10/09/24 21:20:32 uvhbIVWB
「やっと…やっと、ここまで辿り着いたわ……」
「ここまで、長い道のりだったにゃあ」
「ほら見て、桃鈴灯がこんなに光ってる」
「この長い旅の、有終の美を飾るには相応しい光景だにゃん」
「うん……綺麗…」
「さて、伝説によるとこの湖の下に例のアレが沈んでるはずにゃ」
「そうよ。これでみんなが助かるんだわ……」
「で、ここまで来たはいいけど、どうやって取るのにゃ?」
「どうやってって、決まってるじゃない」
「にゃ、にゃにかにゃあ、その視線は……にゃあちょっとムズ痒いにゃあ……」
「どうしてあなたを旅のパートナーに選んだのか、今ここで教えてあ・げ・る(はぁと)」
「ぎにゃあ!?もう言わずとも大体想像付くにゃあ。というかネコは泳げないにゃよ?にゃあはネコなのに犬死にかにゃあ?」
「あー、それそれ、今まで黙ってたんだけど、あなた実はネコじゃないから」
「にゃ、にゃんですとーーーー!?」
「じゃあそういう事で。行って、らっしゃーーい!」
ポーン
「うにゃあああああん」
「さよなら。月に重なったあなたの姿は忘れないわグスン……(いい土産話になるからね)」
「勝手に殺すにゃああ!本気で7代祟るにゃよ!」ゼェハァ
「あら早かったわね。それで?例のアレは?」
「………………ほらこれにゃ」
「えらーいさすがー、あなたなら絶対やってくれると思ってたわあ」ナデナデ
「なでるにゃあああああ納得いかないにゃああ!」
―
「こうして一人と一匹の勇者は、無事例のアレを持ち帰る事が出来ましたとさ。めでたし、めでたし」
「にゃあ的にはぜんぜんめでたくないにゃあ!」
81:創る名無しに見る名無し
10/09/24 21:21:39 uvhbIVWB
以上です。
82:創る名無しに見る名無し
10/09/24 21:23:20 /KQD0f2H
乙。畜生、先にやられたぜw
83:携帯 ◆4c4pP9RpKE
10/09/25 01:56:05 T/WZET14
それは、一艘の木の葉舟だった。
一人の女が、灯と杖を持って、夜の海に浮かんでいた。
満月の夜、水面が、つうっ、と平らかな時間。
女は、静寂に沈んだ昏い海に歌う。
ランプにともる碧い光は、力を失った灯の精霊。
それが、海に帰って行く。
女は歌う。
労うように、慈しむように。
まるで聴くものの心根を撫でるような、伸びやかで暖かな声だった。
やがてその、撫でるようだった愛撫の歌声が、激しさを増して行く。
調子が高まり、声が音の階梯を駆けてゆく。
声音は音律に詞の魔力を纏わせ、海の精霊を楽しませた。
紅の夜光虫が、灯の精霊が、調子に誘われ、歌声に魅せられ、木の葉舟に集い始めた。
興がのったのか、女は、羽織っていた外套を取り払った。
女の背中には、人には有り得ない、異形の羽根が生えていた。
しかしそれは、風切り羽を切り揃えられた、飛べなくされた、飼われている羽根だった。
女は人に飼われる異形の亜人、ハーピーであった。
船を沈める、死の魅惑を秘めた歌声のハーピーは、人に恐れられた。
人は、恐れを抱く対象を、徹底的に支配することで、恐れを克服する。
克服されたハーピーは、人の様に振る舞うことを強制された。
ランプに、灯の精霊を詰めて売り、人のように暮らした。
一艘の、木の葉舟しかいない、静かな夜。
女は一人で、歌声を奏でる。
その姿は、羽根は飛べなくとも。
鏡のような海に、月の浮かぶ、深淵の空が映れば。
境界が曖昧な、海は空と繋がり、二つの月が浮かぶ空に。
自由な鳥が舞っているようだった。
終わり
84:創る名無しに見る名無し
10/09/25 02:02:01 T/WZET14
なんか、悲しいリュミヌーになったw
85:わんこ ◆TC02kfS2Q2
10/09/25 20:23:00 bKlJftRT
>>72で書いてみた。
86:『ちさとの夏』 ◆TC02kfS2Q2
10/09/25 20:24:23 bKlJftRT
「先輩、ぼくの話を聞いてくれますか」
後輩の治樹の声を耳にして、副部長のちさとは長い髪を秋風に乗せていた。秋が来てしまうのを惜しんでいるようでもある。
小さな天文部の部室の中、流石に窓を開け放しておくのは寒い。ちさとが窓ガラスに近づくと、薄い影がほんのりと映る。
「うん、ちょっと待ってて」
ぴしゃりと窓を閉じて秋めく空を眺める少女の後姿は心なしか寂しく映る。
今年の夏の合宿で高原へみんなで出かけた。夜空がきれいだった。子どもの頃に見た、金平糖のようだと思った。
そんな写真アルバムを一枚一枚捲って、治樹はちさとの夏を思い出す。ちさとの夏は戻らない。
もう制服も秋色。カーディガンが大人っぽく、細いちさとを包みこむ。袖からちまっと覗かせる手が先輩を少女に戻す。
華奢といえば華奢。まだまだ九月も入ったばかりなのに、ちさとは肌寒そうな顔をしてやまなかった。
「なあに。お話って」
「夢を見るんです」
「わたしも見るよ」
「いや。ぼくは、毎晩同じ夢を見るんです」
治樹の言葉で空気がすっと色がつく。
「月の出ているきれいな夜なんです。雲から掻き分けるように差し込む月明かりは、まるで神さまが俗世間を見下ろしているようでした。
ぼくは舟に乗っているんです。舳先が大きく弓のように曲がった舟、それが遠浅の海に浮かんでゆらりと揺れているんです。
そして、ぼくはそこから海を眺めていると……蛍のような光がふわふわと、澪引く舟の周りに集まってきたんですよ」
静かに椅子の脚を軋ませて、ちさとは治樹の右斜めの位置に椅子を移動させて腰掛ける。
長い髪をそっと撫でて、ちさとは治樹の話に興味深く耳を傾ける。
「一人で乗ってるの?」
「いいえ、舟に乗っているのはぼくだけではありません。ぼくの後ろには一人の……女の人が立っているんです。
真っ黒なローブに包まれて、不思議なランプを手にしてて。そして釣竿のように長い杖の先に小さな明かりが灯されていました。
ぼくが『見てくださいよ!あんなにきれいな光の珠がたくさん!』って、彼女に伝えようとしても……」
ふと、治樹はちさとと目を合わせるのをためらった。自然と。
87:『ちさとの夏』 ◆TC02kfS2Q2
10/09/25 20:25:23 bKlJftRT
「出来ませんでした。彼女は光の珠の群れを恐れているようでした。背中を向けて、すっぽりと体を覆うローブで光を避けるように。
もしかして、手にしているランプは光の珠を脅かす為に持っていたのかもしれませんね!!」
ちさとは余りにも治樹が熱を込めて話すので、くすっと頬を緩めてしまった。だが、それをも気にせず話を続ける。
「でも、ぼくが彼女にそのことを伝えられない理由は……えっと」
「あら。理由って?」
「ぼくが仔犬だったからです」
今年の夏の合宿で高原へみんなで出かけた。夜空がきれいだった。
だが、ちさとは見られなかった。夏風邪に祟られたのだ。夏の夜空に、ちさとは近づくことが出来なかったのだ。
一人宿舎で寝込むちさとを案じて、治樹は付き添ったのだが、ちさとは「せっかく来たから、みんなで夜空を楽しんでね」と、
治樹を金平糖の降り注ぐ甘い夜空へ突き飛ばしたのだった。布団に包まるちさとの姿が目に焼きつく。
言えなかった。伝えたくても、伝えられなかった。
ぼくが仔犬で無かったら、光かき消すランプを海に放り、全てを包むローブをそっと外して、小舟の上で光の珠を見つめられたのに。
仔犬だったから。ぼくは言葉を知らない、そっと側にいるだけの無力な仔犬。
「先輩に……」
「なあに。はーるきくん!」
「なんでもありませんっ」
アルバムを閉じて「『夜空を見せたかった』って、なんか言えない!」とちさとの視線をかわす治樹は、
小舟に乗ったようにゆらゆらと少年の純真が揺らいでいた。
今夜もきっと、あの夢を見るんだろう。
おしまい
88:わんこ ◆TC02kfS2Q2
10/09/25 20:26:59 bKlJftRT
投下おしまい。ですよ。
89:創る名無しに見る名無し
10/09/25 23:20:52 eWkNLrXz
乙です
90:創る名無しに見る名無し
10/09/26 04:58:24 Y9G+Krd7
色夢になりそこねましたなぁ
91:創る名無しに見る名無し
10/09/26 22:46:10 7oco8OPl
皆乙ですー
同じ絵が元なのにいろんな方向に広がるねえ。面白い。
92:創る名無しに見る名無し
10/10/19 17:42:21 ncFOsJw+
絵から小説にって言うのは多数見かけるけど
小説を漫画にしてみたいって言う人はいませんか?
漫画にして欲しい小説があるんですが
93:創る名無しに見る名無し
10/10/19 18:30:38 pSiUXHJv
漫画は作業量が多いからね
相手のジャンルを指定するなら絵師募集スレのほうが目に留まるとおもうよ
94:創る名無しに見る名無し
10/10/19 18:56:54 N2D2hVSq
このスレだと「もとの作品がどんなベクトルに向いてもOK」みたいな
自由度あるしね。元作品からの指定多くて自由度少ないなら
>>93のスレもあるよ。
95:創る名無しに見る名無し
10/10/19 19:40:26 ncFOsJw+
>>93-94
thx
そこ行ってみる
96:創る名無しに見る名無し
10/12/10 11:20:06 O4LkVlHI
放置しすぎage
97:創る名無しに見る名無し
11/03/15 23:15:47.47 UbQ1WMhP
うむ
98:創る名無しに見る名無し
11/07/12 22:02:58.29 LlWN8zMh
あがれ!
99:創る名無しに見る名無し
11/07/23 17:56:57.40 fe+nNQrw
"うんち・おならで例える原発解説"の最近作を製作するスレ 14Bq
スレリンク(mitemite板)
100:創る名無しに見る名無し
11/09/24 05:48:29.29 U+7MIjxq
kitai