmvBrD64
「……つまり、あの男は」
「せやな。もしかすると……うちらと同じような"技術"、持っとるんかもしらん」
「天玄院流・気当(きあたり)……」
「あいつの場合、打撃の威力を増す、いわゆる通しみたいな効果やのーて、身体能力を増加させる
 ような感じの奴みたいやけどな。うちの流派にゃ、あんな腕力出せるようになる"技術"はあらへん」
「ですね」
「まあ、せやから……うちから言えるんは一言だけやな。―頑張りぃ」
「ええ、まあ、師匠からのアドバイスはあんまり期待してませんので、それで十分です」
「なんでやねん!?」
「だって、師匠弱いじゃないですか」
「あのなぁ……そりゃあんたが強いだけなんやで? 天玄院流気当つこうて攻撃の
 威力がおないになるんなら、あとはそれをどうやって当てるか、そしてどうやって当てられんかの
 差やろ?」
「……なるほど」
「やから、おっきいうちは、あんたにゃ勝てんわけよ。決してうちが弱いわけやない!」
「本当かよ……」
「そのかし、背の大きさやおっぱいの大きさやったら勝っとるもんね! 二勝一敗でうちの勝ちー!」
「ガキかよ……」
「ま、あんたも自分じゃよーわかっとらんのかもしらんけど、もっと自分信じてええんやない?」
「……自分を、信じる」
「そそ。まがりなりにも、男どもしばき倒して決勝まで来とるんやから。おないようにしばき倒して
 やりゃええんやないの」
「はい……わかりました!」

 迷いがあった。大丈夫だろうか、という迷いが。
 男の無茶苦茶な勝ち方をVTRで見た時に覚えたその迷いは、あるいは不安と言い換える事も
出来たかも知れない。自分たちの"技術"と同じような"技術"を持っているかもしれない男が、
次の対戦相手であるという、そんな不安。その迷いが、不安が、今は綺麗に晴れていた。

「……ダメ師匠でもたまにゃ役にたつな」
「ん? なんか言うたー?」
「いえ、何も申し上げておりませんよ、師匠。―ありがとうございます」

 にっこりと笑みを浮かべて、小花は師に頭を下げた。

        ★      ★


「これより、20XX年度KDO選手権、決勝戦を開始します!」

 その宣言に、客席から怒涛のような歓声が巻き上がる。

「選手、入場っ!」

 歓声はさらにそのボルテージを増して行く。会場を包む期待感。これから行われる
死闘へ向けて、客席は高揚しきっていた。
 そして、その期待を担う、一人の少女と一人の男が会場に姿を現す。

「赤コーナー……僕らのパンツメンが帰ってきた! さらなる進化を遂げたその
 プロレスリングが冴え渡る! 本気のパンツはまさに鬼のパンツ! さあ、今宵も
 あのコールが会場に響き渡るっっっ! "二枚目のパンツ"スーパー、ストロング、
 パァァァァァアアアアアアーンツ、マッシィィィィィィイイイイイイーン!」

 せり上がるひな壇。
 そこから姿を表した男は、その顔をパンツで覆い隠していた。
 だが、唯一覗き見える口元に浮かぶのは、笑み。
 獰猛な、これから獲物を狩ろうとする獣が浮かべるのではないかと思わせる
ような笑顔を、きっと男は浮かべているのだろう。
 彼の名は、スーパーストロングパンツマシーンⅡ(ツー)。
 かつてプロレス界の数多のタイトルを総なめし、伝説とまで言われる程に

161:開催!KDO選手権 ◆91wbDksrrE
10/11/14 19:40:38 JmvBrD64
なったマスクマンの、唯一にして最初にして最後と言われる弟子。
 戦場に向かう彼の身体は、パンプアップされた筋肉に包まれて、腕は丸太の
ように太く、その腕でラリアットでも喰らえば一撃で昏倒してしまいそうだと、
誰もがそう思った。そして、誰もが叫ぶ。畏怖と憧憬を込めて。

『SSP! SSP!』

 会場中をうねりのように包みこむ、SSPコール。
 だが、彼はそんなコールの中に身を置いて思う。これは自らの師の功績だと。
決して自分が成し得た物ではないと。今自分がこのコールをしてもらえるのは、
師があってこそだと。
 だが、それも今日で終わりだ。そう、彼は思う。
 これ程までに注目される大会で勝利を成し遂げれば、ましてや、本来はセメント
志向だった師ですら成し遂げられなかった、プロレス技での格闘技大会制覇という
偉業を成し遂げたならば、自分は師を超えられる、と。
 そんな最中、そのSSPⅡに対峙する選手の名がコールされる。

            ☆

「続きまして、青コーナー……可憐な容姿に惑わされた男たちよ、とくと知るが
 いい! 決して彼女が見た目通りの存在ではないという事を! 女性として初、
 ましてやその小さな身体で成し遂げた、KDO決勝進出という大偉業! 今宵、彼女
 は自らのその偉業を、さらに次のステージへと押し上げる! 誰が呼んだか
 "無敵の妖精"天玄いぃぃぃぃん、しょぉぉぉぉぉぅかぁぁああああぁあああああ!」

 SSPⅡとは逆側のひな壇に、その小さな姿が現れる。
 途端に巻き上がる大声援。変わらず続くSSPコールにひけをとらない声援が、
小花の全身を包んでいた。
 小花は思う。これ程の人々が自分に期待し、応援してくれてるのだと、そう
改めて感じる。金の為に出場した大会だったが、ここまでの試合で自分が応援
されてきた事に、彼女自身色々と思うところはあった。それに応えないと、
という新たなプレッシャーを抱え込む程度には。
 そして、両雄―一雄一雌―が並び立つ。
 数分の後には、二度と並び立つことの無い二人が。

「いい? 危険だと判断したら止めるからね? OK?」
「ああ」
「……うん」

 レフェリーによるチェック、注意が終わった頃には、小花は自覚していた。
 身体が固い。やや呼気も荒くなっている。
 緊張―している。
 
「じゃあ、コーナー下がって……ジャッジ、ジャッジ、ジャッジ? ……ファイッ!」

 だが、その緊張を解す暇は―無い!
 ゴングが鳴り響いたその瞬間、まさに弾丸の如き速度で、パンツが……SSPⅡが
突っ込んできたからだ。コーナーに追い詰めるのは、格闘技において有利を取る
為のセオリーの一つ。小花の緊張を知ってか知らずか、その隙を衝かんと、SSPⅡは
一気に間合いを詰めてきた。
 低空のタックル。あえてリーチの差を活かそうとせず、間合いを詰めてのテイクダウンを
選択してきたSSPⅡの行動は、小花の意表もついていた。
 隙と意表と、二重につかれた所で、普段ならば対応はできただろう。
 だが、SSPⅡのその速度は、普通ではなかった。普段の対応では間に合わない程度には、
速く、そして異常だった。
 あえなくテイクダウンを許す。激しくマットに背中から打ち付けられる。恐らく、SSPⅡは、
ここから寝技の展開に持ち込み、複合関節技へと持ち込むつもりなのだろう。
 息がつまる感覚を覚えながら、小花はそれでも次どうすればいいかを考えていた。

『せやからなー、うちらは結局殴る蹴るメインやろ? やったら立ってないと話に

162:開催!KDO選手権 ◆91wbDksrrE
10/11/14 19:41:32 JmvBrD64
 ならんわけや』
『はぁ』
『やから、寝かされたら、まずその状態どうするかっちゅーんを考え。ああ、寝かされて
 もうたがなもうあかんわどないしよって、悔やみながら考えてたら、抜けられるもんも
 抜けられんよーなるんやからな』

 脳裏によぎる、師との会話。
 テイクダウンを取られてしまった事を悔やむ暇があるのならば、そこから挽回することを
考えろ。これは小花の、師によって授けられた教え、技術だった。"技術"ではない技術―
身体に染み付いていたそれは、小花に即座に両の膝を突き上げさせた。
 "技術"を用いて、凶器と化した膝を。

「ぐふぉっ!?」

 ありえない攻撃には、十全に備えていたつもりではあったのだろう。だが、それこそ、
テイクダウンして密着している状態から、全くテイクバックが取れない状況で放たれる
膝による攻撃が、悶絶する程に効いてしまうなどというのは、流石のSSPⅡでも想像
しなかったようだ。
 小花の身体を捉えていたSSPⅡの両腕が、その力を緩める。
 小花はそのタイミングで一気に立ち上がった。
 だが、SSPⅡもさるもの。本来なら、そのような想定外の攻撃には狼狽し、動きが
止まってしまうものなのだが、既に打撃やタックルの届かない距離に退避し、反撃に備えている。

「……ったく、いきなり抱きついてくるとか、破廉恥にも程があんだろうが」

 立ち上がった小花は、あえて言葉を口にしながら、徐々にその開いた距離をつめていく。

「あいにくと、私の好みは巨乳でね? 君のような身体に欲情する程、ロリコン
 ではないのだよ」

 対するSSPⅡも、あえて言葉を口にしながら、その詰められた距離を拡げていく。
 緊張感が場を支配した。
 それまで割れんばかりに響いていた歓声もピタリと止み、観客は二人の攻防を
固唾を飲んで見守っている。

「だったら、もしオレに負けたら、うちの師匠紹介してやんよ。性格はアレだけど、
 巨乳でスタイルもいいし、美人だぞ」

 強い奴と戦いたい。
 いつの頃から、そんな風に思っていた。
 道場にいるのは師匠だけで、師匠は自分以外とは戦うなと、私闘を禁じてきた。
 だから、試す場が無かった。
 だから、試す相手がいなかった。
 だから、強い奴と戦いたいと、そう思うようになった。
 いつの頃からか。いつの頃からだろう。

「おっと、それはありがたい。……だが、負けたら? 勝ったら、の間違いだろう」
「いんや、違うね。間違っちゃいねえ」

 いつの頃から―この瞬間を待ち望んでいたのだろう!
 身体の中を、熱く燃える血が駆け巡る。
 緊張は、血潮が洗い流し、代わりに全身に活力が満ちていく。

「じゃねえと、あのダメ師匠押し付ける相手逃しちまうじゃねえか」

 自分を信じてみろ。
 その師の言葉で不安は消えた。
 自分を信じる。それは、決して障害に立ち向かう手段としてばかりあるものではない。
自分を信じる必要が無い物しか、相手しか目の前にいなければ、信じる事は必要無い。
ただ流れるがまま、つれづれなるままで何とかなってしまう。

163:開催!KDO選手権 ◆91wbDksrrE
10/11/14 19:42:03 JmvBrD64
 自分を信じる為には、「自分を信じる必要」が、必要なのだ。
 そして今、小花の目の前には、その「必要」がいた。自分を信じて、
それでようやく倒せるかどうかという、そんな相手が、目の前に。
 それが、それが―それが、こんなにも楽しい事だったなんて!

「だって、この勝負に勝つのは―絶対にオレなんだからなあっ!」

 勝利を疑わない。それこそが、自らを信じる―自信!
 踏み込んだのは小花だった。リーチの差は甚大だ。これまでもそうしていたように、
踏み込んでからの打撃しか手は無い。対するSSPⅡは、タックルからのテイクダウン
では、先ほどと同じような反撃を貰うと見たのだろう。その豪腕を振りかざした。
 
「っ……ぅ!」

 集中。集中。集中。
 いかなる攻撃であろうとも、的が小さければ当たらない。
 そして、一撃必倒の威力を持つ攻撃を互いに持っているのならば、
勝敗を分けるのは、どうやって当てられないか。そして、

「どうやって……当てるか、だよなぁああっ!!」

 振りかざされた豪腕―かつての名レスラー、小橋建太、佐々木健介、
スタン・ハンセンもかくやというその太い腕から、それらを遥かに
凌駕する超速にのって繰り出されたラリアットを、小花はスウェービング
のようにのけぞってかわす。
 瞬間、SSPⅡの瞳が怪しく光った。

            ☆

 狙いはそこにあった。
 後の先。カウンター。
 恐らく、相手も同じだろう。こちらの攻撃を避けての一撃。カウンター
での一撃を狙っての回避。だが、その後繰り出されるはずの彼女の攻撃こそが、
こちらのカウンター狙いの本命であるとは、この少女は気づいていないはずだ。
 スウェービング、つまりはのけぞるような形での回避という物は、その後の
動きが酷く限定される。先日の試合を見る限り、態勢を崩した状態から直立
姿勢への復帰速度は異常と呼べるレベルであっても、それ以外の復帰が可能な
程に異常を極めているとは考えにくい。スウェービングからの回復も、同じく
直立への復帰と考えるのが妥当だ。
 故に、その後の直立姿勢から放たれれるであろう攻撃に備えればそれでいい。
 蹴りにせよ、拳にせよ、直立している状態であるからこそ、その方向性は
限定される。想定すべき対処法の数も少なくなる。対処法の選択肢が少なくて
済めば、それだけ躊躇の無い、強烈な攻撃が叩き込める。
 それこそが、彼の狙い。
 そしてその狙いは、脆くも破綻する事になる。
 そもそも、彼女は回避したわけではなかったのだ。

            ☆

 のけぞっての回避。
 そう、回避したのだと、それを見た人間は誰もがそう思った。
 SSPⅡも例外ではなく、むしろ回避させる為に攻撃をしたようだった。
 だが、彼女はそんな人々の目に止まらない、一つの動きを取っていた。
 迫り来る豪腕を避けきったと思ったその瞬間、彼女は両腕を差し出したのだ。
 ちょうどバンザイをするような形で、両の腕がSSPⅡの豪腕を受ける。
 ―全身全霊の力を込めた、両の腕を。

「……ぁ」

 言葉は出なかった。

164:開催!KDO選手権 ◆91wbDksrrE
10/11/14 19:43:27 JmvBrD64
 ただ、吐息だけが漏れ、だが、漏れた吐息の分だけ身体に力がこもる。
 固く構えられた両の腕が刈られる瞬間、全く同時に、彼女の足は地を
蹴っていた。
 支点、力点、作用点。
 この場合、支点として存在するのは、地を蹴った足。
 力点として存在するのは、刈られた両腕。
 そして作用点は―

『何が起こったかわからなかった……』

 試合後、彼はそう述懐する。
 それ程までに、その攻撃は見事で、そして、ありえなかった。
 相手の豪腕が振るわれる力を、全くロスする事なくそのままカウンター
に転化し、さらに"技術"によって大男が放つ蹴りの力をも加味されて
放たれた、逆上がりのような形での蹴り。
 サマーソルトキック。その名前で認識される技が、

「……!?」

 一瞬にして、SSPⅡの顎を砕いていた。
 そもそも、カウンターのカウンターなど、成立しえなかったのだ。
 彼女は回避ではなく、攻撃をしていたのだから。
 顎を砕いただけでは作用を消化しきれずに、ひらひらと、木の葉のよう
に宙を舞って、小花の身体はリングへと叩きつけられる。

「い……ってぇえぇええ!?」

 同時に、SSPⅡの身体も、リングに倒れ伏す。
 既に、その瞳に光はなく、完全に意識を失っている事が知れた。
 一方、リングに叩きつけられた小花は―

「っつぅ……てて、最後にヘマしちまった……」

 ―腰をさすりながら立ち上がった。
 瞬間。
 静寂に包まれていた会場が。
 爆発した。




        ★      ★

  後日談というか今回のオチ。
 ったく、なんでこんな事になってんだかなぁ……。
 オレはため息の絶えない毎日を送っていた。
 試合は、実質的には秒殺試合だったが、それでもオレとSSPⅡとの
間にあった緊張感とかが良かったらしく、何かえらいあちこちで
評価されてるらしい。オレにも、色々な団体や、アイドル事務所とかから
も声がかかったんだけど、メンドイから全部断ったのは言うまでもねぇよな?
SSPⅡみたいなおっさんがあちこちにいるなら、どっかの団体で
戦うってのも考えねえじゃねえけど、そんなのなかなかいねえだろうし。
 アイドル? んな柄じゃねえのは自分が一番よく知ってるよ。
 結局、オレが貰ったのは、KDO選手権の優勝賞金だけ。その金で、
道場の差し押さえだけは免れ、師匠も大喜び、オレ的にも問題なしで
大団円……となりゃ良かったはずなんだけど、そうはならなかったんだわ、これが。

「なぁ、おい……」
「はい、ダーリン、あーん♪」
「おお、マイスイート、あーん♪」

165:開催!KDO選手権 ◆91wbDksrrE
10/11/14 19:43:38 JmvBrD64
「何度も言うけど、なんでお前がここにいんだよ!?」
「あらダメよ小花ちゃん。この人は私のダーリンなんだから、お前
 呼ばわりなんかしちゃメッ!」
「あんたもキャラ付けとかどこ行ったんだよ!? あの似非関西弁は!?」
「いやあねぇ。もうそんなキャラ付けがどうこう言う歳じゃないわよぉ」
「そうだな。お前は素のままが一番綺麗だよ、マイスイート♪」
「いやあん、恥ずかしい事言わないでよぉ、ダーリンっ♪」

 まあ、オレの方も最早敬語とかかなぐり捨ててるからアレなんだが。
 結局、約束通りSSPⅡ―中身は田中昭二という、元真日本プロレスの
中堅選手で、あごひげを蓄えた渋いおっさんだった―をうちの師匠に
紹介してやったら、何か知らんが意気投合しやがって、今度籍を入れるとか
言い出してやがる……というのが、オレの頭痛の種の一つ。
 まあ、これはいい。道場にまで来てイチャイチャすんのさえやめてくれりゃ、
特に何も言う事は無い。ダメ師匠の世話してくれる人が現れて、万々歳とすら
言えるかもしれねえ。SSPⅡが指導するからってんで―後は、オレが優勝者
になったから、ってのもあるだろうけど―道場にも人は集まり始めてるしな。
 問題は、もう一つの方だ。

「……頭いてえ……」
「あ、小花ちゃん。ほら、今日もやってるわよ『今週のダンディ』」
「ああっ!? まだやってやがんのかアレ!? 番組中止しろってこの前言ったのに!」
「そりゃそうよ。優勝したからには、小花ちゃんが一番ダンディ、って事に
 なるわけで、そうなったら、ねぇ……」
「ま、自分で言うのもなんだが、世のおじさんが皆パンツ被り出すよりは
 良かったんじゃないかね?」
「マジで自分で言うなよ!? お前のアイデンティティなんだからよぉ!?」

 そう。
 問題はこれだ。
 オレは嫌々ながら、画面に目を向ける。
 そこに映っているのは―髪をツインテールにした、むくつけきおっさん
共が、オレが普段来ているようなボーイッシュ系の女物を来て、街を闊歩
しているという、悪夢のような情景だった……っていうか悪夢のような、
じゃねえな。こりゃ悪夢だ。早く覚めてくれ。頼むから。

「これまでは、普通にダンディなおじさまが優勝してたから良かったのねぇ」
「ああ、そうだな。まさか俺も、こんな風に影響力があるとは思ってもいなかった」

 KDO選手権は、そもそもカッコイイダンディなおじさま選手権の略だ。
 そのかっこ良くてダンディなおじさまとは何ぞや、というのを問う為の
大会であり、そこで優勝するという事はつまり―その優勝者がかっこ良くて
ダンディなおじさまであるという、その証明になるというわけで―それで、
今回優勝したのはオレなんで、ダンディになりたい世のおっさん共が、
こぞってオレの真似をし始めた、ってわけだ。
 ほうら、想像してごらん? 頭がおかしくなりそうだろ?
 信じられないだろ? 現実なんだぜ、これ……。

「でも、貴方は結構似合ってると思うわよ、そのツインテール」
「おお、そうか? まあ、お前が言ってくれると、うれしさもひとしおだよ」

 ちちくりあってる馬鹿二人を他所に、オレは天を仰いだ。

「どうしてこうなった……」

 誰かこの事態に収集つけやがれぇぇええええええええええええ!!!!!


                       だが現実は非情であるが故に終わり

166:開催!KDO選手権 ◆91wbDksrrE
10/11/14 19:45:34 JmvBrD64
ここまで投下です。
最初書き終わったらまさかの行数オーバーで
十レスに収まらず、涙目になったのはここだけの秘密。

167:創る名無しに見る名無し
10/11/14 19:52:55 HT2JJxEE
投下乙!

168:創る名無しに見る名無し
10/11/14 23:37:30 /L27Ze4d
こwれwかwww

SSPⅡが最後無駄に幸せなのがむかつくw

169:AA部門 ◆5EO17Ipqog
10/11/16 01:14:35 +7eoX1Hh
ν(`・ω・´)乙

170:創る名無しに見る名無し
10/11/23 13:32:10 JCiG0WPT
あと、一週間!

171:創る名無しに見る名無し
10/11/24 00:31:51 KEEVgt37
youtubeまたはニコニコ動画で
「自殺の温度」
で検索!!

172:創る名無しに見る名無し
10/11/25 20:56:28 Ziyc1tga
                      ___
                ,.ィ"´:.:.:.:.::::`丶、
                   /:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::::::\
               ,':.:.:.:,. ====.、:.:.:.:.:::::',          鯔なこと…………
                  l:.:.:〃 、  \  ヾ、::::::::::l
              |:.:.ハ、_ \、_ \、 ll:::::::::|
              |:.:||/、.__ ̄イ;≧=z||::::::::|   
                   l:.:||示㍉  〃{ _ノトl|::::::::|
                  l:.:lハゞ‐´ ,  `^~`〃ハ:トハ、
             ___ノ:.ヘV> 、 一' _,.ィ/:/八トX'⌒ヽ
             f´ `Y^〉ーく什フ勹゙⌒ヽーi'⌒ヽ__ノ
             ゝ_ノ ゝ_ノ'´:::::::ゝ__ノ≠ゝ-ハ
                 /ハ:.ヽ::::::;: -´(_)::::::::::::::::.:`!               , - 、 ロォォォォード
              /:./::::> `´ _ィ´!:.:.:.:.:.:::ト、:::::::.\             ヽ/ 'A`)ノ  . - 、
                l:.:.レ´ _  く:::::::l:.:.:.:.:::::/ \::::.:.:`¬、        {  /   、('A` }ノ ロォオオオド
                   {:.:,ィ´::::\:.:\|:.:.:.:::::/   ヽ::::::::.:.:.:.` ー- 、._   ヽj     )_ノ
                 ///:::::::::::::::\:.:.:.:.::::/     ヽ:::::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`` ー-ァ、___´
               人{ノ:::::::::::::::::::::::!:.:.::::」       \::::::::::::::::::::::::.:.:.::::/ ─一ァ′
         _.、-'´:::rY_/´二二` Y-‐'' ´]_           \:::::::::::::::::::::/二二二フ
       _.、-'´:.:.:.:::::/:.:::ハ ゝー┘ ト-一''´::ヽ、         \::::::::::::/ 〈::::/
      ハ:.:.:.:.:.:.:::::::/:.::::/::〈__厂 ̄!_」ハ::.:.:.:.:.:.:.:.:\           \_;:ハ Y
    __ノ 〉、:::::::::/:.:::::/:::::::::::::::::::::::::::::::゙、:.:.:.:.:.:.:.:.:::\       


173:創る名無しに見る名無し
10/11/25 20:57:24 Ziyc1tga
最近誤爆が多い多い

174:三橋にくまん ◆TJ9qoWuqvA
10/11/26 12:34:14 I5mqgabp
三橋ショートショート 「ニュー・ライフ」

「え?」
「私のこと応援なんかしなくていい」
「何言ってんだよ、お前。テレビに出たくても出れないアイドルがどんだけいるとおもってんだよ。アイドルで成功する奴なんか一部の人…」
「うるさい!」
「………」
「うるさいうるさいうるさい!!!!」
「…おちつけよ」
「私のこと分かったように語らないでよ!」
「なんだよ、意味わかんねーよ」
「大嫌い!ほんと最低!もうどっかいってよ!」
「は?お前なんなの?」
「うるさい!うるさい!うるさい!」
「なんだよ。言いたいことがあるなら言えよ。マジ意味わかんねーんだけど」
「うるさい!」
「お前さぁ…いい加減にしろよ」
「…私は!トモは!にくまんのことが好きなの!」

175:創る名無しに見る名無し
10/11/29 22:24:27 pRif9U+V
>>156-166
SSP!SS……二代目……・だと……

気がつけばもう募集終了寸前か

176:上級読者 ◆xQmVoY6/HA
10/11/30 20:35:25 Ub3f3Inq
恋愛シナリオ


1/10
携帯の画面に西日が差し込み反射して、メールの文字が見えなくなった。
校門に背もたれていた優子が軽く舌打ちをして携帯を閉じ顔を上げると、校舎は夕焼けで赤く染まっていた。
時計塔を確認する。もう少し待たねばならない。まだ家に帰る時間ではない。優子がホッとしたその時、吹奏楽部がG線上のアリアを演奏し始めた。
二階の音楽室から荘厳なメロディーが学校を包み込む。県内屈指の実力だけあって音に歪みがない。澄んでいる。優子は顔を顰めた。
何故、こんな悲しい曲を、こんな寂しくなる時刻に毎日演奏するのだろう。人を悲しくさせる為だけに生まれたようなアリアの旋律を優子は憎んでいた。
これを聞くといつも死にたくなる。土足で自分の心の奥深くに踏み込まれ陵辱さたような感覚に苛まれる。

演奏が終わって暫くすると、俊夫が「待たせちゃってゴメン」と息を切らせ優子へと駆けつけた。
「いいよ、気にしないで、君を待つの好きだから」と優子は答えたが、正確には『いいよ、気にしないで、もっと遅くていいのに』と思った。
そもそも君でなくても誰でもいいの、家に帰るのを遅らせる理由が出来ればそれでOK。家に帰えるのが嫌だから街で時間を潰すってのはリアル過ぎて駄目。いつか本当に自殺してしまう。
だから君を待つって理由で時間を潰してるだけなの、利用してゴメンね俊夫君、だから君は私に謝らなくていいんだよと優子は内心思ったが、そんな言葉が出ることはなかった。
俊夫と一緒に家に帰るのは小学校や中学校の時から続いてることで、それが高校生になっても続いてるだけ。優子はそう自分の心すら誤魔化すことでなんとか心の平穏を得られた。
「そ、そう……」好きって言葉に俊夫は顔を少し赤らめた。『綺麗だな』と優子はそんな俊夫を見て思う。顔が整ってるし、清潔感あるし、何より自分のように心が歪んでない。
だが好きという感情は持てなかった。幼馴染ということもあるが、相手を思ったり思われたり、何かを要求したりされたりするのが面倒な感情に思われたからだ。

とはいえ一人は寂し過ぎる。

いつまでも優子に都合の良い友達でいて欲しかった。だから彼女は今までに一度も彼に何かを頼んだことがなかった。何かを頼めば何かを頼まれることもあるからだ。
でも今日はどうしても俊夫にお願いしたいことがあった。
「待つのはいいんだけど……ねぇ、俊夫って吹奏楽部の部長だよね?」
「うん、他の部員より上手いって訳でもないんだけど、何故か投票で選ばれちゃって、まぁ、部長と言っても特にやることないから引き受けたんだけどね」
「最後の演奏、いつも曲、アリアだっけ、あれって俊夫の選曲なの?」
「あれは顧問の先生、アニメオタクなんだ、あの曲が流れるアニメが好きで、だから最後に演奏させるんだ」
自分の好みしか興味を示さず、他人に好みを無理に押し付けるのがオタクだ。そういうタイプの人を優子はよく知っていた。だからもう駄目なことは分かったが一応、お願いしてみることにした。
「俊夫、お願いがあるんだけど」
「うん? 何?」
「先生に言ってあの曲を別に変えられないかな? 毎日、最後はあの曲ってどうかなと思うんだ、別の曲も聞きたいかなって」
「……実は以前、吹奏楽の音を合わせるのに不向きな選曲なので変えようって意見が部員の中から出たことがあったんだけど先生がね……。明日お願いしてみるけど無理だろうな」
「そっか、ううん、気にしないで、何となく思っただけだから、じゃあ、またね!」
丁度、いつもの分かれ道になったので二人はそこで分かれた。
優子の足取りが重くなる。自宅の高級マンションの前まで来ると吐き気がしてくる。なんとか我慢して居住者カードをスキャナに通して暗証番号の誕生日を入力した。何故、私は生まれて来たのだろうか。

エレベーターで五階に上がり部屋のドアを開けると優子の母親が鬼の形相で立っていた。
派手な化粧と衣装、キツイ香水、TVドラマに出てくるヤクザの情婦そのままの姿だが、実際、優子の母は四年前に抗争相手の組の幹部を殺して服役中のヤクザの女房で、つまり優子は人殺しの子だった。
「お前なぁ、今日は七時からハイクラスの予定が入ってるから早く帰れって言ったろ?」
「ごめんなさい……お母さん」俊夫との会話とは全く違った可細い声で答える優子。
「化粧はいいから早く着替えて、ヒルトンの1514、これからタクシー呼ぶから、あと今日は厄日だろ?」そういってラップに包まれたピルの錠剤を優子へ投げ付けた。
優子はピルを口に入れると台所へ行き、冷蔵庫から牛乳を取り出してそれを紙パックままゴクゴクと喉へ流し込んだ。

177:上級読者 ◆xQmVoY6/HA
10/11/30 20:36:13 Ub3f3Inq
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現役女子高生で美少女の部類に入った娘を母は安売りしなかった。とはいえ一晩500万は金持ちの道楽のレベルを超えている。相場の百倍以上だ。
でも多くのハイソが自分達の見栄や度量を示す為、そして話のネタにする為に優子を買っていった。
そんな上流しかいない客の中で母はわざわざハイクラスと言ったのだ。名の知れた実業家や芸能人が相手でも母はそんな言葉を今まで使ったことがなかった。
もしかしたら組関係の人だろうかと優子は思う。
彼女が稼いだ金の全ては母に渡り、その金の殆どが父のいた組へと流れる。母は父が出所した時の為に組の若頭に金を渡していた。組の為に人を殺しても今の時代、幹部にはなれない。
暴力に対する報酬を取り締まる法律が出来た。だから新しく組を作る。組に金を渡してシマを切り取りして貰う。その為にはもっと金が必要だったし、人脈も必要だった。
優子は今までヤクザに抱かれたことはなかった。覚せい剤を打たれるのが怖かったし、なにより母のような人間になりたくなかった。以前、ヤクザを相手にするよう母に言われた時、それだけは嫌だと半狂乱に泣いて断った。
娘が自殺すると困るし、薬物注射で腕に傷の付いた娘は商品価値がなくなるとも思い直して、その時は母は別の娘を自分の替え玉にしたが、ヤクザにもピンからキリまである。
広域組織の上層との繋がりが出来るなら母は喜んで自分を差し出すだろうなと優子は思った。そしてもう彼女はそれでもいいと思っている。
もう疲れた。楽になるなら薬でも自殺でも何をやっていいのではないかと思う。
だがそんな優子の杞憂は外れる。彼女が部屋のドアをノックすると、どうぞとドアを開けたのは上半身裸で刺青のあるヤクザではなく、とても優しそうな目をした紳士だったのだ。
シックなグレーの高級スーツに身を包み、葉巻を銜えている。
部屋へ通される時、すれ違った男のスーツからは香水をふり掛けているのか清々しい香りがして、気分が静まった。男はパタンと静かにドアを閉め、奥のソファーに座りなさいと優子に言った。

クリスタルのテーブルを挟んでソファーに座って相対する二人。
男は新しい葉巻をシュガーケースから取り出し、パチンと奇妙な挟みで端を切るとシルバーのライターを胸から取り出し火を付け口元へ近づけ
そしてようやく対面に座る娘の顔を見ると驚いた顔をして、火をつけたばかりの葉巻を灰皿に置いて、マジマジと優子の顔を眺め始めた。
そういえば今日は化粧をして来なかった、自分のことは不細工ではないと思うが、しかし期待外れだったのだろうかと優子は申し訳ない気になった。
たまにだが、ガッカリだよとズケズケと言う客もいる(そうは言っても全員優子を抱いた)そりゃそうだと思う。一晩で500万円なんて馬鹿げた金額に吊り合うとは自分でも思えない。
何十分時間が過ぎただろう、男は優子が戸惑ってることにようやく気付き、そして「……いや失敬、君は私の娘に似ている、似すぎている、まるで生き写しだ」などと言い始めた。
いきなりこの男は何を言い出すのかと優子は訝しく思った。そして、あぁ、父娘プレイというのをご所望で、プレイはもう始まっているのだと気付いた。
なかなかこの親父も好き物のようだ。娘が本当にいるのかどうかは知らないが、つまりは血の繋がり要素を含んだロリコンなのだ。
平気です、大丈夫です、以前、中年のオタク野郎にアニメを二時間掛けてみせられ台詞を覚え、自分の声をヒロインの声色に近づけるボイストレーニングを三時間やらされ行為に及んだこともあるのです。
だから娘好きの変態といっても気にすることはないです。頑張って完璧に演じますわ。
と言いたくなったが、そんなことを言ってしまえば興が覚めてしまう。
取り合えず、お父さんと言ってみようかと思ったその時、男が嗚咽を漏らし「すまん、娘は7年前に丁度、君くらいの年に癌で死んでしまったんだ」と言った。
これはややこしいことになったと優子は思った。


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