10/09/18 12:15:17 oCcGirBh
>>22続き
「君、それはいくらかね?」
老人に再び問われると、男はここぞとばかりに言った。
「ご、5万円…です」
「おお、そうか。君にとっても大切なものなんじゃな、ではあきらめよう」
『しまった!』男は吹っかけすぎたことに後悔した。
この老人を逃してしまったら後が無いかもしれない。
「待ってくれ!3万…いや1万でいい!買ってくれ…買ってください!」
「本当にいいのかね?1万円でも?」
「ええ、それでけっこうです」
「ではいただこう。どうやら訳ありのようじゃ、3万円でどうかな?」
『ありがたい、これで2ヶ月は暮らせる』
男の顔に安堵の表情が浮かび上がる。
老人はタイルを受け取るとしみじみと眺め、本当にうれしそうに去っていった。
『待てよ…』
男はしばらくして、老人の言葉に何か引っ掛かりを感じた。
『あの爺さん「君にとっても」って言ってたな。「君にとっても」ってことは
「わしにとっても」ってことだろ?もしかしてすごいお宝だったのかも!』
男は老人にまんまとだまされたと思った。
『だからあの爺さん余裕で3万払ったんだ!』
あわてて周囲を見渡すと、あの老人が公園から出て行くところだった。
『じじい!』
男の心は欲望に乗っ取られ、良心はすでに吹き飛んでいた。
『あいつの家をつきとめて、相応の金額を巻き上げてやる!』
男は老人の後をつけて行く。山の手のほうへ向かう、高級住宅街だ。
やがて老人は一軒の邸宅に入っていった。
老人の物腰にたがわぬ大邸宅だ。
続く